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[画像:お片づけ地獄からの脱出・2]

家のだれもが避けて通りたい食事の後片づけを引き受けたあなたは救世主。どうか、テーブル上の食器の数に惑わされないで。汚れの種類を分類します。私たちは、和、洋、中華と世界中の料理を楽しむので、素材も調味料もいろいろ、したがって汚れの種類もさまざまです。汚れのひどいものを先に洗うと、始末が悪くて、労働は3倍になります。

まず最初に手をつけるのは、お酒の器、湯呑み、急須、飯碗、汁碗、野菜の下ごしらえの器などの水洗いだけですむもの。次に、魚を盛った皿や碗には匂いが残るため、水洗い後に洗剤で。最後は油脂を使った料理を盛った器です。器に付着したソースや油脂をまず古紙で拭き取って、水洗い後に洗剤で洗いましょう、と計画します。

こころ優しい人はあなたの意図をつゆ知らず、手伝おうと食器を重ねます。水洗いだけですむはずの器を肉汁の残った皿の上に重ねられたとき、器の裏にべっとりとついた脂を想像しただけで、身の毛のよだつ想いがすることでしょう。......だから「食後のお茶でもどうぞ」って言ったのに。......さあ、もういちど笑顔で他室に促しましょう。

洗う順にシンクに移して中身を捨てて水通しします。まずは水洗いだけの食器です。洗剤は使いません。グラス、漆、陶磁器と素材別に洗います。飲み口、内側、底を清潔なスポンジでていねいに擦りながら、流水のもとで洗います。指で擦ったのでは表面に指の脂が移りますし、きれいに落ちません。

ひとつの素材を洗い終わったら籠に伏せて水切りをして、ただちに拭いて食器棚にしまう。洗って、拭いて、しまうの一連を素材別に繰り返します。

グラスを真っ先に洗うのは、乾いた麻の布巾で最初に拭くためです。少しでも布巾に湿気があると、ガラスの表面にうっすらと水滴が残って、透明に磨き上げることができません。次に漆、これは少し湿気の残った麻の布巾で拭くほうが、柔らかくてぐあいがいいのです。最後に陶磁器。きめの細かいものからはじめて、粗いものは最後に拭きます。

こうすれば、水切り籠も山盛りにならなくて、事故も少なく片づきます。食器が破損する大きな原因は、重ねすぎたり、異なった硬さの素材がぶつかるときです。それに、目の前の道具の量がどんどん少なくなるのは、達成感があって楽しいものです。お次っ。

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  • クリスタルでもガラスでも、油脂分のあるものや熱い飲み物はグラスには注がないことが前提です。ミルクやヨーグルトなどの油脂を含んだ飲料は陶磁器のマグカップで飲むのが正統です。口あたりもグラスよりやさしくていい感じ。ミルクシェイクをグラスに注ぐ演出は、外食産業から生まれた発想ですし、後にプラスチックや紙コップなどの使い捨ての容器に取って代わられましたね。ガラスに付着した脂肪分は洗うのがたいへんですものね。ホットワインなども陶磁器のマグに注ぎます。クリスタルには鉛の成分が含まれているものがあります。ワインを飲む程度なら問題ありませんが、熱い飲み物やアルコールの長期保存には鉛が溶け出すのではないかと危惧する説もあります。

  • 布巾は、薄すぎても小さすぎても扱いにくいです。プロが使っているトルションがいいでしょう。トルションとはフランス語で布巾のことをいいます。大判サイズ(×ばつ70cmくらい)なので、たくさんの食器を拭き取ることが出来て、料理をする時もベルトに挟んで手ふきやエプロンとして使えます。フランスのレストランでもエビや牡蠣などを食べるとき、トルションを襟元から垂らしてエプロンにしている紳士を見かけます。木綿や麻のいろんな厚さや織りがあり、とくに上質の亜麻はグラス磨きに理想的です。繊維が長いため毛羽が出にくく、抜群の吸水性によって、磨いたあとの透明感がまるでちがいます。ヘンプなどのざっくりした麻も吸水性に優れており、こちらは鍋拭きなどに向いています。

  • 「拭く」と「磨く」は異なります。誇り高きレストランには専門の磨き係がいるくらいです。食器を拭いたら、明るい光のもとで観察してみて。表面にうっすらと小さな水滴が残っているでしょう? これはまだ湿っている状態です。このまま乾かすと、表面に水垢が結晶して鈍く薄汚れた感じになってたいへん。とくにクリスタルや金属は、拭いたあとに乾いた布で磨く習慣をつけましょう。キュッキュッと布の滑る心地がするまで。
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