内容説明
一九九五年五月、チベットで六歳になる少年が、両親・兄弟とともに中国公安に連れ去られ、消息を絶った。この少年は、ダライ・ラマに次ぐ高僧パンチェン・ラマの生まれ変わりといわれており、次代のダライ・ラマの運命をも左右する。本書は、英国のジャーナリスト、イザベル・ヒルトンが、ダライ・ラマをリーダーとするチベット亡命政府と中国政府との複雑な争いの中で、将来のチベットのリーダーとなるパンチェン・ラマの生まれ変わりの子供がどのように発見され、認定されたのかを克明に描いたものである。スリラー小説さながらのこの物語は、今まで秘密にされていたチベット仏教の輪廻転生の謎に迫るとともに、悲劇的な結末に向かってクライマックスを迎える。チベットの歴史・政治、旅、数々の冒険に満ちた、注目に値する海外ノンフィクションの秀作。
目次
- 探索の始まり
- ダライ・ラマ政権の誕生
- 転生ラマ制度とは
- パンチェン・ラマの登場
- 二大ラマの対立
- パンチェン・ラマ九世、十四年間の彷徨
- 十世選出をめぐる思惑
- 国民党から共産党へ
- ダライ・ラマ十四世の亡命
- 党の心臓をねらう「毒矢」
- 9年8か月の独房生活
- パンチェン・ラマの妻
- 突然の死
- 転生者探しの開始
- それぞれの思惑、微妙な綱引き
- ヒマラヤを越える候補者リスト
- 最悪の結末
- タシルンポ僧院、制圧される
- 2人の少年の運命
- 世界で最も幼い政治囚
「BOOKデータベース」 より