住民税とは?いつ・いくら納税するのか・計算式や税率も解説
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住民税は、暮らしに身近な行政サービスをまかなうため、地域に住む人たちが分担して納める税金です。
会社勤めの場合、住民税は給与から天引きされることが多いため、どのような仕組みの税金なのか、その内訳を知らない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、住民税とはどのような税金なのか、納税額の計算式や税率、納税に関する注意点などについて詳しく解説します。
住民税とは
住民税とは、その年の1月1日時点で日本国内に住所があり、前年に一定額以上の所得がある人が、住んでいる自治体(都道府県や市区町村)に対して納める税金です。
住民税には、「道府県民税」と「市町村民税」の2種類があります。また、法人に対して課税される住民税を「法人住民税」、個人に対して課税される住民税を「個人住民税」と呼びます。
住民税を納める目的は、私たちが快適な生活を送るために欠かせない、行政サービスの費用をまかなうことです。行政サービスとは、教育や福祉、公共施設、上下水道、ゴミ処理、子育て・介護の補助金制度などです。これらの行政サービスは、地域の自治体によって提供されており、住民税はその費用にあてられています。
出典:個人住民税|総務省
住民税の税率
住民税は、2種類の課税方式で構成されています。前年の所得金額によって税額が決まる「所得割」と、所得にかかわらず定額を負担する「均等割」です。所得割と均等割を合算した額を、住民税として納付します。
所得割と均等割の標準税率(年額)は以下のとおりです。
所得割
均等割(年額)
道府県民税(都民税)
4%
1,000円
市町村民税
6%
3,000円
森林環境税(国税)
1,000円
合計
10%
5,000円
※(注記)政令指定都市の所得割は、道府県民税が2%、市民税が8%です。
所得割の税率は、原則として所得に対して一律10%です。内訳は、道府県民税が4%、市町村民税が6%です。前年1月1日から12月31日までの所得に対して10%の税率を適用し、所得割額を算出します。
均等割の合計金額は、通常5,000円とされています。内訳は、道府県民税が1,000円、市町村民税が3,000円、そして令和6年度から追加された森林環境税の1,000円です。
森林環境税とは、森林整備およびその促進に関する費用の財源にあてるため、国内に住所のある個人に対して課税される国税です。その税収は、森林環境譲与税として国から自治体に譲与されます。
なお、自治体は一定の条件の下において、自由に税率を定めることが可能です。標準税率より高い税率で課税する、「超過課税」を実施している自治体もあります。
出典:個人住民税|総務省
住民税の計算方法
[画像:住民税の計算方法]住民税の計算は、以下の流れで行います。
- 所得金額の算出
- 所得控除額の確認
- 課税所得額を算出
- 所得割額の算出
- 税額控除額の確認
- 均等割額を加算
令和6年度の税制改正に伴い、令和6年分の住民税には定額減税が適用されます。住民税の計算方法とともに、住民税の定額減税額についても確認しておきましょう。
(1)所得金額の算出
所得金額とは、1月1日から12月31日までの収入金額から、必要経費を差し引いた金額のことです。
総所得金額は、以下の計算式で算出します。
収入金額-必要経費=所得金額
(2)所得控除額の確認
所得控除とは、納税者の個人的な事情を考慮し、所得から一定の金額を差し引く制度です。具体的には、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除、配偶者控除などが挙げられます。
所得控除が適用されると、住民税の課税対象となる所得額が減り、納税者の負担が軽減されます。
なお、所得税にも所得控除がありますが、住民税の所得控除とは一部異なります。控除額に差があることを覚えておきましょう。
(3)課税所得額の算出
課税所得額とは、所得から所得控除額を差し引いたものです。住民税の所得割額を求める際のベースとなるものです。
課税所得額は、以下の計算式で算出します。
所得金額ー所得控除額=課税所得額
(4)所得割額の算出
所得割額は、以下の計算式で算出します。
×ばつ税率(10%)=所得割額
