ページの先頭です。
調査統計局 経済統計課 企業統計グループ 企画役補佐
2011年3月11日14時46分。東日本大震災発生時、私は仙台支店営業課にいました。中央銀行は、大規模災害発生時においても、被災地の決済・金融インフラ機能の維持を図るため、日本銀行自身や金融機関の被災状況や業務継続体制を把握し、異常な事態が確認された場合は、限られた時間で最適な方策を立て、対処する必要があります。被災地では、広域停電が続き、キャッシュレス決済も使用できないため、現金を使える環境の維持が極めて重要な課題でした。私は、金融機関の被災状況や業務継続体制の把握等に携わりましたが、大規模災害時においても、円滑な資金決済・金融機能を守るという中央銀行の使命と、その社会的意義を強く実感しました。
金融機構局では、金融機関の経営状態やリスク管理体制の実態把握を行う"考査"の仕事に携わりました。考査に立ち入った被災地の金融機関では、震災後、保険金の流入等から預金が大幅に増加しており、その資金の運用やリスク管理の改善に取り組んでいました。個々の業務やリスク管理などを確りと調査し、それを土台として議論が深まるよう工夫を凝らしながら、リスク管理のさらなる改善点についての議論を金融機関と重ねました。その結果、「地域を支えるためにも考査で議論した課題に確りと取り組みたい」という言葉を得ることができました。この言葉は、今でも心に残っており、金融システムの安定の一端を担う"考査"という仕事に大きなやりがいを感じることができた瞬間でした。
その後に異動した決済機構局業務継続企画課では、東日本大震災以上の被害も想定される南海トラフ地震や、気候変動によってリスクが高まっている大規模水害等の発生時でも、日本銀行の現金供給機能を発揮できるよう現金供給スキームを整備するプロジェクトを担当しました。発券局をはじめとする多くの関係部署との間で、日本銀行や金融機関で実務上どのような対応が可能なのか、また、その対応に法令上の問題はないのかなど、多岐に亘る論点について議論を重ね検討を進めました。こうした検討にあたって、大きな役割を果たしたのが、東日本大震災時の経験・知見でした。日本銀行が組織として経験・知見を蓄積していることはもちろんのこと、自身のかつての仙台支店での経験が、そうした経験・知見を確りと理解する大きな支えとなり、キャリアの積み重ねの重要性を感じました。
決済機構局を経て、福島支店に総務課長として赴任しました。支店の総務課長は、地域経済情勢の調査や取引先金融機関のモニタリング、広報、内部管理など、幅広い業務を統括しています。プレーヤーではなくマネージャーとしての機能が求められるため、責任は重いですが、その分、やりがいも大きいものでした。
例えば、震災から10年を迎える2021年3月に公表した、東日本大震災からの復興をテーマにした調査レポートの作成では、チームの司令塔としてプロジェクトを主導し、これまで自身が培ったノウハウを伝えつつ、案件に関わるメンバーの能力を引き出しながら、成果に繋げていきました。作成の過程を通じて、メンバーの成長を感じられ、マネージャーとしての仕事の面白さ、醍醐味を垣間見ることができました。
業務分野特定職の魅力は、本店と支店で様々な経験を積み重ねながら自身を高めていき、その経験や知見を活かしながら、世の中に貢献できることだと感じています。現在も、入行後初めて在籍する調査統計局で、短観という注目度の高い統計の作成に取り組んでいます。統計作成という新たな分野に挑戦する中で、これまで経験したことがない困難に直面することもありますが、自身の成長を感じながら、やりがいのある充実した日々を過ごしています。