過疎高齢集落住民のモビリティ確保に向けた取り組み

1過疎高齢集落住民のモビリティ確保に
向けた取り組み
- 福井市高須町における自治会輸送活動 -
総合交通体系(地域モビリティ戦略)研修
(平成27年12月1日(火)10:30〜12:00)
福井大学大学院工学研究科 川 本 義 海
yoshimi@u-fukui.ac.jp 2福井新聞(県内特集)
2011年1月3日 より
総合交通体系(地域モビリ
ティ戦略)研修151201
(福井大学 川本義海) 3福井新聞
2010年7月21日より
総合交通体系(地域モビリ
ティ戦略)研修151201
(福井大学 川本義海) 4背景・目的
 急速に人口減少と過疎高齢化が進む「過疎高齢集落」に
おいて、マイカーや運転免許を持たない高齢者はもちろ
ん、高齢ドライバーの負荷も今後大きくなりつつあり、
モビリティの低下および持続性が危ぶまれている。
 既存の地域交通サービス(路線バス、乗合タクシーな
ど)を享受できていない集落は各地に点在している。
 従来の公共交通の概念を超えた、真に利用者本位で住民
主体の地区交通サービス(有償・無償)の取り組みが
徐々に広がりつつある(高須町もその一つ)。
 このような集落住民自身によるモビリティ確保(共助型
地域交通サービス)の取り組みについて、運行開始から
約1年経過した時点での高須町の実績および5年が経過
した今を追いながら、今後の課題と展望をまとめる。
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(福井大学 川本義海) 5過疎地域における交通問題(1)
 既存のバス路線などが「ある」場合
→ 財政逼迫、効率性重視により、バス路線の縮減あ
るいは廃止が依然として加速傾向にある。
 既存のバス路線などが「ない」場合
→ マイカー依存(運転or同乗)の状況は大きく変化
しないものの、運転が困難になったり同乗させてもら
う運転者自体が減少しており、安全と質の低下と外出
機会の減少が懸念されている。
いずれにせよ、交通サービスを成立させるために不可
欠な資源(ひと(運転者)、もの(交通手段)、お金
(維持管理費))が今のままではますます縮退し続け
てしまう。
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(福井大学 川本義海) 6過疎地域における交通課題(2)
 交通システムの抜本的見直し
→ 従来の公共交通を主体とした交通システムをベー
スにその適用や応用を考えるだけではなく、実際の交
通行動と潜在的ニーズを満たすに相応しいマイカーの
使い方を住民主体で丹念に調査し、考えることも重要。
 外発的、受動的な交通サービスからの質的転換
→ 過疎地域を外部から支えるという既成概念を脱し、
内部から変えるという内発的、能動的な地域運営へ。
「住民参加型・共助型」の自律的な交通システムによ
る地域交通サービスにより、「量」から「質」の向上
を図るべき。
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(福井大学 川本義海) 7車の共同所有・共同利用の観点から
 共同利用(カーシェアリング)は交通需要の多い都市部
で急速に導入展開が図られている。一方で、交通需要が
少ない地方部、しかも過疎集落ではみられない。仕組み
としてまったく成立見込みがないのだろうか?
→ 営利事業としてみれば妥当な判断か。しかし地方で過
疎地域という場所性を考えるとまったく別の観点、意味合
いからの検討(例えば、崩壊に向かう地域コミュニティを
繋ぎ止めるあるいは強化する)もあり得るのでは?
