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【速報】水俣病再懇談 初日の日程終わる 10、11日も引き続き関係団体と懇談

2024年07月08日 18:15
[画像:再懇談で発言する伊藤信太郎環境相=8日午前9時40分、熊本県水俣市のもやい館]
再懇談で発言する伊藤信太郎環境相=8日午前9時40分、熊本県水俣市のもやい館
〈8日午後6時10分更新〉水俣病被害者らと伊藤信太郎環境相の懇談で被害を訴える最中にマイクが切られた問題を巡り、被害者団体らが要望して8日開かれた再懇談は、初日の日程を終了した。

熊本県水俣市の交流施設「市総合もやい直しセンターもやい館」などであり、被害者側の6団体が参加した。

伊藤環境相は水俣病の理解を深めようと、1956年の水俣病公式確認のきっかけとなった「1号患者」の田中実子さん(71)と会い、胎児性患者らの共同作業所も訪問した。

3日間の日程で、10、11日は他の2団体と懇談する。

◇環境相がマイク切りを改めて謝罪「真摯に耳を傾ける意識が欠落していた」

〈8日午前8時50分更新〉水俣病被害者らと伊藤信太郎環境相の懇談で、被害を訴える最中にマイクが切られた問題を巡り、被害者団体らが要望していた再懇談が8日、熊本県水俣市で始まった。現地を訪れた伊藤環境相と被害者側の6団体が、患者認定審査の基準見直しや救済制度の充実について意見交換する。

伊藤環境相は懇談会の冒頭でマイクオフについて改めて謝罪。「発言に真摯(しんし)に耳を傾ける意識が欠落していたことは大変遺憾。大いに反省している。改めて十分時間をかけて、懇談の場を設け、さまざまなお話しを伺い、丁寧に意見交換をさせていただきたい」とあいさつした。

同日は水俣病への理解を深めようと、第1号患者宅や胎児性水俣病患者の作業所も訪問する。10、11日には他の2団体と懇談する。

問題となった5月の懇談が8団体合同で1団体あたり発言時間が3分だったのに対し、再懇談では、合同懇談とは別に各団体と対話する時間を設定。発言時間の制限もなくした。

◇団体側「形式的ではない再懇談を」

〈8日午前8時59分更新〉患者団体などでつくる水俣病被害者・支援者連絡会の代表代行、山下善寛さんは「水俣病問題への解決を進めるのが再懇談の目的ではないのか。再懇談の日程調査の時点で、連絡会は不信を抱いている。8年前から出している共同要望書に環境省から初めて文章回答があったが、中身はゼロ回答。形式的ではない再懇談を期待したい」

◇伊藤環境相「2年以内に健康調査を開始」

〈8日午前9時13分更新〉団体側が5月1日に提出した「共同要求書」への回答の中で伊藤環境相は、健康調査について脳磁計やMRIを活用した手法が一定の精度に達し、健康調査のあり方を検討する研究班を立ち上げているとして「専門家の議論も踏まえながら、遅くとも2年以内をめどに健康調査を開始できるように、必要な検討・準備を進める」と話した。

◇団体側「前向きな回答をお願いしたい」

〈8日午前9時26分更新〉伊藤環境相の「共同要求書」への回答に対して、団体側は「2016年に初めて共同要求書を出して初めての回答をいただいた。ただ内容はこれまで環境省と話をしてきたことから一歩も出ていない。今日のゼロ回答はこれからのやり取りの出発点としてはあるかもしれない。今日の懇談を踏まえて前向きな回答をお願いしたい」

◇胎児性・小児性患者、環境相に切々と不安訴え「支えてくれた親世代が老齢、他界...もう一度、もう一度、認定制度を見直して」

〈8日午後0時58分更新〉水俣病被害者らが伊藤信太郎環境相との懇談で、被害を訴える最中に発言を遮られた問題を巡り、被害者団体らが要望していた再懇談が8日午前、熊本県水俣市で始まった。団体側が5月1日に提出した共同要求書の回答で、伊藤氏は脳磁計やMRIを用いた健康調査の手法が一定の精度に達したとし「遅くとも2年以内をめどに調査を開始できるよう、必要な検討・準備を進める」とした。

患者認定制度の見直しなどを求めていた団体側からは、「ゼロ回答だ。形式的でない懇談を」「2016年の要求書提出から初の回答。これを出発点に前向きな答えを期待したい」などの声が上がった。

伊藤氏は関係6団体との再懇談の冒頭で改めて謝罪し、「発言に真摯(しんし)に耳を傾ける意識が欠落していたことは大変遺憾。大いに反省している」と述べた。

1956年の水俣病公式確認のきっかけとなった「1号患者」の田中実子さん(71)宅や、胎児性患者らの集会施設を訪問した。

5月1日の懇談には8団体が参加した。団体側の発言中、複数の発言者のマイクを環境省側が切った。伊藤氏は同8日、現地を再訪して謝罪した。

再懇談は、10、11日も含めた計3日間で、鹿児島、熊本両県の計8団体と予定する。



伊藤環境相は熊本県水俣市のもやい館での合同懇談会後、水俣病公式確認のきっかけとなった「1号患者」の田中実子さん宅を訪問。その後、「ほたるの家」(同市)で胎児性・小児性患者と面談した。胎児性・小児性水俣病患者は福祉制度の充実や患者認定制度の見直しを訴えた。

