貴志駅
貴志駅 | |
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ファイル:和歌山電鐵貴志駅0.jpg 駅舎。左側が小山商店(2007年3月1日撮影) | |
きし Kishi | |
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所在地 | 和歌山県 紀の川市貴志川町神戸 |
所属事業者 | 和歌山電鐵 |
所属路線 | 貴志川線 |
キロ程 | 14.3 km(和歌山駅起点) |
駅構造 | 地上駅 |
ホーム | 1面1線 |
開業年月日 | 1933年(昭和8年)8月18日 |
備考 | 無人駅(「猫の駅長・助役」配置) |
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貴志駅(きしえき)とは和歌山県 紀の川市貴志川町神戸にある和歌山電鐵 貴志川線の駅である。
駅構造
貴志川線の終着駅。単式ホーム1面1線と1線の留置線を持つ地上駅である。
南海時代は有人駅だったが、貴志川線の和歌山電鐵への移管に伴い2006年4月1日から無人駅化された。同時に券売窓口は閉鎖され、待合室に設置されていた自動券売機が撤去された。移管以前・以後を通じてスルッとKANSAI対応のカードも使えない。朝夕のみ有人集札を実施し、駅の売店では回数券と一日乗車券のみ販売している。
待合室の壁には、地元の東山東幼稚園の園児が1995年に旧型の1201形電車が引退した際に描いた、「みどりのでんしゃさようなら」という絵が飾られている。
改札内に男女共用の汲み取り式便所が置かれている。
猫の駅長
2007年 1月5日に駅の売店「小山商店」で飼われている三毛猫の「たま」(雌、1999年 4月29日生まれ)が駅長に、同居する猫「ちび」(雌、2000年 5月12日生まれ)とたまの母親「ミーコ」(1998年 10月3日生まれ)[1] も助役に就任した。主な業務は「客招き」、報酬は年俸としてキャットフード1年分、任期はなく、終身雇用である。
経緯
出産1ヶ月ほど前から売店に住み着くようになったミーコがたまを生み、その後でちびが拾われた。茶虎がミーコで手足が白いのがちびである。その後3匹は売店前の猫小屋で飼われていた。
貴志川線が和歌山電鐵に引き継がれることとなった頃、この猫小屋が私有地である行動に置かれていたことから立ち退きを迫られ、引き継ぎを機に飼い主の売店経営者が和歌山電鐵に「猫たちを駅の中に住まわせてもらえないか」と相談した。たまに惚れ込んだ小嶋光信・和歌山電鐵社長(両備グループ代表と兼務)の発案によって、招き猫になって欲しいとの願いを込めて、それ以前から駅の利用者に親しまれていたたま達を駅長などに任命することになった[2] 。猫に駅長を嘱託した例は日本の民営鉄道では初である[3] 。
任命に際しては3匹それぞれに正式な委嘱状が交付され、たま駅長には特製の駅長帽と名札も支給されている。帽子は(人間の)社員が使っているものを小降りにしたもので、社内では唯一帽子に金色の線が入っている、小さすぎて作るのが難しく、完成までに半年あまりかかったという[4] <。金色の名札は2007年10月10日に誰かに持ち去られたらしく紛失してしまったが(後に再発行)、このことを知った動物カメラマンから新たに白い名札が贈られている[4] [5] 。後には「スーパー駅長」へ昇進したのに伴い、新たに青地に金の「S」が入った名札が交付されている。
たま駅長らの勤務日及び勤務時間は、月曜日から土曜日の朝9時頃から夕方5時頃までである。改札台や売店前のテーブルに上って乗降客を出迎えるのが日課である。また、「おもちゃ電車」のテープカットなどのイベントで伊太祈曽駅などに出張したこともある。
この話題は多数のテレビ番組や雑誌でも取り上げられ、たま駅長目当ての乗客が全国から和歌山電鐵を利用して訪れるようにもなった。当駅の乗降客数はたま駅長就任まで1日あたり約700人だったのが、就任直後の2007年1月には約17%増加するなど[6] 、「たま駅長効果」は具体的数値となっても現れている。2007年ゴールデンウィーク期間中にはいちご電車とたま駅長の効果もあってか、同社では前年同期比40%増の収入を記録した。
