MDASH-Lite 概要(数理・データサイエンス・AI教育プログラム)
非同期型FD「 小規模大学における数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)の導入と DX――東日本国際大学の事例共有 」
全大学生が基礎レベルの数理・データサイエンス・AIの知識・技能を身に付けられるようになることを目的とした数理・データサイエンス・AI教育プログラムをどのように実装していくかは、特に有する学部・学科数が少なく、またその分野においてデータ分析が必ずしも一般的でない場合や、リソースが限定された小規模大学において難しい課題となっています。
他方で、リテラシーレベルにおいては、現在誰もが身に付けていることが期待される教養としての側面も強く強調されており、そうした観点から整理することで、以上のような大学においてもこうしたプログラムを意味のあるかたちで実施することが可能であると思われます。
本事例共有では、テーマに合わせ、新型コロナウイルス感染拡大状況下で蓄積されたノウハウから、報告を非同期型で実施し、いただいたご質問について順次回答していきます。
以下の動画において、どのような考えで検討を進めたか等を説明しております。質問は動画下のリンクからお寄せください。
全体像
概要
本ページでは東日本国際大学における数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)について説明します。
東日本国際大学では、AI時代の誰もが必要とする数理・データサイエンス・AIについての基礎教養を身につけることができるように、数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアム作成のモデルカリキュラムに基づいた教育プログラムを全学を対象として開講しています。
特徴として、基本的な知識について両学部での共通科目を設定しつつ、 経済経営学部、健康福祉学部のそれぞれで将来必要になるであろう能力を見越して、それぞれに合わせた独自のプログラムを提供していること、アセスメントポリシーに基づいた質保証を行っていることがあげられます。
授業方法について
それぞれの学部において、学部特性に応じた学修成果を定めています。それらの学修成果に対応するかたちで、基礎的知識については、講義形式や集団での実習形式を基本としていますが、講義形式の授業においても、本学の他の授業と同様に、知識と技能を自分のものとするために、実際に自分で能動的に考え実施してみるアクティブ・ラーニング形式の要素を組み込み、学修成果の習得状況について小テストや課題提出を通じたフィードバックを行います。またデータについての踏み込んだ分析やプログラミング知識については、実際の実例に基づいた課題を用意し、それに取り組むことで実践的な能力を身に付けることを目指しています(さらに一部科目においては、地域の企業等と協力し、匿名化された実データ等での分析を行います)。
実施体制と内部質保証の体制について
本プログラムは、高等教育研究開発センターが調整を行い、本学の情報系の教員と実データ分析を行う各学部教員が構成するMDASH-Liteワーキンググループでのプログラムの検討を通じて構成されたものです。
プログラム実施の自己点検と改善のプロセスについては、本学のアセスメントポリシーに基づいて実施されます。
プログラムの目標等
各分野で必要となる内容を構成していることから、本プログラムの履修について、オリエンテーション等で案内をしています。またMoodle上で質問をしやすい環境等を構築しています。
本プログラム履修者の数値目標は以下の通りとなっています(カッコ内は収容定員に対する割合)。
令和3年度 238名 (29%)
令和4年度 420名 (52%)
令和5年度 450名 (56%)
令和6年度 475名 (59%)
令和7年度 500名 (62%)
経済経営学部の教育プログラム
以下のようにプログラムの学修成果を定めています。
全学ディプロマポリシーの2に定める要素の一つとして、現在の教養として必要となるAI等についての基本的知識を身につけ、基本的なデータについてのリテラシーを身につける。また希望する学生は、学部ディプロマポリシー1に定める要素の一つとして、さらに踏み込んだ統計やプログラミング(伝統的なAIに関連したものを含む)の基礎を習得することができる。
経済経営学部では、基本科目群(下記1〜5)は5科目10単位のすべて、発展科目群(6〜12)から最低1科目2単位を取得すること。(5〜7は両学共通)
なお各科目の具体的なシラバスについては、オンライン・シラバスシステムで最新の情報を確認されたい。
- 情報処理入門
- コンピュータ演習IB
- コンピュータ演習IIA
- コンピュータ演習IIB
- 人工知能入門
- 統計
- 経営情報
- 経営情報処理
- 情報システム演習
- プログラミングA
- プログラミングB
- AIプログラミング演習
人工知能入門
人工知能入門
経営情報
経営情報
経営情報処理
コンピュータ演習IIB
経営情報
コンピュータ演習IIA
コンピュータ演習IIB
経営情報処理
統計
AIプログラミング演習
健康福祉学部の教育プログラム
以下のようにプログラムの学修成果を定めています。
全学ディプロマポリシーの2に定める要素の一つとして、現在の教養として必要となるAI等についての基本的知識を身につけ、基本的なデータについてのリテラシーを身につける。また学部ディプロマポリシー2に定める要素の一つとして、さらに踏み込んだ統計や社会福祉分野を中心としたデータの扱いを習得することができる。
健康福祉学部では、基本科目群(下記1〜4)4科目5単位を取得の上、発展科目群(5〜7)から最低1科目2単位を取得のこと。(5〜7は両学共通)
なお各科目の具体的なシラバスについては、オンライン・シラバスシステムで最新の情報を確認されたい。
- 情報処理演習IA
- 情報処理演習IB
- 情報処理演習IIA
- 人工知能入門
- 統計
