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(平成11年度林業技術現地適応化事業)
平成12年3月三重県林業振興課
本県のスギ、ヒノキ人工林の齢級構成は中径木が多い。
間伐が育林上避けては通れない問題であれば、今日の木材価格状況から以下にコストを低く間伐を実施し、林業経営に役立てていくかが課題である。
そこで列状間伐に関して調査を行ない普及用資料を作成した。
林地は地形、地利、地位など複雑で、また、樹種、樹齢など多くの要素が関わり、一概にいえないので現地にあった方法をみいだす参考とされたい。
樹木の直径成長は、葉の炭酸同化作用によって作られた炭水化物によって行われるので、一般に着葉量と樹木の直径は相関関係にある。また一定面積にある葉量は、樹種によってほぼ一定である。
現在行われている一般的な育林技術では、植栽密度を高くして、早く樹冠を閉鎖させ、植栽木と競合する雑草木の生育を抑制し、孤立木状態の期間を短くし、完満通直な材を作ることを目的としている。
一方、樹冠の閉鎖により、植栽木の間で競争が起こり、樹高に比べ直径の細いモヤシ状の木になったり、被圧木の枯損が起こる。
それを防止するため、間伐することによって、競争を緩和し、残存木の葉量を増やして、直径成長の低下を抑制する。
一定面積から収穫される間伐材積と主伐材積を加えた総材積は、間伐の強弱、繰り返し回数によって差があるとはいえないことから、主伐収入までの間に比較的短い期間毎に収入を得るため、
その利点として
ことが上げられる。
形質の良い木を多く残す優良材生産より、一般材生産の施業に適する。
本県では、冠雪害はまれにしか発生しないが、形状比(樹高/胸高直径)によって被災率が異なる。形状比90以上では下層間伐を実施し、形状比を低くしてから列状間伐を行うのが望ましい。
列状間伐は、伐採搬出コストの削減が大きな目標であるので、下層間伐により、不良木の割合を低くした後の利用間伐対象林分で実施する。
列の方向は林地の傾斜方向に設ける。傾斜方向と異なると搬出時に材が斜めに滑り、残存木の損傷を起こすことがある。
搬出列の伐採幅は、広いほど作業効率は上がるが、育林的には大きな空間を設けることは避けたい。
列の間隔の設定は、距離毎に設定する「一定間隔法」と植栽列毎に設定する「残伐法」があるが、育林的意味では過密、過疎にならないように適当な間隔が必要である。
通常のタイプとして、利用間伐林齢での1回の間伐で動かす収量比数は0.15以下とすると、3残1伐か2残1伐(本数間伐率33%)程度となる。
作業の効率、安全性から上げ荷集材が適し、元口を搬出機械の方向(斜面下方向)にに倒すのが通常で伐倒も容易であるが、懸木になった時の処理は困難である。
3残1伐方式で谷側への搬出とし、先柱と元柱を結んだ直線上の立木を選木
劣勢木を主に形質の悪い木、あばれ木を樹間距離を考慮しながら選木
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平均胸高直径は大幅に上位に移動しないが、残存木の径級分布は、点状間伐がより狭い範囲で分布する。
両方法で時間に大きな差は無い。
列状間伐(山側へ伐倒)及び点状間伐(元口を搬出方向に向け伐倒)の伐採について、作業要素に区分し時間観測を行った。
なお、時間は1本当たりの秒で、倒には掛かり木処理の時間を含み、列状の列間移動時間は含まない。
| 要素区分 | 伐倒 | 枝払 | 作業間 | 移動 | 立木間移動 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 列状 | 6.25 | 11.31 | 49.50 | 6.25 | 16.81 | 90.12 |
| 点状 | 5.25 | 28.34 | 44.01 | 5.19 | 10.20 | 92.99 |
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列状間伐の効率化を図るためには
ことが必要と考えられる。
