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万年青二才の趣味三昧、走る、作る、観る、聴く、憩う。

蘇るアコギ その7「サドルは牛のホネ」

調べてみるとアコギのサドルもまた、ピン同様色々な素材がある事を知った。
プラ、牛骨、タスク、真鍮、などなど。ウチのYAMAHAに最初についていたサドルはプラ製。なんでもGibsonやMartinなどの高級品はサドルもナットも牛骨だという。グレードアップする際は牛骨が多いようだ。

"牛骨"とは読んで字の如くウシのホネのことである。なんでそんなもんを、とも思うが、おそらく当初サドル材は象牙だったのだろう。輸入規制などで希少になり、近い材質のもので代用した、というあたりかもしれない。

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牛骨材は当然プラより高価になる、と言ってもAmazonで2個セット1000円くらいだ。かめへんかめへん、おとうちゃんが昼飯一回抜いたらええねんし、買いよしぃ。

牛骨はプラに比べてクリアで響きも良くなるという。ピンのローズウッドの暖い音とのバランスもとってくれそうだ。ただし寸法の合うのは上面がオクターブ成形済みのものしかない。今付いているサドルは上面がただの半円だから、うまく適合するかどうかわからない。ダメなら元に戻せばいいや、と"ダメ元"で買ってみた(ちょっと意味が違うけど)

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届いた"牛さんの骨"サドルは見た目はプラ製と大して差はない。しかし手に取るとわずかに重い。机の上に落とす時の弾け方やコンッと高く澄んだ音などからは、硬度や密度の高さが感じられる。いかにも音響伝搬特性が良さそうだ。

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いちおうクンクンとニオイを嗅いでみる。むろん無臭だ。削る前は・・・

そう、牛骨は削ると硬いが何よりクサイ、という事前情報が気になっていた。

クサイ?骨つきカルビみたいなエエにおい?と思ったがもちろん違う。削ると何というか鼻にまとわりつく"異臭"がする。ほのかに牛乳というか牛肉というか焼肉屋の厨房というか、牛っぽいニオイもある様な気もするが、主には爪や髪を燃やした匂いに近い。

書くのが憚られるが、「人生最期に行き着く場所」をどうしても思い出してしまう。多分、嫌な人はかなり嫌だろう。自分も活性炭マスクを二重にして削った。

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そして硬い。

プラとは違う。ガラスほどではないにせよ、イチから削ってたのでは日が暮れる。日が暮れてたなら夜が明ける。なので2mm残して切り飛ばすことにした。

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この画像の通り、当初は電動リューターを使うつもりだったが、部屋中にお骨の粉塵を撒き散らすのもなんとなく気色悪い。結局ピラニアソーで切断した。

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夜半に響く骨を切る音、陰にこもってものすごく・・・
ゴーリゴリ、ゴーリゴリ・・・
「肉を切らせて骨を断つ」
とよく言うが、実際に骨を断ったのは生まれて初めてだ。

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奥から手前に 切断前、切断後、元のプラサドル(弦位置のマーキング済)

切断してある程度低くなったサドルを削る。削っても削っても硬いホネ。
「骨身を削る」
とよく言うが、本物の骨を削るのは生まれて初めてだ。

歯を食い縛って手に汗握って削る。
「苦労が骨身に沁みる」
とよく言うが、、、いやもういいか。

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こうして比べると弦とサドルとの接点がかなり違っている。

そうやって苦心して削った骨片をギターに装着する。厚みはややキツキツ位で丁度いい。恐る恐るチューニングをしてみた。いやまあ別に怖がる必要は何もないのだが・・・生前はどんな牛だったか知らんがオマエの骨を無駄にはせんからな、成仏せえよ、と唱えておく。
・・・ンモォ〜オ・・・

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オクターブチューニングは開放弦と12フレットを比較する。5弦だけチューナーで2目盛ほどシャープ側だったが、その他は概ねそれ以下に収まっている。既存のプラサドルの時よりも成績は良いくらいだ。聴感上は全然わからない。まあ、そもそもそんなハイポジションでは弾かないし、弾けない。

肝心の音の方はかなり好印象だ。立ち上がり、余韻の伸び共に良くなった。澄んだ音で、響きの温かみは充分残っていて心地よい。思っていた通りの音だ。ブログ主はもうホクホク顔。
「無駄骨を折らずに済んだ」
とよく言うが・・・いやもういいって・・・

