産業医
産業医とは、労働者の健康を保持するため労働者の作業環境や作業管理、健康管理に関して専門的立場から助言・指導を行う医師のことを示します。産業医は労働安全衛生法に基づき常時50人以上の労働者を使用する事業場において選任する事業者の義務があります。
産業保健スタッフ
事業場内の産業保健スタッフとは産業医等、衛生管理者等、保健師等あるいは心の健康づくり専門スタッフなどを指し、人事労務管理スタッフや事業場外資源などと連携して、メンタルヘルスケアに取り組みます。産業医と衛生管理者は労働者数50人以上の事業場で選任が義務付けられています。保健師等は選任義務はありませんが、身近な専門職として重要です。
産褥期うつ病(産後うつ病)
産褥(さんじょく)期とは分娩後、母体が妊娠前の状態に回復するまでの期間をさし、通常6〜8週までの期間をいいます。この期間にはうつ病を発症しやすく、「産後うつ病」とも呼ばれます。急激な身体的変化、ホルモンの変化のみならず育児といった心理社会的変化も同時に起こるため、時に自殺や無理心中などのおそれもありますので注意を要します。育児を抱え込ませない社会的サポートが重要です。
三次予防
すでに発病した後に、治療過程において保健指導やリハビリテーションを行うことにより社会復帰を促したり、再発を防止したりする取り組みのことです。メンタルヘルス不調者の職場復帰支援も三次予防にあたります。
【参考】
一次予防、
二次予防
仕事のストレス判定図
仕事のストレス判定図は、ストレスチェックで使用する職業性ストレス簡易調査票の一部の項目(12項目)を利用して集団分析を行うものです。仕事の量的負荷、仕事のコントロール、上司・同僚の支援などの調査結果から、職場ごとの健康リスクを判断することができます。職場環境の改善を通じたストレス対策に役に立ちます。
仕事要求度-コントロールモデル
仕事のストレスを説明する理論の1つです。仕事の要求度(仕事量や責任)が大きく、それに比べて仕事のコントロール(自由度や裁量権)が低い場合にストレスが生じやすいとされています。
嗜癖
ある特定の物質・行動過程・人間関係を、過剰に好む性向をいいます。酒やタバコの物質嗜癖、パチンコやショッピングの過程嗜癖、家族や恋人と生じる関係嗜癖などがあります。
社会的再適応評定尺度
1967年にアメリカのホームズ(Holmes,TH)らが開発したストレス測定法の1つです。ストレス要因の強度を測定するための古い尺度ですが、今でも多方面で引用されています。ライフイベント(生活の出来事)法と呼ばれ、結婚に対するストレス度を50点とし,それを基準に0〜100点の範囲で、ストレスに対して再適応に要するエネルギー量を評価します。
社交不安障害(社会不安障害)
不安とは、明確な対象を持たない恐怖の事を差します。「社交不安障害(social anxiety disorder、SAD)」は、社会や人前で嫌な思いをしたり、他人に辱められたりすることに対する不安が強く、日常生活に障害を及ぼすものです。
守秘義務
医師、保健師、看護師等の医療職は職務を通して他人の秘密を聞いてしまうことがあるので、刑法や身分法が正当な理由なくその秘密を漏らしてはならないことを罰則付きで規定しています。医療職以外でも職場で実施される健康診断に関係した者には、労働安全衛生法が同様に規定しています。なお、個人情報保護法は、生命、身体の保護や公衆衛生の向上等に必要な場合で本人の同意取得が困難なときは、目的外利用や第三者提供を認めています。
昇進うつ病
正式な医学病名ではなく、昇進に伴う環境の変化により誘発されたうつ病をいいます。嫌なストレスがうつ病に結びつきやすいというのはイメージしやすいのですが、一般的には喜ばしいと思われることもうつ病のきっかけとなり得ます。昇進は出世と同時に職場での責任や役割の変化を伴います。
職業性ストレス簡易調査票
職業性ストレス簡易調査票は、職場で簡便に使用できる自己記入式の調査票で、ストレスチェックを行う際に使用されます。仕事のストレス要因、ストレス反応、修飾要因の3つで構成されています。仕事のストレス要因では、仕事の量的負担、質的負担、身体的負担、コントロール、対人関係によるストレスなどが、ストレス反応としては、抑うつ、イライラ感、疲労感、活気、身体愁訴などが評価できます。あらゆる業種の職場で使用でき項目数は57と少なく約10分で回答が可能です。