列状間伐の搬出は、搬出機械の架設、撤去が短時間で行えることがポイントとなるので、搬出材積、地形等から列状の有利性を確保出来るタワーヤーダ、架線、シュート等から適切な機械を選定することが重要となる。
架設、撤去の時間は機械タイプ、主索(スカイライン)方式と主索を持たない(ランニングスカイライン)方式、また先柱にする適当な立木の有無、控索の本数、地形によって大きな差がある。
全幹材搬出を空走行、荷掛け、巻き上げ、実走行、荷外しに区分し時間観測を行った。
条件
搬器の走行時間(空、実の合計)は搬出距離と相関関係にある。
| 搬出回数 | 47回 | 要素別時間(秒) | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 搬出材積 | 29.8m3 | 空走行 | 2,387 | 実走行 | 3,648 |
| 平均搬出距離 | 76.5m | 荷掛け | 508 | 荷外し | 540 |
| 平均巻き上げ長 | 20.9m | 巻き上げ | 491 | その他 | 942 |
| 秒/m3 | 286 | 計 | 8,516 | ||
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1日時間6時間実働
1日賃金13,700円
実働6時間の作業量は、休憩などを含まない調査時間当たり作業量を換算したものである。
| 単価(円) | m3あたり(円) | |
|---|---|---|
| 賃金 | 896 | |
| 1時間当たりチェンソー損料 | 111 | 42 |
| 350‰当たりソーチェーン損料 | 4,725 |
14 |
| 1日当たり 燃料3.8Lオイル オイル1.2L |
67 | |
| 伐木造材計 | 992 |
| 単価(円) | m3あたり(円) | |
|---|---|---|
| 賃金 | 543 | |
| 機械損料(賃借料) | 20,000 | 264 |
| 1日当たり燃料油脂類 軽油21L オイル0.65L グリス0.05L ギヤー油0.05L |
63 |
|
| 1回の架設撤去賃金 架設1時間58分 撤去58分 |
674 | |
| 伐木造材計 | 1,544 |
合計:m3当たり2,536円
伐採搬出効率は、単木立木材積が大きければ上がる。
今回の調査では1回当たりの搬出材積が平均0.63m3と大きく、通常報告されている3人1班6時間実働の26〜30m3に比べ効率が上がっていると思われる。
搬出はタワーヤーダ前までの引き出しで、搬出材移動、造材、積み込み運搬は含まない。
間接経費(機械運搬費、作業員輸送費、作業員福利厚生費等)は含んでいない。
伐採搬出材積は、立木材積であるので素材材積は66%であった。
素材1m3当たり伐採搬出経費は3,842円となる。
主索を持つか持たないか、架設条件で架設撤去時間は大きく影響され、それによって効率的な架設回数と横取り距離が決められる。
そこで1例としてタワーヤーダ(主索方式)を使った3残1伐の間伐材の全幹集材の場合、搬出列毎に架設するか、横取り列を設けるか、その場合の列数を検討する。
横取り列を2列とし、架設、撤去3回の繰り返しと比較すると、搬出距離が概ね90mが分岐点である。
横取りされた材の方向転換に必要な方向転換幅は
B=2/3/3×L×a/90
で示される。
(B:方向転換幅(m)L:材長(m)a:横取り角度(度) )
ha当たり立木本数により伐採列幅が決まり、横取り角度によって実際の横取り距離が決まる。列幅を広くとらないと横取り角度を大きくできないので、実際の斜横取り距離は長くなる。
既存の調査で報告されている様に、主索式の中型タワーヤーダは通常の搬出距離では、架線直角水平横取り距離25m程の横取りが効率的に優れており、また巻き上げ索の延長からも制限される。
列幅4m、材長18〜20m
架線直角水平横取り距離と実横取り索延長の関係
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横取りを行う場合、立木密度、地形傾斜によっては列間の残存木に損傷を起こす可能性があるので、当て木等で保護することが、望ましい。