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蘇るアコギ その6「サドルピン」

結局、X'masライブ(昨年の)はエレキ弦のままで敢行した。
YAMAHAはよく鳴ってくれたし歌も演奏も概ねうまくいったと思う。ライブについては、いずれ書くこともあるだろう。「また是非、今度は普通の曲も」とオファーを貰ったからありがたいことだ。

その後の弦交換のタイミングで今度はアコギ用で一番細いというエクストラ・ライト弦を試してみた。結果は上々で、コードも充分押さえやすく、やはりアコースティックギターらしい豊かな音がする。何よりビビり音が激減したのが嬉しい。

さて今回のエピソードはこの弦に交換をする直前のお話だ。

ブリッジピンをマイナスドライバーでコジって抜こうとしたらピンの頭がポロリと取れた。無理な力をかけたつもりはなかったが、ことによると樹脂がモロくなっていたのかもしれない。50年超えの年季ものギターだ。ピンとて劣化していても不思議はない。まあちゃんとしたピン抜きを使え、ということもあるが・・・(この後買いました)

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とりあえず頭の取れたそのピンをなんとか押し込んで弦を張ってみる。音は鳴るには鳴ったが、次回にピンを抜くのに難儀するのは明らかだ。次々とピン頭がモゲていってもかなわない。これはもう全交換だ。

さてネットで見るとピンの材質はプラだけでなく、いろいろあるらしい。ボーン(牛の骨)、タスクと呼ばれる人造骨、真鍮、黒檀、ローズウッドなどなど。これだけあるのは材質によって音が変わるから、だそうだ。
ホンマかいな?まあそこまで追求しいひんケド、と思いつつ聴き比べサイトがあったので聴いてみた。

ほ、確かに変わる。

真鍮はきらびやかで木製はウォーム、と素材のイメージがそのまま音にあらわれていて面白い。プラでも別に安物臭い音ではないが、ローズウッドは「やや高音寄りのYAMAHAギターには補完しあって好適」との事である。

でも、さぞお高いんでしょう?・・・とTVショッピングのおばちゃんモードになって調べると6個セットで1,000〜3,000円。プラで5〜600円だからローズウッドでも安価な方ならそう贅沢でもなさそうだ。高級品はヘッドに貝のインレイなどが入っているが、装飾なんか不要だ。で1,000円のをポチ。

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到着したピンを見るとササクレがあるし一本一本で色が違う。商品画像で見たよりは荒っぽい仕上げに思えてやや不安がよぎる。

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ブリッジの穴に差そうとすると、案の定だよ・・・入ったり入らなかったり、だ。どうやらピンの太さがマチマチなようだ。
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ノギスで測ると・・・。

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バラバラ・・・

ま、安かったのでこんなモンなのだろう。

やおら電動ドリルを取り出す。ここでギター側のホールを広げてはバカ確定である。ブログ主もたいがいバカだが、かろうじてそこまで極め付けのバカではない。

おもむろにドリル刃を外し、チャックにローズウッドのピンを咥え込む。

軽く回してヘッドがくびを振らないように微調整しセンターを出す。ドリルをゆっくり回転させながら側面にヤスリ、サンドペーパーをあてて削って細くしてやる。

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削りすぎてガバガバになったらパーなのでちょっと削っては穴にはめて様子を見る。
6本揃えるのにかなりの時間が掛かった。フゥ・・・やれやれ万事こんな調子だ。ギターってやっぱり家内制手工業的な作業が多いなぁ、と嘆息。

「レモンオイルに浸し、乾拭きして一晩おくとよい」などという情報もあった。強度が上がるらしい。なるほど、このピンはずいぶんと乾燥している。しかしレモンオイルなどという気の利いたものは普通の家にはない。

ウチも普通の家だからオイルと言えばまず台所方面になる。キャノーラオイルとかオリーブオイルとか、、、どう考えても不向きだろう。ホースオイル(馬油)やエンジンオイルなどのガレージ方面もあるが、ギターに塗るのは気が進まない。木彫オイルがどこかにあったはずだが、必要な時に限って一番向いてそうなヤツが雲隠れしやがるのは世の常である。

レモンオイルはベビーオイルでも代用出来る、というネット情報を見つけたので家人の化粧品箱をコッソリあさって拝借してきた。こういう時、いささかの背徳感を感じるのは何故だろう。ジョンソン&ジョンソンではなく、どこぞのスーパーのプライベートブランドだった。まあ成分に大差あるまい。