嘱託産業医
産業医の選任形態のひとつで、専属産業医以外で非常勤で勤務する産業医のことをいいます。
職場環境改善
職場環境とは、職場における化学的・物理的な有害要因のみではなく、職場のストレス、労働条件、休憩室などの設備等の働く人を取り巻く全ての事象を指します。この職場環境を改善することは、労働安全衛生法の目的の一つである「快適な職場環境形成促進」につながります。
職場巡視
職場巡視は、作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態が働く人に有害な影響を及ぼすおそれがないかを確認します。労働安全衛生規則では、衛生管理者には週に1回、産業医には月に1回の実施が義務付けられています。有害な影響を及ぼすおそれがある場合、健康障害を防止するために必要な措置を講じる必要があります。
職場復帰支援プログラム
メンタルヘルス不調による長期休業者の職場復帰は簡単ではなく、再発や離職もなく少なくありません。長期休業者のスムースな職場復帰は本人のみならず企業や職場にとっても重要な課題になっています。しかし、人材確保とスムースな職場復帰を可能にするため、多くの企業で職場復帰支援プログラムが用意されています。主治医と産業医の意見をもとにして、管理監督者、人事労務担当者、産業保健スタッフなどが、職場環境や作業の内容、作業時間などの調整をしたり、健康面のケアをしたりして、職場復帰を総合的に支援するためのものです。
心気症
心身の些細な不調にとらわれ、検査などによっても所見が得られず、医学的な保証によっても納得できず、重大な病気の兆候ではないかと恐れ、執拗に訴える状態です。
神経症
正式な医学診断基準には使われなくなった用語ですが、「不安障害」とほぼ同義語です。
神経伝達物質
神経細胞から他の細胞への情報伝達は、そのほとんどが化学物質により行われており、それを神経伝達物質と呼んでいます。脳内の神経伝達物質は多数ありますが、精神疾患との関連では、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどが注目されています。精神疾患の治療薬は、これらの機能の研究から開発されています。
心身症
体の病気ですが、その発症要因や慢性化にストレスが関与している病気の総称で、病名ではありません。胃・十二指腸潰瘍、過敏性大腸炎、本態性高血圧症、神経性狭心症(狭心症)、過呼吸症候群、気管支喘息、甲状腺機能亢進症、摂食障害、メニエ-ル症候群、更年期障害が代表的なものです。治療は身体疾病の治療、心身相関のメカニズムへの気づき、ストレスへの対応などが中心になります。
身体表現性障害
明らかな身体の病気がないのに、身体の症状が出るのが特徴です。例えば、歯は健康なのに歯が痛む、足腰は問題ないのに立てない、歩けない、声帯には問題ないのに声が出ない、などです。身体の症状を極端に気にして、何か重大な病気に罹ったと思い込む心気症も、このカテゴリーに含まれます。
深夜業
労働関連法では、午後10時から午前5時までの夜間に行われる労働のことをいいます。満18歳未満の年少者を就業させることは禁止されており、妊産婦や、子の養育と家族の介護をする労働者から請求があった場合も深夜業をさせることができません。また、深夜業の従事者に対する割増賃金の支払いが義務付けられています。深夜業従事者の健康診断は6ヶ月ごとに1回実施することとなっており、一般的な労働者よりも安全衛生管理の要件が厳しくなっています。
心理検査
心身の健康状態や認知・思考(受け止め方や考え方など)、行動・性格傾向など、対面するだけでは分かりにくい様々な心理状態・傾向について標準化された手続きで特定の課題を与え、その反応を量的あるいは質的に分析・解釈する手法のことです。心理検査により適切な治療や支援のための情報を得たり、自己理解を深めるきっかけになることもあります。
心理相談員
働く人の心とからだの健康づくりを推進するため、事業者の努力義務として1988年からTHP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)が展開されています。この中で、メンタルヘルスケアについて担当をするのが心理相談員です。特定の研修(ストレスに対する気づきの援助、リラクゼーションの指導など)を受講し、心理相談員となることができます。
