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情報公開・個人情報保護
実施機関が行った公文書部分開示決定については、当審査会が妥当と判断した部分を除き、その決定を取り消し、改めて対象公文書を特定し、文書の存否を含め、決定すべきである。
異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成27年10月2日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った造林補助事業申請書等についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成27年10月13日付けで行った別表の公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)について、取消しを求めるというものである。
異議申立書及び意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
実施機関は造林補助に係る補助金を支給するにあたり、森林簿を根拠資料としているようであるが、森林簿に誤りがあるため、異議申立人に補助金が支給されていない。
開示された補助金申請の書類についても、異議申立人は地番に基づいて支給された補助金の書類を求めているにもかかわらず、実施機関は森林簿上の小班に基づいて支給した補助金の書類を開示しているため、処分を取り消すべきである。
また、請求した項目に対して処分がされていないものがあり、不作為であるとの答申を求める。
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
異議申立人が請求した造林補助に係る補助金の申請書については、異議申立人が指定した地番に対して平成14年度から平成23年度の間に補助を行った「造林補助金申請書」を対象公文書として特定したが、開示請求者以外の補助申請書類等の内容が条例第7条第2号の非開示情報に該当すると判断して部分開示とした。
また、処分をしていない項目については、請求書を読む限り、他の請求内容の補足としか読み取れず、開示請求の項目であるとは判断できず、処分を行っていない。
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
異議申立人は、開示された造林内訳書等について、氏名・住所は個人情報として非開示となることは理解するが、その他の項目は個人情報に該当しないため、氏名・住所以外が確認できる情報を公開するよう主張している。
当審査会において対象公文書を見分したところ、対象公文書には森林所有者の氏名、森林の所在地、森林簿上の小班等、森林の種類、林齢、樹種、補助金の額等が記載されており、そのすべてが非開示とされていた。
このことについて実施機関から聴取したところ、当該事務については個人情報取扱事務登録簿を作成しているため、そのすべてを非開示としたと主張している。しかし、三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号)第6条に規定されている個人情報取扱事務登録簿は、実施機関が、個人情報が記録されている公文書を使用する事務について、その事務の名称、目的、記録項目、収集先などを一覧表に取りまとめたものであって、県民はこれを閲覧することで、自己に関する個人情報の所在や内容を確認することができるというものである。したがって、当該事務について、個人情報取扱事務登録簿を作成していることを理由に、そのすべてが条例第7条第2号に該当するとした実施機関の判断は妥当ではない。
上記のとおり、異議申立人は森林所有者の氏名・住所以外の開示を求めているため、氏名・住所以外の項目の個人情報該当性について審査すると、氏名・住所が明らかにならない限りは、これらを開示したとしても個人を識別することはできず、また、森林簿に関する開示請求があった場合には、実施機関は、氏名・住所を非開示とし、森林簿上の小班等、森林の種類、林齢、樹種等の情報を開示していることから、個人情報には該当しないと判断する。
したがって、実施機関は、造林内訳書等の氏名・住所以外の項目について、開示すべきである。
審査会の本件異議申立てに対する判断は上記のとおりであるが、次のとおり意見を申し述べる。
本件事案は、公文書の特定にあたって、異議申立人と実施機関の意思疎通が十分図られなかったと推測される。文書の特定について、実施機関側には、公文書の特定に必要な情報を請求者に対して提供する努力義務があり、請求者側の責務としては条例第6条第2項において「実施機関が公文書の特定を容易にできるよう必要な協力をしなければならない」と規定されている。
