IOCCC
The International Obfuscated C Code Contest(IOCCC, 国際難読化[1] Cコードコンテスト)は、故意に難解なC言語のプログラムを書き、その読みにくさと複雑さを競うというハッカーの奇祭(プログラミングコンテスト)である。
概要
[編集 ]一般的に読みにくいコードであれば評価が高いが、目にした瞬間のインパクトや、コードの汚さに反して実行結果の美しさなど、さまざまな要因でアーティスティックなものが選ばれる。多くの作品は一見するとC言語のコードに見えず、コード全体がアスキーアートになっているものなどが典型的である。
公式サイトでは、大会の理念は次のように説明されている[2] 。
- 大会ルールの元で最高に意味不明/難解なCプログラムを書くこと
- 皮肉なやり方でプログラミング作法の重要性を訴えること
- 普通書かないコードを用いてCコンパイラに負荷をかけること
- C言語の持つ、ある種の神秘性を解き明かすこと
- 粗雑なCコードに関して邪魔の入らない公開討論の場を提供すること
第一回大会は1984年に行われ、以降2006年まで年1回のペースで入賞者が発表された。以降中断と再開が繰り返され、2011年から2015年まで、2018年から2020年までそれぞれ年1回のペースで開催されている[3] 。Perl作者のラリー・ウォールやKornShell作者のデビッド・コーン (英語版)などの著名な業界関係者も参加している。
このようなコンテストを開催しようと思ったきっかけは、初期の開催者ランドン・カート・ノル (英語版)とLarry Basselが、Bourne Shellのソースコード[4] と、初期のBSDのfinger(Fingerプロトコル)のソースコードを見たことだという[5] 。
コードの例
[編集 ]- 1987年「Best One Liner」受賞、デビッド・コーン作[6] 。
main(){printf(&unix["021円%six012円0円"],(unix)["have"]+"fun"-0x60);}
- 説明:一見コンパイルが通らないように見えるが、上記コードは正常にコンパイルされ、実行すると「unix」と表示される。UNIX上でコンパイルした場合トークンunixが1としてマクロ定義(#define unix 1)されており、配列要素のアクセス方法で配列と添字が交換可能である[7] ことなどのテクニックを利用している。
下記の例は1988年の大会にエントリーされた、円周率を計算するプログラムである[8] [9] 。
#define _ -F<00||--F-OO--; intF=00,OO=00;main(){F_OO();printf("%1.3f\n",4.*-F/OO/OO);}F_OO() { _-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_-_-_-_-_ _-_-_-_ }
なお、上のプログラムはK&RのCでは動作するが、ANSI Cでは修正しないと動作しない[10] 。
次のものは1998年の大会で優勝した、フライトシミュレータのプログラムである[11] 。
#include<math.h> #include<sys/time.h> #include<X11/Xlib.h> #include<X11/keysym.h> doubleL,o,P ,_=dt,T,Z,D=1,d, s[999],E,h=8,I, J,K,w[999],M,m,O ,n[999],j=33e-3,i= 1E3,r,t,u,v,W,S= 74.5,l=221,X=7.26, a,B,A=32.2,c,F,H; intN,q,C,y,p,U; Windowz;charf[52] ;GCk;main(){Display*e= XOpenDisplay(0);z=RootWindow(e,0);for(XSetForeground(e,k=XCreateGC(e,z,0,0),BlackPixel(e,0)) ;scanf("%lf%lf%lf",y+n,w+y,y+s)+1;y++);XSelectInput(e,z=XCreateSimpleWindow(e,z,0,0,400,400, 0,0,WhitePixel(e,0)),KeyPressMask);for(XMapWindow(e,z);;T=sin(O)){structtimevalG={0,dt*1e6} ;K=cos(j);N=1e4;M+=H*_;Z=D*K;F+=_*P;r=E*K;W=cos(O);m=K*W;H=K*T;O+=D*_*F/K+d/K*E*_;B= sin(j);a=B*T*D-E*W;XClearWindow(e,z);t=T*E+D*B*W;j+=d*_*D-_*F*E;P=W*E*B-T*D;for(o+=(I=D*W+E *T*B,E*d/K*B+v+B/K*F*D)*_;p<y;){T=p[s]+i;E=c-p[w];D=n[p]-L;K=D*m-B*T-H*E;if(p[n]+w[p]+p[s ]==0|K<fabs(W=T*r-I*E+D*P)|fabs(D=t*D+Z*T-a*E)>K)N=1e4;else{q=W/K*4E2+2e2;C=2E2+4e2/K *D;N-1E4&&XDrawLine(e,z,k,N,U,q,C);N=q;U=C;}++p;}L+=_*(X*t+P*M+m*l);T=X*X+l*l+M*M; XDrawString(e,z,k,20,380,f,17);D=v/l*15;i+=(B*l-M*r-X*Z)*_;for(;XPending(e);u*=CS!