内容説明
空よりも青く、絹よりもつややかなこの小鳥が、どこからやってきたのか、いまでも、わたしにはわかりません。わたしの川の歌にひかれて、ここにくるまで、このかわせみは、長いあいだ、ほうぼう、さまよったにちがいありません。そして、わたしの小さな谷間が、世界でいちばん静かで、いちばん自然のままで、いちばん美しいところだということを、発見すると、さっさと、ここに、すみついてしまったのです。滝から水車小屋へ、水車小屋から滝へと、水面すれすれに、矢のようにまっすぐにとびながら、かわせみは、ときの声をあげました。「ここは、おれの領土だ!おれの漁場だ!ここの主人は、おれだ!」と...。水車小屋の近くに巣をつくっている、ばんや、こがもや、ほかの水鳥たちは、これをきくと、すぐその意味がわかりました。そこで、水鳥たちは、かわせみのマルタンが、くちばしでつついて、追いだしにくるまえに、さっさと、退却していきました。
「BOOKデータベース」 より