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一番手前のピンがオイルに漬けたもの。

ピンの色が俄然濃くなりローズウッドというよりはエボニー(黒檀)に近い色になったが、1本1本色が違うよりはいい。一晩乾燥させて古布で磨くと黒光りして引き締まった。強度については、、、今のところどうだかわからない。
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とりあえずピンを差し、弦を戻して弾いてみる。

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音出しした途端に、ぬお!?となった。ウォームでふくよかな音が響き、深い余韻が続く。ピンなんて弦が抜けへんために突っ込んだぁるただの棒やん、などと軽く見ていたが、これほど音色が変わるとは・・・正直驚いた。

ってことは、弦に直接触れているサドルやナットなどを変えたらどうなるんだろう?無性に試してみたくなったブログ主、こうなるとやめられない止まらない・・・

蘇るアコギ その5 「エレキ弦」

リペアの首尾

サドルを削って弦を張替えてしばらく様子を見たところ、チューニングは安定してきた。弾いてみると音の響きや深さも存分に感じさせてくれる。その点を比べれば自分のミニギターとはずいぶん違う。

そしてちょっと驚くほどに音量が大きい。昔持っていたギターだってこんなに大きな音はしなかったと思う。大きなスペースで演奏するならやはりこのYAMAHAだ。放置されていた50年前のギターがここまで鳴ってくれたのだから今回のセルフビンテージリペアは上出来だ、いや成功といっていいだろう。

ただし強くコードストロークするとたまに低音弦がビビる。弦高を下げることでメーカーが恐れる事態が起こったわけだ。ただまあ自分はさほど気にならない。聴きようによっては音に迫力がある、とも取れる。ビビィンと鳴っても「ウム、元気があってよろしいッ!!」とで言って笑って澄ましていればいいのだ。

ライブに向けての練習

X`masソングは簡単なコードが多い。そしておおむね短い。ギター出戻り組の復活ライブにはちょうど良いリハビリとなる。全部ストローク弾きでいけそうだ。練習する内にコードチェンジもうまくなってきて、指先のタコも固くなってきた。

・・・でもねえ、指が痛くてかなわんのよ。

ギター初心者だったニキビ面のころを思い出す。こんなだったよなぁ♪ああ〜、それが青春♪

1時間も弾いてると指がズキズキ痛んできてそれ以上はツラくなる。毎日少しずつやればいいのだろうが、学生時代と違ってそんなに暇はない。歳もくって、夜遅くにギターを弾いては近所迷惑だ、という分別も付いてきた。休日に集中的に弾くしかないのだが、困ったことだ・・・と、じっと手を見る。

手を見て困っていたらもう11月(一年前の話です)ギターの修理なんかしてる場合じゃなかった。ミニギターでも何でもいいからともかく練習しておけば良かった。磨くべきはギターではなく腕の方だったのだ・・・などとうまい事言ってヘラヘラ笑ってみたが、事態は変わらず後の祭り。

エレキ弦

そんな繰言を言ってたら親友のハラッチ君は「エレキの弦張ったらエエねん」とアドバイスをくれた。エレキ弦は細いから押さえやすいのだそうだ。アコギにエレキ弦、そんなことが可能だとは!これまた知らなかったのでネットで調べたことろ、「裏技的にはアリ」とか・・・

×ばつ弦でい!ベラボウめえ、音が違わぁ音が!」と言う人もいる。そういう意見はそういう意見として上から下へスクロールして流しておくとホラもう見えない。他人の固定観念や旧来の精神主義に囚われては窮屈だ。今や令和、多様性の時代である。

エレキ弦のデメリットは細いぶん音が軽くなる、ということは少なくとも分かった。音が多少軽くても、指が痛くて弾けない→練習出来ない→挫折・・・よりははるかにマシだろうというのが自分の判断だ。

あとはどれ程カルくなるのか、その音を受け入れられるか、られないか、ものは試しとエレキの弦を取寄せた。

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開封してみる。おお、ホントだかなり細い。1弦など赤子の髪の毛ほどである。弦の色は銀色で、材質はニッケルだという。さらに三弦が巻き弦ではない。これらはみな初めて知ったことだ。この歳になって見知らぬ世界に接した気がしてなんだかワクワクする。

張ってみると、柔らかくてとても押さえやすい。これなら指も痛くなりにくいだろう。練習にはもってこいだ。音は確かにシャリリーンとかなーり軽い感じになった。アコギらしくはないのだろう。そらまあエレキの弦張ってんねんから当たり前やん。