(5)税額控除額の確認
税額控除とは、税額から一定金額を差し引かれるものです。具体的には、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)や公益社団法人等寄附金特別控除、配当控除などです。
所得控除が適用されると、住民税の課税対象となる所得額が減り、納税者の負担が軽減されます。
税額控除により、所得控除を差し引いて算出した所得割額を、さらに減額できる可能性があります。自分に控除の対象となるものがあるかを確認しておきましょう。
(6)均等割額を加算
税額控除後の所得割額に、均等割額(5,000円)を足したものが、住民税の税額です。
以下の計算式で算出できます。
税額控除後の所得割額+均等割額=住民税の税額
住民税の定額減税について
定額減税とは、令和6年度分の個人住民税と令和6年分の所得税から、それぞれ一定金額を減額する制度です。住民税においては、令和6年度限り(一部令和7年度)の措置として実施されています。(令和6年8月現在)
控除額は、納税者および配偶者を含めた扶養家族1人につき、住民税の所得割額から1万円、所得税は所得税額から3万円の定額減税額が控除されます。
定額減税の適用を受けられるのは、前年の合計所得金額が1,805万円以下で、個人住民税所得割の納税者です。原則として、住民税の定額減税を受けるための手続きは必要ありません。
住民税の負担が軽減されるふるさと納税とは
[画像:住民税の負担が軽減されるふるさと納税とは]ふるさと納税とは、好きな自治体を選んで寄附を行い、寄附額のうち2,000円を越える部分については、住民税と所得税から全額が控除される制度です。
ただし、必ずしもふるさと納税額が全額控除されるとは限りません。控除額は、給与収入や家族構成などによって、年間上限が設けられています。年間上限を超えた金額については、全額控除の対象外となるため注意しましょう。
ふるさと納税の寄附金控除を受けるためには、確定申告をしたり、確定申告が不要の「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用したりする必要があります。
ふるさと納税は、住民税の負担が軽減されるだけでなく、返礼品も受け取れる制度です。仕組みを理解し、賢く利用しましょう。
住民税はいつから納付する?
住民税は、前年1年間の所得額に対して課税され、その年の6月から翌年5月にかけて住民税を納付します。
会社勤めの人は、社会人2年目の6月以降、給料から天引きされる形で住民税を納付することになります。社会人1年目で、前年所得が一定以下であれば、住民税は課税されず、納付の必要はありません。
個人事業主の場合は、はじめて確定申告をした年の6月から住民税を納付します。
ただし、会社勤めでも個人事業主でも、アルバイトやパートなどによって前年の所得が一定以上ある場合は、住民税が課税され、納付の義務が発生する可能性があります。
出典:個人住民税|総務省
住民税の納税額を確認する方法
[画像:住民税の納税額を確認する方法]住民税の納税額を確認する方法には、自分で計算する方法や、各市区町村から届く住民税決定通知書で確認する方法があります。住民税決定通知書は、1月1日時点で住んでいた自治体から発行され、発送時期は市区町村により異なりますが毎年5月〜6月ごろです。
マイナンバーカードを持っている場合は、マイナポータル内の「わたしの情報」から申請することでも、住民税の納税額を確認できます。
出典:
令和6年度 個人市・府民税・森林環境税納税通知書の送付について|大阪市
令和6年度特別区民税・都民税(住民税)納税通知書の発送について|東京都練馬区
令和6年度 給与所得等にかかる市民税・県民税・森林環境税特別徴収税額通知書について|福岡市
わたしの情報について|マイナポータル
住民税の徴収方法・納税タイミング
住民税の徴収方法には、普通徴収と特別徴収があります。納税タイミングにも、いくつかのケースがあります。
ここでは、住民税の徴収方法と納税タイミングについてみていきましょう。
普通徴収
普通徴収とは、個人事業主や無職など、給与所得がない人に適用される徴収方法です。
市町村は、納めるべき住民税を記載した納税通知書を納税者に送付します。納務者はこの通知書に従い、年1回(一括)または年4回(分割)、住民税を直接市町村に納めます。