 そもそも交通サービスを支える資源に乏しい過疎地域で、
今ある資源を共有(シェア)し合うことはとても合理的
なはず。
とくに格差が危惧される過疎地域では、交通サービス享受
は個人任せではなく、集落・地域全体で保障すべき。
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(福井大学 川本義海) 8 公共交通機関の利用が困難な過疎地域で、自治会な
どがボランティアで高齢者らの移送を行うモデル事
業。ガソリン代の実費は負担(自治振興会の会員券
を購入)してもらうものの、運賃を徴収しない仕組
み。
 運行・維持管理は自治会などの地域活動の一環とし、
住民向けのボランティアとして位置付けている。
 県が輸送車両の購入費の2/3と運行経費の2割を
市町村を通じて助成。また関係機関、業者との調整
もおこない、維持経費はふるさと創生事業の一部を
活用。
参考となる事例(1)
- 島根県飯南町『自治会等輸送活動支援モデル事業』 -
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(福井大学 川本義海) 9(出典)島根県の過疎対策の取組状況「2.地域生活交通確保対策」
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/2001/kaso/pdf/kasokon20_07_02_s1.pdf
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(福井大学 川本義海) 10 バスの便数が少ない、停留所まで距離が離れている
といった中山間地域の課題を解消し住民の生活を守
る狙いで、鳥取県と米子高専が結んだ包括連携協定
の一環。プロジェクトチームには南部町や地元住民
らも加わる。
 買い物や通院など外出を希望しながら車を運転でき
ない高齢者ら交通弱者と支援が可能な住民らをマッ
チングし、無料で相乗り。
 地域振興協議会が運送主体。車検、保険等の経費は
個人負担を検討しているが、個人所有車の使用可否
などは今後の実験やアンケート結果をふまえて判断。
参考となる事例(2)
- 鳥取県南部町『南さいはく共助交通システム』 -
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(福井大学 川本義海) 11(出典)鳥取県南部町提供資料
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(福井大学 川本義海) 12 明倫地域づくり協議会『明倫買い物クラブ』
地域住民から運転ボランティアを募り、地域の高齢者を送迎
(H25.3〜)。車両は社協の貸し出し車両を使用。目的地を
町内の2か所の商業施設(レピア、プラント2)に限定し、週に
2日、1日あたり午前と午後の2回運行。
 みそみ地域づくり協議会『みそみ買い物メイト』
地域の高齢者を地域のボランティアが送迎(H26.7〜)。
車両社協の貸し出し車両を使用。目的地はおもに町内の2か所の
商業施設(レピア、プラント2)。三十三(みそみ)地区をA〜
Dの4つのエリアに分けて運行。1エリアあたり2週間に1日
(午前・午後)運行。(利用者はおよそ60人/月で増加傾向)
 鳥羽地区地域支え合い連絡会
一人暮らし高齢者や障がい者の日常生活の不安を解消するため
に、地区の福祉関係者が連携して支え合い活動を推進。ふれあい
サロンバスの利便性向上のために、ルートやダイヤなどを検討し、
ルート変更を町に要望(H25.12)。
地域の自主的・主体的な送迎サービス
- 福井県若狭町の事例 -
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(福井大学 川本義海)
13 地域モビリティ戦略研修 (福井大学川本
義海)
151201
(出典)みそみ地域
づくり協議会『みそ
み買い物メイト』
福井新聞2015年9月9日
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(福井大学 川本義海)
 利用登録者は85人 運転ボランティア
は21人
 行きは集落内の決
まった場所に集合、
帰りは自宅前まで
送迎 14 公共交通空白地域等において、地域の方々が交通事業者
と連携・協力して地域コミュニティバスの運行に取組む
場合に、活動費用や運行欠損額の一部を市が補助。
住民と事業者の協働によるバスの運行
- 福井市地域コミュニティバス -
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(福井大学 川本義海)
(出典)福井市ホームページ
http://www.city.fukui.lg.jp/kurasi/koutu/public/localcommunitybus.html
