新型コロナウイルスゲノム解析
新型コロナウイルス感染症は、その感染力と死亡率の高さから公衆衛生上極めて重要な疾病と認識されています。医療崩壊の危機が迫る中で、新型コロナウイルスゲノム配列情報を利用した新しい診断法と感染予防体制の構築が喫緊事です。慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センターは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の支援により、「COVID-19ウィルスゲノムシーケンシングによるワクチン・薬剤耐性関連変異株・海外変異株の予防的国内監視システムの構築」を推進しています。
協力医療機関より患者様の検査残余検体及び臨床情報を収集するウイルスゲノムネットワークを構築、さらにウイルス全ゲノム解析プロトコルの最適化を図り、種々の検査残余検体から抽出したウイルスRNAの全ゲノム配列を高精度で解析することに成功しました。解析により得られた新規ゲノム配列情報は、積極的に国際データベースに登録・公開し、全世界の公衆衛生研究発展に寄与します。
解析した新型コロナイルスのゲノム配列情報は感染ルートを正確に把握するための判断の一助となります。感染の伝搬の有無や経路を科学的に決定するシステムを構築・活用することで、本感染症による院内感染の拡大回避・医療体制の早期回復、及び医療従事者の負担の軽減が期待されます。また、ゲノム配列情報から得られたウイルス変異に臨床情報を突合することで、新型コロナウイルスの病原性や感染性などのメカニズムを解明し、本感染症の診断、治療、感染対策への貢献を目指します。
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研究成果
- Identification of SARS-CoV-2 Clade 20C in Japan (November, 2020) (2021年01月12日)
The whole genome sequence of the starin has been deposited to the GISAID database (hCoV-19/Japan/Donner96/2020) on January 12, 2021.
Identification of B.1.346 lineage of SARS-CoV-2 in Japan: Genomic evidence of re-entry of Clade 20C (2021年02月01日 medRxiv) - Severity of COVID-19 is inversely correlated with increased number counts of non-synonymous mutations in Tokyo (2020年11月24日 medRxiv)
- Clinical utility of SARS-CoV-2 whole genome sequencing indeciphering source of infection (2020年10月04日 The Journal of Hospital Infection )
研究事業: 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
- 「COVID-19ウィルスゲノムシーケンシングによるワクチン・薬剤耐性関連変異株・海外変異株の予防的国内監視システムの構築」
- 「ウイルス全ゲノムシーケンシングを用いた院内感染拡大防止支援システムの基礎研究」
Variant calling pipeline for amplicon-based sequencing of the SARS-Cov-2 viral genome
Overview of the analytic pipeline "Donner" for variant calling from amplicon-based sequencing of the SARS-Cov-2 viral genome sequences.