内容説明
好太王碑は、我が国では稲荷山・稲荷台鉄剣などにみる王や大王たちが活躍したころ、朝鮮半島で倭人の動静を記録した貴重な文字資料である。それだけに、"改ざん説"をはじめ、さまざまな論争が大いに学界をにぎわした。それらを概観し、厳格な実事求是の研究姿勢で決着に口火をきった著者が、10年に及ぶ現地調査からの結論と、拓本の編年研究に新たな問題を提起(王健群)したほか、高句麗の歴史と遺跡を概観(賈士金)、さらには高句麗人の宇宙観を伝える感動的な新説(方起東)など、古代史研究の醍醐味を存分に展開している。1985年東京シンポジウムから帰国後、日本の読者のために書き下ろされた意欲的論集。
目次
- 好太王碑研究に関するいくつかの問題(好太王碑の現状;私の好太王碑に対する数回の調査;拓本の先後、優劣について;好太王碑文の中の"倭"の実体;申采浩の"記聞"とその好太王碑に関する論述;"改ざん説"質疑の補充意見;好太王碑の好太王陵;いくつかの具体的問題の説明)
- 集安の歴史文物と高句麗遺跡(集安の歴史と名称;国内城と丸都山城;高句麗の交通路と防衛施設;洞溝平野の高句麗遺跡;洞溝古墓群の調査と新知見)
- 千秋墓、太王陵、将軍塚(三陵墓の概要;太王陵と将軍塚の被葬者伝承;近代以降の被葬者論議;墳墓の形式・構造からみた三陵墓の比較分析;瓦片・瓦当からみた三陵墓の比較;好太王碑の性格と墓上立碑方式;好太王碑、太王陵、将軍塚における方向の解釈;被葬者問題の結論)
- 解説・「実事求是」のために
「BOOKデータベース」 より