「新しい公共」取組み事例

未来に向けた関・矢立地区の持続可能な国土開発事業

団体名

しかく特定非営利活動法人 水守の郷・七ヶ宿

ホームページ

しかくhttp://www.mizumori7.org

所属/ 担当者名

しかく理事長/海藤 節生

連絡先

しかく電話 0224―37−2171
しかくE-mail setok3333@hotmail.com

活動地域

しかく宮城県刈田郡七ヶ宿町関矢立地域

活動地域の概要

しかくこの町は古くより宿場町として旅人たちを支え栄えて きた。その後、農林業を中心に人口が増加昭和35年には 人口5177人にも達した。産業構造の変化により人口は 減少に向かう。近年では七ヶ宿ダムの建設工事に伴って 158世帯がダム湖に沈むこととなりその結果、多くの人々 が町外へ移り住むこととなった。
1. 人口1820人(しろさんかく195人)
2. 世帯数720世帯(しろさんかく38世帯)
3. 高齢化率41.6%(+5.8ポイント)
4. 年齢別人口構成の推移は10〜19歳 の減少が特に際立ち、75歳以上の高齢 者の人口に占める割合が増加している
5. 公共交通は町民バスが町内を運行、 他にJR白石駅と七ヶ宿町を連絡する ミヤコーバスが一日6往復(休日は5往復)の 割合で運行している
((注記)数字は平成21年4月1日現在、 ( )内は平成11年3月末比)

【位置図】

【ダム湖に沈んだ町に隣接する集落】

活動地域の課題

しかく宮城県民183万人の水瓶として水質日本一を目指す我が町は国土保全に努め、水源地を適正に管理していかなければならない。先日、地域住民に対し実施したヒアリング調査の中で「住む人たちの仕事が変わったために地域のつながりが無くなっていった」という回答があった。例えば稲作であれば農繁期にはネコの手も借りたい。地域に住む人たちが同じ仕事を営んでいた時期には、地域の人たちは暮らしの中で助け合い、支えあってきた。日常の中にコミュニティが存在し、同時に地域の環境が保全されてきたのである。地域の担い手が消え、山村は都会同様、個人中心の社会へと変化しつつある。「働き」の形と同様に消費の形も変化を遂げた。暮らしの中で生活する人たちのコミュニティを支えてきた商店も次第に姿を消し同時に人々が集う場が失われている。「働き」の変化はコミュニティばかりか農地や森林をも荒廃に導いている。この地域に人々が住み続け、古くからの「働き」を取り戻していくことは国土の維持管理において大変重要なことである。この地域の古くからの「働き」、つまり共同体を新たな協働体に再生する取組みは国土の維持管理にも大変重要である。

活動の内容

しかく平成20年度
活動1:自然散策路の整備:自然散策路的なウォーキングコースを選定し、ルート作りと共に案内板やコース整備を行った。地域住民と協働で作業を行い、実際に整備したコースの維持管理や環境保全活動は地域住民に限定せず広く利水地域のボランティアと協働で行った。
活動2:未活用の施設周辺の整備を行い施設内は工芸品やNPOの活動写真などを展示するギャラリーとして活用した。地域住民と流域住民とのコミュニケーションを高めるために、オープニングイベントを実施し地域住民と他地域の住民とのコミュニケーションの場づくりを行った。
しかく平成21年度
活動1:「山の学校」体験活動の推進:古くからある「働き」を整理し先人達の知恵を学ぶための体験活動の実施によって副次的に国土を維持管理していく意識した自然活用と耕作放棄地の復興によるコミュニティの関わりづくり
活動2:「山の学校」拠点作り:?@昨年度開設した「寺子屋」を拡充し、場内にプレハブを設置し薪や枝を直接燃料として利用するかまどやいろりで食を通した地域間交流を図る?A溜め池から水をひいて暮らしに利用し水環境保全への意識高揚を高める。又、水車や廃材を利用した五右衛門風呂の利用・検討を行う。