=N){ XEventz;XNextEvent(e,&z); ++*((N=XLookupKeysym (&z.xkey,0))-IT? N-LT?UP-N?&E:& J:&u:&h);--*( DN-N?N-DT?N== RT?&u:&W:&h:&J );}m=15*F/l; c+=(I=M/l,l*H +I*M+a*X)*_;H =A*r+v*X-F*l+( E=.1+X*4.9/l,t =T*m/32-I*T/24 )/S;K=F*M+( h*1e4/l-(T+ E*5*T*E)/3e2 )/S-X*d-B*A; a=2.63/l*d; X+=(d*l-T/S *(.19*E+a *.64+J/1e3 )-M*v+A* Z)*_;l+= K*_;W=d; sprintf(f, "%5d %3d" "%7d",p=l /1.7,(C=9E3+ O*57.3)%0550,(int)i);d+=T*(.45-14/l* X-a*130-J*.14)*_/125e2+F*_*v;P=(T*(47 *I-m*52+E*94*D-t*.38+u*.21*E)/1e2+W* 179*v)/2312;select(p=0,0,0,0,&G);v-=( W*F-T*(.63*m-I*.086+m*E*19-D*25-.11*u )/107e2)*_;D=cos(o);E=sin(o);}}
このプログラムは下にあげたLinuxのコマンドラインの命令でコンパイルできる。
cc banks.c -o banks -DIT=XK_Page_Up -DDT=XK_Page_Down \ -DUP=XK_Up -DDN=XK_Down -DLT=XK_Left -DRT=XK_Right \ -DCS=XK_Return -Ddt=0.02 -lm -lX11 -L/usr/X11R6/lib
脚注
[編集 ]- ^ 難読化コードに変換するツールを指すobfuscatorなどと同義の「obfuscate」で、「邪悪な」などと意訳されることもある(『Life with UNIX』の日本語版など)。Perlによる同様のコンテストであるen:Obfuscated Perl Contestは、時事ネタ(竹下登#内閣総理大臣の「言語明瞭・意味不明瞭」)から「言語不明瞭Perlコンテスト」と訳されたyoshiyuki_kondoのツイート(171591102510538752)。なお「Perlは普通に書いても難読になるからコンテストが必要ない」というハッカージョークがある。
- ^ "The International Obfuscated C Code Contest" (英語). 2023年5月17日閲覧。
- ^ "Winning Entries". The International Obfuscated C Code Contest (英語). 2020. 2023年5月17日閲覧。
- ^ Bourne Shellのソースコード( http://minnie.tuhs.org/cgi-bin/utree.pl?file=V7/usr/src/cmd/sh )はマクロ( http://minnie.tuhs.org/cgi-bin/utree.pl?file=V7/usr/src/cmd/sh/mac.h )を使用した「ALGOLのような見た目のC」で書かれていることで悪名高い
- ^ IOCCCのFAQの「Q: How did the IOCCC get started?」に対する回答より
- ^ 4th International Obfuscated C Code Contest, 1987 - korn.c
- ^ Cコンパイラでは、配列aと添字iに対してa[i]は*(a+i)として解釈される。そのためi[a]と書いても同じ結果が得られる。コード例では1["have"]は"have"[1]と等価であり、結果は'a'である。
- ^ 5th International Obfuscated C Code Contest, 1988 - westley.c
- ^ レイモンド(1995) p.353
- ^ gccの場合、コンパイル時に以下のコマンドを実行する必要がある。
gcc -traditional-cpp -o r r.c
またはgcc -E r.c | sed 's/- -/--/g' > r2.c ; gcc -o r2 r2.c
(ソースファイルをr.c
とする) - ^ IOCCC Flight Simulator
参考文献
[編集 ]- Eric S. Raymond 編『ハッカーズ大辞典』Guy L. Steele Jr.絵、福崎俊博 訳、アスキー〈ASCII books〉、1995年7月、pp. 352-353頁。ISBN 4-7561-0374-X。 - 原著(The new Hacker's dictionary)第2版の翻訳。
- Eric S. Raymond 編『ハッカーズ大辞典』Guy L. Steele Jr.絵、福崎俊博 訳(改訂新版)、アスキー〈ASCII books〉、2002年6月。ISBN 4-7561-4084-X。 - 原著(The new Hacker's dictionary)第3版の翻訳。
- Don Libes, Sandy Ressler『Life with UNIX』坂本文 監訳, 福崎俊博 訳、アスキー〈ASCII books〉、1990年7月、pp. 296-299頁。ISBN 4-7561-0783-4。
関連項目
[編集 ]外部リンク
[編集 ]この項目は、コンピュータに関連した書きかけの項目 です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(PJ:コンピュータ/P:コンピュータ)。