内容説明
「内省型」症例は、患者自らが過剰な自己反省によってその特異な自己体験様式を治療者に語る点にその特徴がある。これらの患者は、人格の欠損体験、自明な判断・思考の不能性、そしてさらには、発病にはるか前駆する回顧的体験等を語りつづける。まず著者は、患者たちの呟きに耳を傾け、それを忠実に記述しながら、患者への運命共感的態度ともいうべき治療者の存在様式が重要な契機となって、「内省型」がそれとして現われてくるのではないかという問いを発する。さらに、この病理を解く鍵をヤスパースの自己反省の二面性、ブランケンブルグの自明性の喪失、フーバーの習慣ヒエラルキーの喪失といった概念や、レインのシゾイド理論等に求めながら、独自の考察を試みる。いわゆる妄想型や境界例とは異なり、その外見が一見正常に保たれている患者の内面の重篤さを本書から読みとるとき、近年のそのような症例の増加は、その現代的意味からも「内省型」への注目をおおいに促している。
目次
- 人格欠損体験と回顧的体験について
- 人格分裂体験(「ジキルとハイド」の体験)について
- 臨床的発病へと連なる人格内部構造の変遷過程について
- イメージ的融合体験について
- 内省型の空想癖(覚醒夢体験)について
- 妄想化に前駆する氷解体験について
- 一慢性分裂病者の幻覚・妄想体験と自己不全体験の並存関係について
- 「内省型」再考
「BOOKデータベース」 より