しかく 岩本昭則さん(73)

水俣病患者ということで差別を受け、職を転々とした。手のしびれや体調不良で働くことも難しかった。厚生年金にも入れなかった。胎児性・小児性患者を支えてきた親世代が亡くなり、みんなが不安や寂しい思いをしていることを分かってほしい。親の協力がなくなり、生きていくのが大変だということを頭に入れてほしい。

しかく 坂本しのぶさん(67)

胎児性水俣病で苦しんできた。これからのことを思うと不安です。同世代の患者の人たちも同じ思いです。夜になると不安でいっぱいです。家族も私の面倒を見るのが大変になってきました。自分たちも精いっぱい、家族もです。いつまで元気でいられるか、歩いたりできるか分からない。まだ水俣病と認められていない人もたくさんいます。ちゃんとしてください。

しかく 下田良雄さん(76)

2013年の最高裁判決をもとに、認定制度を最初から見直してほしい。水俣病に認定されていない人がたくさんいる。もう一度、力を入れ直して、苦しんでいる人をもう一度、救ってもらいたい。

◇「いま、声を上げなければ」...名前や顔出しを避けてきた患者も環境相に向き合った。急激に進行する身体低下の経験明かす

〈8日午後2時40分更新〉胎児性水俣病患者らの訴えを直接聞くため、伊藤環境相は午前11時過ぎ、水俣病患者らの共同作業所「希望未来」を訪問。胎児性水俣病患者ら6人が認定基準の見直しや急激に身体機能が低下する症状について自身の経験を説明した。

加藤タケ子代表理事によると、6人のうち2人がこれまで名前や顔出しを避けてきた。「生命に関わる問題だし、同じように苦しんでいる人のためにも声を上げなければ」と参加したという。テーブルを囲むように座り、対話形式で進めた。

水俣市茂道出身の浜村重俊さん(68)は、幼い頃から頭痛や平衡感覚に問題を抱えていたが、25歳になるまで胎児性水俣病患者と認定されなかった。「水俣病は学校生活にも影響を及ぼし、勉強ができないと教師からはビンタを食らった。今でも読み書きは苦手」と吐露した。

患者は症状が重い順にA〜Cにランク付けされ、補償額も異なる。浜村さんは患者認定された時、原因企業チッソと補償協定を結んだ。補償ランクは最も低いCだった。その後、他の病気を併発し水俣病の症状も進行。2009年にBランクに変更されたが、さらに症状は悪化。21〜23年に2回、Aランクへの変更を申請したが、全て断られた。今年5月、3回目の申請をした。「補償ランクが上がっても、健康な体は取り戻せない。本当に毎日しんどい。同じように苦しんでいる人のために一矢報いる気持ちで参加した」と話した。

◇「胎児性の子を産んだ母がなぜ認定されない」「差別を恐れ母は認定申請できなかった」

〈8日午後2時40分更新〉鹿児島県出水市境町出身の長井勇さん(67)は10年11月から身体機能が急激に低下し、車椅子を自分で操縦することができなくなった。「祖父母も父も認定患者。胎児性の子どもを産んだのに母親が認定されていないのはおかしい」と涙ぐんだ。

身体障害者手帳を幼少期に交付された熊本県八代市東陽町出身の藤枝静香さん(62)は、母親が水俣病診断されたことを機に、急激に身体機能が低下した自らを胎児性水俣病患者ではないかと疑い始めたという。19年に患者認定の申請をしたが、「患者が認められていない地域」と棄却された。「差別を恐れて母は認定申請できなかった。自分が魚を食べたせいだと泣いていた。目の前の患者としっかり向き合って」とあふれる思いを記した文を読み上げた。

切実な訴えを受け、伊藤環境相は「肉体的な苦しみだけでなく、差別や偏見の苦しみも大きかったと感じた。亀裂や差別意識をどうなくしていくか。苦しんでいるみなさんが慈愛の気持ちをもって太陽のように照らしてくれている」と涙ながらに話した。患者と伊藤環境相が笑顔を交え、談笑する場面もあった。

◇午前中の懇談を終えた環境相「患者の苦しみ多様。一筋縄では解決できない」

午前中の懇談を終えた伊藤信太郎環境相の所感は以下の通り。

膝を突き合わせてお話しする機会をいただき、ありがとうございました。苦しんでいる環境をつぶさに聞き、胸が締め付けられる思い。水俣病の苦しみは共通項もあるが、多様であると感じた。肉体的にも社会的にも多様だ。特に心を打たれたのは自分が水俣病で苦しんでいるにも関わらず、苦しんでいる他の人への慈愛の精神で助け合うことに感動した。水俣病問題は多岐に渡り一筋縄には解決できない。顔を合わせて話をすることで理解を深め、水俣病問題を前進させるエネルギーと信頼関係の構築につなげたい。
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