アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]
秋の終わり
2024年11月22日
伊勢志摩国立公園
三好 明
みなさん、こんにちは。
伊勢志摩国立公園管理事務所ARの三好です。
11月も後半になりましたが、相変わらず天候は不安定で、気分的にもすっきりしない日々を過ごしているのは私だけでしょうか。
しかし、季節は確実に進んでおり、暗くなるのが本当に早くなりましたよね。秋虫の音色もすっかり耳に心地良く、体を吹き抜けるそよ風も夏のそれとは打って変わり、ひんやりと気持ちが和みます。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
今回は志摩市、鳥羽市、南伊勢町で撮影した動植物を紹介したいと思います。季節は深秋の頃です。
秋の終わり
【チャバネセセリ】
【トックリバチの巣】
【ヤマトシジミ】
【冬桜とクロヒラタアブ】
【サツマシジミ】
【ニッポンマイマイ】
【アゼトウナ】
【コウヤボウキ】
【フジバカマ】
【シャリンバイ】
【フヨウの実】
【ミヤマスミレ】
【キノクニシオギク】
【ツバキ】
【ツワブキ】
【ウメノキゴケ】
【カゲロウ】
伊勢志摩国立公園管理事務所ARの三好です。
11月も後半になりましたが、相変わらず天候は不安定で、気分的にもすっきりしない日々を過ごしているのは私だけでしょうか。
しかし、季節は確実に進んでおり、暗くなるのが本当に早くなりましたよね。秋虫の音色もすっかり耳に心地良く、体を吹き抜けるそよ風も夏のそれとは打って変わり、ひんやりと気持ちが和みます。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
今回は志摩市、鳥羽市、南伊勢町で撮影した動植物を紹介したいと思います。季節は深秋の頃です。
秋の終わり
【チャバネセセリ】
吸蜜しているのはチャバネセセリです。セセリチョウ科に分類される蝶の一種で、見た目が地味なため蛾に間違いそうです。日本各地で普通に見られ、年に3回から4回、6月から11月頃に発生し、幼虫で越冬します。セセリチョウ類の特徴として飛翔が素早いです。表情がかわいいですね。
【トックリバチの巣】
トックリバチ属は、スズメバチ科ドロバチ亜科に分類される属のひとつで、群れは作らず単独で暮らし、性質は温和です。秋の終わり頃に営巣しはじめ、一つの巣につき一つの卵を産み付けます。親蜂を見ることはできませんでしたが、この縄文土器のような立派な巣には、すでに卵が産み付けられたのでしょうか。この真新しい土器は国宝級?
【ヤマトシジミ】
この季節になると、大好きなトンボ類はほとんど見なくなり、変わって目に付くのが草花の間を華麗に飛んでいる蝶々たちです。じっと止っていることが少なく、よく体力があるな〜といつも感心させられます。ヤマトシジミは、シジミチョウ科の前翅長9ミリから16ミリほどの小型のチョウで、本州以南に分布します。都市部で最もよく見られるチョウのひとつです。休んでいるところをパチリ!
【冬桜とクロヒラタアブ】
頭上を見上げると、サクラが一輪咲いていました。サクラは本来、春に咲くものですが、秋から冬にかけて咲くことがあります。「返り咲き」と言うそうです。春に咲くサクラも好きですが、この季節に見る一輪のサクラも大好きです。蜜を吸いにクロヒラタアブが元気に飛んでおり、深秋の暖かな一日を過ごせました。
【サツマシジミ】
浅橋ではサツマシジミが給水中です。ひらひらとよく飛ぶ子で、純白な個体は見ていて飽きることがありません。サツマシジミの成虫は、3月中旬から11月頃まで年4回から6回ほど発生し蛹で越冬します。生息地であっても季節によってはまったく目撃すらできないこともあるそうです。紀伊半島、広島、山口以南に分布している南方系のチョウで、これまであまり見る機会がありませんでした。出会えてよかった〜!