(H22.4〜、
H25.4制度
改定)
平成27年10月1日現在、
6地域で本格運行
又は試行運行 15地域区分
1往復又は1循環あたりの
平均乗車人員
収支率(注記) 欠損額
周辺市街地 5人以上 25%以上
800万円
以下
農山漁村地域 3人以上 20%以上
中山間地域 2人以上 15%以上
(出典)福井市ホームページ
http://www.city.fukui.lg.jp/kurasi/koutu/public/localcommunitybus.html
(注記)は別途、既定の算定方法により算出。
定時定路線型の場合
運行継続基準
運行態様及び
運行地域の区
分に応じて、
各欄の数値を
全て満たすこ
とが必要。
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(福井大学 川本義海) 16 運行時間帯や運行頻度、運行ルート、サービス圏域な
どの制約に縛られ過ぎないよう工夫し自由度を拡大。
 移動の時空間ならびに車両の共有化によるコミュニ
ケーション機会の増大と連帯感、一体感の醸成。
 複数集落間の協力連携と交流の促進、さらには中山間
集落と郊外集落(都市近郊集落など)との繋がりの創
出。
 個人ベースでは充足できない多様な車両タイプの利用
や資源(ひと・もの)の融通性向上(適材適所)。
集落住民の自立的な思考・発案と実践を促し、地域資源
を活用した持続的な集落の維持・再生に資する契機に
共助型交通サービスへの期待
総合交通体系(地域モビリ
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(福井大学 川本義海) 17福井市K町
世帯数20世帯、人口44人、75歳以上21人、独居世帯8世帯、
路線バス、地域バスルートがある県道から約2km登ったところ
に位置。市中心部まで車で約45分。昭和の合併で福井市に編入。
福井市T町
世帯数49世帯、人口111人、65歳以上57人(高齢化率
51%)、ディマンド型乗り合いタクシールートのある最寄の県道
から約4km登ったところに位置し標高約300m。県道まで集
落はまったく無し。市中心部まで車で約40分。昭和の合併で福井
市に編入。
<おもな意見>
どこに行くにも車で30分は必要 / 高齢者も多く運転している
/ とにかくバスのようなものを走らせて欲しい / 町は公共交通
があるのに田舎にないのは不公平 / 一人暮らしの人は用事を他
人に頼むことがある / お金を払って送迎を依頼することもある
/ 食事のバリエーションが少ない / 往復のどちらかの足がない
過疎高齢集落の実情
- 福井市の過疎高齢集落K、Tでの懇談会から -
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(福井大学 川本義海) 18地域資源
 車両の確保(おもに昼間に使用可能か、車のタイプなど) 運転手の確保(運転免許保有者、運転技量、時間など)
 運営管理(集落における受け皿の有無)
 経費(個人部分、集落部分、その他の補助部分の区分け)生活の質の確保
 サービスレベル(利用条件や制限の程度、満足度など)
 受容性(経済的、精神的、物理的など)
共助型交通サービスの検討要素
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(福井大学 川本義海) 19高須町における自治会輸送モデルの目的
中山間地域にあって高齢化の進行が著しく、公共交通
空白地域である高須町において、地域住民による助け
合いを前提とした新たな輸送活動の取組みをモデル事
業として支援し、その活動成果を検証・評価のうえ、
中山間地域・高齢化集落の生活交通を補完する新たな
仕組みを確立する。
【事業期間は最低5年間。その後については運行開始
現時点では未定であったが、5年を経過した現在も継
続中】
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(福井大学 川本義海) 20事業概要
 市がワゴン車(定員10名)を新車で購入し、高須町自
治会に無償で貸与。
 自治会は、輸送活動に必要な運営組織を設置し、運転手
の確保、運行時間や運行経路の設定等を行い、高齢者
(自治会会員)の日常生活に必要な輸送活動を実施。
 利用者はガソリン代のみ負担。輸送活動に必要な経費
(運転者への謝礼など)は、基本的に自治会費から支出。
行政(福井市交通政策室:当時)は車両の貸与、経費面の
補助および計画・輸送活動の状況把握とアドバイス、大学
(福井大学川本研究室)は住民の行動実態調査、他事例の
情報提供および活動に対するアドバイス、自治会(高須
町)は車両の運行・管理と報告を担う。