実施機関側については、今回の開示請求がなされる以前に何度も異議申立人と当該事業に関する協議を行っており、そこから異議申立人の請求の意図等を汲み取り、公文書の特定に反映させたとのことであるが、それでも異議申立人との意思疎通が十分に図れたとはいえないことは、異議申立書等から明らかである。今後は、請求内容が明瞭でない場合は、書面で開示請求者に補正を求める等、丁寧なやりとりが求められる。
一方、請求者側については、とりわけ、今回の事案は、1件の開示請求書の中に複数の請求項目が含まれ、それぞれにその背景や実施機関が行っている事業への異議申立人の主張が記載されており、そのことが文書の特定に齟齬を生じさせた一因となっていることは否定できない。今後は公文書の特定が適切に行えるよう、双方が協力するよう努められたい。
また、実施機関は、1対象公文書中の開示請求者の個人情報など、本来非開示とすべき情報を誤って開示していること、2決定通知書に記載されている不存在とした処分理由が正確ではないこと、3条例第22条では、諮問をした実施機関には異議申立人に諮問をした旨を通知することが義務付けられているが、今回、実施機関は異議申立人が指摘するまで諮問の通知を行わなかったことなど、不適正な事務処理が認められる。今後は同様のことがないよう情報公開制度の適正な運用に努められたい。
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
| No. | 請求内容 | 決定内容 |
|---|---|---|
| 1 | 特定の森林組合が平成14年度から平成23年度に提出した特定地番における造林補助事業申請書及びその決裁書類。補助範囲が分かる資料を含む。 | 平成14年度の造林補助金申請書を対象公文書として特定。開示請求者以外の補助申請書類等の内容(個人名、申請地番、補助金額、森林資源内容)について、条例第7条第2号に該当するため、非開示とした。 |
| 異議申立人の所有している土地において、〇〇氏が自分の所有であるとして造林補助事業の申請をし、補助を受けたことが分かる文書。 | ||
| 2 | 造林補助申請地が補助が可能か否かを実施機関が判断する基準。 | 造林関係事業補助金交付要綱、要領を対象公文書として特定。 |
| 補助金を支給する際、実施機関が補助申請者及び森林組合に提出を求める書類が分かる文書。 | ||
| 3 | 異議申立人は平成15年に補助金の不正受給について実施機関に調査依頼を行なった。調査結果を示す情報。 | 不存在決定 |
| 4 | 不正受給が発覚した際の処理方法が確認できる資料。 | 不存在決定 |
| 5 | 異議申立人が所有している林班図においては、A小班はB小班に組み込まれていないが、実施機関からいただいた林班図では組み込まれている。組み込む必要が分かる情報。 | 不存在決定 |
| 6 | 異議申立人に支給されるはずの補助金を森林組合が流用したことが確認できる情報。 | 不存在決定 |
| 7 | 異議申立人は森林簿の訂正を実施機関に求めているが、いまだに応じてもらえていない。訂正ができない理由が確認できる情報。 | 不存在決定 |
| 8 | 〇〇町が〇〇氏へ売り渡したのは、○しろまる○しろまる小班でないことは明白である。 | 決定せず |
| 異議申立人は造林補助事業を森林組合に委託したが、森林組合は異議申立人の了解なしに一方的に放棄した。森林組合が補助事業を放棄することは違法と判断できる情報を請求した。 |
| 年 月 日 | 処理内容 |
|---|---|
| 28. 1. 7 |
・諮問書の受理 |
| 28. 1.13 | ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼 |
| 28. 1.27 | ・理由説明書の受理 |
| 28. 1.29 |
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
| 28. 7.19 |
・書面審理 (平成28年度第3回A部会) |
| 28. 8. 9 | ・審議
(平成28年度第4回A部会)
|
| 28. 9.13 |
・審議 (平成28年度第5回A部会) |
| 職名 | 氏名 | 役職等 |
|---|---|---|
| ※(注記)会長 |
早川 忠宏 |
三重弁護士会推薦弁護士 |
| ※(注記)会長職務代理者 | 岩﨑 恭彦 | 三重大学人文学部准教授 |
| 会長職務代理者 | 川村 隆子 | 名古屋学院大学現代社会学部准教授 |
|
※(注記) 委員 |
髙橋 秀治 |
三重大学人文学部教授 |
| 委員 | 東川 薫 |
四日市看護医療大学教授 |
| 委員 | 藤本 真理 |
三重大学人文学部准教授 |
|
※(注記)委員 |
村井 美代子 |
三重短期大学教授 |
なお、本件事案については、※(注記)印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。