建設省建築研究所第四研究部
施工管理研究官 二木 幹夫
1.耐震対策の基本目標重要度が標準的な宅地に対しては、供用期間中に1〜2度程度発生する確率を持つ一般的な地震動に際して機能に重大な支障が生じず、 特に重要度の高い宅地に対しては、発生確率は低いが直下型または海溝型巨大地震に起因するさらに高いレベルの地震動に際しても人命に重大な影響を与えない ことを基本的目標とする。
2.耐震対策検討の基本的な考え方
開発事業においては、一般的に盛土・切土のり面、自然斜面、擁壁、排水工等の施設が多岐にわたっている場合が多い。そのため各施設について、周辺の土地 利用状況、当該開発事業区域内の土地利用計画、地域防災計画等を勘案し、耐震対策の必要性及びその範囲、また当該施設に要求される耐震目標等を具体的に検 討し、各施設を設置する箇所の原地盤や、予定している盛土材等について、必要な調査・検討を行い、所要の耐震対策を行うことが必要である。
3.耐震設計の基本的な考え方
1)耐震設計の基本
一般的な設計手法として、盛土のり面と擁壁に関しては震度法、地盤の液状化の検討に関しては簡易法を用いることを標準とし、地盤条件が特殊の場合には、必要に応じて動的解析法を用いる。
2)耐震設計の一般的手順
第1ステップ・条件設定、第2ステップ・標準的耐震計算による安定性評価、第3ステップ・動的解析法
による安定性評価、第4ステップ・対策工の検討。
3)耐震設計方法
震度法、修正震度法、応答変位法、動的解析法等があるが、震度法がよく用いられている。
4)設計条件(震度法)
1地震荷重:設計震度 2地盤・盛土条件:土層構成、地下水位、N値、単位体積重量、平均粒径、粒度分布、強度定数(C,φ)3盛土の形状、寸法 4地表載荷荷重となっている。
5)設計震度
盛土のり面及び擁壁の安定解析では水平震度が設計震度として一般に用いられる。水平震度は地域及び地盤の特性を考慮し決定すべきものとされている。
4.擁壁の要求性能
1)設計の基本事項
擁壁の設計は常時、中地震時及び大地震時において想定される外力に応じで性能を満足するように行う。
2)土圧の作用面と壁面摩擦角
作用面は原則として、躯体コンクリート脊面とし、壁面摩擦角は土とコンクリートの場合に2φ/3を用いる。擁壁脊面が平面でない場合には仮想脊面を設定して土圧を算定する。仮想脊面は重力式、もたれ式、片持ばり式擁壁の場合により設定方法がある。
3)土圧の算定
擁壁に作用する土圧は裏込め地盤のモデル化や形状によって変化するので、実状にあわせて算出する。
4)地震時土圧
地震時土圧の算定には試行くさび法で土くさびに水平方向の地震時慣性カを作用させる方法を用いる。
5.盛土地盤の耐震性
盛土地盤では地下水の排水を積極的に行うことが必要である。破斜面の盛土の場合にも斜面の勾配により地震時の安全率の低下割合も異なり、地盤の剛性が低下し変形の増大が懸念されるので注意が必要である。