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(福井大学 川本義海) 21総合交通体系(地域モビリ
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(福井大学 川本義海)
福井大学川本研究室
・ 利用者・集落住民へのヒアリン
グ・アンケートの実施、利用動態
の詳細分析、報告
・ 定期的な協議会との意見交換
の場への同席とアドバイス 22福井県福井市高須町
人口 94人(106人)
世帯数 49世帯(48世帯)
65歳以上人口 53人(56人)
高齢化率 51%(53%)
運転する人 52人(55%)
運転しない人 42人(45%)
高須町
福井市中心部
対象集落(福井市高須町)の概要(1)
高須町から福井市中
心部までは約20km
福井市の中山間地域
モデル集落に選定
(棚田オーナー
(H16〜)など)
(注記)右カッコ内は平成23年1月1日
現在
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(福井大学 川本義海)
• H27.8末時点
で人口85人
• 全員が20歳
代以上
• 高齢者46人 23対象集落(福井市高須町)の概要(2)
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(福井大学 川本義海)
【面 積】 5,097,518 m2(5.098km2)
【人口総数】 95人
【世帯総数】 43世帯
【性 別】 男:46人、女:49人
【年齢構成】 15歳未満 - 男: - 人、女: - 人 / 15〜64歳 - 男:29 人、
女:17人 / 65歳以上 - 男:17人、女:32人
【世帯人員】 1人:16、2人:16、3人:2、4人:4、5人:5
【親族世帯】 27世帯 核家族以外の世帯:9世帯、核家族世帯:18世帯(うち
夫婦のみ:13、夫婦と子供: -)
【就業者総数】 43人 雇用者(役員を含む): 34人、自営業主(家庭内職者を
含む): 6人、家族従業者:3人
【就業者総数】 43人 管理:0人、専門・技術:2人 事務:3人、販売:3人、
サービス:1人、保安:2人、農林漁業:5人、生産工程:8人、輸送・機械運
転:3人、建設・採掘:1人、運搬・清掃・包装等:3人、分類不能:12人
【就業世帯】 農林漁業就業者世帯:2世帯、農林漁業・非農林漁業就業者混合世
帯:1世帯、非農林漁業就業者世帯、11世帯、非就業者世帯:23世帯、分類
不能の世帯:6世帯
(注記)平成22年(調査日 2010年10月1日)国勢調査(総務省統計局)をもとに作成 24 25 26 放送局:福井放送
 放送時間:2011年04月29日 16:00 〜 16:30(30分)
 カテゴリ:ニュース/報道 - 報道特番
 番組名:FBC報道スペシャル2011
 番組概要:福井の今を見つめ、人々の日々の営みや地域
の課題を追う新番組の一回目。公共交通機関がない山間
いの限界集落、福井市高須町に初めて走ったコミュニ
ティーバスに密着したもの。
高須町自治会輸送活動のTV報道(紹介)
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(福井大学 川本義海) 27高須町
福井市役所
高須町
鮎川線
川西線
三国線
乗合タクシー
バスルート外
利用されてい
る主な施設
乗合タクシーのルート
まで約5km
時間帯 鮎川線 乗合タクシー
バス
タクシー
便数
上り
午前 7(4) 4(運休)
午後 8(5) 2(運休)
計 15(9) 6(運休)
下り
午前 3(2) 3(運休)
午後 12(7) 3(運休)
計 15(9) 6(運休)
(注記)( )内は
休日
対象集落の交通環境(道路・路線バス・各種施設)
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(福井大学 川本義海) 28アンケート調査および活動日誌調査
調査対象
高須町に住む
中学生以上全員
調査月日 平成21年12月
調査方法 直接配布(直接回収)
運転の有無 配布 回収 回収率
運転する人 52通 39通 75%
運転しない人 42通 22通 52%
計 94通 61通 64%
ヒアリング調査
調査対象地区 福井県福井市高須町
調査対象 高須町自治会役員5名
調査年月
平成21年10月2日
平成21年11月20日
集落住民調査の概要(運行開始前)
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(福井大学 川本義海) 29集落住民調査の結果
 乗合バスや乗り合いタクシーを希望
 一人暮らしの人は買い物を人に頼む
 集落住民は家族・兄弟のような存在
 病院へは毎日でも行きたい
 買い物は若い人に頼んでいるが口に合わないことも多い