心理療法(サイコセラピー)
心理的な問題を抱える患者やクライエントに対して専門家が問題解決のために行う、心理学モデルをベースとした治療方法の一つです。代表的なものとして、精神分析療法、認知行動療法、来談者中心療法などがあります。
CAGE
アルコール依存症を自己判断する簡易質問紙の一つで、4つの質問のみで構成されています。
1)酒量を減らさなければいけないと感じたことがあるのか(Cut down)
2)周囲の人に自分の飲酒について批判されて困ったことがあるのか(Annoyed by criticism)
3)自分の飲酒についてよくないと感じたり、罪悪感をもったことがあるのか(Guilty feeling)
4)朝酒や迎え酒を飲んだことがあるのか(Eye-opener)
という4項目中2項目以上当てはまった場合、アルコール依存症の可能性が高く、専門家への相談を推奨しています。
事業場外資源によるケア
メンタルヘルスケアを行う上で、事業場が抱える問題や求めるサービスに応じて、メンタルヘルスケアに関し専門的な知識を有する各種の事業場外資源を活用することをいいます。労働者が相談内容等を事業場に知られることを望まないような場合にも、事業場外資源を活用することが効果的です。事業場外資源とは事業場外の医療機関や地域保健機関、従業員支援プログラム(EAP)機関、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する産業保健総合支援センター及び地域産業保健センターなどのことを指します。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内産業保健スタッフ等が、労働者や管理監督者に対する支援を行い、具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案、メンタルヘルスに関する個人の健康情報の取り扱い、事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口となること等、心の健康づくり計画の実施にあたり中心的な役割を果たすことです。事業場内産業保健スタッフとは産業医や衛生管理者、保健師、心の健康づくり専門スタッフなどを指します。
事業場内メンタルヘルス推進担当者
産業医等の助言、指導等を得ながら事業場のメンタルヘルスケアの推進の実務を担当する人のことです。
「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において、事業場内メンタルヘルス推進担当者を「選任するよう努める」ことが事業者に求められています。衛生管理者や常勤保健師等が望ましく、人事労務管理スタッフからの選任も考えられます。
自殺企図
自殺とは自ら自分の生命を絶つ行為ですが、首つり、リストカット、大量服薬など様々な手段により、実際に自殺を企てることを自殺企図と言います。うつ病などのメンタルヘルス不調により自殺企図に至ることも多く、適切に医療へつなげる必要があります。
自殺未遂
自殺とは自ら自分の生命を絶つ行為ですが、死に至らなかった場合、自殺未遂といわれます。自殺者は女性より男性が、自殺未遂者は男性より女性が多いとされています。
自傷他害
自傷とは主として自己の生命・身体を害する行為を言い、単に浪費や自己の所有物の損壊などの行為は含みません。他害とは、他人の生命、身体、自由、貞操、名誉、財産等に害を及ぼす場合と決められています。精神障害のために自傷他害の恐れが強く、精神保健指定医二人以上の診断結果にもとづき、都道府県知事の命令によって強制的に入院させることを措置入院といいます。
自助グループ
同じような病気や体験を抱えて悩み苦しんでいる人たち自身やその家族同士が連帯することで、互いに支え合うグループのことです。断酒会やA.A(Alcoholic Anonymousアルコール依存症者匿名協会)などは、その典型例で、アルコール依存症を患う人々の職場復帰・社会復帰の大きな支えとなるものです。家族(遺族)の例としては、犯罪被害者家族の会や、自殺者の家族が支え合う自死遺族のつどいなどがあります。
