「ゆで卵」の版間の差分
2017年3月4日 (土) 10:58時点における版
ゆで卵(ゆでたまご、茹で卵)は、卵 料理の一つ。鳥類の卵、特に鶏卵を、殻のままゆでて凝固させたもの。地域により「うで卵」とも言う[1] 。近畿地方では固ゆで卵を「煮抜き卵」・「煮抜き」とも呼ぶ。
調理法
殻を割らない状態で鶏卵、ウズラの卵などを鍋に入れて火にかけ、沸騰させて、3〜8分程度ゆでて作る。ゆで時間により半熟卵、完熟卵に大別され、半熟にも黄身の状態で幅がある。
ゆであがったあと、卵の殻をむき、ケチャップ・食塩・マヨネーズ・コショウ・カレーソースなどをつけて食したり、他の料理の材料とする(後述の#ゆで卵を利用した料理を参照のこと)。または、頂部など1箇所だけをむき、エッグスタンドに立ててスプーンで中をえぐって食べる方法もある。
調理のポイント
- 産卵直後の新鮮な卵では、普通にゆでた場合、卵白に含まれる二酸化炭素の作用により薄皮が非常にむきにくく、きれいにはがすのは至難である。また、二酸化炭素が入ったままの白身はぼそぼそとした食感になり、味も落ちる。対策としては、卵の丸い方にひびを入れてからゆでる方法が効果的である[2] 。大量に新鮮な卵を入荷する店では、入荷から少し時間を置いて、鮮度を若干落とした卵をゆで卵に用いることが多い。
- 沸騰してから入れると中身が膨張し、内圧で殻が破裂しやすいので、水からゆでる。気室(太い方)に針で圧力抜きの小穴をあけると割れが防げる。中身が出た時に固まりやすいように食塩を水に入れることもある。卵が冷蔵してある場合は、冷たいまま入れた方が、後からむきやすい。黄身の偏りを防ぎたい場合は、時々卵を動かす。
- ゆで時間が長すぎると、硫化水素が発生し、黄身が変色したり、硫黄くさくなる。これを防ぐため、長くても10分以内にゆで時間を抑え、ゆであがった卵は、すぐに冷水で冷やす。
- 水の中(もしくは流水内)で揉むようにして殻に細かくひびを入れると、より簡単にむくことができる。
- 熱いうちに濃い目の塩水や調味液につけると、簡単に味付け卵が出来る。
- ゆで卵調理専用の機器として卵ゆで器がある[3] 。また、気室に圧力抜きの穴をあけるための玉子用穴あけ器が市販されている。
固茹で卵と半熟卵
ゆでる時間の加減により、黄身に火が半分通った半熟卵 、完全に火が通った固茹で卵に分類できる。
水からゆでる場合、水の量や火力、気温により温度の上がり方が変わるためタイミングをはかるのが難しい。これをはかるために「エッグメーター」と呼ばれる一種の温度計を一緒にゆでる方法がある。また、常に一定の時間で仕上げるために、卵は80度程度で白身・黄身ともに固まることを利用し、多めのお湯をあらかじめ沸騰させておき、そこに卵を入れて蓋をし、あとは熱を加えずに放置する方法もある。卵が常温の場合、6分前後で半熟に、10分前後で固ゆで卵になる。
また、湯を沸騰させずに、70°C前後の比較的低温を保って数十分ゆでると、黄身と白身の凝固温度の違いから、白身は固まらず黄身だけが固まる特殊な状態になる。これは温泉卵 と呼ばれ、広い意味でのゆで卵の一種である。
加熱条件による出来上がり方
長時間高温でゆでた場合、白身から発生した硫化水素(猛毒)と、黄身の鉄分とが化合して、黄身の外端が黒緑色となるが、健康には害がないとされる。また、なべ底に接していた温度の高い部分のみが茶褐色に変色し、「硫黄焼け」を起こす場合がある。さらに加熱時間を長くすると、白身全体が褐色をおび、硫化水素臭により、味も落ちる。
卵と卵が十分没する量の水を入れた器を電子レンジにかけてゆで卵を作ることもできるが、卵が破裂する可能性があるので注意が必要である(爆発卵の項を参照)また、冷蔵庫から取り出したばかりの冷たい卵を急激に加熱すると、やはり破裂することがある。これは、内部の空気や液体の膨張による内圧の急上昇が原因である。地鶏卵よりも殻が薄いケージ飼いの量産卵でとくに起こりやすい。
保存
熱を加えているため、ゆで卵のほうが生卵よりも保存がきくと考える人も存在するが、生卵に含まれる酵素のひとつであるリゾチームが熱により破壊されるため、同条件下ではゆで卵のほうが早く腐敗する。
ゆで卵を利用した料理
- おでん
- ゆで卵はおでんの具としても一般的に用いられる。殻をむいておでんの出汁に入れ一緒に煮ることで、味を含ませる。
- 煮卵、味付け卵(味玉)