- 社会調査の基礎
- 福祉行財政と福祉計画II
また、その具体例として、AIがどのような仕組みで機能し、どのような分野で活用されているかを理解する。 情報処理演習IA
人工知能入門
情報処理演習IB
社会調査の基礎
福祉行財政と福祉計画II
社会調査の基礎
情報処理演習IIA
統計
社会調査の基礎
福祉行財政と福祉計画II
各科目で学習できる内容について(モデルカリキュラムとの対応)
上記諸領域は、以下のコンソーシアムと文部科学省が示す指針のカテゴリーに対応している。
「モデルカリキュラム」
大項目 コンソーシアム
「モデルカリキュラム」小項目 コンソーシアム
「モデルカリキュラム」
期待される学修内容 コンソーシアム
「モデルカリキュラム」
キーワード
※(注記)モデルカリキュラム導入1-1、導入1-6が該当 1. 社会におけるデータ・AI利活用
1-1. 社会で起きている変化 社会で起きている変化を知り、数理・データサイエンス・AIを学ぶことの意義を理解する ・ビッグデータ、IoT、AI、ロボット
・データ量の増加、計算機の処理性能の向上、AIの非連続的進化
・第4次産業革命、Society 5.0、データ駆動型社会
・複数技術を組み合わせたAIサービス
・人間の知的活動とAIの関係性
・データを起点としたものの見方、人間の知的活動を起点としたものの見方
※(注記)モデルカリキュラム導入1-1、導入1-6が該当 1. 社会におけるデータ・AI利活用
1-6. データ・AI利活用の最新動向 データ・AI利活用における最新動向(ビジネスモデル、テクノロジー)を知る ・AI等を活用した新しいビジネスモデル(シェアリングエコノミー、商品のレコメンデーションなど)
・AI最新技術の活用例(深層生成モデル、敵対的生成ネットワーク、強化学習、転移学習など)
※(注記)モデルカリキュラム導入1-2、導入1-3が該当 1. 社会におけるデータ・AI利活用
1-2. 社会で活用されているデータ どんなデータが集められ、どう活用されているかを知る ・調査データ、実験データ、人の行動ログデータ、機械の稼働ログデータなど
・1次データ、2次データ、データのメタ化
・構造化データ、非構造化データ(文章、画像/動画、音声/音楽など)
・データ作成(ビッグデータとアノテーション)
・データのオープン化(オープンデータ)
※(注記)モデルカリキュラム導入1-2、導入1-3が該当 1. 社会におけるデータ・AI利活用
1-3. データ・AIの活用領域 さまざまな領域でデータ・AIが活用されていることを知る ・データ・AI活用領域の広がり(生産、消費、文化活動など)
・研究開発、調達、製造、物流、販売、マーケティング、サービスなど
・仮説検証、知識発見、原因究明、計画策定、判断支援、活動代替、新規生成など
※(注記)モデルカリキュラム導入1-4、導入1-5が該当 1. 社会におけるデータ・AI利活用 1-4. データ・AI利活用のための技術 データ・AIを活用するために使われている技術の概要を知る ・データ解析:予測、グルーピング、パターン発見、最適化、シミュレーション・データ同化など
・データ可視化:複合グラフ、2軸グラフ、多次元の可視化、関係性の可視化、地図上の可視化、
挙動・軌跡の可視化、リアルタイム可視化など
・非構造化データ処理:言語処理、画像/動画処理、音声/音楽処理など
・特化型AIと汎用AI、今のAIで出来ることと出来ないこと、AIとビッグデータ
・認識技術、ルールベース、自動化技術
※(注記)モデルカリキュラム導入1-4、導入1-5が該当 1. 社会におけるデータ・AI利活用 1-5. データ・AI利活用の現場 データ・AIを活用することによって、どのような価値が生まれているかを知る ・データサイエンスのサイクル(課題抽出と定式化、データの取得・管理・加工、
探索的データ解析、データ解析と推論、結果の共有・伝達、課題解決に向けた提案)
・流通、製造、金融、サービス、インフラ、公共、ヘルスケア等におけるデータ・AI利活用事例紹介
※(注記)モデルカリキュラム心得3-1、心得3-2が該当 3. データ・AI利活用における留意事項
3-1. データ・AIを扱う上での留意事項 詳細なし 詳細なし
※(注記)モデルカリキュラム心得3-1、心得3-2が該当 3. データ・AI利活用における留意事項
3-2. データを守る上での留意事項 詳細なし 詳細なし
※(注記)モデルカリキュラム基礎2-1、基礎2-2、基礎2-3が該当 2. データリテラシー
2-1. データを読む データを適切に読み解く力を養う ・データの種類(量的変数、質的変数)
・データの分布(ヒストグラム)と代表値(平均値、中央値、最頻値)
・代表値の性質の違い(実社会では平均値=最頻値でないことが多い)
・データのばらつき(分散、標準偏差、偏差値)
・観測データに含まれる誤差の扱い
・打ち切りや脱落を含むデータ、層別の必要なデータ
・相関と因果(相関係数、擬似相関、交絡)
・母集団と標本抽出(国勢調査、アンケート調査、全数調査、単純無作為抽出、層別抽出、多段抽出)
・クロス集計表、分割表、相関係数行列、散布図行列
・統計情報の正しい理解(誇張表現に惑わされない)
※(注記)モデルカリキュラム基礎2-1、基礎2-2、基礎2-3が該当 2. データリテラシー
2-2. データを説明する データを適切に説明する力を養う ・データ表現(棒グラフ、折線グラフ、散布図、ヒートマップ)
・データの図表表現(チャート化)
・データの比較(条件をそろえた比較、処理の前後での比較、A/Bテスト)
・不適切なグラフ表現(チャートジャンク、不必要な視覚的要素)
・優れた可視化事例の紹介(可視化することによって新たな気づきがあった事例など)
※(注記)モデルカリキュラム基礎2-1、基礎2-2、基礎2-3が該当 2. データリテラシー
2-3. データを扱う データを扱うための力を養う ・データの集計(和、平均)
・データの並び替え、ランキング
・データ解析ツール(スプレッドシート)
・表形式のデータ(csv)