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オオシロピンノ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オオシロピンノ
分類
下目 : 短尾下目(カニ下目)
Brachyura
上科 : カクレガニ上科
亜科 : カクレガニ亜科
: アルコテレス属
Arcotheres
: オオシロピンノ A. sinensis
学名
Arcotheres sinensis
和名
オオシロピンノ

オオシロピンノ(Arcotheres sinensis)は、十脚目 カクレガニ科のカニ。アサリに寄生することで有名。アサリに入れるくらいのサイズなので非常に小さく、甲長約6ミリ、甲幅1.5cmほど[1] 。太平洋側では九州から岩手県にかけて、日本海側でも九州から北海道にかけてと日本全国に広く分布し、カクレガニの仲間としてはカギヅメピンノと並んで[2] 日本でもっとも普通に見られる種である[3]

御典医の栗本丹洲が文化8年(1811年)に完成させた手稿本『千蟲譜』に「虱蟹」という種が記載されているが、荒俣宏はこれを本種またはカギヅメピンノであろうとする[4]

生態

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二枚貝の中に入って暮らし、貝が海水中から濾過して得た餌を横取りして生活している[5] 。アサリの他にもハマグリカキイガイ類に入ることが知られており、外来種であるミドリイガイムラサキイガイまで利用する[6] 。寄生性の生物は宿主に対するより好みが激しいものが多い中、これほどいろいろな二枚貝に入るのは珍しいとも言える。とくにムラサキイガイについては、移入から間もない1939年の標本からすでに本種が見つかっており、彼らの適応能力が窺われる[7]

アサリの中に入っているオオシロピンノはほとんどがメス。オスは普段外にいて、交尾のときだけ二枚貝の中に入るのではないかと考えられている[5] 。メスについても、貝の中から出しても半年くらい生き延びるものもあり、そこまで宿主への依存性は高くないようだ[1]

生活史

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多くの他のカニと同様、浮遊幼生であるゾエアメガロパを経て、稚ガニへと成長する。秋頃にふ化し、翌年の初夏にかけて甲長2 - 4ミリの小型のカニが多く見られるようになる。それらは秋ごろまでには概ね5ミリ以上になり、抱卵するようになると考えられている[1] 。これはカクレガニ科のカニ全般に言えることだが、「どのように宿主に入るのか」についての研究は少なく、あまりよくわかっていない[8]

人間との関係

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アサリの身入りが減ることが知られており、漁業関係者からは注目されてきた[1] 。食感が気になるかもしれないが、アサリと一緒に食べて問題ない。

出典

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  1. ^ a b c d 杉浦, 杉田, 木原 1960, p. 89-94.
  2. ^ 『日本大百科全書』 5巻、小学館、1985年8月20日、83頁。ISBN 4-09-526005-X 
  3. ^ 小西 1996, p. 15-21.
  4. ^ 荒俣宏『世界大博物図鑑 第1巻[蟲類]』平凡社、1991年8月23日、133頁。ISBN 4-582-51821-4 
  5. ^ a b 坂下 2019.
  6. ^ 山田, 伊谷, 浅間 2011, p. 1-4.
  7. ^ 伊谷, 山田, 渡部 2011, p. 169-174.
  8. ^ 小西 2010, p. 31-38.

参考文献

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  • 坂下朋永 (2019年5月31日). "佐々木希、アサリ料理したら「カニがいる」→どんな生態なの? 博物館に聞いてみた". j-cast.com. 2022年7月7日閲覧。
  • 伊谷行、山田ちはる、渡部哲也「1930年代におけるオオシロピンノによるムラサキイガイの利用 ―京都大学瀬戸臨海実験所所蔵標本から―」『黒潮圏科学』第4巻第2号、2011年、169-174頁。 
  • 小西光一「カクレガニ類の最近の話題」『Cancer』第5巻、1996年、15-21頁。 
  • 小西光一「カクレガニ類の話題―その後の状況」『Cancer』第19巻、2010年、31-38頁。 
  • 杉浦靖夫、杉田昭夫、木原正光「アサリ養殖における有害動物としてのカクレガニの生態― I. アサリTapes japonicaに共生するオオシロピンノPinnotheres sinensisの生態とアサリの身入りにおよぼす影響について」『日本水産學會誌』第26巻第2号、1960年、89-94頁、doi:10.2331/suisan.26.89 
  • 武田正倫、古田晋平、宮永貴幸、田村昭夫、和田年史「日本海南西部鳥取県沿岸およびその周辺に生息するカニ類」『鳥取県立博物館研究報告』第48巻、2011年、29-94頁。 
  • 山田ちはる、伊谷行、浅間穂高「受賞論文「高知県浦ノ内湾における在来種オオシロピンノによる外来種ミドリイガイの利用」の紹介」『Cancer』第20巻、2011年、1-4頁。 

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