【参考】
断酒会
自律訓練法
注意の集中、自己暗示の練習により、全身の緊張を解き、心身の状態を自分で上手に調整できるようにした段階的手法で、ストレスの緩和や心身症、神経症などに効果があると言われるリラクゼーション技法の一つです。医療領域他、教育・産業・スポーツなどさまざまな領域で活用されています。
自律神経失調症
明らかな身体の病気がないにも関わらず、自律神経のバランスが崩れていると感じることによる不調を指します。全身倦怠感、めまい、頭痛、動悸などがあります。
【参考】
事例紹介-自律神経失調症-
事例性と疾病性
職場関係者や家族はメンタルヘルスの専門家ではないので、メンタルヘルスに関する問題に取り組む時は、事例性と疾病性との2つに分けて整理することが推奨されています。事例性とは業務を推進するうえで困る具体的事実で、「就業規則を守らない」「仕事の能率が低下している」「同僚とのトラブルが多い」など関係者はその変化にすぐに気がつくことができます。一方、疾病性とは症状や病名などに関することで、「幻聴がある」「統合失調症が疑われる」など専門家が判断する分野です。職場での問題把握の第一歩は、病気の確定(疾病性)以上に、業務上何が問題になって困っているか(事例性)を優先する視点が求められます。
人事労務管理スタッフ
企業の経営資源には、労働力、生産手段及び資本の3つ要素から成り立っています。このうち労働力を対象とする管理活動を人事労務管理と言い、具体的には、雇用管理(採用、人材配置、人事考課)、雇用条件(労働期間や賃金)の管理、人材教育、福利厚生、組合対策などを行うことで、これらの業務を行う人々を人事労務管理スタッフと呼びます。
睡眠教育/睡眠衛生教育
睡眠について正しい知識を持ち、生活習慣を工夫するための教育のこと。職域ではメンタルヘルス教育の一環として実施されることもあります。
睡眠障害
睡眠に関連した多種多様な病気の総称で、大きく分類すると、不眠症・過眠症・睡眠時随伴症があります。
睡眠薬
不眠症状の治療に用いられる薬物です。寝つけない、途中何度も目が覚める、朝早くに目が覚める、深く眠れない、これらを不眠と呼びますが、症状に合わせて処方されます。服用や減量の仕方については、医師に相談し正しく内服する必要があります。「不眠症」の診断がついて初めて処方される薬のため、人に譲ったり、人からもらったりするのはやめましょう。
ストレス関連疾患
心理的・社会的ストレスから生じる病気や、ストレスによって経過が悪くなると考えられる病気をストレス関連疾患と呼びます。胃・十二指腸潰瘍、本態性高血圧症、過換気症候群、片頭痛、心臓神経症、神経症、自律神経失調症その他多くの疾患があります。
ストレスコーピング
「コーピング」は「対処する」「切り抜ける」という意味を持ちます。ストレスコーピングとは、特定のストレスフルな問題や状況に対するストレス対処方法のことで、問題解決型(状況を変化させる、問題を明確にする、別の解決方法を見つけてそれをあわせて評価する)と情動焦点型(問題に対する情動的な反応をコントロールしたり変化させたりする、逃避したり最小化したりする、情動的な苦痛の軽減を目指す)があります。
ストレス脆弱性
その人の生まれ持った素質(先天的な要素)と学習・訓練などによる生まれてからの能力やストレスへの対応力(後天的な要素)などに関連してその人が持っている病気のなりやすさを意味します。
ストレス耐性
ストレスに対する抵抗力のことで、次のような要素があります。 ストレスに気づくか気づかないかという「感知能力」、ストレスを作りやすい性格かどうかという「回避能力」、ストレッサーをなくしたり、弱めたりする「根本の処理能力」、ストレス状態に陥ったとき、そのストレスの意味を良い方向に捉え直すことができる「転換能力」、ストレスそのものの「経験」、ストレスをどのくらいためていられるかという「容量」です。
【参考】
ストレス、
ストレス要因(ストレッサー)、
ストレス反応
ストレスチェック
ストレスに関する質問票(選択回答)を用いて、自分のストレス
がどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査で、労働安全衛生法に基づき50人以上の事業場には実施が義務づけられています(50人未満の事業場については、当分の間、努力義務)。労働者が自分のストレスの状態を知り、「うつ」などのメンタルヘルス不調を未然に防止するために実施されます。また、ストレスチェック結果を一定の集団毎に分析し、その結果に基づいて、職場の環境を改善する集団分析・職場環境改善は、職場におけるストレス要因の低減に資するものであり、実施することが望まれます(ストレスチェックを実施した場合、集団分析・職場環境改善の実施は努力義務になっています)。
ストレス反応
外からの刺激を受けて引き起こされる様々な反応で、抑うつ、不安、職務不満足感などの心理的反応、血圧上昇や心拍数増加などの生理的反応、過食や過飲、喫煙や薬物使用、事故などの行動面での反応があります。
【参考】
ストレス、
ストレス要因(ストレッサー)、
ストレス耐性
ストレスマネジメント
ストレッサーを取り除いたり、ストレスを大きくしないための工夫や、ストレスによって生じている緊張状態やストレス反応の緩和など、ストレス生成のあらゆるプロセスに包括的に働きかけることを言います。
ストレス要因(ストレッサー)
ストレス反応を起こす外部環境からの刺激をストレス要因(ストレッサー)と呼びます。ストレス要因は、物理的ストレス要因(寒冷、騒音等)、化学的ストレス要因(酸素、薬物等)、生物的ストレス要因(炎症、感染等)、心理的社会的ストレス要因(人間関係の葛藤や社会的行動に伴う責任、将来に対する不安等)に分類されます。
【参考】
ストレス、
ストレス反応
、
ストレス耐性
精神科専門医
精神科専門医とは、公益社団法人日本精神神経学会の精神科専門医制度によって精神科医療に関する学識および経験を有するとして認定された医師です。
精神分析
フロイトによって創始された体系的な理論および技法の一つです。人の心は意識的な部分と無意識的な部分の両方から成り立っていると考え、無意識的なものも含めたとらわれに対する気づきを促し、そこから自由になることを目指します。専門的な訓練は必須ですが、主に不安障害や解離性障害、強迫性障害、パーソナリティ障害などの治療の際に用いられる技法の1つとされています。
精神保健指定医
精神保健指定医は、厚生労働大臣が指定する特別の国家資格に準ずる法的資格制度(精神保健福祉法第18条)であり、医学の各分野に学会等が設けている専門医制度とは異なります。その職務は、措置入院や医療保護入院、隔離や身体拘束など行動制限の判定等があります。
精神療法
薬物を用いた薬物療法や身体に物理的に働きかける身体療法などに対し、精神療法は治療者が心理的な手段を用いて患者の心身に働きかける療法です。来談者中心療法、行動をよりよい方向に改善していく行動療法、クライエントの偏ったものの見方を変える認知療法、こころの奥底を分析していく精神分析療法、集団精神療法、自律訓練法、箱庭療法、遊戯療法、森田療法他さまざまな療法があります。
セカンドオピニオン
主治医とは別の医師に意見を聴くこと(第2の意見)をセカンドオピニオンと言います。治療は主治医(かかりつけ医)と患者さんの間でなされます。しかし主治医の判断や方針が必ずしも絶対ではありませんし、治療による生活への影響が大きい場合は、大きな不安が生じるでしょう。セカンドオピニオンによって主治医以外の専門家による情報を得ることが出来ます。結果として、患者さんと医師が協力して医療に関する意思を決定するプロセスの一助になることがあります。
セクハラ
セクシュアルハラスメントを略したもので、法令上、職場のセクシュアルハラスメントは、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること(対価型セクシュアルハラスメント)、または性的な言動が行われることで就業環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること(「環境型セクシュアルハラスメント」)をいいます。男女雇用機会均等法により事業者にその対策が義務付けられています。
積極的傾聴法(アクティブ・リスニング)