個人的にはそんなに邪道邪道と忌み嫌う程の音でもない様に思う。これは好みもあるし曲や弾き方にもよるだろう。アルペジオで弾く場合はさほど気にならない。硬めのピックで拓郎や河島英五の曲をハードにかき鳴らす、というなら確かに向かないかもしらん。気に入らなければ練習だけエレキ弦でして本番前にアコギ弦に戻してもよい。今回はX`masソングやし華やかでエエやん、と採用決定。

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ただし弦が細いデメリットもやはりある。細い3弦は使い込んだナットに深々と食い込んでいるのが気になる。仔細に聞けば残響が短くフンずまっている様な音だ。ピックでストロークすると低音弦のビビりがさらに大きく出てしまうのが一番の問題。これだけビジョンビジョン鳴るとさすがに耳触りだ。細い弦でテンションが低く振幅が大きいせいだろう。とりあえずサドルの下に0.5mmのプラ板をスペーサーとしてカマしてみた。

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結果、ビビリ音は緩和された。弦高は上がったはずだがそれでもまだ押さえ易い範囲。スペーサーは音響的にはヨロシクないのだろうが、エレキの弦を張っている時点ですでに正道からは足を踏み外しちまっているオイラなのさ。今更どうということもあるまい。自分の駄耳では聴き比べてもあまり差は感じない。総合的なサウンドとしてはビビりまくるよりはマシ、これが自分の判断だ。

しかし、やはり弦高調整は微妙なものだ、と再認識した次第。弦高は使う弦や演奏スタイル、曲目、ギターの腕前などで最適解が変わるものである。普通の初級者は信頼できるショップに持ち込むが吉である、そこに変わりはない。

蘇るアコギ その4 「サドル」

前回の更新から随分時間が経ってしまった・・・

(ギターリペアが途中で挫折した訳ではなく、単にブログ書くのが遅れただけです)

弦高調整の段

弦高とは指板から弦までの高さのこと。高過ぎるとコードを押さえる時に左手の指の力が余分に必要で、弦高を低く調整してやれば指は楽になる。

言われてみれば至極当たり前のことだが、ネット情報で知るまではそんな調整が出来るなんてそもそも思いもしなかった。コードチェンジも下手だし指のタコもまだないギター出戻り組の初級者な自分が即座に食い付いたのは言うまでもない。

アコギの場合はサドルという白い部品を外して高さを削る。根元のネジをクリクリ回せばOK!のエレキと違ってチョクラチョイとはいかないのだ。

弦高ラクラク目安は6弦12フレット位置で3mm以下という。これもネット情報だ。このYAMAHAギター、発掘された時点の弦高は6mmはあったろうか。今となってはとても弾きにくい部類なのかもしれないが、自分が最初に買ったギターもこんなもんだったように思う。

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ま、物は試し、弦高調整とやらをやってみよう。

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まずブリッジの白いバー状のものをドライバーの先でコジってやる。ポロリと取れた白いプラスティック部品、コイツがサドル君だ。

[画像:f:id:sigdesig:20250929075359j:image](これは多分削った後のサドル)

弦高は3.5mm位を目標とする。削りすぎたら元に戻せない。既にネック調整で0.5mmほど下がっているから削るのは2mmと決めた。

6弦12フレット位置での弦高はサドルで削る分ほどは低くならない。弦はサドルからヘッドに向かって傾斜しているからだ。正確な弦高は削ったサドルをセットして弦を張って実測して初めて分かる・・・は?タンジェント?誰それ?偉い人?

まずサドル側面に目安のラインをマジックで引いておく。机に敷いた荒目のサンドペーパーの上で削る。底面はフラットに保つことが求められる。木製のブリッジと接するのでガタがあっては綺麗な音が出ないだろうことはシロートの自分でもわかる。

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普通にガーシガシガーシガシ削ってると意外と均一にならないものだ。どうしても斜めになったり前後にわずかにRがついたりする。自分は"普通"から最も掛け離れた"プラモおたく"という種族なのでこういう加工についての経験値は割とある。

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なので色々工夫する。材料の両サイドに当て金を添わせる。あるいは何往復かごとに持つ方向を替えてやる。時折、金属板を底面に立てて垂直を見たり、光に透かして隙間を確認したりもする。

