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性加害者の親権申し立ても可能な「ザル法」の成立をなぜ急ぐ現行法でも「共同親権」は選べるのに...DV加害者の武器となりリスクが増えるだけの改正案はいったい誰得なのか

元配偶者が反対すれば、子どもの体育や通塾も中止に?

教育機関や医療機関も大きな影響を受ける。共同親権となると、例えば「学校の体育でプールに入る」などの日常行為について、監護親(同居して育児をしている親)と別居親の両方が親権を行使できるからだ。

母親が「今日は体育の授業でプールに入っていいよ」とプールカードにサインをして子どもを学校に送り出したあと、離婚した父親が「うちの子をプールに入れないでくれ」と学校に電話すれば、その子はプールに入れない。法務省の見解では後出しの決定が優先されることになっている。

このような混乱が、学童、習い事、修学旅行、歯の矯正、任意のワクチン接種などさまざまな場面で起こる可能性がある。別居親の許可がとれず、ひとりだけ修学旅行にいけないようなことになるのか? 枝野議員のこの質問に、法務省は明確には答えられなかった。

「共同親権」に関する超党派勉強会の初会合。枝野幸男議員、野田聖子議員ら=2024年2月9日、国会内
写真=時事通信フォト
「共同親権」に関する超党派勉強会の初会合。枝野幸男議員、野田聖子議員ら=2024年2月9日、国会内

面会禁止の父が別居の娘の心臓手術を不服として病院に勝訴

実際に、別居親が子の心臓手術について事後の訴えを起こした例がある。2022年11月の大津地裁判決だ。当時「娘への手術、面会禁止された父親の同意なしは違法」と報じられた。家裁に面会を禁止されている父親が、3歳の娘の手術について事前説明や同意がなかったとして滋賀医科大に慰謝料を求め、地裁で勝った。

面会禁止ということは虐待やDVなど相応の理由があったのだろう。悲しいことだが、子どもの命や健康より、自分のプライドや配偶者への嫌がらせを優先させる人間もいる。

判例がある以上、共同親権が導入されれば、リスクを恐れて医療機関や教育機関が萎縮し、父母両方のサインのない子どもへの医療行為や教育を断る、という事態も考えられる。不利益を受けるのは子どもだ。

また、実務・運用面はどうか?

保育園や学校、学習塾やスポーツクラブ、病院やクリニック等が、トラブル回避のために、すべての子どもについて、血のつながる父母と同居か、シングル家庭か、ステップファミリーかなどを把握するのだろうか。証明には戸籍謄本が必要かもしれない。これが差別やいじめの原因にならないといいきれるか。

これらの個人情報はきわめて機微なものだ。園や学校や病院といった子どもと関わる組織や機関は、書面の変更、情報セキュリティの強化、場合によってはシステム改修などを求められそうだ。無責任な法案による負担増は、教育・保育・医療で働く現場の人たちに押しつけられる。

掲載: PRESIDENT WOMAN Online

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