納付方法は、金融機関の窓口やコンビニエンスストアなど、指定された納付場所で納付するほか、口座振替やキャッシュレス納付なども選択可能です。
特別徴収
特別徴収とは、給与所得がある人に適用される徴収方法です。納税者以外の人が、納税者から住民税を徴収し、納付をします。
例えば、会社勤めの場合、特別徴収税額通知が会社に送付され、会社は特別徴収義務者として、納税者の住民税を給与から天引きして市町村に納めます。
特別徴収の納付は、年12回です。普通徴収に比べ、1回あたりの納税額が少なくなります。
退職時
退職した場合、給与から住民税を天引きすることができなくなります。退職以後の残りの住民税は、以下のどちらかの方法で納めなくてはなりません。
- 退職時に支給される最後の給料や退職金から、残税額をまとめて天引き(特別徴収)
- 退職月の翌月以降の住民税は、納付書を使って自分で納める(普通徴収)
なお、すでに再就職先が決まっている場合は、再就職先にて引き続き特別徴収で住民税を納付します。
公的年金受給者の場合
公的年金受給者とは、国民年金や厚生年金などを受け取っている人のことです。
65歳以上の公的年金受給者で、住民税の納付が必要な場合は、年金からの引き落とし(特別徴収)によって住民税が徴収されます。これは、地方税法第321条7の2の規定によって定められているため、個人の選択による徴収方法の変更はできません。
海外に滞在している場合
1月1日時点で海外に滞在している場合は、日本国内に住所がないとみなされ、住民税は徴収されません。年度途中から海外に1年以上滞在する場合は、その年分の所得は住民税の課税対象となりますが、翌年度の住民税は徴収されません。
ただし、海外への転出届を出していない場合は、長期の海外滞在でも住民税が課せられます。また、海外への転出届を出していたとしても、旅行やワーキング・ホリデーの場合は、居住ではなく旅行とみなされます。そのため、国内に住所があるものとして、翌年住民税が徴収されます。
1月1日時点で国内に住んでいて、納税通知書が送付される前に出国する場合は、納税者の代理人として納税義務を果たす納税管理人の選任が必要です。
出典:個人住民税|総務省
住民税が非課税になる場合
住民税は、前年の所得に対して課せられる税金ですが、所得金額や扶養家族の有無など、一定の理由にあてはまる場合には、住民税が非課税になる場合があります。これを「非課税制度」と呼びます。
住民税が非課税になるケースは、大きく分けて2つあります。所得割のみが非課税になるケースと所得割・均等割とも非課税になるケースです。
住民税が非課税になる要件は、自治体によって異なります。住んでいる自治体の要件を必ず確認しておきましょう。
出典:個人住民税|総務省
住民税の納税に関する注意点
住民税の納税に関する注意点は以下のとおりです。
- 住民税申告の要否を確認する
- 納税遅れは滞納処分の対象となる
住民税申告は、必要な人と不要な人がいます。1月1日時点で国内に住所があり、年末調整などを受けていない人は、住民税申告が必要です。ただし、所得税の確定申告をしている場合は、住民税申告は不要です。申告漏れとならないよう、住民税申告が必要かどうかを事前に確認をしておきましょう。
住民税の納付遅れは、滞納処分の対象となります。これまで会社勤めだった人が、退職したり、個人事業主になったりした場合には、特別徴収から普通徴収に切り替わります。納付書による納付に慣れていないと、納税遅れが発生しやすいため注意しましょう。
納付遅れが発生すると、督促状が送付されます。督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納できない場合は、滞納処分の対象となり、差押えが執行される可能性があります。納税遅れに気づいたら、なるべく早く納付しましょう。
出典:
個人住民税|総務省
第47条関係 差押えの要件|国税庁
まとめ
住民税は、日常生活に結びついた行政サービスの財源を支える重要な税金です。住民税の税額は、前年の所得や控除額を基に、おおよその額を算出できます。
徴収方法や納税のタイミングは、各状況によって異なるため、事前に確認をしておくと安心です。特に、自分で直接納付する普通徴収の場合は、納税忘れに注意が必要です。
納税は国民の三大義務の一つです。期限までに正しく納付しましょう。
執筆年月日:2024年8月
※(注記)内容は2024年8月時点の情報です。法律や制度は改正する場合があります。