心理相談の技法の一つです。聴き手が必要に応じて質問したり言葉を添えるなど、話し手をより深く理解するためのコミュニケーションスキルの1つで、メンタルヘルス対策のなかでも相談しやすい体制づくりとともに、重要視されています。来談者の話を受容し共感しながら聴き、本人の表現する言葉の本当の意味をとらえ、真の問題を理解しようとすることが重要とされます。
摂食障害
強い肥満恐怖からダイエットに走る「拒食症」と、むちゃ食いで特徴づけられる「過食症」。摂食障害にはこの2種類が挙げられ、両方とも女性が圧倒的多数です。拒食症から過食症への移行もよく見られます。
セルフエスティーム
自己肯定感あるいは自尊感情ともいい、自分自身を価値あるものとして尊重する感覚をいいます。基本的な価値を実感することにより、自分自身を信頼し、様々な事柄に前向きに取り組む意欲や満足感につながります。このような自己の尊重は、自分自身だけでなく、周囲の人々のありのままを受け入れる上でも重要となります。
セルフエフィカシー
自己効力感ともいわれ自分が周囲の期待や要請に対して、"十分に対応できている"という確信や自信のことをいいます。自らの意志で、主体的に行動しているという確信のもとに得られる感覚であり、その後の目標設定や自身の行為の結果の見通しに影響を与えます。自己効力感は、目標を達成するための努力を促し、結果的に成功の可能性を高め、自分自身の生き方を肯定的にとらえるためにも重要な要素として位置づけられます。
専属産業医
専属産業医とは本務としての仕事が産業医であり、一つの当該事業場のみに属している者をいいます。労働安全衛生規則により、常時1000人以上の労働者を使用する事業場および一定の有害業務(安衛則第13条第1項第2号に定める業務)に常時500人以上の労働者を従事させる事業場においては、専属産業医の選任が義務付けられています。
双極性障害(躁うつ病)
躁状態とうつ状態を繰り返す精神疾患です。躁状態の程度により大まかに双極I型(顕著な躁状態が出現)、双極II型(軽躁状態が出現)に分類されます。いずれも気分が高揚し開放的で、頭の回転が良くなった感覚を覚え、思い立つと行動に移すのも早いなどの特徴があります。睡眠欲求が減少(寝てる時間が惜しい、寝なくても疲れない)するのも特徴的です。職場では、軽躁状態では仕事の生産性が高まることがありますが、顕著な躁状態では、自尊心も肥大し、周囲と激しい口論をするなどトラブルを起こし、かえって仕事の生産性が落ちます。この時期は乱費、性的逸脱行為も増えやすいです。躁状態のあとのうつ状態では自殺のリスクが高いため、積極的に専門家の治療を受けるべきです。
【さらに詳しく】
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「こころの情報サイト」
早朝覚醒
睡眠障害の一つの症状で、朝早く目覚め、再度眠ることができない状態をいいます。週の半分以上でそのような現象があり、不快を伴う時に症状としてとらえます。特にうつ病では比較的早期からみられる症状でもあります。朝の気分が憂鬱であれば、その可能性があるので注意が必要です。
【参考】
入眠困難、
中途覚醒
措置入院
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第29条に規定されている入院形態で、入院しなければ自傷他害(自殺や他者に危害を加えるなど)の恐れのある事例に対し、2名以上の精神保健指定医の診察結果が一致し、かつ本人の同意が得られない(精神症状による判断力の低下や病識がないなど)、成立する入院です。一番強制力のある入院形態で、警察官通報によるもの(同法第24条)もあります。
【参考】
医療保護入院、
任意入院
ソーシャルサポート
個人を取り巻く有形、無形の社会的支援のことをいいます。特に、家族、友人、上司、同僚、部下など人的支援を意味することが多く、ソーシャルサポートが多くあることがストレス軽減につながると言われています。
ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)
社会適応能力を改善することを目的に行う技法訓練です。社会適応や職場への復帰を円滑に進めるために、必要とする技術を訓練によって段階的に得ていきます。医療機関や福祉機関などで、専門のスタッフの下で受けるケースが一般的です。