 共稼ぎが多く若い人がいないので送迎を頼むことは難しい
【ルート】買い物、通院のための交通手段が必要。これら
両方の用途を兼ねた乗合に見合ったルートの考慮が重要。
【運行ダイヤ】週2〜3回の移動の確保が必要。住民の
ニーズに合った運行曜日、時間の考慮が重要。
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(福井大学 川本義海) 30通 院
主な目的地(N=22)
1市内の病院(10人)
2福井総合病院(5人)
3藤田医院(4人)
主な移動曜日(N=29)
1決まっていない(9人)
2木曜(8人)
主な移動時間帯(N=18)
1午前9時までに(11人)
2決まっていない(9人)
主な移動手段
1自分の運転(19人)
運転する人(N=36)
移動頻度(N=32)
1月に数回(12人)
2していない(11人)
主な目的地(N=16)
1福井総合病院(6人)
2藤田医院(2人)
3福井温泉病院(2人)
主な移動曜日(N=11)
1木曜(3人)
1月曜(3人)
主な移動時間帯(N=13)
1午前9時までに(7人)
2決まっていない(3人)
主な移動手段(N=14)
1家族の送迎(N=12)
運転しない人(N=22)
移動頻度(N=18)
1月に数回(9人)
2週に1回(6人)
買い物
主な目的地(N=30)
1ハニー七瀬川店(9人)
2市内その他(8人)
3組合マーケット(6人)
主な移動曜日(N=28)
1決まっていない(19人)
2土曜(6人)
3火曜(5人)
主な移動時間帯(N=25)
1決まっていない(15人)
主な移動手段(N=28)
1自分の運転(26人)
移動頻度(N=27)
1週2〜3回(13人)
2週1回(11人)
主な移動曜日
1土曜
主な移動時間帯
1運転手に合わせる
主な移動手段
1家族の送迎
運転しない人(N=22)
移動頻度(N=14)
1家族にしてもらう(12人)
2週に一回(2人)
主な目的地(N=11)
1ハニー七瀬川店(4人)
2組合マーケット(3人)
3ゲンキー川西店(2人)
運転する人(N=36)
福井市仙町付近と福井市上野町付近と同一地区に目的地が集中
通院は木曜、買い物は土曜に需要が多い
通院は午前9時までの移動が多く、買い物は時間に融通がきく
「通院」と「買い物」の両方の用途を兼ねた乗合が最適と判断
総合交通体系(地域モビリ
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(福井大学 川本義海) 31総合交通体系(地域モビリ
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(福井大学 川本義海)50km 1 2 3 4 32上野町付近(銀行・郵便局など) 福井総合病院
仙町付近(スーパー・ホームセンターなど) 福井温泉病院 33高須町
通院先、買い物先が
集中する上野町付近 通院先、買い物先が
集中する仙町付近
通院と買い物の用途を兼ねた乗合を前提に、
1.通院の時間に合わせたダイヤの作成
2.木曜の運行
3.高須町と仙町付近、上野町の3ヶ所を核と
したルート設定 が基本的な条件
組合マーケット
個人病院 福井総合病院
ハニー七瀬川店
ゲンキー川西店
輸送活動の具体案
上野町
仙町
総合交通体系(地域モビリ
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(福井大学 川本義海) 34運行開始までの準備状況(概要)
 福井県の「集落輸送活動支援モデル事業」の補助を受け、福
井市が「自治会等輸送活動支援モデル事業」として、2010年
8月から福井市高須町にて県内発の輸送活動を開始。
 運行ルートおよび運行ダイヤは住民アンケート調査結果から
把握したニーズにほぼ沿った形で開始することにし、運行後、
状況に応じて随時変更を予定。(当初の運行曜日は月・木・
土の週3日。運行時間は午前7時および午後3時高須町発の2往
復。車両は10人乗りワンボックス。ドライバーは集落住民)
 運行形態、管理運営については先行事例(島根県飯南町)に
ほぼ倣った形。なお福井県内の他地区、他集落での具体的な
検討は見られない。
 上記の他に県実施の「集落移動販売システム整備モデル事業
(2年間)」も同年7月から開始され、高須町は移動販売車が
巡回する県内11集落の一つにもなっている。
 懸念される課題、問題点(利用実績、利便性、事故などへの
対応など)について今後継続して検討の予定。
総合交通体系(地域モビリ
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(福井大学 川本義海) 35(左上)
朝日新聞
2010年8月20日
(中上)
福井新聞
2010年8月10日
(左下)
福井新聞
2010年8月8日
(右下)
県民福井
