世界中の樹種の特徴や、
木の魅力を活かしてつくられた
空間について紹介。ぜひ、木が主役の
空間づくりの参考に、ご覧ください。
住友林業では、色合いや木目、質感の異なる多様な「世界の銘木」を取り揃えています。
木の持つ真価は、異なる環境で育った一つひとつの樹種の性質を見極めることで引き出せるもの。
ここでは、世界中のさまざまな木に、それぞれどんな特徴があるのかをご紹介します。
北米東南部を中心に生育。日本では北海道や本州北部に多く生息するタモに類する樹種。堅さと弾力性に優れ、変形しにくく、北欧の名作家具や楽器などで幅広く用いられています。存在感のある木目は、空間をナチュラルな雰囲気に演出します。
北半球の亜熱帯から温帯にかけて幅広く分布。その数は300〜350種。威風堂々とした樹形からヨーロッパでは"森の王"と呼ばれています。重厚な木質感があり、豊かな風合いを醸し出します。
豊かな色彩と繊細な木目を持つチェリーは、古くから高級家具の素材として使用されてきました。淡い赤みのある色合いが華やかな表情を生み出し、上質感あふれる趣を住まいに漂わせます。やさしい光沢は、見る角度や光の当たり方によって表情を変え、美しく輝きます。
東南アジアの熱帯地域やインドに分布。モンスーン気候の森で生育しています。厳しい環境で育つため、驚くべき優れた耐久性を発揮します。深みのある光沢の美しさもある、まさに世界を代表する銘木です。
クルミ科クルミ属の樹種。ヨーロッパ南東部から東南アジアおよび日本、南北アメリカにかけて幅広く分布。マホガニー、チークとともに、世界三代銘木のひとつに数えられています。美しい杢目(もくめ)と深い色合いがノーブルな印象を漂わせ、住まいを彩ります。
厳しい自然に囲まれた北の大地、北海道を中心に生育するのが、オークの中でも銘木ジャパニーズオークと呼ばれているナラ。 落ち着きのある木目、くっきりと現れる節、歳月とともに深まる色合い。そんな自然が生み出す風合いにつつまれて暮らす醍醐味がこの木には揃っています。
世界四大街路樹のひとつである落葉樹。木目が明瞭で、白と赤褐色の美しいコントラストが特徴です。
秋には実が収穫できる落葉高木。高級家具や彫刻の素材として使用され、落ち着いた空間をつくります。
日本の桜を代表する天然種。ほんのりピンクの色合いや表情が、人々を魅了し続けています。
耐久性に優れ、神社仏閣に用いられてきた樹種。"世界で最も優れた針葉樹"といわれています。
日本固有の樹木。"直ぐなる木" が語源とされています。美しい木目や心地よい香りが特徴です。
樹種ごとの特徴を最大限に活かしたまちの空間を住友林業が紹介。
木を取り入れることにより、空間にどのような良い影響を与えるのか。
オーナーや設計担当へのインタビューを通じて、2つの事例を元に紐解いていきます。
CRISP SALAD WORKS 麻布十番店
使用樹種:チェリー
フレッシュで、色鮮やかなグリーンのセラミックタイルが空間の象徴として輝きを放ち、天井やカウンターの木がそこにぬくもりを加えています。ここは、「CRISP SALAD WORKS 麻布十番店」。店舗の設計担当である高橋慎さんにお話を伺いました。「熱狂的なファンをつくる・笑顔を広げる・好きになる、という株式会社 CRISP のスローガンから、このコミュニケーションをどのように店舗デザインに反映させるかを検討していきました。」 それを出発点とし、空間設計がスタート。スタッフとお客様とのコミュニケーションの密度や温度感を重視した結果、空間に温かみが必要だと考え、木材を選んでいきました。「サラダをイメージしたグリーンとの相性を一番に考え、チェリー材を選びました。」 チェリー材は、緑の美しさを引き立たせる役割を担いつつ、温かみと深みのある色合わせや上質な質感で、居心地のよい空間を演出しています。
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温かみがあり上品なこの空間には、さまざまな細かなこだわりが詰められています。「壁面と天井には単板のチェリー材を使用しています。これにより粗密を作ることができ、客席はお客様が包み込まれるようなやすらげる空間に仕上げています。」 という言葉通り、店内にはいつも心地よい時間が流れています。さらに、「セラミックタイルとチェリー材だけでは、色味と質感のトーンが重くなってしまうので、色味をつなぐ役割としてステンレスを取り入れています。」 と、木と異素材の組み合わせにもこだわり抜くことで、店舗の目指す理想の雰囲気を実現しています。
チェリーの淡い赤みが美しいカウンター。ここには無垢のリブ材が使用され、タイルの積層感に負けないほど連続させることで、サラダを作るスタッフが活き活きとして見えるように設計されています。さらに、「木材の仕上げにもこだわりました。オイルで質感を出しつつ、さらにウレタン塗装でコーティングすることによって、質感や美しさを維持できるようにしています。」 このような丁寧な仕上げにより、昼間の美しさはもちろん、夜になれば外からグリーンのタイルとチェリーの木材の温かみがより際立つ理想の空間が完成。「いつも仕事帰りに立ち寄っていただけるお客様から、ここは落ち着くといった声をいただきます。」(株式会社 CRISP 代表)お客様の心を癒し、ファンが生まれる空間になっています。
桃仙閣 東京
使用樹種:ウォルナット
「上質でいて、昔からあったような雰囲気のお店」。それが、六本木の中国料理レストラン『桃仙閣 東京』のコンセプト。「創業50年以上にもなる島根の老舗中国料理店『桃仙閣』の東京店として、まるでその空気をそのまま東京に移したような、お客様が落ち着ける空間を目指しました。」 お話を伺った『桃仙閣 東京』オーナーの言葉通り、カウンターや壁、家具などの木材はすべてウォルナットで統一されており、その深い暗褐色の色合いが間接照明の心地よい灯りに照らされて心やすらぐ空間をつくり出しています。また、デザインは中国北部の伝統的家屋「四合院(しごういん)」から発想。「木のみならず、あえてコンクリートブロックや石、タイルなどの異素材を組み合わせることで、ほどよい変化や緊張感を与え、やさしさだけではない気品を感じられる空間にしました。」 懐かしくもあり洗練された上質さも感じる、木の魅力が最大限に引き出されたレストランです。
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店内で使用されている木材は、無垢材やオイル塗装の素材。その理由は、「木が照明の光を反射しすぎないようにするためです。木の表面に塗膜を張る塗装はメンテナンスがしやすくなるという利点がある一方、ツヤツヤとした光沢を放ちます。ここではそういった木材を使わず、ウォルナットの突板を使いつつも表面は光沢が出過ぎない素材を使用。反射を抑え、より落ち着いた空間を実現しています。」 このような美しさの追求はもちろん、触れた時の心地よさまで重視。無垢材やオイル塗装の木材を使用することで、肌触りまで楽しめるように計算されています。
各所に置かれているのは、中国や韓国、日本の貴重なアンティークの美術品や絵画。「本物にこだわりました。偽物がひとつでもあると空間に馴染まない。」 と語られる選び抜かれた品々が、ウォルナットの醸し出す重厚な雰囲気と調和して、歴史や文化まで感じられる奥深い空間を演出しています。また、木やコンクリートブロック、石などの素材は、どれも経年変化を楽しめるものを選定。「オープンして数年が経ちましたが、汚れや傷なども味になってきて、変わらず愛着が持てています。」 時の流れを美しく刻む店内は、都会の喧騒を忘れさせる上質なひとときを生み出します。