集材距離が短距離の場合は、集材機械の設置時間が問題になることから、極めて短時間で設置できる簡易搬出用機械のショルダーウインチで搬出した。
全幹材搬出をワイヤー引き出し、荷掛け、歩行、木寄せ、荷外しに区分し時間観測を行った。
条件
| 搬出回数 | 6回 | 要素別時間(秒) | |||
|---|---|---|---|---|---|
| 搬出材積 | 1.6m3 | ワイヤー引出 | 198 | 木寄せ | 792 |
| 平均搬出距離 | 22m | 荷掛け | 362 | 荷外し | 265 |
| 歩行 | 198 | その他 | 570 | ||
| 秒/m3 | 1,491 | 計 | 2,385 | ||
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架設時間460秒
撤去時間390秒
(ガイドブロック1個取り付け、撤去を含む)
1日作業時間6時間実働
1日賃金13,700円
| 単価(円) | m3あたり(円) | |
|---|---|---|
| 賃金 | 866 | |
| 1時間当たりチェンソー損料 | 111 | 42 |
| 350‰当たりソーチェーン損料 | 4,725 |
14 |
| 1日当たり 燃料3.8Lオイル オイル1.2L (4時間) |
67 | |
| 伐木造材計 | 989 |
| 単価(円) | m3あたり(円) | |
|---|---|---|
| 賃金 | 945 | |
| 1時間当たりウインチ損料 | 148 | 61 |
| 1時間当たり燃料0.48L |
33 |
|
| 1回の架設撤去賃金 | 539 | 337 |
| 伐木造材計 | 1,376 |
合計:m3当たり2,365円
経費の計算条件は、タワーヤーダと同じ
搬出1回当たり0.27m3でウインチ前までの搬出で、造材、積み込み運搬は含まない。
素材材積は伐採搬出材積の70%で、素材1‰当たり伐採搬出経費は3,379円となる。
小規模な間伐地では、機械運搬、架設撤去作業の比率が高い搬出用大型機械が不要で1人作業が可能となり、間伐材を道端まで引き出し森林組合等が集荷するのに有効な方法である。
| 区分 | 列状A | 点状B | 列状C | 点状D | 無間伐E |
|---|---|---|---|---|---|
| 間伐前(本/ha) | 1,275 | 1,450 | 1,575 | 1,275 | 1,675 |
| 間伐後(本/ha) | 900 | 1,025 | 1,125 | 925 | 1,675 |
| 本数間伐率(%) | 29.4 | 29.3 | 30.2 | 29.4 | 0 |
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ヒノキ43年生の1年間の胸高周囲長成長量÷前年の胸高周囲長
無間伐プロットを1とした比率
間伐後年数が経過していないので、間伐の効果か否か判然としない。
地表面下10〜20cmの間の土壌では、点状間伐と列状間伐で、無間伐を基準としたとき、2年間では伐採前と間伐方法によって変化することはなかった。
搬出による林地攪乱程度は、土質、搬出1回の材積、搬出回数、先柱の高さによる空き高により異なる。主に搬出1回の材積が大きい程表土除去の深さは深くなるが、搬出回数5〜10回以降の深さの増加は少ないとの報告がある。
表土除去程度により、深さ5cm以下(軽度)、5〜10cm(中度1)、10〜20cm(中度2)、20cm以上(重度)に区分して調査した。
列状間伐区域では、搬出回数は105回、最大材積1.25m3で(軽度)80平方メートル(区域面積の17%)、(中度1)74平方メートル(区域面積の16%)、(中度2)80平方メートル(区域面積の17%)で、表土のA0〜A 層が攪乱され、降雨により流亡し礫が露出しが、その後の2年間によるガリー浸食に発展することはなかった。
点状間伐区域では、搬出回数26回、最大材積0.87‰で(軽度)103平方メートル(区域面積の13%、(中度1)26平方メートル(区域面積の3%)で、表土の攪乱浸食は列状間伐区と同じであった。