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音楽が売れない時代に"100万枚"を売るには? ――ワーナーミュージック・ジャパン 鈴木竜馬さん

監督はするけれど放任

【原田】上司としての竜馬さんは、どうやって部下を育成していますか? 個性が求められるプロデューサーを、どうやって育てるんでしょうか?

【鈴木】ワーナーミュージックという会社は、ほかの大手レコード会社に比べると小さくて、船に例えるとクルーザーくらいの規模です。巨大軍艦や豪華客船に比べると、機動力は高いし判断も早い。その中で、それぞれのプロデューサーは、言ってみればモーターボートの船長です。大きな船が寄港できない、小さな港、マイナーな港にも行ける。行き先は船長がそれぞれ決めればいいんです。僕は、監督はしているけど放任ですね。最初にセブ島に行くと言っていたのに、間違えてグアム島に行こうとしていれば止めますが(笑)、そんな程度。「あるアーティストの作品を、どうしたらより多くの人に届けられるのか」ということに、方程式はありません。手取り足取り教えても育ちません。それぞれが自分で考え、マーケティングするしかないんです。

【原田】unBORDEのスタッフは、「ダメそうなやつを集めた」というお話でした。

【鈴木】スタッフ8人のうち2人が、降格人事の経験者なんですよ。普通、降格経験のある会社員なんて、なかなかないですよね(笑)。まんべんなく平均的にできる人ではなく、バネがある人ばかりです。例えば、経費精算は全くできないけど、新人の音を聞いて目利きをする力はすごい、とか、特定のアーティストは担当しないけど、全体のバランスをとるのがうまい人もいます。

【原田】きゃりーぱみゅぱみゅさんの担当プロデューサーは女性とのことですが、プロデューサーには女性も多いのでしょうか?

【鈴木】多いですね。Superflyの担当は、子供が2人いる女性です。男性を否定するわけではないですが、この仕事は女性がすごく活躍できると思います。男性は物事を「出世につながるか」などの損得勘定で捉えがちなところがありますが、女性はひたすら、「自分の担当するアーティストをどう世の中に届けるか」を考えることに、おもしろさを感じている人が多いように思います。もっと増えてほしいですね。

しかくインタビューを終えて
竜馬さん、ありがとうございました。コアな100万人に深く届く才能を"野生の勘と経験"で見抜き、マスに振り向いてもらう戦略を"ロジカルに広げる"手腕を尊敬しています。また、「お酒は子供や老人は飲まないけど、音楽は全年齢が対象」という業界の俯瞰も印象的でした。"プロデューサー竜馬"を人工知能にしたいとおっしゃっていたので、読者の皆様、unBORDEの今後にご期待ください。竜馬さん、これからも教室の隅で「かっこいいな」と思えるものを待っている人たちの、ハートのど真ん中に投げ込んでくださいね。(原田博植)
原田博植(はらだ・ひろうえ)
株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 アナリスト。2012年に株式会社リクルートへ入社。人材事業(リクナビNEXT・リクルートエージェント)、販促事業(じゃらん・ホットペッパー グルメ・ホットペッパービューティー)、EC事業(ポンパレモール)にてデータベース改良とアルゴリズム開発を歴任。2013年日本のデータサイエンス技術書の草分け「データサイエンティスト養成読本」執筆。2014年業界団体「丸の内アナリティクス」を立ち上げ主宰。2015年データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー受賞。早稲田大学創造理工学部招聘教授。

構成=大井明子 撮影=岡村隆広

掲載: PRESIDENT Online

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