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「日産・VR38DETT」の版間の差分

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単一のエンジンに対して最高出力と最大トルクに多くのバリエーションがあったため、#スペック表を追加してまとめた。この他、表現を変更したり、外部リンクを更新した。
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|製造期間=2007年-
|製造期間=2007年-
|タイプ=[[V型6気筒]] [[DOHC]] 24バルブ
|タイプ=[[V型6気筒]] [[DOHC]] 24バルブ
|排気量=3,(削除) 799cc (削除ここまで)
|排気量=3,(追記) 799{{nbsp}}cc (追記ここまで)
|内径x行程=×ばつ88.(削除) 4mm (削除ここまで)
|内径x行程=×ばつ88.(追記) 4{{nbsp}}mm (追記ここまで)
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|圧縮比=9.0
|最高出力={{cvt|353 - 419|kW|PS|0}}<br />(ロードカー仕様)
|最高出力='''2007年12月-2008年12月'''<br />353kW (480PS) /6,400rpm<br />'''2008年12月-'''<br />357kW (485PS) /6,400rpm<br />'''2011年'''<br />389kW (530PS) /6,400rpm<br />'''2012年'''<br />405kW (550PS) /6,400rpm<br />'''2016年'''<br />419kW(570ps)/6800rpm<br />'''ニスモ'''<br />441kW (600PS) /6,800rpm
|最大トルク={{cvt|588 - 652|Nm|kgfm|0}} (ロードカー仕様)
|最大トルク=588N·m (60.0kgf·m) /3,200-5,200rpm<br />'''2011年'''<br />612N・m (62.5kgf·m) /3,200-6,000rpm<br />'''2012年'''<br />632N・m (64.5kgf·m) /3,200-5,800rpm<br />'''2016年'''<br />637N・m(65.0kgf.m)/3300-5800rpm<br />'''NISMO'''<br />652N·m (66.5kgf·m) /3,600-5,600rpm
}}
}}
'''日産・VR38DETT'''は、[[日産自動車]]が製造する[[過給機|過給機搭載型]][[フラグシップ機|フラッグシップモデル]]の[[V型6気筒]][[ガソリンエンジン]]である。排気量は3,799cc、バルブ数は[[マルチバルブ|24バルブ]]で、2基の[[ターボチャージャー]]で過給される([[ツインターボ]])。R35型[[日産・GT-R]]専用に開発・製造され、基本的には同車種のみに搭載される。
'''日産・VR38DETT'''は、[[日産自動車]]が製造する[[過給機|過給機搭載型]][[フラグシップ機|フラッグシップモデル]]の[[V型6気筒]][[ガソリンエンジン]]である。排気量は3,799cc、バルブ数は[[マルチバルブ|24バルブ]]で、2基の[[ターボチャージャー]]で過給される([[ツインターボ]])。R35型[[日産・GT-R]]専用に開発・製造され、基本的には同車種のみに搭載される。


== 概要 ==
== 概要 ==
[[2007年]]10月に発表された初代R35型GT-R専用に完全新設計された<ref name="Subete">『日産GT-Rのすべて』メカニズム詳密解説 ISBN 978-4-7796-0335-8</ref>。最高出力(削除) は (削除ここまで)480PS、最大トルク(削除) は (削除ここまで)60.0kgf·mに達し、(削除) さら (削除ここまで)(削除) 2008年12月より485PS (削除ここまで)(削除) 2011年より530PS、62 (削除ここまで).5kgf·m(削除) 、2012年よ (削除ここまで)(削除) 550PS (削除ここまで)(削除) 64.5kgf·mに向上した (削除ここまで)
[[2007年]]10月に発表された初代R35型GT-R専用に完全新設計された<ref name="Subete">『日産GT-Rのすべて』メカニズム詳密解説 ISBN 978-4-7796-0335-8</ref>。(追記) 当初のスペックは (追記ここまで)最高出力480PS、最大トルク60.0kgf·m(追記) であった。最高出力については2011年モデルで500PSを越え、2016年には570PS (追記ここまで)に達し(追記) た。最大トルクも (追記ここまで)(追記) 同様 (追記ここまで)(追記) 大きくなっている。NISMO仕様のスペックは最高出力600PS (追記ここまで)(追記) 最大トルク66 (追記ここまで).5kgf·m(追記) であ (追記ここまで)り、(追記) こちらはデビュー当初から変わらない (追記ここまで)


