共同研究
足が速くなるダンス
公益社団法人日本ストリートダンススタジオ協会では、名古屋学院大学リハビリテーション学部の佐藤菜穂子准教授と「足が速くなるダンス」の共同開発を行っています。
この企画の実施に至る社会的な背景と、私たちの目標
児童生徒の運動不足が問題視されて久しいですが、文部科学白書で指摘されている通り、子どもたちの体力は目標値とされる昭和60年頃のピーク時に比べ、依然として低い状態にあります。運動をする子どもと、そうでない子どもの二極化がみられる状況も、ここ数年あまり変化がみられていません。運動が嫌いな子どもたちに対して、「運動は楽しいからやってみよう!」と声をかけたとしても、自分自身で楽しそうだと感じなければ、積極的には運動にチャレンジしようと思わないのではないかと思います。
そこで、児童生徒に人気のある「リズムダンス」を活用し、足が速くなる要素が詰まったダンスの練習に前向きに取り組むことにより、「少し踊れるようになった!」「速く走れるようになった!」といった小さな成功体験をきっかけに、「運動が楽しい」「体育が楽しい」と感じることが出来れば、運動を積極的に行うようになるような児童生徒を少しずつでも増やせるのではないかと思っています。
今後はこの取り組みを全国の学校に広め、全国の児童生徒の運動への行動変容を起こす「きっかけ」にしてゆけたらと考えています。
「足が速くなるダンス」の要素
速く走れるようになるためには、3つのことが重要になります。
- 1. ピッチ(足の回転数)を上げる
- 2. 歩幅を上げる
- 3. 安定した姿勢を保持する
速く走るためのトレーニングとして、一般的には、「もも上げ」などの単純な動作の繰り返しや、走り方・走る姿勢を「言葉で指導」されることが多いです。しかし、小学生にとって単純な動作の繰り返しはおもしろくありませんし、言葉で説明されるのではなく、何かを模倣して動くことの方が分かりやすく、自然と動作が身につきます。
「足が速くなるダンス」では、足が速くなるための1〜3のトレーニング要素を含んだ振り付けを作成しました。ダンスは音楽に合わせて仲間と同じ動きをするため、「楽しんで」走る練習ができることが最も大きな特徴です。音楽に合わせて、楽しみながら、自然と1〜3のポイントを身につけることができます。また、一定のリズムに合わせて振り付けを踊ることによって、走ることに必要なリズム感も身につきます。
子どもの発育発達の側面から考えても、ダンスには大きなメリットがあります。子どもの成長には、年代によって成長する部分に差があることが分かっています(スキャモンの発育発達曲線)。生まれてから小学生にかけては、バランス感覚・リズム感・敏捷性などの「神経系」が発達していきますので、単純な動作の繰り返しではなく、多様な動きを多く実践することが「神経系」の発達には重要であるとされています。ダンスは、多様な動きを振り付けから実践することができ、また同時にリズム感も養うことができるため、「神経系」の発達のための運動として、非常に有用であると考えられます。この点からも、ダンスを取り入れたトレーニングは、小学生のうちに積極的に取り組む必要があると考えられます。
ジャマイカ大使館との足が速くなるダンスのコラボレーションについて
[画像:ジャマイカ大使館との足が速くなるダンスのコラボレーション]
本プログラムは、国際展開の一環として、在日ジャマイカ大使館との連携を進めております。
2025年10月4日(土)、大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオン「リボーンステージ」で開催された「Hello! おもてなしジュニア」プログラム内において、ジャマイカ大使館からショーナ・ケイ・リチャーズ駐日ジャマイカ大使をお迎えし、"世界最速級"バージョンの「足が速くなるダンス(RUN BOOST DANCE)ジャマイカコラボ版」を日本国内で初披露いたしました。
ジャマイカは、ウサイン・ボルト選手をはじめ、数多くの世界的スプリンターを輩出してきた「スプリント王国」として知られています。その背景には、音楽・リズム・文化が一体となった"走ることを楽しむ"精神があります。本プログラムでは、そうしたジャマイカのスプリント文化と、NSSAが培ってきた身体動作改善の理論を融合。子どもたちが自然とリズムに乗りながら、走る力を高めることができる新しい教育スタイルを体現しました。
