コミュニティバスの再編と
地域内交通の実現に向けた
取組み
平成30年度 専門課程 総合交通体系(地域モビリティ戦略)研修
平成30年10月23日(火)
足利市生活環境部市民生活課
本日お話しすること
1 コミュニティバスの見直し
2 コミュニティバスでカバーできない地域への考え方
3 地域内交通実現に向けた取組み1 足利市の概要
(平成30年8月1日現在)
人口 149,387人
高齢者数 46,686人(31.25%)
世帯数 61,326世帯
面積 177.76km2
東京から北へ80km
西と南は群馬県との県境に接し
栃木県南西部に位置します2 足利市の概要
足利学校
日本最古の学校
足利市、水戸市、備前市、日田市にある教育遺産
や文化財などで構成されるストーリーが
「近世日本の教育遺産群-学ぶ心・礼節の本源-」
として日本遺産に認定されました。
あしかがフラワーパーク
春は藤の花、冬はイルミネーションが人気
年間150万人の来場者がある。3 足利市の概要
公共交通の状況
鉄道
JR両毛線 5駅
東武伊勢崎線 5駅
路線バス
コミュティバス 8路線
民間路線バスの運行無し
自動車保有状況
1世帯あたり 1.616台
(1世帯あたり人数 2.4人)4 コミュニティバスの見直し
平成7年9月最後の民間路線バスが廃止
出典:二宮書店日本地誌第5巻関東地方総論茨城県栃木県
昭和40〜50年代は1日100往復 年間利用者200万人超5 コミュニティバスの見直し
平成7年9月最後の民間路線バスが廃止
写真上(昭和39年頃)写真下(平成4年) 平成30年
出典:平成4年度警察白書 中心市街地の賑わいも大きく変化している(特に歩行者)6 コミュニティバスの見直し
民間路線バス廃止代替としてコミュニティバスの運行開始
代替後は1日3〜4往復の運行7 コミュニティバスの見直し
朝昼晩に1便しかないコミュニティバス
利用者は減少し続ける8 コミュニティバスの見直し
運行を開始してから大きな見直しはしていない
・路線環境の変化
・補助金額の増加
・利用者の減少
・赤十字病院移転開院に伴う路線の見直し
利用したいサービスが提供されているか
現状を確認し課題を見極めることから始める9 コミュニティバスの見直し
相談しやすい関係づくり
運輸局、運輸支局、県
助言・指導をお願いできる
学識経験者
良い関係を築くには日頃のお付き合いが大切
研修や会議に参加することで機会が増える10 コミュニティバスの見直し
見直しにあたり担当者は何をするべきか
・事業の概要
・予算(多いのか少ないのか、費用対効果)
・利用状況(利用者数、利用者種別など)
・沿線状況(運行開始時と比較しての変化)
・環境の変化(公共交通ニーズの動向)
・ターゲットとなる利用者の動向
丁寧な現状把握がより良い検討に繋がる11 コミュニティバスの見直し
自己否定を恐れずに
事業の概要
3台のバス車両で距離の長い4路線を運行している
ことから、運行回数は2〜4回/日といずれの路線も
少なく、行動時間が運行ダイヤに合致する特定の人
以外は利用しづらい状況となっている。
課題が確認できたことは改善へのヒント12 コミュニティバスの見直し
利用状況の把握は乗車しての調査が重要
ヒアリングを行い
利用頻度や利用目的
乗車時の様子などを
確認する
数字だけでなく利用実態の確認が出来る13 コミュニティバスの見直し
OD調査の結果を見える化
利用の多い停留所や区間がわかる14 コミュニティバスの見直し
需要が多く見込める施設等は着地型調査
・鉄道駅 利用者カウント調査
利用者アンケート調査
・病院 利用者ヒアリング調査
利用の多い時間帯がわかり需要を踏まえた計画に繋がる15 コミュニティバスの見直し
市民アンケート調査はニーズ調査ではない?
