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村山団地中央商店街の送迎自転車サービス
村山団地中央商店街 比留間誠一
しかく高齢化率 47%のマンモス団地
武蔵村山市の村山団地は、昭和41年に完成した総数5,260戸のマンモ
ス団地である。昭和の時代は、商店街や団地周辺の店舗も繁盛していたが、月
日が経過し、建て替えの時期を迎えた。
平成12年から、
住民は順次高層住宅に移
り住んでいるが、高齢化が進んでおり、平成
26年の高齢化率は約47%である。
そのう
え、
新しい高層住宅は商店街から少し遠くに
なり、高齢者の買い物頻度が減少した。
しかく宅配サービスから送迎自転車サービスへ
そこで村山団地中央商店街は「宅配サービス」を有志で始めた。その後、武
蔵村山市商工会から市全体で
「宅配」
を実施したらどうか、
との提案があり、
「ま
いど〜宅配」とネーミングした事業が始まった。
しかし、宅配をしていると、高齢者の希望が宅配で満たされているわけでは
ないことが分かった。高層住宅になって、家に閉じこもっている時間が長く、
商店街で品物を見ながら買い物をしたり、お店でおしゃべりをしたり、街で知
り合いと出会ったりしたいけどできないでいる。
そこで商店主たちは、何とかこの方たちが商店街まで足を運んで買い物をし
たり、サービスを受けたりして、家まで安心して帰れることが必要と考えた。
そうした時に、ある高齢のお客様で「タクシーで商店街にみえて、美容院や
食料品店・衣料品店に寄って、
帰りはまたタクシーを店で呼んでもらって帰る」
人がおられた。
「もったいない」と感じた商店主が申し出て、車いすで家までし
ばしば送っていた。
こうしたことから、
「ベロタクシー」
(三輪の乗客2人の自転車)のようなも
のを導入して、歩くのが少し不自由だったり、高齢だったり、買物の荷物が重
<村山団地中央商店街> 2くなったりした方を家の近くまで送迎すれば、この地域にはとてもいい結果を
もたらすのではないか―という考えに至った。
とはいえ、豊富に資金がある商店街ではないので、
「無料送迎自転車」運行の
アイディアだけは武蔵村山市商工会に提案していた。
ほどなく武蔵村山市の補助を得て、商工会が主体となって村山団地中央商店
街をモデル地域として、三輪の「送迎自転車」運行システムを導入できること
になった。すぐに送迎自転車の製作を依頼し、構想が実現した。
しかく送迎自転車サービスの具体化
まずは、
送迎自転車の製作をメーカーに依
頼し、
試作品として一台製作していただける
ことになり、
平成21年9月30日に村山団
地中央商店街に届いた。
また、空店舗を安く借りて「宅配のステー
ション」を確保、送迎希望の方の待合所と送
迎依頼電話受付の拠点にし、
運行終了後は自
転車の車庫になるようにした。名称は「まい
ど〜宅配センター"おかねづかステーショ
ン"
」とした。
「送迎自転車」
の運転手はボランティアと
商店主が担当し、
午前10時〜午前12時と
午後1時〜午後3時を常時送迎の時間と設
定し、
必要に応じて午後5時まで対応してい
る。
(土・日・祭日・雨天は休み)
現在はボランティア運転手2人と商店主有志3人で運行していて、お客様が
いないときは団地内を縦横無尽に流しながら、歩いている人に声をかけ、必要
に応じて利用していただいている。
ステーションには、ボランティアで管理人が常勤。管理人は電話での送迎希
望の受付や運転手の手配をするほか、宅配の集計・運転手の協力時間・利用者
の人数・運行日誌などの記録や、来訪者の応対等を受け持ち、最近では週に一
<まいど〜宅配センター
"おかねづかステーション">
<送迎自転車> 3回ステーションでの地場野菜の販売管理も担当していただいている。
「送迎自転車」は、平成21年10月1日から運行を開始した。開始に当た
っては、パンフレットを作成・投函したり、事業の内容を説明して利用を呼び
掛けた。
運良くすぐにボランティアの運転手さんがみつかり、商店主も努力して徐々
に利用者が増加していった。10月中旬には早々とテレビの生中継があり、歳
末セールも手伝って、加速度的に事業が周知された。
しかく地域に根付く送迎自転車サービス
運行開始から平成26年7月末までの
4年10か月の間で延べ11,450人
を送迎してきた。利用者は年々増加傾向
にあり、一日当たりで10人〜20人の
利用がある。ボランティアとともに商店
主が運転に参加するのはとても大切で、
お客様とのコミュニケーションが図れ、