また、それまで[[日産・スカイライン|スカイラインGT-R]]では[[日産・S20型エンジン|S20]]、[[日産・RB26DETT|RB26DETT]]の[[直列6気筒]]エンジンを伝統的に搭載していたが、世界最高レベルの動力性能とするためには60kgf·m以上の最大トルクとエンジンの軽量化が必要であると判断されたため<ref name="Subete"/>、今回GT-Rの名を冠する車に搭載されるエンジンとしては初の[[V型エンジン]]となった。
また、それまで[[日産・スカイライン|スカイラインGT-R]]では[[日産・S20型エンジン|S20]]、[[日産・RB26DETT|RB26DETT]]の[[直列6気筒]]エンジンを伝統的に搭載していたが、世界最高レベルの動力性能とするためには60kgf·m以上の最大トルクとエンジンの軽量化が必要であると判断されたため<ref name="Subete"/>、今回GT-Rの名を冠する車に搭載されるエンジンとしては初の[[V型エンジン]]となった。
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[[2024年]]から[[SUPER GT]]・GT300クラスに[[ゲイナー (企業)|GAINER]]が独自開発し投入する、[[日産・フェアレディZ RZ34|日産・フェアレディZ(RZ34)]]にVR38DETTが搭載される<ref>[https://jp.motorsport.com/supergt/news/gainer-new-gt300-z-progress/10586928/ スーパーGT公式テスト全欠席のGAINER Z、開幕に間に合うのか? 自社製マシンの構想は3年前から......しかし準備が遅れている理由とは] - motorsport.com 2024年3月13日</ref>。
[[2024年]]から[[SUPER GT]]・GT300クラスに[[ゲイナー (企業)|GAINER]]が独自開発し投入する、[[日産・フェアレディZ RZ34|日産・フェアレディZ(RZ34)]]にVR38DETTが搭載される<ref>[https://jp.motorsport.com/supergt/news/gainer-new-gt300-z-progress/10586928/ スーパーGT公式テスト全欠席のGAINER Z、開幕に間に合うのか? 自社製マシンの構想は3年前から......しかし準備が遅れている理由とは] - motorsport.com 2024年3月13日</ref>。


2017年より(削除) D1GP (削除ここまで)にVR38DETTを搭載した[[日産・シルビア|S15シルビア]]で植尾勝浩が出場、ポリンジャーミッションの合わせマニュアルトランスミッション化している。
(追記) 市販車に対してユーザーが[[エンジンスワップ]]で換装することもある。エンジンスワップした車両での参戦例は、 (追記ここまで)2017年より(追記) [[D1 GRAND PRIX]] (追記ここまで)にVR38DETTを搭載した[[日産・シルビア|S15シルビア]]で植尾勝浩が出場(追記) しており (追記ここまで)(追記) エンジンスワップに加えて (追記ここまで)ポリンジャーミッションの合わせマニュアルトランスミッション化している。


=== その他 ===
=== その他 ===
2012年に欧州日産が[[日産・ジューク|ジューク]]にVR38DETTを搭載した「ジュークR」をごく少数生産・販売している。
2012年に欧州日産が[[日産・ジューク|ジューク]]にVR38DETTを搭載した「ジュークR」をごく少数生産・販売している。


[[2022年]]に[[チェコ]]の自動車メーカー・[[プラガ]]が発表した[[ハイパーカー]]「ボヘマ」には、VR38DETTを独自にチューンアップし、最高出力700馬力を発揮する「PL38DETT」が搭載されている<ref>[https://www.webcartop.jp/2022/12/1020381/ 作ったのは商用車メーカー! GT-Rのエンジン搭載! 元F1ドライバーもべた褒めの1億円超ハイパーカー「プラガ・ボヘマ」って何もの?] - WEB CARTOP・2022年12月25日</ref>。
[[2022年]]に[[チェコ]]の自動車メーカー・[[プラガ]]が発表した[[ハイパーカー]]「ボヘマ」には、VR38DETTを独自にチューンアップし、最高出力700馬力を発揮する「PL38DETT」が搭載されている<ref>[https://www.webcartop.jp/2022/12/1020381/ 作ったのは商用車メーカー! GT-Rのエンジン搭載! 元F1ドライバーもべた褒めの1億円超ハイパーカー「プラガ・ボヘマ」って何もの?] - WEB CARTOP・2022年12月25日(追記) </ref><ref>{{cite web |url=https://pragaglobal.com/praga-and-litchfield-motors-reveal-bohemas-700hp-engine-and-global-service-support-plans-at-scd-secret-meet/ |title=Praga and Litchfield Motors reveal Bohema’s 700hp engine and global service support plans at SCD Secret Meet |publisher=PRAGA |date=2023年7月12日 |accessdate=2024年9月19日}} (追記ここまで)</ref>。