活動の成果

しかく平成20年度
活動の成果
自然とふれあう場づくりを目的とした散策路整備では カヌーを利用した中州の観察や富栄養化に伴って繁殖が 拡がる菱(水藻)の食への利用検討など多面的な広がり を見せている。既存施設の活用ということで始まった 木材加工センター周辺を寺子屋として位置づけ、定期的 な間伐や炭焼きによって周辺の環境保全活動が始まった。

地域内での反響・効果及び周辺への波及効果等について
夏は睡蓮の花を冬は飛来する白鳥やマガモを楽しむ地域住民の新たな憩いの場として、またこの地区に位置する高齢者福祉施設では毎日の散策の場として利用されている。また寺子屋ゾーンには炭焼きの煙という新たなランドマークが誕生し立ち寄った訪問客との新たなコミュニティが生まれている。



しかく平成21年度
活動の状況
山村での「働き」を整理していくと、先人たちが生態 系サービスを巧に受け継いでいることを強く感じた。 耕作放棄地の再生では自然の再生能力の強さと人の関与 による国土維持の必要性を感じた。作業の合間での「食」 が与える潤いは想像以上にコミュニティの質を高めた。 今回「山学校体験センター」という名称で体験メニュー を整理しパンフレット作成に至った。

地域内での反響・効果及び周辺への波及効果等について
事業二年目に入りスピード感のある我々の行動に地域住民からは篤いエールが送られた。特に嬉しかったのは当該事業実施区域からの協力者の出現である。事業の実施に従って人が集まり動き始めた流れが、地域内外にも元気を与え始めたようだ。自治体もその距離を縮め、次年度からの観光事業などへ協働の申し出が出され始めた。こういった地域は保守的な考えが強く、よそ者の意見を聞くことはあまりない。地理的にも雪国という点からも外部と遮断され頼れるのは自分という時代を生きてきた地域の歴史は保守的に動いてきた。自分たちで出来ないことは他の地域の人と協働していくという形に動きつつある。今回の活動は目に見える形での関・矢立地区の変化と同時に、「働き」を通した関わりの中から多面的な効果をあげている。高齢化、過疎化に向かう町にポジティブな行動をとる良い刺激になっていることは否定できない。



今後の課題及び展望

しかく250km2を越える広大な面積に小規模の集落が点在する七ヶ宿。町という機能を維持していくためには最低限の人口規模が必要である。地域の担い手たちは雪国という厳しい自然環境と雇用のない町に未来を見出すことは難しい。宮城県民183万人の水源という役割を担うこの場所を未来に引き継ぐことはこの地域住民の使命である。当NPOが今回提案した活動は「自然を利用することで自然を守り、先人達の知恵を学び、伝えて実践していくことにより持続的に国土を管理していく(開発していく)その中で町内外の「人」が集い、新たなコミュニティの形を創生する」というものである。体験メニューを実施していくために、地域に受け継がれてきた文化を地域の高齢者から学び、こうした学びを整理し生態系サービスを利用した体験を可能にする自然に近い形の場づくりを目指した。過疎化の進行と共に耕作放棄地が増加していけば、比例して国土は荒廃していく。地域の課題を地域だけで解決することは難しい。今回は蕎麦栽培という切リ口で放棄された大地を蘇えらせた。その修復プロセスの中で利水地域住民を巻き込みながら最後に収穫、食とつないでいった。国土保全を目的に収穫後には二毛作で小麦を栽培、炭を蒔き土壌環境改善を行っている。栽培する品種を菜種等に変えバイオ燃料の原料として地域内で生産、利用する事により国土を保全していくという方法もある。様々な主体が集い、集まった者が知恵を出し合い共有可能な目標を掲げることによって質の高い交流が生まれる。その為の生態系フィールドは充分に存在する。今更のようだがキーワードは地産地消、それも多面的に徹底し行うことが必要だ。自然と親しみ、その中で営みを続けていくことで環境が保たれる。森林面積が90%を超える当地域が健全に国土を管理していくことで、排出権取引の受け入れ先として自然を味方につけることが期待できる。そのエリアが拡がり、持続的に管理されていくことで、国土全体がバランスを取り戻し、コミュニティあふれた日本が甦る。持続可能な未来づくりには時代の流れに逆らわず将来を見据え地域の人と自然をつなぐ主体=「新しい公共」が必要である。


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