当日は、レゲエのリズムに合わせて子どもたちとリチャーズ大使が一緒に踊ったり、ボブ・マーリーの名曲「One Love」を歌ったりと、会場全体が笑顔に包まれました。「走る楽しさ」「国際理解」「多文化共創」を掛け合わせた新たな学びの形として、多くの観客から大きな拍手が寄せられました。
NSSAは、今回のコラボレーションを契機に、"速さを超えたつながり"をテーマに、全国の学校・地域へこのプログラムを広げてまいります。
ジャマイカ大使館とのコラボレーション
足が速くなるダンス(ベーシックバージョン)
「Run Boost Dance ×ばつ Jamaica」
企業の皆さまとのコラボレーションによる「足が速くなるダンス」の振り付け
SOMPOダンスプロジェクトの一環として、「足が速くなるダンス」の授業実践用の教員向け研修会を全国で開催しております。東京会場での実施の際には100名を超える教員の皆さまにご参加いただきました。
教員研修会に参加した先生のコメント
東京都江戸川区立上小岩小学校
主幹教諭 飯森雅人先生
ここ数年、リズムダンスが広く体育の授業で行われるようになり、私自身も子供達と一緒にダンスに取り組むことが多くなりました。これまで自覚がなかったのですが、自分にリズム感が全くないということを思い知った数年間でもありました。そんな時、ダンスの研修会が開催されることを知り、参加をさせて頂きました。
参加して一番感じたことは、気が付けば笑顔になっているということでした。「難しい〜」と思うこともありましたが、それでも笑顔。やはりリズムに合わせて体を動かすということは楽しいことなのだと改めて感じた時間でした。貴重な機会を頂き感謝しています。ありがとうございました。
足が速くなるダンスは曲もリズムを取りやすく、子供達も楽しく取り組めると感じました。陸上運動につながる予備的な動きも含まれているため、運動会だけでなく、陸上運動の授業前に行う準備運動としても有効だと感じました。
「足が速くなるダンス」の学校授業の様子などがメディアに取り上げられました
読売新聞 北海道版
2019年4月19日掲載
北海道テレビ(HTB) イチオシ!!
2019年4月18日放送
北海道放送(HBC) 今日ドキッ!
2019年4月17日放送
あいテレビ(itv) Nスタえひめ
2019年8月1日放送
上毛新聞(群馬県)
2019年8月8日掲載
毎日新聞
2019年11月16日掲載
毎日新聞
近畿、中国、四国、北陸、九州版
2019年6月1日朝刊
毎日放送(MBS) ミント!
2019年5月31日放送
毎日小学生新聞
2019年6月27日
毎日新聞(東京版)朝刊
2019年8月1日掲載
日本テレビ スッキリ
2019年8月8日放送
さくらんぼテレビ Live News
2019年8月31日放送
TNC テレビ西日本
ももち浜S特報ライブ
2019年9月5日放送
RKB毎日放送
今日感ニュース
2019年9月5日放送
高知さんさんテレビ(KSS)
プライムこうち
2019年9月4日放送
日本放送協会 高知支局(NHK)
こうちいちばん
2019年9月4日放送
高知放送(RKC)
こうちeye
2019年9月4日放送
福岡放送(FBS)
めんたいワイド
2019年9月4日放送
広島テレビ(HTV)
テレビ派
2019年9月6日放送
産経新聞(関西版)夕刊
2019年10月2日掲載
読売新聞(高知版)朝刊
2019年9月11日掲載
九州朝日放送(KBC)
シリタカ!
2019年9月5日放送
テレビ高知(KUTV)
イブニングKOCHI
2019年9月4日放送
朝日新聞 朝刊(愛知版)
2019年10月13日掲載
静岡第一テレビ
news everyしずおか
2019年10月16日放送
南日本新聞
2019年10月30日 朝刊掲載
室蘭民報
2019年11月3日
茨城新聞
2019年11月6日
静岡新聞
2019年11月10日
福井新聞
2019年11月10日
河北新報
2019年11月17日
週刊 さんいん学聞
2019年11月20日
徳島新聞
2019年12月8日
毎日新聞web版
2020年4月11日掲載
朝日新聞 朝刊
2020年5月10日掲載
朝日小学生新聞
2020年5月12日掲載
TBSテレビ あさチャン!