== スペック表 ==
{| class="sortable wikitable"
|+ 日産・VR38DETTの仕様別性能(製造期間は搭載車種の発売から販売終了まで)
|-
! colspan="4"| ロードカー
|-
! 搭載車種 !! 最高出力<br />(kW (PS) / rpm) !! 最大トルク<br />(N·m (kgf·m) / rpm) !! 製造期間
|-
| rowspan="7" | [[日産・GT-R]] || {{cvt|353|kW|PS|0|abbr=values}} / 6,400 || rowspan="2" | {{cvt|588|Nm|kgfm|abbr=values}} / 3,200 - 5,200 || 2007年12月 - <br >2008年12月
|-
| {{cvt|357|kW|PS|0|abbr=values}} / 6,400 || 2008年12月 - <br >2010年11月
|-
| {{cvt|389|kW|PS|0|abbr=values}} / 6,400 || {{cvt|612|Nm|kgfm|1|abbr=values}} / 3,200 - 6,000 || 2010年11月 - <br >2011年11月
|-
| {{cvt|404|kW|PS|0|abbr=values}} / 6,800 || {{cvt|632|Nm|kgfm|1|abbr=values}} / 3,300 - 5,800 || 2011年11月 - <br >2016年7月
|-
| {{cvt|419|kW|PS|0|abbr=values}} / 6,800 || {{cvt|637|Nm|kgfm|1|abbr=values}} / 3,300 - 5,800 || 2016年7月 - <br >
|-
| {{cvt|441|kW|PS|0|abbr=values}} / 6,800 || {{cvt|652|Nm|kgfm|1|abbr=values}} / 3,600 - 5,600 || 2013年12月 - <br > (NISMO)
|-
| {{cvt|530|kW|PS|0|abbr=values}} / 7,100 || {{cvt|780|Nm|kgfm|1|abbr=values}} / 3,600 - 5,600 || 2018年12月 - <br >2022年6月<br />(GT-R50 by Italdesign)<ref>{{cite web |url=https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/180629-01-j?lang=ja-JP |title=日産とイタルデザイン、GT-Rの限定プロトタイプ車を公開 |publisher=日産自動車 |date=2018年06月29日 |accessdate=2024年9月19日}}</ref>
|-
| {{仮リンク|プラガ・ボヘマ|en|Praga Bohema}} (PL38DETT) || {{cvt|522|kW|PS|0|abbr=values}} / 6,800 || {{cvt|725|Nm|kgfm|abbr=values}} / 3,000 - 6,000 || 2024年1月 - <ref>{{cite web |url=https://pragaglobal.com/cars/praga-bohema/ |title=Praga Bohema – The ultimate track focused hypercar |publisher=PRAGA |accessdate=2024年9月19日}}</ref>
|-
! colspan="4"| 試作車・コンセプトカー
|-
! 搭載車種 !! 最高出力<br />(kW (PS) / rpm) !! 最大トルク<br />(N·m (kgf·m) / rpm) !! 製造期間
|-
| rowspan="2" | [[日産・ジューク#ジュークR|日産・ジュークR]] || {{cvt|362|kW|PS|0|abbr=values}} / 6,400 || {{cvt|588|Nm|kgfm|1|abbr=values}} / 3,200 || 2012年5月<ref>{{cite web |url=https://www.caranddriver.com/reviews/a15121328/nissan-juke-r-first-drive-review/ |title=Nissan Juke-R First Drive - Review |website=Car and Driver |date=2012年1月24日 |accessdate=2024年9月19日}}</ref>
|-
|{{cvt|441|kW|PS|0|abbr=values}} / 6,800 || {{cvt|652|Nm|kgfm|1|abbr=values}} / 3,600 - 5,600 || 2015年6月<br > (ジュークR 2.0)<ref>{{cite web |url=https://europe.nissannews.com/en-GB/releases/the-nissan-juke-r-gets-an-exciting-upgrade-introducing-the-juke-r-2-0 |title=The Nissan Juke-R gets an exciting upgrade - introducing the Juke-R 2.0 |website=欧州日産 |date=2015年6月25日 |accessdate=2024年9月19日}}</ref>
|-
| [[インフィニティ・Q50 Eau Rouge]] || {{cvt|418|kW|PS|0|abbr=values}} || {{cvt|600|Nm|kgfm|1|abbr=values}} || 2014年<ref>{{cite web |url=https://usa.infinitinews.com/en-US/releases/release-b095ded250c2475db70b0d4600a7f441-infiniti-q50-eau-rouge-roars-into-life-560-hp-engine-revealed |title=INFINITI Q50 Eau Rouge roars into life – 560-hp engine revealed |publisher=Infiniti| |date=2014年3月4日 |accessdate=2024年9月19日}}</ref>
|-
! colspan="4"| レーシングカー
|-
! 搭載車種 !! 最高出力<br />(kW (PS) / rpm) !! 最大トルク<br />(N·m (kgf·m) / rpm) !! 参戦期間
|-
| 日産・GT-R NISMO GT3 || {{cvt|405|kW|PS|0|abbr=values}}以上 / 6,500 || {{cvt|637|Nm|kgfm|1|abbr=values}}以上 / 5,000 || 2018年 - 2023年<ref>{{cite web |url=https://www.nismo.co.jp/news_list/2018/news_flash/18009.html |title=NISSAN GT-R NISMO GT3「2018年モデル」発売 |website=NISMO |publisehr=日産モータースポーツ&カスタマイズ |date=2018年5月31日 |accessdate=2024年9月19日}}</ref>
|-
| リジェ・日産 DPi || {{cvt|441|kW|PS|0|abbr=values}}以上 || {{cvt|670|Nm|kgfm|1|abbr=values}}以上 || 2017年 - 2019年<ref name="nismo_official"/>
|-
| [[ルノー・スポール・R.S.01]] || {{cvt|406|kW|PS|0|abbr=values}} || {{cvt|600|Nm|kgfm|1|abbr=values}}以上 || 2016年 - <ref name="nismo_official">{{cite web |url=https://www.nismo.co.jp/products/customerracing/engine.html |title=Racing Engine |website=NISMO |publisehr=日産モータースポーツ&カスタマイズ |accessdate=2024年9月19日}}</ref>
|}


