1 経済改革の概要
論点
1) 1984年労働党内閣発足当時のニュージーランド経済の状況
- 多額の対外債務
- 高失業率と高インフレ率
- 多額の政府支出
- 政府収入の低迷
1984年頃までには、財政赤字は GDPのほぼ9%に相当し、インフレ率は2桁、経済成長率はほぼ0、失業率と債務は上昇し、所得税の最高税率は66%であった。
(ジム・ボルジャー首相:1996年 5月10日講演)
参考
最近の経済指標の推移
1991
1992
1993
1994
1995
実質 GDP伸び率
△しろさんかく 0.6 %
△しろさんかく 1.3 %
2.9 %
5.4 %
6.1 %
失業率
10.1 %
10.1 %
9.9 %
8.4 %
6.3 %
インフレ率(CPI)
2.8 %
1.0 %
1.3 %
1.1 %
4.6 %
為替レート (*1)
0.5782
0.5459
0.5382
0.5947
0.6695
長期金利 (*2)
9.6 %
8.1 %
7.1 %
7.3 %
7.7 %
経常収支の対 GDP比率
△しろさんかく 2.7 %
△しろさんかく 2.8 %
△しろさんかく 1.8 %
△しろさんかく 1.6 %
△しろさんかく 3.0 %
財 政 収 支
(単位:百万ドル)
△しろさんかく 5,149
△しろさんかく 1,594
544
3,248
3,447
公 的 債 務
(単位:百万ドル)
43,935.2
47,104.0
48,286.8
46,232.5
44,705.0
(*1) 6.30におけるUS$/NZ$のレートの中間点
(*2) 5年物国債金利
論点
2) 労働党内閣の戦略
- 民間分野における規制撤廃
産業、農業補助金の撤廃
- 外国資本の参入許可、競争促進
参考
1. 具体的な実施施策
(1) 農業分野においては、農業補助金や農業を対象とした優遇貸付制度を廃止
(2) 製造・サービス部門においては、
- 産業規制の排除と物価統制の廃止
- 輸入許可制度の廃止と関税の削減(関税率の平均税率が従来に比し1/3の水準まで低下)
- 弱小業界を対象とした特別保護の廃止
- 外国人による所有権の規制・外国資本の国内流入規制等の廃止
2. 具体的事例
(1) 輸送部門
輸送サービス産業への新規参入の自由化
(安全性等の規制を残すのみ)
(2) エネルギー部門
発電・電力小売り供給の独占の排除、価格統制の廃止
(現在では、制限なくこの業界への参入可能)
(3) 金融部門
・信託銀行、金融会社、その他の専門金融機関の分離規定の廃止
・銀行の総数と所有者の規制廃止
・貸付制限と財務規制の廃止
(現在では、事業免許さえあれば、自由に銀行設立可能)
論点
3) 税制改革(直接税から間接税へ)
[ 基本的考え方 ]
- 経済に対する中立性の確保
- 税制の簡素化
- 収入増減なし
参考
税 率
税 収
個人所得税
実効税率
〜 9,500ドル 15%
9,501ドル〜34,200ドル 24%
34,201ドル〜 33%
148億ドル
(税収構成比49.3%)
法人税
33%
39億ドル
(税収構成比13.0%)
物品サービス税
1986.10〜1989.6 10 %
1989. 7〜 12.5%
75億ドル
(うち輸入品27億ドル)
(税収構成比25.0%)
税収は1994会計年度(1994.7〜1995.6)の数値である。
論点
4) 公的部門の改革、行政府の役割の見直し
- 政府の活動を収益事業活動と非収益事業活動に分離
- 収益事業活動を市場メカニズムに即して運営
- 各部門の役割明確化、同一部門内における矛盾・衝突の回避
(企画立案部門とサービス提供部門の分離)
- 行政運営に係る責任の明確化
- 市場原理に基づく費用の確定
参考