儒達山(ユダルサン)<ふしぎ山

儒達山 ゆだるさん
韓国・全羅南道木浦市、228.3m

ギザギザの見かけによらず楽勝。散歩のついでに登れてしまう観光の山だ。

韓国の南西端にある港町モッポ(木浦)は、半島状に細長く海に突き出している。
ユダル山はその先っぽにある小さな山塊だ。東麓はモッポ旧市街、西は海がすぐ山すそに迫っていて、まるで町を海風から守るがごとく南北に1.5kmほど連なっている。
かつては死者の霊魂が集まる山として崇拝されたというが、今では夜になるとこのギザギザが煌々とライトアップされるらしい。姫路城なみの扱いだ。

モッポ総合バスターミナルから市バスの1番に乗って約10分。モッポ駅で降りたら、ユダル山はもうすぐそこにあった。
山は大きく2つに分かれていて、南の高いほうが一等岩、北の少し低いほうが二等岩と呼ばれている。

モッポ駅付近から。左が一等岩、右が二等岩

山の上からは市街地とそれをとりまく多島美が一望できるそうなので、まずはこいつに登らないとね。時刻はすでに午後3時だけど、韓国の日暮れは日本より遅いのでまだ大丈夫だろう。

駅前道路の案内標識に「ユダルサン」と書かれている。それに従って歩いて行くと、「儒達山登口」と漢字で書かれた石碑がある。


(左)山へ向かう途中からの1等岩、ギザギザだ (右)駅の西側からの2等岩、こちらは台形の真ん中くびれ


(左)「ルミナリエ通り」から標識に従って右折 (右)漢字との出会いが懐かしい韓国旅行

10分ほどで、尾根筋の南端らしき小高い広場へ出た。看板地図などもあるから、ここが入口らしい。1等岩方面は右だが、左手に奇妙な岩がある。

岩の向かいに案内所があったので、「アニョハセヨ〜、案内地図でもありませんか」と言いつつ入ったら、3人ほどいたスタッフのおばちゃんに「韓国語が上手だ!」とやたらとホメられ、日本語版のモッポのパンフレットをもらい、コーヒーまで出してもらった。
おばちゃんに「1等岩の上まで登れるのですか?」と聞くと、登れるという。展望台もあるらしい。どうやら市民公園としてコレデモカと整備されまくっているようなケハイだ。


(左)奇妙な岩は露積峰。秀吉と戦ったときの逸話が残る (右)案内所前の登り口、立派な階段

案内所を出て、正面の大階段を登る。少し進むと道が登山道サイズになるが、足元は依然としてきっちり整備されたコンクリ階段。中年夫婦やアベックがちらほら下りて来る。
ゆるやかに登るにつれ、砲台跡や見晴らしのいい東屋などが次々に現れた。ずいぶんカネをかけて整備されていて、ここがモッポの看板名所であることが伺える。
道は尾根筋についているため、すでに町や海が見えてたいへん眺めがよろしい。


(左)少し登ると2等岩がますます雄大に見える (右)1等岩の山頂部ギザギザも見えてくる


(左)砲台、日本を向いている・・・わけでもなさそう (右)大きな東屋、熟年夫婦が景色を見ながら語り合っていた


(左)このあたりから岩場の急傾斜になる (左)1等岩はもう近い

1等岩頂上部の岩峰群の手前に、高度感いっぱいの展望台みたいな岩のピークがある。正面間近に岩峰群と向き合っているが、よく見ると手前の岩の下のほうに不動明王のような磨崖仏が見えた(下左写真)。
岩場のある低山ならたいていあちこちに祠や石仏がある日本の山と違って、韓国の山ではこういった神仏偶像はめったに見られない。帰ってから調べたら、やっぱり植民地時代に日本仏教が上陸して掘られたものとのことだった。


(左)展望ピークからの頂上岩峰群。下部に大きな磨崖仏が見える (右)拡大、不動明王だ

ここからは、さすがに岩峰群の稜線を伝うことはできない。ルートは岩場の根元を東側から迂回し、半円を描くように山頂北側で稜線を乗り越して折り返し、西の海側から頂点に達する。


(左)山頂部の岩峰群を迂回する。おしゃれな街灯があったりする (右)1等岩の山頂部を迂回路から見上げる


(左)再び稜線へ登る。夜間ライトアップ用の照明器具あり (右)凍り付いているところは油断禁物

街灯が設置されているところを見ると、夏には夜景を見るために登る人もけっこういるのだろう。しかしさすがにこの季節は凍結するし、寒くて無理だな。

それにしてもこんなところによくぞうまいこと道を作ったな・・・と感心させられるほど巧妙に岩を縫うルートを伝い、麓の案内所から40〜50分で難なく1等岩の頂上に着いた。


(左)最高点ぽい岩、まさかあの上までは行けないだろう (右)と思ったら裏側から行けちゃった。ここが頂上

頂上は狭い稜線にゴロゴロと岩が折り重なり、南北に20mほど細長くのびている。東西絶壁でかなりの高度感だが、片側に真新しい手すりが設置されているので、ふざけたりしない限り安全に眺めを堪能できる。

登ってくる途中からずっと下界の素晴らしい景色が見えていたけど、じっくり味わうのは頂上までガマンしていた。
その甲斐あって、もうこれ以上ないという絶景が全面展開する。モッポ半島をとりまく多島海、豊饒のパノラマだ。


東から南方面、モッポ市街地と、韓国4大河川の一つである栄山江の河口域


南から西方面、モッポ沖合いに広がる多島海の夕照


西から北方面、右端に2等岩がある

いや〜さすが力を入れて整備してるだけあるわ。モッポへ来たら絶対ここへ登るべきだろう。岩だらけの山自体もおもしろいし、この眺めの良さはただごとじゃない。
山歩きとしてはもの足りないが、登って損はない。

眺めを堪能して、次なる2等岩へと向かった。稜線伝いにコルへ下りて、登りなおす。
2等岩は麓からは台形に見えたが、行ってみると岩がデコボコで平坦ではない。頂上部にはローソクみたいにとんがった岩が乗っている。


(左)素晴らしい景色の中、2等岩へ (右)岩肌をそのまま削って階段にしてある


(左)1等岩とのコル(東屋あり)から見上げる2等岩 (右)2等岩の頂稜部の一角に出たところ


(左)1等岩を振り返る (右)さらに進んで見えてきた、あれが頂上だ

さすがにこの岩の先っぽには立てない

2等岩へは1等岩から15分ほどだった。
ここからも眺めがよい。ただし南に1等岩があるため、モッポ港は見えない。

この先、北へは道がなさそうだった。コルまで戻ると東西へ下山路がある。東の市街地方面へ降りると数分でラン植物園があり、すぐに公園東口の駐車場に出た。


(左)公園東口から見上げる1等岩 (右)同じく2等岩


(左)同じ場所から見下ろすモッポ市街 (右)路地を縫って町の中へ

公園入口からは住宅地を通って10分ほどで駅周辺に出る。時刻は5時すぎだったが、まだ十分に明るかった。

天気のいい日に弁当でも持って登れば、老若男女お釣りがくるほど楽しめる。こんな素敵な山を持つ町は幸せだ。 (登山日:2008年1月29日)

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