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逆にプラモおた的には「多少ガタがあっても接着剤で強引に固定してもーたらエエやん」と思わないでもないが、それでは再調整する時に剥がせなくなる。事後の調整や音響的な事も考える楽器のリペアは、見た目だけ整えればいいプラモデルとは違う。

削っては確認するの繰り返し。至ってマニファクチュアな作業だ。

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ともかくも削り終わってサドルを元の位置に戻す。ついでにペグも全て取り外し金属磨きで磨いた。作動にガタが出ているのもある。ギアにシリコングリスを塗って、もう一度組み付けてやる。交換した方がいいのだろうが大層な事なるからとりあえず将来の課題とする。最後にボディを軽く掃除。新しい弦を張った。ヨシ、弾いてみよう。

おお、これはイイ。新しい弦だからもあるが、曇りが取れてよく鳴る様になった。弦高が下がって(実測3.5mm弱)ずいぶんと弾きやすくなった。

ともかく苦手な"F"もそこそこ(あくまで"そこそこ"だけど) 弾けるようになった。昔の自分があれほど苦労したのは一体なんだったのだ!こんなに楽になるんなら弦高なんかハナから低うして売ってくれたらええやんかぁ、と愚痴の一つも言いたくなる。

むろんメーカーにも言い分がある。

「弦高を下げるとストローク弾きの際、稀にビビり音が発生する事がありマス」
「それでは初期不良とのお叱りを受けることになりかねまセン」
「従いまして、ほとんどのアコースティックギターは弦高は高目で出荷されてオリマス」

なるほど売る側のリクツとしては理解出来る。しかし弦高が高くて苦労するのは初心者だ。指が痛い、Fが押さえられない。ニキビ小僧だった自分はすぐに"Fの壁"にブチ当たり、それ以降は全く上達せずフェードアウトした、これは前回書いた通り。リクツも大人の事情も何にも知らず、Fが弾けないのは単に自分が下手なだけ、

「Fが弾けへんのは、練習が足りひんねん」

そう言われてきたし、自分でもそう思ってきた。

前回書いた通り、ギター初心者のうち9割が一年以内に挫折している、というギターメーカーの調べがある、その挫折の要因の一つが弦高にあり、実はそれが調整で回避可能なものだったとしたら、いささか残念な話ではないだろうか。

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最近では初心者向けアコギの弦高を低く調整してから売ってくれている楽器店もあるらしい。とても良いことだと思う。メーカーも説明書や予備の少し低いサドルを付けるなりの工夫があってもいいのではないだろうか。挫折率9割が8割になるだけで将来の顧客層は確実に増えるだろう。

蘇るアコギ その3 「ネック」

それではアコギ補修の実践編スタート。

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反ったネック調整をまずトライ。

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↑ 赤の補助線を引いて反りがよくわかる様にしてみたが・・・画像だとよくわからない・・・

反りの補修方法を再度事前にネットで情報収集。まずヘッドの三角のプレート取り外してそこのボルトを回す。YAMAHAは特殊工具が必要とのこと・・

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であったが・・・

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実際にはソケットレンチで事足りた。何mmだったかは失念(・・・役に立たぬblogよのう)

右に少しづつ回して目視で反りが矯正されたかな、位でやめて数日放置。それを2回ほど。

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全体的にはまずまず、ではないかなあ、たぶん、程度にはなった。よう知らんけど。ただし6弦側の一ヶ所でわずかに折れ曲がっている状況は変わりない。左右で違う、ということはおそらくこれは多少のねじれも発生しているのだろう。ウネッている様に見えないでもない。

この位なら許容範囲だぜ、なのか、こいつぁヒデえや!なのかはギターリペア知識も経験もない自分には全くわからない。しかし、"ねじれ"や"ウネリ"はロッド調整程度では治らないことはわかる。(テンションロッドの構造を知るまでは何もわからなかったが)

ギターのネックはそもそも木で作った細長い部材だ。そいつの片側に金属の線を6本も張って、しかも糸巻きでギンギンに引っ張っているわけだ。そんな状態で半世紀を過ごしてきたネックが多少反っていたとしても無理もないことだろう。場合によっては捻れたり、途中で折れ曲がったりしてもおかしくない。

