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2024年08月01日

メチルオレンジの構造変化に関する調査内容が「IRJSTEM」に論文として掲載されました

メチルオレンジは、特に中和滴定という基礎化学における実験で、フェノールフタレインと並んで幅広く学ばれている酸・塩基指示薬の一つです。
このたび、メチルオレンジという名称が生まれた歴史や、化学構造とpHの関係などを野口大介技術職員(総合生産科学研究科教育研究支援部)が調査し、科学・技術・教育・経営分野の国際二重盲検査読付きオープンアクセスジャーナルである「International Research Journal of Science, Technology, Education, and Management (IRJSTEM)」に報告した内容が、論文として掲載されました。
IRJSTEMは、フィリピンの北ネグロス州立大学(State University of Northern Negros; SUNN)によって運営されています。
メチルオレンジという名称で知られているこの酸・塩基指示薬ですが、その名称は覚えやすく親しみやすい反面、この名称だけではメチルオレンジの化学構造を正しく想像することは困難です。では、化学構造を正しく表している名称は何でしょうか。
実は、メチルオレンジの化学構造を正しく表す名称は、「4'-ジメチルアミノアゾベンゼン-4-スルホン酸ナトリウム」です。しかし、この名称を略しても、「メチルオレンジ」とはなりません。これは、分析化学や分子生物学で代表的なキレート剤として学ばれる「エチレンジアミン四酢酸」の名称として、その英語名であるEthylenediaminetetraacetic acidの略称「EDTA」が定着しているのとは、対照的です。
では、メチルオレンジという名称で学ばれているこの酸・塩基指示薬は、そもそもなぜメチルオレンジと呼ばれるようになったのでしょうか。その歴史的由来を解説した和文文献がないか調査されたものの、なかなかはっきりしなかったこともあって、さらに綿密な調査が行われました。
メチルオレンジを最初に合成した人物は、アゾ染料の開発で知られる化学者のヨハン・ペーター・グリース(Johann Peter Griess、1829年-1888年)らだったようです。ただ、グリース自身は、取るに足らないものであるとして、合成したはずのメチルオレンジに、特定の名称を付けませんでした(Griess, 1876, Ber. Dtsch. Chem. Ges., 9, 627)。その後、チューリッヒ工科大学教授のゲオルク・ルンゲ(Georg Lunge、1839年-1923年)が、アルカリ金属炭酸塩の滴定に用いられていたジメチルアミノアゾベンゼンスルホン酸塩(当時、「ポワリエの橙色3号」、「ヘリアンチン」、「トロペオリンD」と、複数の名称で呼ばれていた)の感度が、他の指示薬よりも高いことに注目し、「メチルオレンジ」という、短くて十分に明確な名称を提案しました(Lunge, 1881, Chem. News, 44, 288)。
本論文では、他にも、水溶液中でpHによってメチルオレンジの化学構造が変化する詳細や、理科教育における応用例の提案なども紹介されています。


しかく論文情報
タイトル:Methyl orange: A brief note on its structural changes
著 者:野口 大介(長崎大学大学院総合生産科学研究科教育研究支援部 技術職員)
掲載誌:International Research Journal of Science, Technology, Education, and Management, Vol 4, No 2, 50-57 (2024)
DOI:https://doi.org/10.5281/zenodo.12730268

しかく謝 辞
有益なご提案をお寄せ頂いた長崎大学の田原弘宣先生に感謝します。本研究論文は学術研究支援室が利用者を学内募集したAI英語論文校正・翻訳ツールPaperpalによって英文校正されました。



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