生活状況を商店主の目から把握できる。
お客様の声は一様に、
「とても助かる」
「ありがたい」といったもので、
「これ
がなければ生活できない」とまで言われ
る方もいる。
村山団地中央商店街には、医院や郵便局などもあるので、買い物だけでなく
このような所へ用事で行く希望があれば、送迎しており、こうした業種の方々
からもありがたいという声をいただいている。
利用者は商店街への配慮もあって、買い物は商店街を優先して下さっている。
また、住民の方々の応援もあり、派手な色の送迎自転車が走っていると、それ
だけで地域が明るくなる。
しかく市と連携し、高齢者の「見守り」も
送迎自転車の事業を通して、商店主の目から見てお客様の行動が心配になっ155198147220
232 239050100150200250300H21 H22 H23 H24 H25 H26
(人/月)
<年度>
<月当たりの利用者数の推移>
(注記)H21 は 10 月以降、H26 は 7 月まで 4たり、つれあいが入院したりして心配を感じた場合、市の包括支援センターに
連絡する「見守り」も実施している。
このことも大切な事業の一環で、支援センターと商店会の連絡会議や認知症
に関する講習会もステーションで開催した。毎日のように接している商店主の
目での見守りは、地域の大切な部分を担っている。
これまでのように順調に運営できれば、この事業の地域への貢献と商店街へ
の貢献はかなり大きい。
ただ、
さらに発展させるためにはまだまだ課題もある。
まずは送迎自転車の運転手の安定的な確保。ボランティアと商店主だけでは、
十分満足な時間を運行できない場合がある。
現状で、週に6時間(午前3日)くらい有償の運転手がいれば非常に楽にな
ると思われる。あとは地域への周知が足りない部分があるので、各商店が積極
的にお知らせをし、アイディアを持ち寄って利用が増加するようにしたい。
しかく送迎自転車の改良
利用者が増加する一方で送迎自転車自体も年々修理修復の回数が増え、導入
から三年半を過ぎて新型車の検討も出始めてきた。そこで、多摩地域でも多く
の製造業者が集まる武蔵村山市の製造業集積地域を中心とした技術を活かして
「武蔵村山市発新送迎自転車」が開発できないものかとの要望から商工会工業
部会へ打診した。
平成25年度から商業部会役員の代表数名と工業部会役員が協力し、新送迎
自転車製作プロジェクト「新送迎自転車研究会議」を開始し、平成二十六年度
からは新送迎自転車開発をより効率的に進める為、
「研究会議」
から
「開発会議」
と名称を変更し、具体的意見を集約しながら完成を目指した。
新送迎自転車は、雨・風をしのぐカバーの設置や利用者の足場スペースの拡
大などの改良を加えた。また、最大の特徴は荷台に"シルバーカー"を載せら
れること。利用者の大半が高齢者層であり、使い勝手の良い機能性のある新送
迎自転車となっている。
平成26年10月15日に新送迎自転車完成披露式典を開催し、運用を開始
した。 5<新送迎自転車概要>
ベース車 ブリジストン電動アシスト付自転車
タイヤサイズ ×ばつ2.125
シフト段数 3 段
サドル最低地上高 74.5 cm
電源 リチウムイオンバッテリー8.7Ah
寸法(mm)長さ/幅/高さ 3,000/1,100/1,900
最低地上高(mm) 90
乗車定員 3 名
その他 後部荷台にはシルバーカー積載可
<新送迎自転車の荷台>
<新送迎自転車>
<送迎の様子1> <送迎の様子2> 6しかく元気な商店街の存在も必要
自転車自体で改良したい所もあるが、この事業は「送迎自転車」があって、
連絡等の管理人と運転手がいて、車の保管場所があれば運営できる。運営費も
節約すればさほどかからないので、同じような環境の地域があれば、是非、試
みてはいかがでしょうか。
このように「送迎自転車」事業を運営しているが、地域の商店が元気で存在
しなければはじまらない。商店自身が活性化のために日々努力を重ね、その基
本のもとに「送迎自転車」などで地域貢献して、活性化へ相乗効果が出るよう
にもっていきたいものである。【「無料送迎自転車」が地域の足に―住民の高齢化に対応、商店街がサービス―
(月刊地域づくり第 263 号)を加筆・修正】
<問い合わせ先>
公益法人 武蔵村山市商工会
〒208-0004 東京都武蔵村山市本町2-5-1
TEL:042-560-1327 FAX:042-560-6232

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