木は"暴れる"(と建築屋は表現する)ものだ。

次は指板の凹み。

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おそらく爪で掘れたのだろうが・・・

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ギター弾く時に爪、切らなかったんだろうか・・・

ともあれさすがにこれでは ちょっと弾きづらそうだ。削って平面出すには穴が深すぎるから、埋めることにする。さて何で埋めるかだが、これも素人判断ではなくネット情報をいろいろ漁る。木工パテなどでいいようだ。パテを事前にダークブラウンに着色しておいて、硬化したら指板のカーブをキープする様にサンディング・・・

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・・・ウ〜ン、ちょっとまだらになってしまった。見た目だけで言うと前より悪くなったかもしれない。元の指板の塗料が剥がれたのだ。このへんがシロートの悲しさ。この上から油性塗料で厚めにカバー塗装したくなるところだけれど、染色系塗料で軽く着色だけしておく。

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さしあたり弾くのに支障はないので自分はこれで良し、とした。"ぼろギター"感は残っていても別に構わない。 レストア趣味として新品同様のピッカピカにして飾って置きたいわけではないのだ。

フレットの補修。

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弦の当たる部分が削れている。

削る前に指板をマスキング。工程の順序が逆だった。ここでも見た目よりちゃんと弾けることが大前提。やりすぎるとフレットが低くなってしまうから、軽く均す程度に留める。フレットも微妙にカーブしているので、それを平坦にしてしまわぬよう注意しながら削る。本来なら全フレットを打ち替えるのだろう。

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マジックで塗っておくと削り残しがよくわかる。

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軽くペーパーがけしてピカールで磨き上げておいた。充分以上に光り輝いてくれている。

ネック周りの補修はこんなところで。

蘇るアコギ その2

さて前回は友人の綺麗なお姉さんとYAMAHAギターの話であった・・・

(メンドくさっ、と飛ばして来た人、気になる?)

今回は義兄のYAMAHAのアコギの話である。

このギター、よく見ると、かなり弾き込んだ形跡がある。ホールの周りはピックの跡で塗装が剥げ、指板は爪で掘れてしまってあちこち凹んでいる。

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こんなになるまで自分は弾かなかったなぁ・・・

ことアコースティックギターに挫折しなかったという点においては義兄は自分の中では称賛の対象である。

さて肝心のネックは特に6弦側が付け根の辺りから上側に反っているのが目で見てもわかる(順反り、というそうだ)

ましかし、チューニングし直して弾いてみると鳴ることは鳴る。なんだかフンづまった様な変な音だが、何十年も張られっぱなしの弦だろうから無理もない。別にチューニングが狂いまくるわけでもなし、ネックを直せば充分使えそうな手応えだ。よしよし。

ホール内のラベルにはYAMAHA FG301とある。

調べてみると、70年代に生産されたものだそうで、当時価格は3万円。同い年の義兄の持ち物としては年代的にも価格的にも符合する。型番の上二桁の数字は価格を表していて同時期のFG201というモデルなら2万円、FG251なら2.5万円だという。高嶺の花と思っていたYAMAHAにもまずまず普及価格帯の入門機が当時も存在したのだ。ふむ。

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初ギターを手にした例の楽器コーナーにFG251などはなかった(のだろう)それはたまたま品切れだったか、はたまた利益率やバックマージンなどのよくある大人の事情でだったのかは知れない。今となってはどうでもよいことだ。

思えばそういう巡り合わせだったのだろう。

眼前のYAMAHAギター見ると遠い目になる、コレと同じものが置いてあったら、もしそれを買っていたら・・・

いやいや、ギターへの愛着がわかぬのをブランドに転化するのは卑怯者の言い訳だ。YAMAHAだったらFで挫折せぬ、という道理はない。自分がヘタレだっただけの事だ。ただ少なくとも後々の嫌な思いだけはしなくて済んだかもしれない、とは思う。

このYAMAHA、是非とも修理したくなってきた。

ネットを見ると同じYAMAHAのFGでももう少し前のものだと真性ビンテージ扱いだが、その後の大量生産になったこのオレンジラベルには価値はない、と記述されている。

どシロートがセルフリペアするならむしろその方が気兼ねがなくていい。 別に誰かに自慢するわけでもなし、最悪、台無しにしてしまってもミニギターがあるわけだからライブは問題なく執り行える。