2010年8月10日 36今後
他の
支援
開始
当時 37出発式(2010年8月9日)会場の高須城小学校 運行車両
自治会長への報道陣インタビュー 出発式に集まった地区住民 38車両の安全運行祈願御祓い 車両キーの受け渡し
運転者への花束贈呈 車両に乗り込む関係者 39車両に乗り込む住民 集まった住民へのお神酒の振る舞い
地元テレビ局の取材を請ける住民 車両の出発を見送る住民 40運行開始直後(8カ月間)の利用状況01020304050608月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
月別利用者数(人)00.511.522.533.54平均利用者数(人)
午前 午後 平均
くろまる 延べ利用者のうち75%が午前中に利用。
くろまる 運行1回あたりの平均乗車人数は運行開始当初は増加していたが最
近は減少傾向。
((注記)平成23年度の実績 → 4月:2.1人、5月:1.6人)
くろまる 昨年度利用券を購入した人は13人で高須町に住む高齢者数(53
人)の25%
総合交通体系(地域モビリ
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(福井大学 川本義海) 41運行開始直後の実績(平成22年度)
8月 9月10月11月12月
1月 2月 3月 計 摘要
運行
設定日
6日 13日 13日 13日 13日 14日 12日 13日 97日
月・木・土運行日 4日 8日 8日 8日 8日 5日 8日 12日 61日
設定日外
も含む
運行回数 7回 14回 11回 13回 10回 6回 14回 17回 92回利用者数午前
15人 31人 25人 23人 24人 12人 35人 26人 191人 75%午後
4人 10人 9人 9人 7人 2人 15人 7人 63人 25%計19人 41人 34人 32人 31人 14人 50人 33人 254人
1回あたり
乗車人数2.7人
2.9人3.1人2.5人3.1人2.3人
3.6人1.9人
2.8人
走行距離164km349km210km233km216km108km304km314km
1,898km総合交通体系(地域モビリ
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(福井大学 川本義海) 42運転者と利用者の目的
運転者の状況
A, 44.8%
B, 29.9%
C, 17.9%
D, 6.0%
E, 1.5%
A B C D E
くろまる 昨年度、運行を行った運転手は計5人。そのうち2人が全体の約
75%を運行。
くろまる 利用目的は「福井温泉病院への通院」が圧倒的に多いが、2月以
降、ハニーへの買物利用やすかっとランドへの娯楽利用等、通院以
外の利用もいくらか見られるようになった。
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(福井大学 川本義海) 43運行開始後約1年での評価と課題
 利用者からは大変好評であり今のところとくに問題はない。ま
た他地域からの視察もあり注目されている(自治会の刺激に)。
 事前のニーズ把握調査をもとに立案した計画がほぼそのまま利
用されている(当初の運行計画内容から乖離なく運行中)。
 乗り合わせの工夫によるさらなる効率的な運行(平均乗車人員
アップ。現在は2〜3名/回)。
 利用の多様化(通院のみならず買い物や娯楽への利用拡大も)。
 運行ルートの延伸(低頻度でよいのでさらに便利(病院)に)。
 利用者の拡大(まだ利用していない人の潜在的ニーズを把握し
あらたな利用の喚起および促進)。
 持続的な運行のために必要な条件の整理およびそれらの条件を
満たすための具体的方策の検討(運転者の確保と負担の分散化、
資金の自己調達と補助からの自立、評価の視点の再考 ほか)。
総合交通体系(地域モビリ
ティ戦略)研修151201
(福井大学 川本義海) 44運行実績(平成26年度)(注記)運行開始から5年目
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 計
運行
設定日
13日 14日 12日 12日 13日 13日 13日 13日 13日 14日 12日 13日 157日
運行日 11日 8日 8日 10日 6日 10日 12日 9日 9日 8日 10日 7日 108日
運行回数 14回 10回 10回 14回 8回 11回 20回 10回 12回 11回 12回 10回 142回利用者数午前
30人 29人 23人 35人 20人 30人 38人 24人 37人 26人 64人 29人 385人午後
0人 0人 0人 0人 0人 0人 3人 0人 0人 0人 0人 0人 3人計30人 29人 23人 35人 20人 30人 41人 24人 37人 26人 64人 29人 388人