配布数 2,100(人)
回答数 1,067(人)自由記載回答数 503(人)
回答の数だけ個人的な意見があり
全体計画に反映することは不可能
アンケートは個人的意見を聞くのではなく
現状を確認し、見直し後の成果を計るための
指標設定の基礎資料とした16 コミュニティバスの見直し
コミュニティバス運行の指針となる計画を作成
事業概要・乗降調査結果の評価検証
課題:運行本数が少なく、公共交通として十分に機能していない
小俣北町 松田町
行道山
岡崎山
東武足利市駅
JR足利駅
市役所17 コミュニティバスの見直し
コミュニティバス運行の指針となる計画を作成
交通軸となる路線において、一定頻度の運行ダイヤを実現することで、
利用者に「公共交通も、結構使えるね」と思ってもらえるサービスを提供すること。
再編後イメージ図
東武足利市駅
JR足利駅
市役所
日赤新病院
河南商業集積地
・「広く・薄く」の公共交通ネットワークから、「公共交通軸」を明確にしたネットワークへの転換
・需要の多い施設を拠点化し全ての路線で乗換なしで利用できるよう路線を設定18 コミュニティバスの見直し
結構使えるねと思ってもらえるサービス提供に向けて
小型バス3台
中型バス4台
ワゴン車2台
(10人定員)19 コミュニティバスの見直し
事業全体の計画も重要
計画目標と事業
しろまる市民の生活交通ニーズ等を踏まえた運行の実現
⇒路線再編による「使える公共交通」への転換事業
しろまる公共交通のわかりやすさの向上
⇒情報提供による「わかりやすい公共交通」への転換事業
しろまる持続可能な運行体制の構築
⇒制度設計による「持続可能な公共交通」への転換事業20 コミュニティバスの見直し
運行開始後の取組み
計画で掲げた運行目的を確認
コミュニティバスを運行する目的
コミュニティバス運行の考え方
事業の評価・検証を行うために
事業の目的を理解していなければ
必要な調査ができない21 コミュニティバスの見直し
運行開始後の取組み
計画で掲げた運行目的を確認
コミュニティバスを運行する目的
日常生活に欠かせない活動を持続的に支える公共交通サービスを実現する
生活に不可欠な活動(「通院」「買物」「通学・通勤」)を実現するための
サービスを提供すること。
コミュニティバス運行の考え方
市内公共交通の幹線軸に位置付け、市が責任を持って維持していくこと。
一定頻度の運行ダイヤを実現することで、利用者に「公共交通も結構使える
ね」と思ってもらえるサービスを提供すること。22 コミュニティバスの見直し
目標や事業の進捗・成果の確認23 コミュニティバスの見直し
目標とした運行が実現できているか24 コミュニティバスの見直し
運行開始後の取組み
効率的な運行や必要なサービスとなっているか
・利用者数データ
・OD調査データ
・寄せられた意見
手元にある情報から仮説をたて
より深く検討するために必要な調査を実施する25 コミュニティバスの見直し
運行開始後の取組み
計画で掲げた運行目的の実現を確認
各路線から
通院目的の利用が実現可能か
一部の区間で利用できていない
ことが確認できた26 コミュニティバスの見直し
運行開始後の取組み
通学利用の学生を増やしたい
・モニター利用者を募集
・3日間以上利用してもらいヒアリングを実施
利用状況やヒアリングでの主な意見
・朝の登校時に利用
・帰りの下校時は部活などで時間が異なる
・帰りに図書館や塾に寄るのでバスを利用しにくい
・雨の日は保護者が送迎してくれる27 コミュニティバスの見直し
運行開始後の取組み
通学利用の学生を増やしたい
市内全ての高校の
新入学生にチラシを配布
無料乗車券を添付28 コミュニティバスの見直し
運行開始後の取組み
高齢者を対象に利用相談会
老人福祉施設で出前相談会を実施
時刻表の見方
バスの利用方法
個人別の時刻表を作成29 コミュニティバスの見直し
運行開始後の取組み
ダイヤ改正の考え方
・車両数が決まっている=運行できる時間、距離が決まっている
・どこかを増やすためには、同じ分だけ減らさなければできない
系統の短縮や廃止などの変更は利用者数だけで判断できない
・定期的な利用者
・利用者がいる場合の主な利用区間 細かく確認
・便ごとの利用状況30 コミュニティバスの見直し
見直し後の状況
年度 運行便数/日 年間公費負担額 年間利用者数
H22 26便 41,871千円 100,448人
H23 103便 86,162千円 126,008人
H24 96便 97,677千円 157,503人