ネックのロッド調整はどうしたらいいか、例によってネットで情報収集する。まあ自分でもなんとかなりそうだが 念の為バンド経験のある親友ハラッチ君に尋ねてみる。

「そら、楽器屋持って行ったほうがええデ」きり言わない。

なるほどそれはたしかに楽器屋に丸投げした方がカシコイには違いない。 どうせならヤフオクやメルカリで真性ビンテージ物を調達してくれば値打ちも出るだろう。

そうではなく自力独力で修理する、そこに趣味としての意味がある。義兄から家人へと譲られてきた古いギターである、世間的には無価値でも自分にとっては充分値打ちがある。

と意を決してのセルフビンテージ、はじまりの段なのでございます。

蘇るアコギ その1の2

YAMAHAのギターが羨ましかった。。。。

(ここから年寄りのブログ主の回想に入ります。「うわメンドくさっ」と思う方は飛ばしてください)

ブログ主も自らのアコースティックギターは所有していた。初めてのギターを買ったのは中学の頃。確かダイエーかどこかの大型店の楽器コーナーであったと記憶する。

「これなんかどうでしょうか?」とネクタイをした小柄な店員が慇懃無礼にギターを一本差し出してきた。

「どうでしょうか?」と言われてもギターの良し悪しなどチューガクセーにわかるはずもない。ギターを抱えるのも初めてで、それだけでもう緊張して頬が紅潮している坊やだ。メーカー名は見聞きしたことのないものだったが、チューガクセーが知っているブランドと言ってもYAMAHAくらいのものである。(中島みゆきYAMAHAのギターだった)

当時のカタログより

なので

YAMAHAはありませんか?」と尋ねた。

店員の返答するには

「あるにはありますが、あれは上級モデルでして・・・」

オブザーバー兼財務管理者として同伴してきた母親の顔に不興の色が差す気配を背中で感じとった。

「初めてでしたらこの辺りが・・・」

と言われてはそれで了見するほかない。値札はたしか二万か二万五千円かそこらだったと思う。お年玉貯金を取り崩して払ったがそれでも中学生には結構な買い物となった。帰り際にもやっぱり慇懃無礼な店員が額に汗を浮かべながら、やけにチラチラ周囲を伺っていたのがなぜか今でも印象に残っている。

それでも最初のうちは嬉しくて嬉しくて毎日練習したものだ。生の楽器の音は心地よく、自分で自分の好きな曲を弾ける楽しさは新鮮だった。70年代中期、世はフォーク、ニューミュージックブームだった。

中2のギター初心者はしばらくしてギターの教則本などを買って読む様になる。そこには色んなギターのブランドが載っている。YAMAHA、モーリス、ヤイリ、タカミネ・・・自分のギターのブランドはどこにもない。そしてギブソンだのマーチンだのの存在を知る。そして自分のギターのヘッドのメーカーロゴが実はマーチンのソックリさんだと気づく。

←マーチン様

←おいらのギター(ネットで拾った同メーカーの画像)

自分はやや悄然となった。

むろんアジアの島国のマイナーメーカーの初心者向けの普及品だ。ギターの王様「マーチン」とは縁もゆかりも微塵もない。

自分のギターが恥ずかしくもなった。

ギターとしての良し悪しは自分はわからない。価格は桁違い以上だからメーカーもまさか購入者を騙すつもりでもないだろう。なのにロゴの見た目だけ意味もなく猿真似する。その志の低さというか中途半端な心根の貧しさというか、そういう所が嫌いになった中2の春だった。

その頃なぜか自分の家によく出入りする同級生がいた。そいつ自身はギターを弾かないが、自分のギターを指さしては「パチもんギター」だの「にせマーチン」だのと嘲笑する。そうして「俺の姉貴のギターなんかYAMAHAやし」と得意げに話すのである。家が金持ちのブランド野郎だった(余談だが彼の姉は美人だ)そいつの事(だけ)が嫌いになった中2の春だった。

もっとも自分のギターの腕の方はブランドロゴ以上にお笑い草だったから話にならない。結局"F"で挫折してしまったのはご他聞に洩れない。一度足を引っ掛けて倒してしまって3弦のペグがひん曲がりチューニングが常時ズレる様になった。それからは手に取ることも少なくなった。

就職の時だか引越しの時だかの大型ゴミに出した、はずだがその記憶すら曖昧なのは、あまり愛着のなかった証かもしれない・・・

とまあ自分のギターに関しての想い出はこんな感じである。

「ギター初心者の9割は一年後には挫折している」

フェンダーという有名ギターメーカーの調査結果だそうだ。なので大方の人は自分と似た様なもんではないかと思う。

さて、次は義兄のヤマハギターの修理の話となる・・・

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