この事から2007年春の開業1周年記念式典にて同社から「スーパー駅長賞」が、2007年12月には両備グループにおける「トップランナー制度」に基づく「トップランナー賞・客招き部門」が贈られている[7] 。ちなみにトップランナー賞のご褒美は猫じゃらし、年末手当はカニカマのスライスである。
さらには貴志川線の知名度と乗客数・売上とを向上させたことから、就任1周年の2008年1月5日をもって駅長から「スーパー駅長」(課長職相当)に昇進した。和歌山電鐵に対しても、人と動物との共生のための活動を行っているNPO法人「Knots」から、人と動物との共生に尽力する企業へ贈られる「2006年度りぶ・らぶ・あにまるず賞グランプリ」が贈られている[8] 。
繰り返し訪れる熱心なファンも多く、売店内にはファンから贈られた写真などが飾られている。中には愛知県 瀬戸市の招き猫メーカーから贈られた、たま駅長をモデルに作られた陶器製の招き猫もある[5] 。
面会時の注意
たま駅長がテレビなどで知られるようになったことで貴志駅への乗客も増えた一方で、ローカル線の乗客数・収益の改善のためのものであるにもかかわらず自動車で駅前に乗り付けたり、中には飼い犬などを無理矢理引き合わせてたま駅長らをパニックに追い込んだりなどといったトラブルを起こす者がおり問題となっている[5] 。関係者によるブログ『貴志川線応援ブログ』(詳細は外部リンク参照)や和歌山電鐵では、以下のような注意を出している。
- 原則として日曜日は不在である。ただ、稀に日曜日でもイベントなどで短時間「休日出勤」していることはある。年末年始など売店休業日や荒天時も休みとなる。臨時出勤日や臨時休業日については、電鐵公式サイトや『貴志川線応援ブログ』を参照。
- 当駅には駐車場など車を止める十分な場所が無い。和歌山電鐵では車でたま駅長に会いに訪れる際には伊太祈曽駅の駐車場を利用し、そこから貴志川線で来て欲しいとしている。
- 写真撮影は自由だが、猫たちはストロボ(フラッシュ)を点灯させると驚いてしまうので、撮影の際はできるだけ点灯させないほうがよい。
- 犬などに近づかれるとパニックを起こすので、決して連れて行かないように。
関連商品
和歌山電鐵では、バッジやポストカード、ノート、鉛筆といった『たま駅長グッズ』を、いちご・おもちゃ両電車グッズと併せて販売している。これらは小山商店では販売されていないが、和歌山駅貴志川線ホームと和歌山電鐵本社がある伊太祈曽駅にて購入可能である[9] 。
2007年9月26日には、たま達の仕事ぶりを収めた写真集『たまの駅長だより 〜いちご電車で会いにきて〜』が集英社より発売された(詳細は参考文献参照)。こちらの写真集は小山商店でも取り扱っている。ちなみに、小山商店では写真集を持参ないし購入した人のうち希望者に対し、たまの手形ならぬ(前足)肉球形の特製スタンプを押してくれる[5] 。
トミーテックのトレーディングフィギュア「鉄道むすめ」第5弾(2008年1月末発売)に和歌山電鐵の運転士制服姿のキャラクター「神前みーこ」が加わっており(名前は神前駅とミーコ助役に因んでいる)、その頭にたま駅長が乗っている[10] 。なお、これのシークレット版はたま駅長の代わりにミーコ助役が頭に乗っている。
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券売窓口(2007年3月1日撮影)
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たま駅長(2007年11月20日)
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ミーコ助役(2007年11月20日)