1回あたり
乗車人数
2.1人 2.9人 2.3人 2.5人 2.5人 2.7人 2.1人 2.4人 3.1人 2.4人 5.3人 2.9人 2.7人
走行距離360km228km185km302km158km294km405km249km247km236km308km159km
3,131km(注記)運行約5年間(H22.8.〜H27.9)の利用者総数2,048人、運行総距離15,742km
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ティ戦略)研修151201
(福井大学 川本義海) 45利用者数の推移(H24年度〜H26年度)
 年間利用者数は僅かながら減少傾向にあるもののほぼ一定
(400人弱)。
 運行1回あたりの利用者数は平均2.5〜2.7人とほぼ一定。
また利用のほとんどが午前中に集中。
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(福井大学 川本義海) 46運行開始後から現在までの推移(行先別)
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(福井大学 川本義海)
行 先 H23 H24 H25 H26 H27 計(回) 割合
1. 温泉病院 95 98 89 77 51 410 59%
2. 福井病院(新田塚) 29 14 11 16 13 83 12%
3. 福井総合病院 4 4 13 3 2 26 4%
4. ハニー(食品スーパー) 4 8 12 0 0 24 3%
5. パーマ屋 1 8 14 9 4 36 6%
6. コメリ(ホームセンター) 1 3 5 0 0 9 1%
7. 鷹巣郵便局 4 6 6 2 0 18 3%
8. 上田整骨院 0 4 0 0 0 4 1%
9. 藤田病院 1 2 1 1 2 7 1%
10. 鷹巣農協(JA) 7 8 5 5 4 29 4%
11. すかっとランド(温浴施設) 2 3 0 0 0 5 1%
12. 佐野温泉 4 2 3 0 0 9 1%
13. 鶉農協(JA) 0 1 2 0 0 3 0%
14. 棗郵便局 0 1 1 1 0 3 0%
15. あわら大江戸温泉 0 2 0 0 0 2 0%
16. 川西役場 0 0 1 0 0 1 0%
17. その他 4 0 10 6 5 25 4%
計 156 164 173 120 81 694 100%
(注記)1回の運行で「病院」→「ハニー」→「郵便局」をハシゴした場合、運行回数は1回だが、行き先別運行回数
はトータルで3回になる。逆に、病院を送り迎えした場合(運転手が1度帰った場合)運行回数は2回だが、行
き先別運行回数は1回になる。H23.4〜H27.9の4年6カ月分のデータ(年度)による。 47運行開始後から現在までの推移(利用者別)
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(福井大学 川本義海)
利用者 H24 H25 H26 H27 計(回)
1. Aさん 56 70 50 30 206 15%
2. Bさん 28 29 41 17 115 9%
3. Cさん 7 0 0 0 7 1%
4. Dさん 55 79 61 27 222 16%
5. Eさん 60 73 74 37 244 18%
6. Fさん 47 64 58 27 196 15%
7. Gさん 37 39 35 16 127 9%
8. Hさん 9 0 0 0 9 1%
9. Iさん 13 0 0 0 13 1%
10. Jさん 2 0 0 0 2 0%
11. Kさん 18 14 18 10 60 4%
12. Lさん 6 1 4 0 11 1%
13. Mさん 3 2 0 0 5 0%
14. Nさん 3 0 0 0 3 0%
15. Oさん 1 0 0 0 1 0%
16. A〜Oさん以外 20 29 47 29 125 9%
計 365 400 388 193 1,346 100%
(注記)H24.4〜H27.9の3年6カ月分のデータ(年度)による。 48運行開始から現在までの推移(概要)
 運行開始前のニーズ把握調査をもとに立案した当初の計画を基
本的に踏襲。
 利用者からは依然好評であり、他地域からの視察は一段落。
 運行ルートを一部延伸(低頻度でもさらに便利(病院へ)に)。
 平均乗車人員は2.5〜2.8人/回で当初からほぼ変わらず。
現在の利用はほぼ午前中のみ。運転手は実質2〜3名と変わらず。
 実利用者は、運行開始当初の16人から現在は8人に半減。当初
利用していた人の利用が無くなり、実利用者の減少が進行。あ
らたな利用の喚起および促進が必要だが、実際にはかなり困難。
 実利用者一人あたりの月利用回数(距離)は、H24年度の1.