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* [(削除) http (削除ここまで)://(削除) www (削除ここまで).nissan.co.jp/(削除) GT (削除ここまで)-(削除) R (削除ここまで)/(削除) performance (削除ここまで).html NISSAN GT-R Webカタログ-(削除) パフォーマンス (削除ここまで)]
* [(追記) https (追記ここまで)://(追記) www3 (追記ここまで).nissan.co.jp/(追記) vehicles/new/gt (追記ここまで)-(追記) r/performance_safety (追記ここまで)/(追記) performance2 (追記ここまで).html NISSAN GT-R Webカタログ-(追記) 走行性能 (追記ここまで)]


{{自動車}}
{{自動車}}

2024年9月19日 (木) 05:42時点における最新版

日産・VRエンジン > 日産・VR38DETT
日産・VR38DETT
生産拠点 日産自動車横浜工場
製造期間 2007年-
タイプ V型6気筒 DOHC 24バルブ
排気量 3,799 cc
内径x行程×ばつ88.4 mm
圧縮比 9.0
最高出力 353–419 kW (480–570 PS)
(ロードカー仕様)
最大トルク 588–652 N⋅m (60–66 kgf⋅m) (ロードカー仕様)
テンプレートを表示

日産・VR38DETTは、日産自動車が製造する過給機搭載型 フラッグシップモデルV型6気筒 ガソリンエンジンである。排気量は3,799cc、バルブ数は24バルブで、2基のターボチャージャーで過給される(ツインターボ)。R35型日産・GT-R専用に開発・製造され、基本的には同車種のみに搭載される。

概要

[編集 ]

2007年10月に発表された初代R35型GT-R専用に完全新設計された[1] 。当初のスペックは最高出力480PS、最大トルク60.0kgf·mであった。最高出力については2011年モデルで500PSを越え、2016年には570PSに達した。最大トルクも、同様に大きくなっている。NISMO仕様のスペックは最高出力600PS、最大トルク66.5kgf·mであり、こちらはデビュー当初から変わらない。

また、それまでスカイラインGT-RではS20RB26DETT直列6気筒エンジンを伝統的に搭載していたが、世界最高レベルの動力性能とするためには60kgf·m以上の最大トルクとエンジンの軽量化が必要であると判断されたため[1] 、今回GT-Rの名を冠する車に搭載されるエンジンとしては初のV型エンジンとなった。

