くらしが育んだ「里」を未来へ
人々のくらしに育まれてきた健やかで美しい「にほんの里」100選。
各地のニュースや活動、特色や所在地――里からの発信をお届けします。
辺境に七つの集落計70戸。そのどの家にも全面が板造りの伝統的な倉庫「板倉(いたくら)」が残る。「寒干しだいこん」作りに力を入れる。
※(注記) 交通アクセスや店舗情報などは、お出かけ前にご確認ください。
※(注記) 車ナビは、里を訪れる際の目標ポイントを数値化したマップコードで、()内が施設名や地点です。地図では★で示しました。カーナビのマップコード検索で利用できます。
2014年11月06日
寒干し大根が人気 天空の里
岐阜県東北端、飛驒市神岡町の標高850 〜 1000m の盆地に広がる「天空の里」。茅葺(かやぶ)き民家や全面板造りの伝統的な倉庫「板倉」が残る。七つの集落があり、山之村はその総称。地名ではないため、「地図にない村」とも呼ばれる。
2013年02月27日
北アルプスの麓、標高1000メートルにある山之村地区は、厳冬期にはマイナス20°Cになることもある豪雪地帯です。
ここ山之村は、古来から自給自足の生活が息づいています。夏は高冷地野菜の産地として、冬はこの地の郷土食、「寒干し大根」づくりが有名で、山之村といえば寒干し大根、寒干し大根といえば山之村、といわれるまでになりました。この時期に山之村を訪れると、家々の軒下に、そろばんのように大根が吊された風景に出会うことができます。近年この風景をカメラに収めようと、訪れる人が増えました。
寒干し大根は冬は雪に閉ざされるここ山之村で、貴重な保存食として昔から食べられてきました。前回の投稿では、一度収穫した大根を土に埋め、藁帽子のように藁をかぶせている風景(地元では「だいこんつぶり」といいます。)をお届けいたしましたが、1月、「寒の入り」頃になると、いよいよこの寒干し大根づくりが本格的にスタートします。
まずは、降り積もった雪をかき分け、土の中からダイコンを取り出します。取り出されたダイコンは丁寧に水洗いし、皮をむき、輪切りにして大鍋で茹でます。
茹で上がった大根は串に刺し、家の軒下などに作られた干し場に掛けられ、寒風にさらします。今では串に刺して乾燥させる方法が一般的となりました。
しかし、藁を通して吊す、昔ながらの方法で寒干し大根を作る人もいます。
干したばかりの大根は白くツヤツヤしており、朝はダイヤモンドダストとともに輝きます。乾燥が進むにつれ、きれいなアメ色に変わっていきます。
ここ山之村はその昔、廃村の危機を迎えたこともありました。そして山之村の風土を知り尽くした人だけがこの地に残り、独自の文化を築きあげていったのです。寒干し大根も、この独自の文化を築き上げた先人達への、天からのおくりものではないでしょうか。
30年程前、この「天からのおくりもの」を商品化し、冬は雪に閉ざされる山之村を元気にしよう、と奔走した人たちがいました。かかさ(主婦達)で結成された「すずしろグループ」です。 商品として送り出すまでの道のりは、並大抵でなかったといいます。様々な困難を乗り越え、このグループの人たちの思いが詰まった、「奥飛騨山之村寒干し大根」は、今年もようやく出荷の時期を迎えます。
風物詩となった、大根の寒干し風景は終わりを迎えますが、雄大な北アルプスに抱かれたここ山之村は、まだまだ見どころいっぱいです。
皆さんもぜひ、冬の山之村へ
来てたまれや~
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