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埋没費用

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埋没費用(まいぼつひよう)ないしサンク・コスト (sunk cost) とは、事業に投下した資金のうち、事業の撤退・縮小を行ったとしても回収できない費用をいう。

初期投資が大きく、他に転用ができない事業ほど埋没費用は大きくなるため、投資も新規企業の参入も慎重になる。このことにより、埋没費用の多寡が参入障壁の高さを決める要因の1つであることは寡占論の定説となっている。

これに対しウィリアム・ボーモル1982年に、逆に埋没費用がゼロならば、競争の潜在的可能性が高いために、たとえ独占であっても参入可能性が価格を正常に維持するというコンテスタビリティ理論を提示し、1980年代以後のアメリカの航空輸送産業やトラック輸送産業における規制緩和の流れを作り出した。

ある映画のチケットが1200円であるとする。このチケットを紛失してしまった場合、再度チケットを購入して映画を見るべきであるかどうかが問題となる。このとき、映画を見ない場合には紛失したチケット代1200円を失う。これに対して、映画を見た場合は紛失したチケット代1200円+再度購入したチケット代1200円=2400円を失うが、しかし同時に映画を見ることができる。かりにその映画を見るために1500円払ってもいいと思っているならば、失う金額は2400-1500=900円となり、映画を見ることが合理的である。この場合の紛失したチケット代1200円は、いずれにせよ回収できない費用として埋没費用となる。

認識の困難さ

埋没費用の認識は難しい。なぜなら、埋没費用を認めるということは、すなわちそれまでに行った事業や投資などの失敗を認めることに他ならないからである。事業の撤退・縮小を行ったとしても回収できない費用とはどこまでのことを指すのか、一般的に言うことは困難である。

例えば株式に投資することを考えてみよう。 一株1000円の株を買ったとする。しかしここで購入した株が800円に下がったとする。この時に株を売ってしまうと、差額の200円は回収できず、これはすなわち埋没費用となる。しかしここで株を売らず、その後に株が1200円に上昇すれば、差額として200円の利益が発生し逆に埋没費用は発生しない。

このように、将来に何らかのリターンが見込める時には、問題を先送りすることによって埋没費用の発生を回避できる場合がある。しかし、もちろん先送りをすれば必ず問題が解決されるわけではない。上記の例で言えば、800円に下がった株がさらに600円に下がれば、損失はさらに400円に拡大してしまう。埋没費用が拡大してしまうわけである。

一般的に、当事者以外からは無駄としか思えない投資をずるずると続けているというような場合は、この埋没費用の発生を回避しているだけである場合が多い。投資を止め、リターンが無くなったときに、埋没費用が確定するからである。しかしそのような場合は、たいてい投資を回収することが出来ず、損失の拡大を招くだけで終わるケースが多いといわれている。

株式の世界では『損切り万両』という格言があるが、これは埋没費用を認めることによって、その後の損失の拡大を防ぐという意味と捉えることが出来る。また、そのような格言があると言うことは、いかに多くの人間がそのように行動が出来ないかということを意味している。

参考文献

  • Sutton, J. Sunk Costs and Market Structure. The MIT Press, Cambridge, Massachusetts, 1991.

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