シリンダーブロックは、先代GT-Rまで搭載し続けてきたRB26DETTの鋳鉄製から金型成型のアルミニウム鋳造製に変更し重量を抑えた。また高出力時の剛性を確保するためVQエンジンのオープンデッキではなく、クローズドデッキを採用した。また、低炭素鋼をプラズマ 溶射でコーティングしたライナーレス構造を採用し、ボア間温度を約40°C程度下げ、約3kgの軽量化を実現させている。ライナーを持つ構造の場合はその厚みが数mmとなるが、プラズマコーティングはわずか約0.2mmの皮膜しか持たない。それにより熱効率も向上し、高出力エンジンでありながら良好な燃費を達成した。

シリンダーヘッドは、ペントルーフ型の燃焼室に4つのバルブ(吸気2、排気2)を備え、吸気側のカムシャフトには可変バルブタイミング機構が組み込まれる。日産VQ型エンジンで採用される可変バルブリフトや排気側の可変バルブタイミング機構は備わらず、コンベンショナルな形式がとられている。なお2012年モデルから出力増加等の影響で燃焼温度が上がったため、エキゾーストバルブにRB26DETTで採用されていたナトリウムが封入された。

ターボチャージャーは、IHIと共同開発したエキゾーストマニホールドとタービンハウジングとが一体化され、これにより排気効率を上げるインテグレーテッドターボが採用されている。

高い横Gのかかる状態でも問題なくオイルの潤滑を行うために、ラテラルウェット&ドライサンプ方式を取り入れている。冷却系の多層式ラジエーター、ツインインタークーラーともに、サーキット連続走行、300km/h走行が可能な容量を持っている。

ハイパワーターボエンジンとしては珍しく、全域でA/Fセンサーからのフィードバック 制御を実施している。一般的な過給エンジンは高負荷領域ではフィードバック制御を行わずに、安全率を見込んだ多めの燃料を噴射するのに対し、必要な量だけを計算して噴射することにより高負荷域で約5%燃費を向上させた[1] 。エンジントルクがおおむね40kgf·mまでの通常走行時は理論空燃比燃焼で巡航運転でき[2] 、6速ギアで200km/h巡航を行う場合も理論空燃比での燃焼が可能である。

排気ガス対策は、2次エアシステムと左右併せて4つの触媒で対応している。GT-Rはトランスアクスルを採用しているため、エンジン直後に無理なく触媒を配置できた。これにより、「平成17年基準排出ガス50%低減レベル(☆☆☆)」を達成している。なお、2011年モデルでは超低貴金属触媒やマイコン搭載のECM(Engine Control Module)の採用により「平成17年基準排出ガス75%低減レベル(☆☆☆☆)」達成となった。

組み立ては横浜市 神奈川区にある横浜工場で行われ、通常の流れ作業ではなく、クリーンルームで1基を1人の職工(この職工を日産では「匠」と呼ぶ。)が担当する「手組み」となっている。また量産車では珍しく品質検査も抜き取りではなく全数に対して行われ、定格性能未達の個体は出荷されず再組み立てとなる。このようにして組み上げられたVR38は、搭載した完成車両と共に更に全機慣らし運転が行われ、問題がなければ出荷となる。ヘッドカバー部分には、そのエンジンを担当した「匠」の銘入りネームプレートが張り付けられる。

使用燃料は無鉛プレミアムガソリン専用で、無鉛レギュラーガソリンの使用はいかなる場合でも禁止されている[3] 。プラズマコーティングボアを採用した高出力エンジンであるため、メーカー指定品であるモービル1とサーキット走行が多いユーザー向けにオプション設定がされているモチュールNISMO COMPETITION OIL type 2193E(5W40)以外のエンジンオイルを使用した場合は、保証対象外とされている。[4] [5] [6]

GT-R以外での採用例

[編集 ]

本来GT-R専用エンジンとされるVR38DETTだが、実際には他車種への搭載例もいくつかある。

モータースポーツ

[編集 ]

2017年 - 2019年にかけて、ウェザーテック・スポーツカー選手権DPiクラスに参戦する、日産 DPiに本エンジン(GT-RのFIA GT3仕様と同一のもの)が搭載された(詳細はリジェ・JS P217#リジェ・日産 DPiを参照)。また、2015年から開催されていたルノー・スポールワンメイクレース用レースカー(後にGT3規格版も登場)の R.S.01にも搭載されていた。

