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治療中の部下への適切な声がけは当事者が語る、ほとんどの人が知らない「共働き不妊治療」のお金以外の大問題

不妊治療中の部下に聞かないでほしいこと

不妊退職を防ぐためには、まず不妊治療に対する理解が広まることが求められます。

サボっているわけでも、仕事に対する責任感がないわけでもなく、治療のためにやむなく休まなければならないことも多い、ということ。治療法によっては、服薬や注射の副作用で倦怠感や吐き気などの症状が出る人もいること。そして、治療は時に長期間にわたること。

こうしたことは、女性であっても不妊治療の経験がなければほとんどの場合、詳しく知る機会がありません。

よく「不妊治療をしている人に対して、どんな声がけをしたらいいのでしょうか」とご質問をいただくのですが、もし部下から「不妊治療をしています」と相談があったなら、まずは、ただ話を聴くだけでも、十分に応援につながります。さらに上記のような特性を理解したうえで「応援しているよ。なにかあったら相談してね」と声をかけるなど、話せる場所があることを伝えていただけたら、どれほど心理的負担が軽くなることか、と思います。反対に絶対に訊かないでほしいことは、「治療の結果はどうだった?」といった質問。本人から報告がない限り、治療内容や結果に関しては、そっと見守るというスタンスがありがたいです。

「不妊治療は特別ではない」という認識が広く浸透することに加え、治療を受けやすい就業環境の整備も重要なポイントです。

たとえば、できることなら1時間単位で休暇がとれるようになると、ぐんと通院しやすくなります。必ずしも新しい制度を設ける必要があるわけではなく、すでに育児中、介護中の社員に向けた制度があるなら、そこに「不妊治療中の人も使える」制度であると付け加えるだけでもすばらしい一歩です。不妊治療も、育児や介護と同じようにサポートしますよ、という会社からのメッセージがあれば、より当事者の声も集まりやすくなるはずです。

働きながらの不妊治療は大変な反面、経験者の多くは、仕事があるからこそ、治療のつらさを忘れる時間も持てて、バランスを保てたと話します。柔軟な働き方を推進させていくことは、不妊治療はもちろん、育児や介護、さまざまなライフステージの社員にとってもプラスになるでしょう。

両立に悩んだときは、カウンセリングの活用を

今、不妊治療と仕事との間で板挟みになっている方には、不安を吐き出す場所を持つことをおすすめしたいと思います。日本人は相談下手な国民性ですが、問題をひとりで抱え込んでしまうのは決して得策ではありません。ぜひ、メンタルケアを上手に利用してみてください。専門の不妊相談窓口を設けている自治体もありますし、また私たちFineでは不妊を経験したピア・カウンセラーが相談を受け付けています。

カウンセラーに話をしてみる。「これが課題で解決したいんです」などという、まとまった考えなんてなくても大丈夫。心や頭の中にあるものを、ぽつんぽつんと口にしてみて、それを第三者にきいてもらうこと。これだけでも、びっくりするほど気持ちがラクになることは多いものです。さらにプロの視点が入ることで、解決策も見つけやすくなります。

「私が我慢するしかない」「これ以上迷惑をかけられない」と、心の痛みにふたをしないでほしい。メンタルケアのルートを持つことがより一般的になってくると、不妊治療における精神的な負担もかなり軽減されていくのではないかと思います。

構成=浦上藍子

松本 亜樹子(まつもと・あきこ)
NPO法人Fine理事長

一般社団法人日本支援対話学会理事。ビジネスコーチ、企業研修講師、フリーアナウンサーとして幅広く活動。自身の不妊治療の体験から、不妊当事者をサポートするNPO法人Fineを立ち上げる。著書に『不妊治療のやめどき』など。

掲載: PRESIDENT WOMAN Online

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