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ちび助役(2007年11月20日)
駅周辺
駅前にはタクシー乗り場、バス停(路線バスの項参照)や売店がある。駐車場は無い。
旧貴志川町はイチゴの産地であり、和歌山電鐵のシンボル車両である「いちご電車」はこれに因んだものである。早春にはイチゴ狩りのための観光客も多く、紀の川市貴志川庁舎(旧貴志川町役場)横の特売場ではイチゴも販売されている。なお、当駅到着前と当駅発車直後の車内放送ではイチゴに因み"ストロベリー・フィールズ・フォーエバー"(ビートルズ)をアレンジしたチャイムが鳴らされる。おもちゃ電車の場合は『まりととのさま』が使われる。
駅から徒歩数分の場所には路線名の由来ともなった貴志川が流れている。そこに架かる諸井橋付近の国主峡一帯は大池貴志川県立自然公園にも指定されていて、休日にはバーベキューを楽しむ家族連れで一帯の公園が賑う。ここではホタルの養殖が行われており、夏季には屋形船も営業される。お盆には毎年花火大会が行われ、夏の風物詩を味わう事ができる。
少し上流の海南市との市境にホタル養殖場があり、毎年6月上旬に公開され見学を楽しむ事ができる。この期間限定で貴志川線の車両には地元の和歌山県立貴志川高等学校の生徒が製作したヘッドマークが先頭車の前面に装着される。
路線バス
- 大十バス(貴志駅バス停)
- 登山口 行
- 紀の川市地域巡回バス(貴志駅バス停)
- 貴志川路線:東貴志コース
- 貴志川路線:西貴志コース
- 桃山路線(細野貴志コース):彦谷口 行、那賀病院 行
- また以下のバスは駅前には乗り入れておらず、東側へ約100mに位置する和歌山県道10号岩出野上線上に停留所がある。
- 紀の川コミュニティバス(貴志駅下バス停)
歴史
- 1933年(昭和8年)8月18日 - 和歌山鉄道が伊太祁曽駅(現・伊太祈曽駅)から貴志駅までを延伸させたのに伴い開業。
- 1943年(昭和18年) - 和歌山鉄道全線の電化が完成。
- 1957年(昭和32年)11月1日 - 和歌山電気軌道が和歌山鉄道を合併し、和歌山電気軌道鉄道線の駅となる。
- 1961年(昭和36年)11月1日 - 南海電気鉄道が和歌山電気軌道を合併し、南海貴志川線の駅となる。
- 2006年(平成18年)4月1日 - 南海貴志川線を和歌山電鐵が継承させ、和歌山電鐵貴志川線の駅となる。同時に無人化される。
- 2007年(平成19年)1月5日 - 駅の売店「小山商店」の飼い猫「たま」が駅長に就任。同居する「ちび」「ミーコ」も助役に就任。
- 2007年(平成19年)5月11日 - 助役を務めていた「ちび」が専用ケージから逸走して行方不明となる。16日午前5時頃駅に戻って来た所を乗客が発見、保護された[4] 。
- 2008年(平成20年)1月5日 - たま駅長が「スーパー駅長」に昇進。
隣の駅
- 和歌山電鐵
- 貴志川線
- 甘露寺前駅 - 貴志駅
脚注
- ^ 生年月日は『たまの駅長だより』による。
- ^ 両備グループ|代表メッセージ「三毛猫"たま"を駅長に」、2007年1月5日。
- ^ 民鉄初、ネコの駅長誕生へ(貴志川線の未来を"つくる"会)、2007年1月5日。
- ^ a b c 「おめでとう!! たまちゃん 猫駅長就任1周年記念Special」 『NEKO』2008年2月号、ネコ・パブリッシング。
- ^ a b c d 『貴志川線応援ブログ』。
- ^ 読売新聞 2007年6月10日。
- ^ 両備グループ|代表メッセージ「たま駅長にトップランナー賞」、2007年12月5日。
- ^ NPO法人Knots「2006年度りぶ・らぶ・あにまるず賞」
- ^ ■しかく■しかく わかやま電鉄 オリジナルグッズ]、2007年10月11日。
- ^ トミーテック「最新鉄道むすめニュース」、2007年10月18日、およびキャラクター紹介ページ。
参考文献
- 坂田智昭(写真)『たまの駅長だより 〜いちご電車で会いに来て〜』ホーム社(発行)・集英社(発売)、2007年 ISBN 9784834251395