- 叉焼の煮汁やタレで煮れば煮卵となる。冷たい煮汁にゆで卵を入れて沸騰させ、短時間煮た後、汁ごと長時間かけて冷やすなどにより味を染み込ませて作る。ラーメンのトッピングとしてゆで卵の代わりに煮卵がメニューに加えられている店もある。ゆで卵を半熟に仕上げ、冷たい汁の中に入れて以降は加熱せずに味付けする「半熟煮卵」(厳密には「煮卵」ではないが)が出されることもある。また、醤蛋(ジャンタン)とも呼ばれる。
- 爆弾
- ゆで卵を魚のすり身で包んだ薩摩揚げ。
ポーランド料理で非常に好まれる。またユダヤ教の過越祭では、必ず供されるしきたりである。
その他みじん切りにしたゆで卵はマヨネーズとの相性も良く、サンドイッチの具にしたりタルタルソースの材料にしたりすることがある。
ゆで卵と科学
- 「コロンブスの卵」という、できそうにないことを簡単にやってのける発想の転換を教えるエピソードがあり、建築家 フィリッポ・ブルネレスキが起源とされる。フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラを設計を誰が担当するかという時に出た話である。科学者の中谷宇吉郎には『立春の卵』という随筆があり、立春に卵が立つ、という当時の噂を実験したことを書いている。
- 生卵とゆで卵を割らずに判別する方法に、卵を寝かせてテーブルの上で勢いをつけて回転させ、指で短時間回転を止めた後再び指を離すというものがある。指を離すと再び微妙に回転し始める方が生卵で、これは殻の回転を短時間止めても流体状の中身が慣性で回転を続けたままであるために起きる現象である。もっとも同様の理由で回転させようとした時点で回転しにくく、それだけでも判別できる。
- ゆで卵をテーブルの上などで高速回転させると、次第に起き上がって回転するようになる。この力学は下村裕[4] とキース・モファット (英語版)が解明し、2002年3月28日の『ネイチャー』に掲載された[5] 。また、三井[6] と下村らにより、回転する卵が非常にごくわずかだがジャンプするという予測について、現象が確認され、2006年に発表された[7] 。
- 日本の小学校でよくおこなわれる理科の実験に、牛乳瓶の口にゆで卵を乗せ、あらかじめ温めておいた中の空気を冷やすなどして中の空気を収縮させて圧力低下し、大気圧との圧力差で、ゆで卵が瓶中に吸い込まれるというものがある。
備考
- 東南アジアでは孵化直前のアヒルの卵を茹でた「バロット」と言う料理がある。
- 江戸時代の文献で、黄身が外側・白身が中央に茹でられた「黄身返し卵」と言う料理がある。本来は有精卵を用いるが、近年は市販の無精卵で行う別の方法も開発されている。
- ポーチドエッグは殻を割って卵の中身だけを茹でた料理。
- 文学作品の分類上のハードボイルドとは、元来は「固ゆで卵」の意である。
- コンビニエンスストアなどで販売されているサラダやチルド麺類に輪切り状態で入っているゆで卵には、ロールエッグと呼ばれる加工卵が多く用いられている。
- 日本では、岩倉市がゆで卵生産日本一である。
- スウィフトの『ガリヴァー旅行記』のうち、「第一篇 リリパット国渡航記」におけるリリパット国とブレフスキュ国の戦争の原因は、卵の殻の正しい剥き方についての意見の相違である。卵は復活祭のシンボルとして、キリスト教信仰を表している。「卵の大きな方からの剥き方」はカトリック教徒を表しており、「卵の小さな方からの剥き方」は英国国教徒を表している。いさかいの原因を嘲笑することによって、聖書の解釈の仕方は幾通りもある事をスウィフトは示している。
脚注
- ^ ウデルは仙台方言・茨城・栃木・埼玉方言・千葉・東京でみられる。(日本国語大辞典、小学館)
- ^ 丸い方には気室があり、ひびを入れた程度では殻膜がやぶれることはない。
- ^ 意匠分類定義カード(C5) 特許庁
- ^ http://researchmap.jp/read0164293/
- ^ doi:10.1038/416385a
- ^ http://researchmap.jp/read0190789/
- ^ doi:10.1098/rspa.2006.1718
関連項目
この項目は、食品・食文化に関連した書きかけの項目 です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(Portal:食)。