2024年からSUPER GT・GT300クラスにGAINERが独自開発し投入する、日産・フェアレディZ(RZ34)にVR38DETTが搭載される[7]

市販車に対してユーザーがエンジンスワップで換装することもある。エンジンスワップした車両での参戦例は、2017年よりD1 GRAND PRIXにVR38DETTを搭載したS15シルビアで植尾勝浩が出場しており、エンジンスワップに加えてポリンジャーミッションの合わせマニュアルトランスミッション化している。

その他

[編集 ]

2012年に欧州日産がジュークにVR38DETTを搭載した「ジュークR」をごく少数生産・販売している。

2022年チェコの自動車メーカー・プラガが発表したハイパーカー「ボヘマ」には、VR38DETTを独自にチューンアップし、最高出力700馬力を発揮する「PL38DETT」が搭載されている[8] [9]

スペック表

[編集 ]
日産・VR38DETTの仕様別性能(製造期間は搭載車種の発売から販売終了まで)
ロードカー
搭載車種 最高出力
(kW (PS) / rpm)
最大トルク
(N·m (kgf·m) / rpm)
製造期間
日産・GT-R 353 (480) / 6,400 588 (60.0) / 3,200 - 5,200 2007年12月 -
2008年12月
357 (485) / 6,400 2008年12月 -
2010年11月
389 (529) / 6,400 612 (62.4) / 3,200 - 6,000 2010年11月 -
2011年11月
404 (549) / 6,800 632 (64.4) / 3,300 - 5,800 2011年11月 -
2016年7月
419 (570) / 6,800 637 (65.0) / 3,300 - 5,800 2016年7月 -
441 (600) / 6,800 652 (66.5) / 3,600 - 5,600 2013年12月 -
(NISMO)
530 (721) / 7,100 780 (79.5) / 3,600 - 5,600 2018年12月 -
2022年6月
(GT-R50 by Italdesign)[10]
プラガ・ボヘマ (英語版) (PL38DETT) 522 (710) / 6,800 725 (73.9) / 3,000 - 6,000 2024年1月 - [11]
試作車・コンセプトカー
搭載車種 最高出力
(kW (PS) / rpm)
最大トルク
(N·m (kgf·m) / rpm)
製造期間
日産・ジュークR 362 (492) / 6,400 588 (60.0) / 3,200 2012年5月[12]
441 (600) / 6,800 652 (66.5) / 3,600 - 5,600 2015年6月
(ジュークR 2.0)[13]
インフィニティ・Q50 Eau Rouge 418 (568) 600 (61.2) 2014年[14]
レーシングカー
搭載車種 最高出力
(kW (PS) / rpm)
最大トルク
(N·m (kgf·m) / rpm)
参戦期間
日産・GT-R NISMO GT3 405 (551)以上 / 6,500 637 (65.0)以上 / 5,000 2018年 - 2023年[15]
リジェ・日産 DPi 441 (600)以上 670 (68.3)以上 2017年 - 2019年[16]
ルノー・スポール・R.S.01 406 (552) 600 (61.2)以上 2016年 - [16]

脚注

[編集 ]
  1. ^ a b c 『日産GT-Rのすべて』メカニズム詳密解説 ISBN 978-4-7796-0335-8
  2. ^ 「NISSAN GT-R」を発表 NISSAN PRESS ROOM
  3. ^ プレミアム仕様の車にレギュラーガソリンを入れても大丈夫ですか? 日産インフォメーション Q&A
  4. ^ "NISMO | COMPETITION OIL | LINE UP". www.nismo.co.jp. 2023年12月10日閲覧。
  5. ^ "NISMO | NEWS RELEASE". www.nismo.co.jp. 2023年12月10日閲覧。
  6. ^ "GT-R特別指定部品について". www.nissan.co.jp. 2023年12月10日閲覧。
  7. ^ スーパーGT公式テスト全欠席のGAINER Z、開幕に間に合うのか? 自社製マシンの構想は3年前から......しかし準備が遅れている理由とは - motorsport.com 2024年3月13日
  8. ^ 作ったのは商用車メーカー! GT-Rのエンジン搭載! 元F1ドライバーもべた褒めの1億円超ハイパーカー「プラガ・ボヘマ」って何もの? - WEB CARTOP・2022年12月25日
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関連項目

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ウィキメディア・コモンズには、日産・VR38DETT に関連するカテゴリがあります。

外部リンク

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