2020年11月12日放送
損保ジャパン株式会社 ✕ 大阪ガス株式会社によるコラボレーションプロジェクト
北京オリンピックの陸上のメダリストである
大阪ガス所属の朝原宣治氏監修の
「足が速くなるダンス with NOBY」ができました!
×ばつ日本ストリートダンススタジオ協会によるコラボレーションプロジェクト
この取り組みでは、足を速くすることと同時に、大阪の夏の風物詩でもある「河内音頭」への関心を高めることも目的として実施しました。同校にて児童66名にアンケートをとったところ、83%の児童が河内音頭を実際に踊ったことがないものの、足が速くなるダンス河内音頭バージョンを踊ったことにより、53%の児童が「河内音頭への関心が増した」と回答しました。
「足が速くなるダンス」の実践による走力等の変化についての測定
2022年3月に東京都瑞穂町立瑞穂第5小学校の3年生で、足が速くなるダンスの授業を行い、このダンスの前後で50メートルを走り、タイムに変化が出るかどかについて測定を行いました。
50メートル走の測定日
- 1回目 2月17日
- 2回目 3月15日
ダンスレッスン初回以降は2回目の50メートル走の測定までの間、体育の授業前に準備運動の代わりとして継続的にこのダンスを実施しています。前後比較が可能な39名の結果について記載します。
50メートル走は全体平均で0.6秒のタイムの向上が見られました。 0.6秒の差は、50メートル走で考えるとゴール地点で3メートル近く前方を走っている ことになります。
39名中、37名のタイムが速く なっており、一番タイムが伸びた児童は1.38秒速くなりました。
| 1回目平均 | 10.3(±0.84) |
|---|---|
| 2回目平均 | 9.7(±0.77) |
| タイム差 | -0.6(±0.33) |
学校の先生からのコメント
東京都瑞穂町立瑞穂第五小学校
岩井勇作 先生のコメント
足が速くなるダンスに取り組んで
今回「足が速くなるダンス」に取り組ませてもらい、一番良かったと思うことは、子供たちが楽しみながら、進んで体を動かせたことです。
子供たちの足を速くしようと考えると、つい形式的なトレーニングになってしまいがちだと思います。しかしこのダンスでは、子供たちから「もう一回踊りたい!」や「今度走る時が楽しみ!」など、とても前向きな声があがり、進んで体を動かすことができていました。
その結果、大半の子が走ることに自信をもったり、向上心をもったりすることができました。ダンスを教えてくれた先生方に感謝の気持ちでいっぱいです。ご多用の中、本当にありがとうございました。
大阪市立柏里小学校
津曲 純 校長先生のコメント
足が速くなるダンスの授業に取り組み、タイムが伸びた児童が多くいたこともさることながら、「速く走るためには何をすることが必要なのか?」 と考え実践する経験をしたことで、自分の体に目を向けるとともに、運動に対してどうしたらより上手くできるかを自ら考える習慣がついてきています。
また、子ども達がダンスを通して体を動かすことの楽しさを味わったこと、心をひらいて声を出しながらみんなと積極的にダンスをしたこと、体育学習の時間だけでなく家庭でもダンスに取り組んだことなどから、何ごとに対しても気持ちや行動が、足が速くなるダンスの実施前より前向きになってきていると感じます。
今後は、体育学習の他の領域の準備運動としても活用するなど、「足が速くなるダンス」を継続していきたいと思います。
大阪府摂津市立味舌小学校
前馬晋策 校長先生のコメント
走るということは誰でも楽しめることです。また、速く走ることは児童にとっては憧れです。走ることを「ずっと」楽しむためには、憧れが実現するという体験が必要です。約一か月の取組みで、本校5年生児童の約70%の50メートル走のタイムが速くなり、残念ながらタイムが速くならなかった児童も走るフォームが明らかに良くなっています。子どもたちがダンスを楽しみながら走ることが大好きになり、生涯にわたってスポーツを楽しめるようになってくれることが期待できます。足が速くなるダンスは、夢が育めるダンスです。
