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L-函数の特殊値

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

数学L 函数の特殊値とは、L 函数の整数点での値やテイラー展開したときの先頭項の係数のことである[1] 数論の研究対象の一つであり、さまざまな研究が進められている[2]

概要

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ライプニッツの π の公式

1 1 3 + 1 5 1 7 + 1 9 = π 4 {\displaystyle 1,円-,円{\frac {1}{3}},円+,円{\frac {1}{5}},円-,円{\frac {1}{7}},円+,円{\frac {1}{9}},円-,円\cdots \;=\;{\frac {\pi }{4}}\!} {\displaystyle 1,円-,円{\frac {1}{3}},円+,円{\frac {1}{5}},円-,円{\frac {1}{7}},円+,円{\frac {1}{9}},円-,円\cdots \;=\;{\frac {\pi }{4}}\!}

L 函数の特殊値の一例である。左辺はあるディリクレ級数 L(s, χ)s=1 での値と思えるが、これは類数公式によりガウスの有理数体 Q(i) 類数と関係がつく。そしてこの公式は Q(i) の類数が1であることと関係している。このように、L 函数の特殊値には整数論において重要な不変量が現れる。

同様のことがモチーフの L 函数に対しても成り立つであろうと予想されている。最も一般的で精密な予想は同変玉河数予想(equivariant Tamagawa number conjecture, ETNC)と呼ばれる予想である[3]

歴史的には、まず楕円曲線L 函数の特殊値に関するバーチ・スウィンナートン=ダイアー予想があった[4] 。そしてピエール・ドリーニュによってモチーフL 函数の特殊値に関する予想が提出された。ドリーニュの予想はクリティカル・モチーフというモチーフに対するもので、このモチーフの L 函数の特殊値を有理数倍による違いを除いて予想するものだった[5] 。これはライプニッツの π の公式でいうと円周率の部分を予想したことに相当する。この予想はドリーニュ予想と呼ばれている。

次にアレクサンダー・ベイリンソンがクリティカルという仮定を外しドリーニュ予想を一般化した[6] 。ベイリンソンは代数的 K 理論を用いて数体のレギュレータを一般化し「高次のレギュレータ」(ベイリンソン・レギュレータ (英語版))というものを定義した。そしてモチーフの L 函数の特殊値は有理数倍による違いを除いてこの高次レギュレーターになるだろうと予想した[7] 。この予想はベイリンソン予想と呼ばれている。

スペンサー・ブロック (英語版)加藤和也はモチーフの L 函数の特殊値の有理部分を決定する予想を提出した[6] 。彼らはモチーフの玉河数というものを定義しモチーフの L 函数の特殊値の有理部分はこの数によって決定できると予想した。玉河数という言葉は線型代数群玉河数を研究していた玉河恒夫にちなむ。この予想は玉河数予想(Tamagawa number conjecture)またはブロック・加藤予想(Bloch–Kato conjecture)と呼ばれている。代数的 K 理論にもミルナー予想の拡張であるブロック・加藤予想と呼ばれる予想(ウラジーミル・ヴォエヴォドスキーらによって証明されている)があるが、これはここで述べた L 函数の特殊値に関するブロック・加藤予想とは別物である。

玉河数予想はその後加藤らによって同変係数に一般化された。さらに加藤はこれが岩澤理論における岩澤主予想の一般化でもあることを見出した[4]

デイヴィッド・バーンズ (フランス語版)マティアス・フラック (英語版) は玉河数予想を拡張し、モチーフの L 函数の特殊値に関する予想とスターク予想をはじめとするアルティン L 函数の特殊値に関する予想を合体させ同変玉河数予想を定式化した[8] [4]

これらの予想はすべて、特別なケースについてのみ成立することしか知られていない。

脚注

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参考文献

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ベイリンソン予想

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玉河数予想

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関連項目

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外部リンク

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数論における L 関数
解析的な例
代数的な例
定理
解析的予想
代数的予想
p 進 L 関数


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