株式会社HYAKUSHO 湯川 致光さんにインタビュー

2025年03月27日

  • キャッスルタウン

香川県を拠点に、「新しい公共を作る」を掲げ、行政や民間組織とスクラムを組みながら、ローカルに様々な関わり方でコミットしている湯川 致光(ゆかわ よしあき)さん。
湯川さんが起業することになった一つのきっかけは、ここ丸亀市にあった。
湯川さんのこれまでのことや事業のこと、そして丸亀について詳しく伺ってみた。

本日はお時間いただきありがとうございます!まずは自己紹介をお願いします。

株式会社HYAKUSHOの湯川 致光(ゆかわ よしあき)です。よろしくお願いします。エリアマネジメント事業や官民連携事業、公共経営事業を行なっています。
エリアマネジメント事業の詳細としては、現在、丸亀市から都市再生推進法人の認定を受けて、まちなかの再生に取り組んでいます。他のまちづくり会社と連携し、空き家マップの作成、空き家を活用したイベント、関係人口の創出、まちなかの情報発信などを仕掛けています。

ご説明ありがとうございます。中々、一般の人には馴染みのないかもしれないお仕事ですが、これからの街が盛り上がっていくためには、とても必要なお仕事ですね。どのようなキャリアで、湯川さんは現在に至るのですか。

元々は、神奈川県庁で働いていたのですが、妻の実家が香川ということもあり、香川県庁へと転職しました。その後、高松空港株式会社への転職を経て、起業しました。

多様なキャリアを歩まれていますね。起業するに至った原点などお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。

起業の原点は、香川県庁に引っ越し、丸亀市通町の商店街で活動していた「シャッターをあける会」という任意団体の方々と出会ったことです。その団体の方々と、「バルフェスティバル」といったイベントを年2回ほど開催しました。丸亀と姉妹都市である「サンセバスチャン」に立ち飲みカルチャーや美味しいお酒や食事の文化があるのですが、当時はその繋がりの良さをうまく形にでき ていませんでした。繋がりに価値を見つけ、団体として良さを引き出す企画を行い、商店街の賑わい創出などに、ボランティアとして参加していました。そこで、丸亀市と繋がりが生まれ、起業の原点である人のつながりや現場での実践についての経験を得ることができました。

「ボランティア」ということは県庁内で賑わい作りなどの仕事をしていたというわけではないのですか。

そうです(笑)そういった賑わい作りなどに関わる事業を県庁職員としては担当しておらず、単純に自分の興味があるということで、土日や勤務終了後に関わっていました。

そういったボランティアやローカルな活動について、昔から興味があったのですか。

大学院時代に公共政策といったものを専攻することになり、研究テーマは「過疎地域の活性化」で、山奥の山村が持続可能な地域になっていくためには、どうしたら良いのかといったことを研究していました。その研究中に「現場に入る」ということを学びました。そこで、地元や地域に関わって現場に入り込んで活動するということが、「重要だ」と思い、そういったことに積極的に参加するようになりました。

起業するまでに、他にも何か丸亀市で取り組みを行なっていたのですか。

はい。丸亀市で「リノベーションまちづくり」といった取り組みに関わり、築80年ほどのビルを学びの複合施設にする計画や、丸亀市でリノベーションを実践した方々の取り組みをまとめて冊子にしたり、空き家を使ったバーイベントを行なったりしていました。それも全て、ボランティアとして関わっていて、心の底から「丸亀が面白い街になったらいいなあ」と思って、日々いろんな活動をしていました。

ありがとうございます。とても素敵な活動ばかりですね。起業を決意するきっかけは何かあっ たのでしょうか。

実は起業する勇気はなかったんです。ただ、公務員とボランティアの両輪の生活をすることで、自分自身ハードなライフスタイルになっていたので、行政職員辞めて、違う道を探そうと思い、「仕事を辞める」ということを第一に考え、まずは香川県庁を退職することとなりました。そんな中、たまたま知り合いから、ある会社で働かないかとお誘いがあり、副業ができるという条件付きでその会社に勤めることとなりました。なので、当初はサラリーマン生活をしながら、「副業」の範囲内で、今までボランティアでやっていたことを一部仕事として実施したりすることができればと考えていたんです。ただ、本業と副業の折り合いが結局うまくつけることができず、その会社を退職しました。そこから少し考える期間があり、そのときふと香川県庁時代に退職を伝えた上司にポロっと言われた「起業するのかと思ってた」という一言を思い出し、「あ、起業もありか」となり、起業を進めることになりました。

