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2024年09月06日

サリチル酸の生成反応機構に関する調査内容が「AJCE」に論文として掲載されました

長崎大学は半世紀以上にわたりアフリカとの深い関係を築いており、医療、工学、水産業、教育など多岐にわたる分野で活動を展開しています。
このたび、アフリカ化学会連合(Federation of African Societies of Chemistry, FASC)が運営している化学教育分野の国際的な査読付きオンラインジャーナルであるアフリカ化学教育誌「African Journal of Chemical Education, AJCE」に、野口大介技術職員(総合生産科学研究科教育研究支援部)が調査した内容が、論文として掲載されました。
アフリカ化学会連合は、アフリカ大陸の化学関連学会を統括する組織で、アフリカ化学教育誌を発行し、アフリカおよび関連する世界のあらゆる地域における化学教育の向上や研究を推進しています。
今回の調査報告の題材であるコルベ・シュミット反応(Kolbe-Schmitt reaction)は、有機化学における重要な反応の一つで、反応自体は高等学校の化学でも学ばれています。ただ、他の多くの有機反応は溶液中で進行する液相反応であるのに対し、コルベ・シュミット反応は、ナトリウムフェノキシドなどの固体に高温・高圧の炭酸ガスを作用させる「固相反応」であるというユニークな特徴があります。
結晶状態で存在する物質は、結晶構造解析によってその化学構造が精密に測定でき、そうしたデータは教材としての有効活用も見込まれます。そこで本研究では、コルベ・シュミット反応が固相反応であるという点に注目し、反応物のナトリウムフェノキシドのほか、生成物であるサリチル酸ナトリウムの結晶構造データを、ケンブリッジ結晶学データセンター(CCDC)で検索しました。
その結果、ナトリウムフェノキシドは、ナトリウムおよび酸素原子によって構成される四員環ユニットを含む高分子鎖構造を有することが確認されました。この事実は、化学教育の分野ではほとんど知られていなかったものです。
さらに、ナトリウムフェノキシドには、溶媒分子などの小分子が含まれる結晶構造データも豊富に存在することから、これらを活用することで、コルベ・シュミット反応機構の学習に役立つ可能性が示唆されました。


しかく論文情報
タイトル:PRELIMINARY DESIGN OF LEARNING MATERIAL ON KOLBE-SCHMITT REACTION MECHANISM VISUALIZED BY CRYSTAL DATA
著 者:野口 大介(長崎大学大学院総合生産科学研究科教育研究支援部 技術職員)
掲載誌:African Journal of Chemical Education, Vol. 14, No. 3, pp. 54-64 (2024)
URL:https://www.ajol.info/index.php/ajce/article/view/276603
リポジトリ:http://hdl.handle.net/10069/0002001322



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