大阪府摂津市立味舌小学校
池田優生 先生(2年生の担任)のコメント
足が速くなるダンスを約2か月継続して行うことで、たくさんの児童の50メートル走のタイムが速くなりました。残念ながら、タイムが伸びなかった児童もいましたが、走り方は格段と良くなりました。
体育の時間だけでなく、朝学習の時間や休み時間に足が速くなるダンスの音楽を教室で流し、私自身も児童とともに踊りました。音楽を流すだけで、クラスが一つとなり、笑顔で踊ることができました。その際、「もう少し手を大きく振った方がいいよ!」、「もう少し、指先まで伸ばした方がいいよ!」など、児童同士のコミュニケーションも増え、クラスの雰囲気も良くなりました。
足が速くなることは、体を動かすことへの魅力を感じることに繋がると私は考えています。今後の体育の時間でも足が速くなるダンスを取り入れていきます。ぜひ、他校でも「足が速くなるダンス」を体験していただきたいです。
認定こども園KENTOひまわり園
木下さひ子園長のコメント
12月の初旬から約2か月間「足が速くなるダンス」を教えていただきました。
本格的なダンスを習うのは子どもたちにとって初めての経験です。担任の先生も一緒に取り組みましたが、大人でもなかなか難しい振り付けを子どもたちは、自然に楽しみながら、ダンスを習得していきました。教えていただく時間以外にも、音楽を流してダンスを踊り、テンポに合わせて1つ1つの振りや動作が身に付くように繰り返し行いました。
子どもたちは、30mの距離を走り、タイムを測定しました。取り組みを行った時期が寒い冬に入る季節であったため、気温や天候の影響もあり、計測結果に影響があるのだろうと思いましたが、平均タイムがクラスによっては少し縮まったことには驚きました。
音楽に合わせてダンスを踊ること、リズム感を養うことが運動神経に大きく影響し、足が速くなるダンスの振り付けの動きを繰り返し行うことで、足が速くなることに繋がると実感いたしました。
「足が速くなるダンス」世田谷区教育委員会主催の教育研修会
| 会場 | 世田谷区立桜小学校 |
|---|---|
| 実践日 | 2020年10月27日 |
世田谷区教育委員会
渡部 理枝 教育長のコメント
豊かな人生を送るために必要な基礎体力をはぐくむためには、「取り組んで楽しいこと」や「やり切った達成感」などが必要になります。「足が速くなるダンス」は、まさにこの要素を充分に含んでいると感じました。
子どもを教える先生方がこのダンスの魅力を知ることが大切だと考え、講師の先生に来ていただいて教員研修を行いました。
インストラクターの先生の明るく元気な動きとポジティブな言葉かけによって、はじめは控えめだった先生方の気持ちが次第に解放されていくようでした。子どもたちに必要なことは、このように心が解放された中で周りを気にせず、自分に没頭する経験です。子どもたちが楽しい雰囲気の中で体を動かす喜びを感じ、知らず知らずのうちに、滑らかに体が動くようになったと実感することができることがこのダンスの特色だと考えています。
いつの間にか変化した自分を感じるこの「足が速くなるダンス」を、楽しみながら踊る子どもたちに会える日を楽しみにしています。
「足が速くなるダンス」の共同研究・監修者
佐藤 菜穂子(さとう なほこ)
名古屋学院大学リハビリテーション学部准教授、博士(教育学)、理学療法士
自身もヒップホップ歴18年のダンサーであり、ヒップホップダンスの動作分析を専門とする。ヒップホップダンスの練習のコツに関する研究や、健康への効果に関する研究を行う。小中学校でのダンス授業の指導に関するアドバイスや、高齢者の体力向上プログラムの作成など、ヒップホップダンスの特性を生かした取り組みを進めている。