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ロンドン事務所 (現 金融機構局 国際課 企画役補佐)
私は大学生時代、教養学部で東アフリカにおける教育制度の歴史を中心に学んでおり、もともとは国際協力関係の仕事に就きたいと思っていました。しかし、大学3年の時、米国への留学で日本を離れていた最中に東日本大震災が起き、それまで当たり前だと思っていた日本での日常が、沢山の人々の想いや尽力のうえに成り立っていたことに気付かされました。私も日本の将来を支える仕事がしたいと思い、日本銀行に入行しました。
入行してからは、まず、金融機構局、那覇支店、金融市場局と歩みました。どの部署でも中央銀行員ならではの経験を積むことができましたが、特に自分が成長する機会になったと思うのは、金融市場局為替課で、外為市場における国際的な行動規範作りの作業に参加したことです。この作業の過程では、各国の中央銀行員や市場参加者と、互いの主張の対立点の解消に向けて集中的に議論しました。作業が佳境に入ると、海外出張の頻度も増していきましたが、参加者は皆疲れ知らずで、どのような規範が外為市場の健全な発展に資するか、各国の市場の実情も踏まえながら、毎回真剣な目で主張します。こうした場で揉まれ、私も外為市場の構造についての見識が深まるとともに、国際会議で主張を理解してもらうための勘所が多少つかめたようにも思います。
その後、オックスフォード大の大学院に留学し、公共政策について学びました。授業自体が有益だったのはもちろんですが、世界中から集まったクラスメートが持ち込んだ様々な経験や価値観に触れることで、視野が大きく拡がりました。
留学から戻ると、決済機構局の配属になりました。決済機構局ではまず、金融市場インフラのオーバーサイトや、欧州中央銀行との分散型台帳技術に関する共同調査を担当した後、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する実証実験(フェーズ1)の企画・実施に携わりました。CBDC実証実験を企画するためには、仮に日本でCBDCを導入するとしたらどのような形態をとり得るかを想像しながら、技術面から検証すべきポイントを絞り込んでいく必要がありました。そのためには、各ポイントの重要性だけでなく、現時点での検証可能性も意識しながら、チーム内で何度も議論を重ねる必要がありましたが、このプロセスは、道なき道を一歩ずつ踏み固めていくようなものでした。また、実証実験の実施段階では、前例のない作業を進めていく中で次々に発生する様々な障害を、一つずつ乗り越えていく必要がありました。社会的な注目度も高い分野ですので、プレッシャーもありましたが、地道に取り組み続けることで実証実験が次第にかたちになっていくので、自分の成長を実感するとともに、大きな充実感も得ることができました。
現在、私はロンドン事務所で、主に英国・欧州地域の経済・金融情勢の調査を行っています。オックスフォードでの留学時代にも感じましたが、英国の行政は懐が深く、日本も学ぶことが多いように思います。また、ロンドンは、Brexit(EUからの離脱)後も欧州の金融の中心であり続けており、今でも世界中から優秀な人材がこの地に集まってきています。こうした環境で、新型コロナウイルス感染症に対応しながらの経済活動の再開、気候変動対策、そしてCBDCやFintechなど、注目トピックの最新の動向を日々追いかけることにやりがいを感じています。
人々が安心して生活し、それぞれのポテンシャルを追及できるような日本の未来創りに貢献したいです。そのために、日本経済を支えるインフラとしての中央銀行サービスを日本銀行が提供し続けられるよう、尽力していきたいです。