9回(206km)からH27年度の4.0回(417km)へと年々
増加(実利用者は半減し、利用距離は倍に)。利用者にとって、
便利でなくてはならない足としての意味合いはますます増大。
 利用形態(目的地)の多様化はほとんど進まず(圧倒的に通院
が主であり、娯楽等への利用拡大はほとんどなし)。
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(福井大学 川本義海) 49非都市部(中山間地)での高齢者MMの視点
 公共交通空白の場合が多く、結果としてマイカーに依
存し続けざるを得ない環境をいかに改善するか。
 マイカー運転、マイカーに同乗では得難い車内におけ
る住民同士のおしゃべりから広がるコミュニティの持
続。
 モビリティは与えられるだけのものではなく自ら確保
するものであり、またできるという意識と実践へ。
 ニーズは当然ながら都市のそれとは同一に非ず。その
地区ならではの暮らし方(ライフスタイル)に立脚し
たモビリティの評価が不可欠。
 高齢者のモビリティだけに注目するのではなく、非高
齢者も含めた地区トータルで考える(近くに住む家族
やご近所さんなど)への依存度の高さを考慮)。
総合交通体系(地域モビリ
ティ戦略)研修151201
(福井大学 川本義海) 50 過疎高齢集落住民を主とした交通サービスであるこ
とはもちろんであるが、そこに出入りするすべての
人・ものの移送(貨客混載)を可能にするという発想
もあわせて重要。これにより、はじめて集落だけでク
ローズしない、外に開かれた地域(閉塞感を打ち破る
閉鎖性の除去)をめざすことが可能となる。
 集落がすでに有する既存の資源とコミュニティの力
を再確認・再評価し、またそれらの関係性を整理・再
構築することにより、限られた中でもまだまだできる
ことがあるはず。
 過疎高齢集落の交通サービスだからこそ、集落住民
の移送サービスに留まらず、モノの輸送やコトの伝達
を統合し、その質的な変革をもたらすべき。
おわりに
総合交通体系(地域モビリ
ティ戦略)研修151201
(福井大学 川本義海) 51<参考・引用文献>
1. 過疎高齢集落におけるモビリティの維持と確保の視点 -車の共同所有・共
同利用に着目して、土木計画学研究・講演集、40、講演番号117(CD-
ROM)、2009.11
2. 過疎高齢集落における住民主体のモビリティ確保に向けた取り組み、第五
回日本モビリティ・マネジメント会議、ポスターセッションPB-20、
2010.7
3. 過疎高齢集落住民による新たな共助型モビリティの検討、土木学会年次学
術講演会概要集、65、4、IV-168(CD-ROM)、2010.9
4. 過疎集落における共助型地域輸送活動に関する研究-福井市高須町を対象と
して-、土木計画学研究・講演集、42、講演番号42(CD-ROM)、
2010.11
5. 過疎高齢集落住民のモビリティ確保に向けた取り組み 〜福井市高須町にお
ける自治会輸送活動モデル事業〜、第六回日本モビリティ・マネジメント
会議、O-12、2011.7
6. 過疎と高齢化が進む集落における共助型輸送活動による持続的な住民のモ
ビリティ確保、土木計画学研究・講演集、44、ポスターセッションP26、
2011.11
総合交通体系(地域モビリ
ティ戦略)研修151201
(福井大学 川本義海) 52ご清聴ありがとうございました
運行実績データは、福井市都市戦略部地域交通課のご提供によるものです。

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