内容説明
私たちは聞くように観、見るように聞いている。詩の内容である感動は、瞬間的なひらめきとして来るが、それは過去に集積し現在保有する総ての精神力が一瞬に働くときに結ぶ直観像だといってもよい。あるときは切実に、強烈に、あるときは太く大きく、またあるときは微かに、鋭く、すべて生に即して直接に詠歎しようとしたので、これが抒情詩としての短歌だ。芸術にとって「写実」は母なる大地である。写生が生命の表現であるというのは、短歌の真髄であるばかりでなく、広く芸術というものがそうでなければならぬものである。吾々はどこまでも「言葉のひびき」というものを生命とするから、「色や光や力」をも「ひびき」の中に篭めようとするのだといってもいい。その言葉から感ぜられる響きは聞こえるような見えるような触れうるようなものである。自然の機微を見る者は敬虔になる。佐藤佐太郎の作歌入門書、不朽の名著。
目次
- 第1章 作歌入門
- 第2章 作歌真
- 第3章 及辰園歌話
- 第4章 実作のための歌論断片
- 第5章 純粋短歌
- 第6章 自歌自註
「BOOKデータベース」 より