今でも、自信満々に起業をしてゴリゴリ進めていこうと意思というよりかは、そこに課題があるから自分が取り組み、その手段の一つに起業があったから、そう動いているというような感じです。公務員でのキャリアが長かったというのもあり、ビジネスに対しての向き合い方が、「どう稼ぐか」よりも、「これをすることの社会的意義とは」に注力することが自分の中では大きいんです。父親が哲学者だったということもあって、「どう生きるか」という問いを常に浴びていたので、それも今の生き方の影響にあって、自分に合った生き方がたまたま「起業」に最終的に繋がったという感じでした。

ありがとうございます。起業に至るまで、様々な考えがあったんですね。「やりたい」が爆発して起業に至ったというわけではないんですかね。

そうですね。条件や周りの環境を俯瞰していったときに「自分が起業する」ことがいいのかもしれないと思って、起業を選びました。地域においての役割を意識して、自分にできることを定義して、ミッションを持って仕事をする。そうすることで、自信も思いも強くなって、「みんなのため」にもなる。そういった流れが整理できると、パフォーマンスが発揮できるタイプだと自覚しているので、そういった意思決定をしました。

なるほど。そこから様々な事業に取り組まれていったという感じですね。これから湯川さんが丸亀市で行なっていきたいことはどういったことなんでしょうか。

みなと公園が日常的に使われて、居心地の良い空間になれるように行政と協力して実施することができればいいなと思うし、丸亀には離島もあるので、島と内陸部の接続といった動きもできたらなと考えています。丸亀市の島、本島に物件も購入したので、その物件を宿泊施設やコワーキングスペースのような場所にして、一つの拠点を作ることができればなと考えています。
行政がやる事業とまちなかで活動するプレイヤーの事業がいい方向にマッチングする仕組みづくりも行いたいなと思っています。

ありがとうございます。では、次にそんな湯川さんの考える「丸亀のいいところ」はどんなところでしょうか。

個人的に丸亀は「パーカーとスニーカーで行きたい街」だなと思っています。街に合う服装や温度感というのはあるなと思っていて、例えば銀座に行くならローファーにロングコートの方がいいみたいな...。街には街の顔があるなあと思っています。そんな中、丸亀全体のもつ空気感として、肩肘はらなくていいあったかさもありつつ、閉鎖的な空気はなくて、いい意味での無関心感がある街だなと思っています。

すごくいい表現ですね。「パーカーとスニーカーで行きたい街」という表現。
最後に丸亀市に期待することをお聞かせください。

「こういう社会がいい」「こういう未来がいいな」といったビジョンを語る場が、今こそ必要なんじゃないかなと思います。こういった思いや考えを全ての人に持って欲しいなと思っています。机上の空論や偽善といった言葉で片付けず、純粋に「こうあったらいいよね」といった空想を思って、誰かにいうことが大事なんだなと思います。そういった機会が少ないから、ズレが生じたり、壁が生まれたりするから、少しでもそんな機会があるといいのかなと思います。

株式会社HYAKUSHO(丸亀市都市再生推進法人)

香川県丸亀市通町52番地7
代表note:https://note.com/hyakusho0111

川致光

東北大学公共政策大学院修了後、神奈川県庁、香川県庁、高松空港株式会社を経て、株式会社HYAKUSHOを創業。瀬戸内海で鯖の養殖事業や水産物の卸売事業を行う「海を休ませる」水産商社・株式会社塩飽Fisheires取締役。趣味は、飲み会。好きな魚料理は、鰆のレアカツ。