蘇るアコギ その7「サドルは牛のホネ」
調べてみるとアコギのサドルもまた、ピン同様色々な素材がある事を知った。
プラ、牛骨、タスク、真鍮、などなど。ウチのYAMAHAに最初についていたサドルはプラ製。なんでもGibsonやMartinなどの高級品はサドルもナットも牛骨だという。グレードアップする際は牛骨が多いようだ。
"牛骨"とは読んで字の如くウシのホネのことである。なんでそんなもんを、とも思うが、おそらく当初サドル材は象牙だったのだろう。輸入規制などで希少になり、近い材質のもので代用した、というあたりかもしれない。
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牛骨材は当然プラより高価になる、と言ってもAmazonで2個セット1000円くらいだ。かめへんかめへん、おとうちゃんが昼飯一回抜いたらええねんし、買いよしぃ。
牛骨はプラに比べてクリアで響きも良くなるという。ピンのローズウッドの暖い音とのバランスもとってくれそうだ。ただし寸法の合うのは上面がオクターブ成形済みのものしかない。今付いているサドルは上面がただの半円だから、うまく適合するかどうかわからない。ダメなら元に戻せばいいや、と"ダメ元"で買ってみた(ちょっと意味が違うけど)
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届いた"牛さんの骨"サドルは見た目はプラ製と大して差はない。しかし手に取るとわずかに重い。机の上に落とす時の弾け方やコンッと高く澄んだ音などからは、硬度や密度の高さが感じられる。いかにも音響伝搬特性が良さそうだ。
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いちおうクンクンとニオイを嗅いでみる。むろん無臭だ。削る前は・・・
そう、牛骨は削ると硬いが何よりクサイ、という事前情報が気になっていた。
クサイ?骨つきカルビみたいなエエにおい?と思ったがもちろん違う。削ると何というか鼻にまとわりつく"異臭"がする。ほのかに牛乳というか牛肉というか焼肉屋の厨房というか、牛っぽいニオイもある様な気もするが、主には爪や髪を燃やした匂いに近い。
書くのが憚られるが、「人生最期に行き着く場所」をどうしても思い出してしまう。多分、嫌な人はかなり嫌だろう。自分も活性炭マスクを二重にして削った。
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そして硬い。
プラとは違う。ガラスほどではないにせよ、イチから削ってたのでは日が暮れる。日が暮れてたなら夜が明ける。なので2mm残して切り飛ばすことにした。
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この画像の通り、当初は電動リューターを使うつもりだったが、部屋中にお骨の粉塵を撒き散らすのもなんとなく気色悪い。結局ピラニアソーで切断した。
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夜半に響く骨を切る音、陰にこもってものすごく・・・
ゴーリゴリ、ゴーリゴリ・・・
「肉を切らせて骨を断つ」
とよく言うが、実際に骨を断ったのは生まれて初めてだ。
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奥から手前に 切断前、切断後、元のプラサドル(弦位置のマーキング済)
切断してある程度低くなったサドルを削る。削っても削っても硬いホネ。
「骨身を削る」
とよく言うが、本物の骨を削るのは生まれて初めてだ。
歯を食い縛って手に汗握って削る。
「苦労が骨身に沁みる」
とよく言うが、、、いやもういいか。
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こうして比べると弦とサドルとの接点がかなり違っている。
そうやって苦心して削った骨片をギターに装着する。厚みはややキツキツ位で丁度いい。恐る恐るチューニングをしてみた。いやまあ別に怖がる必要は何もないのだが・・・生前はどんな牛だったか知らんがオマエの骨を無駄にはせんからな、成仏せえよ、と唱えておく。
・・・ンモォ〜オ・・・
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オクターブチューニングは開放弦と12フレットを比較する。5弦だけチューナーで2目盛ほどシャープ側だったが、その他は概ねそれ以下に収まっている。既存のプラサドルの時よりも成績は良いくらいだ。聴感上は全然わからない。まあ、そもそもそんなハイポジションでは弾かないし、弾けない。
肝心の音の方はかなり好印象だ。立ち上がり、余韻の伸び共に良くなった。澄んだ音で、響きの温かみは充分残っていて心地よい。思っていた通りの音だ。ブログ主はもうホクホク顔。
「無駄骨を折らずに済んだ」
とよく言うが・・・いやもういいって・・・