H25 91便 93,694千円 164,915人
H26 89便 74,311千円 167,960人
H29 83便 59,764千円 186,745人31 コミュニティバスの見直し
見直し後の状況32 コミュニティバスの見直し
運行準備や運行を開始してから困ったこと
・停留所の設置位置
系統新設に伴い新たな停留所を
地域からは設置してほしい意見がありますが
地先の方々はことごとく断ります
少しづつ場所を調整していると交差点や切下げも33 コミュニティバスの見直し
運行準備や運行を開始してから困ったこと
・停留所の名称
系統新設に伴い上り停留所の位置を調整
4丁目上り停留所が3丁目に移設
下り停留所はこれまでの位置
地先の方から「うるさい」「ゴミが捨てられる」34 コミュニティバスの見直し
運行準備や運行を開始してから困ったこと
・運行ダイヤの作成
バスの運行順序や取りまわしなどは
学識経験者の助言や指導により作成
乗合事業者がいないためノウハウが無い
事業者からは建設的な話しも少なく
事業者の都合を優先してほしい話ばかり35 コミュニティバスの見直し
運行準備や運行を開始してから困ったこと
・道路運送法の申請
許認可手続きは事業者が行うこととなっている
市は事前調整や交通会議により支援
運行開始に間に合わせるよう指示するが
事業者はわからないからと準備が始まらない
運行開始に間に合わない責任を取り切れないので
運輸支局に指導いただき自分で作成することに36 コミュニティバスでカバーできない地域への考え方
コミュニティバスの見直しで成果がみられるが
公共交通の人口カバー率
79.8% 出典:とちぎの公共交通(H29版)
(注記)公共交通サービス圏域は、鉄道駅半径1.5km圏域
バス路線(運行本数6回/日以上)半径300m圏
20%の交通空白が存在37 コミュニティバスでカバーできない地域への考え方
考え方を計画に位置付ける
幹線軸に位置付けたコミュニティバスは
・高い運行サービスを戦略的に提供して利用促進を図る
・日常的に利用する人を増やし持続性可能な移動手段を目指す
交通空白や細かなニーズは
・ニーズや課題は多様化しているが、路線バスだけできめ細かな
対応をすることは難しく、需要も多いとは限らない
・地域の実情に適した移動手段を導入することが、利用しやすく
持続可能な移動手段となると考える38 コミュニティバスでカバーできない地域への考え方
目指す取組・考え方
・地域の現状、課題を明確にしていくためには、当事者であり利用者となる地域が
主体的に取組むことが不可欠
・市は、市の立場を活かし、地域と共に取組みを進め、情報提供、提案、関係者と
の調整などの支援を行うことで、地域内交通の実現を目指す39 コミュニティバスでカバーできない地域への考え方
目指す取組・考え方
市の考え方を明確にするため
地域内交通の基本的な考え方の
検討を進めている
検討内容に実態が即すよう
モデルケースになりそうな
事例を進めながら作成を目指す40 地域内交通実現に向けた取組み
自治会長や役員との意見交換会
市の考え方や取組みの必要性を繰り返し説明41 地域内交通実現に向けた取組み
運送事業者との意見交換会
細かなニーズに対応しやすい乗用事業者と意見交換会を実施42 地域内交通実現に向けた取組み
県の検討業務に位置付けてもらい協力を得る
先進事例視察や話し合いをしている地域に調査を実施43 地域内交通実現に向けた取組み
要望地域の状況
運転免許証の有無
持っている 175人(86%)
持っていない 26人(13%)
いつまで運転するか
ずっと 108人(62%)
75歳 25人(14%)
80歳 21人(12%)44 地域内交通実現に向けた取組み
要望地域の状況
目的地までの移動手段(医療機関)
自分で運転する車 153人(75%)
家族等の送迎 26人(13%)
訪問頻度(医療機関)
月1回未満 82人(40%)
月1〜2回 66人(32%)45 地域内交通実現に向けた取組み
課題解決に向けどのように取組むか
・組織化の促進
⇒協定の締結
・市の決意表明
⇒積極的に解決していくことと応分の覚悟
・より高い主体性の創出
⇒自分たちで実現できることの体験46 さいごに
・方針をしっかり定める
・移動手段は確保することが目的ではない
・移動手段を確保する目的の明確化
・地域の実情に適している
・地域が必要としているか
・持続可能であるか47

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