【ニッポンマイマイ】
湿った森林を探索に行くと、斜面に見慣れないマイマイが食事中です。ニッポンマイマイは、本州の東北から関西にかけて分布する有肺目ナンバンマイマイ科に分類されるカタツムリの一種です。ニッポンマイマイ類は変異が大きい種群で、同定は非常に難しいとされています。私ではここまでが限界でした。どちらにしても愛嬌のある姿がかわいいです。
【アゼトウナ】
キク科アゼトウナ属に分類される多年草で、伊豆半島以西の太平洋岸の岩場などに自生します。花期は8月から12月で、枝先に直径約1,5cmの黄色の花を密につけます。種小名は植物学者の伊藤圭介への献名とのことです。岡山県では、絶滅危惧I類に、伊勢志摩国立公園内でも※(注記)「指定植物」に指定されています。いまが見頃です。
※(注記)「指定植物」については、アクティブレンジャー日記2024年6月12日号参照。
※(注記)「指定植物」については、アクティブレンジャー日記2024年6月12日号参照。
【コウヤボウキ】
雑木林を歩いていると、きれいに咲くコウヤボウキを見つけました。9月から10月に、一年枝の先端に白い頭花を一つだけ付けます。キク科コウヤボウキ属の落葉小低木で、多くのキク科が草本であるのに対して、本種は木本に分類され珍しい種です。名前の由来のとおり、かっては高野山で使われていた箒とのことで、古くは宮中行事にも玉箒として使われていたそうです。宮城県では絶滅危惧I類(CR+EN)に指定されています。
【フジバカマ】
フジバカマは、キク科ヒヨドリバナ属の多年草で、秋の七草の一つとされ、万葉の時代から人々に親しまれてきました。夏の終わりから秋の初め、茎の先端に直径5mmほどの小さな花を、長さ10cm前後の房状に多数咲かせます。フジバカマの仲間には、旅をする蝶としても知られるアサギマダラの雄蝶が好んで訪れ、今回も数匹出会うことができました。類似のヒヨドリバナとは、葉の形状で見分けることができます(フジバカマの葉は3裂しており、ヒヨドリバナは茎から対生して2つ出ている)。野生種のフジバカマはほとんど見られなくなったようです。
【シャリンバイ】
海岸の岩場には、陽に当たって白く輝くシャリンバイの花が数株だけ咲いていました。バラ科シャリンバイ属の常緑低木で、梅に似た白い花や、小枝が車輪のように出ていることから、「車輪梅」の名が付いたそうです。花期は4月中旬から5月頃で、暖地の海岸近くに自生します。11月のこの時期によく残っていたなと思います。秋田県では絶滅危惧種IA類(CR)に指定されています。
【フヨウの実】
山間の片隅に、フヨウの実を見つけました。フヨウの花は、その美しさや変化する様子から縁起の良い花として知られており、古くから女性の美を称える花として親しまれてきました。いまにも弾け飛んでいきそうな実は、渋くて魅力的です。
【ミヤマスミレ】
森林の中を探索すると、一輪のミヤマスミレが咲いていました。スミレ科スミレ属に分類される多年草で、花期は4月から5月ですが、この時期に咲く子もいるそうです。地下茎は細く、花のあと糸状の匐枝(ふくし)を出し、先端に新苗をつけます。ひっそり一輪だけ咲いていたのが魅惑的です。徳島県では絶滅危惧IA類に指定されています。
【キノクニシオギク】
キノクニシオギクは、キク科キク属に分類される多年草で、海浜植物の一種です。花期は10月から12月で、いまが見頃です。毎年地上部は冬期に枯れて、根茎または茎の基部から新芽を伸ばして翌年茎となり、栄養繁殖します。また、種子繁殖もして新しい個体が生じるそうです。母種のシオギクは高知県東部の海岸に分布し、また、近種のイソギクは千葉県から静岡県御前崎辺りの海岸に分布します。キノクニシオギクはこれらの中間型の形質を備えているそうです。三重県では準絶滅危惧種(NT)に指定されています。
【ツバキ】
この季節に咲く白いツバキがあるのを初めて知りました。花言葉は、「完全なる美しさ」「申し分ない魅力」「至上の愛らしさ」とのこと。赤色のツバキの「控えめな素晴らしさ」「気取らない優美さ」「謙虚な美徳」とは真逆のようです。
【ツワブキ】
海岸近くを歩いていると、今一番咲き誇っているのがツワブキです。キク科ツワブキ属に分類される常緑多年草で、海岸近くの岩場などに生え、秋から初冬にかけて黄色い花を咲かせてくれます。ツワブキを「市町村の花」にしている地域がけっこうあり(静岡県西伊豆町、島根県津和野町など)、人気者です。新潟県では準絶滅危惧種(NT)に指定されています。
【ウメノキゴケ】
冬枯れしたような木の枝には、着生地衣類のウメノキゴケが繁殖していました。大気環境指標として有用らしく、特に二酸化硫黄(亜硫酸ガス)に対する感受性が高いことで知られています。大気環境の改善に伴い、着生地衣・蘚苔植物の回復が見られたことが報告されています。この地味な地衣類ですが、秋田県では絶滅危惧種I類(CR+EN)に指定されています。
終わりに
いかがでしたか。
秋も終わろうとしているこの季節ですが、今回は草花に関しては意外に多くの種に出会うことができました。感謝しかありません!
しかし、けっこう歩いたな〜という思いで今号の完成に至りました。特に、月日が立つほどに、殺風景な景色の中で目に見えるものが少なくなっていくので、寂しさを募らせながら、心の中で「ヒュルリ〜ヒュルリ〜ララ♪」と歌っていました。
12月が近づくにつれ、日中もだいぶ寒くなってきました。
次回もがんばります!
自然を大切に!
終わりに
いかがでしたか。
秋も終わろうとしているこの季節ですが、今回は草花に関しては意外に多くの種に出会うことができました。感謝しかありません!
しかし、けっこう歩いたな〜という思いで今号の完成に至りました。特に、月日が立つほどに、殺風景な景色の中で目に見えるものが少なくなっていくので、寂しさを募らせながら、心の中で「ヒュルリ〜ヒュルリ〜ララ♪」と歌っていました。
12月が近づくにつれ、日中もだいぶ寒くなってきました。
次回もがんばります!
自然を大切に!
【カゲロウ】