新たな交通結節点を拠点としたまちづくりについて

長岡京市 理事 辻 淳一
1.は じ め に
長岡京市は西暦 784 年に長岡京の都が置かれた
総面積 19.18 平方キロメートル、人口約 8 万人の
衛星都市である。本市は鉄道で京都に 10 分、大阪
へ 30 分と、
京都にも大阪にも近く交通至便なロケ
ーションが特徴である。
市内には、阪急京都線に「長岡天神駅」、JR
東海道本線に「長岡京駅」という 2 つの鉄道駅が
あるが、平成 25 年 4 月 21 日に開通した京都縦貫
自動車道の沓掛 IC〜大山崎 JCT・IC 間
(以下、
「京
都第二外環状道路 B 区間」という)と阪急京都線
とが交差する箇所において、平成 25 年 12 月に阪
急新駅「西山天王山駅」が開業する予定である。
新駅は長岡京 IC に近く交通結節点となるもの
であり、本稿は阪急新駅周辺整備事業として長岡
京市南部地区における新たな展開を紹介するもの
である。
図-1 位置図
至 沓掛 IC
大山崎 JCT・IC
長岡京市
2.整備の背景
現在、阪急長岡天神駅と大山崎駅との駅間距離
は 4.0km であり、阪急電鉄の全路線の中で 2 番目
に長い距離となっている。また、平成元年に都市
計画決定された京都第二外環状道路 B 区間は、平
成 16 年に設計説明会が開かれ、
事業実施に向けて
動き出しつつあった。
そこで、平成 16 年度から 17 年度にかけて近畿
運輸局と長岡京市が事務局となり、学識者、行政
機関、電鉄会社およびバス会社等からなる「長岡
京市南部地域等における公共交通活性化協議会」
が発足し、その中で京都第二外環状道路の長岡京
IC に隣接した箇所に阪急新駅整備計画や新たな
交通結節点に期待される機能の整備計画を策定す
るという提言がなされた。
3.整備の目的および経緯
「長岡京市南部地域等における公共交通活性化
協議会」では阪急新駅整備の目的として、「公共
交通への利用促進」、「高齢者の円滑な移動の確
保」、「観光等による南部地域の活性化」、「長
岡天神駅周辺の交通渋滞の緩和」が挙げられてい
る。
これらの目的を達成するため、阪急電鉄と長岡
京市は新駅整備に向けての協議を重ね、平成 17
年 11 月には新駅計画に向けた取組に合意がなさ
れ、平成 20 年 8 月には施行区分、駅舎の費用負担
割合およびスケジュール等を盛り込んだ覚書の交
換がなされたところである。
これを受け、長岡京市では新駅周辺整備事業と
して、駅前広場や駐輪場等を含めた区域を都市再
生特別措置法に基づく都市再生整備計画として位
置付け、平成 20 年度から事業を開始し平成 25 年
12 月の新駅開業および駅前広場等の周辺整備事
業の供用を目指して工事中である。
4.阪急新駅「西山天王山駅」周辺整備事業
4.1 新駅設置事業
新駅の乗降客数は7千人〜9千人/日としてお
り、駅の基本形式としては相対 2 面 2 線形式、8
両編成対応でホーム長は 162mである。駅舎施設
としては上下線ともに改札口があり、連絡構内通
路で相互の行き来が可能となっている。
昇降施設としては、上下ホームとも構内エスカ
レーター、構内エレベーターおよび構内階段を設
け、その他の施設としては、トイレ、待合室およ
び行先案内LED表示器が設置される予定である。
事業主体は阪急電鉄であるが、事業費約20億
円については、覚書により阪急電鉄と長岡京市の
費用負担割合は 2 分の1ずつとしている。
図-2 阪急「西山天王山駅」イメージパース
4.2 駅前広場等整備事業
長岡京市は新駅の東西に駅前広場を整備する
が、
第二外環状道路の事業用地内で整備するため、
新たな用地買収は発生しない。
東側駅前広場は約 4,700 m2でメイン広場として
バス等の公共交通を主体としており、バス停と待
機場を設けており、タクシー乗降場や待機スペー
ス、自家用車の乗降場を設けている。
西側駅前広場は約 3,300 m2でサブ広場として、
自家用車とタクシー主体で、タクシー乗降場や待
機スペース、自家用車の乗降場を設けている。ロ
ータリー内の道路は、駅舎をつなぐデッキの高さ
に合うように上げていき、自家用車やタクシー
から乗り降りする高さとデッキや駅舎のプラット
ホームの高さをほぼ同じ高さにしたため、スムー
スな移動ができるようになっている。
また、東西の駅前広場は、軌道下となる東西自由
通路を整備し、バリアフリー経路を確保すること
としている。
駐輪場としては、自転車が 1000 台、ミニバイク
が 200 台収容できるように東西合わせて 3 箇所を
整備する。
4.3 交通結節点を活かした施設
1)P&R駐車場
東側駅前広場に隣接して、
一般車 40 台が駐車で
きるP&R駐車場を整備する。新駅が長岡京 IC
付近に整備されることから、高速道路から長岡京
IC で降りられた来訪者の車を駐車していただき、
鉄道やバス等の多様な交通手段による乗り継ぎの
利便性を図ることとしている。
また、駐車場内には近年、普及しつつある電気
自動車に対応した急速充電器を整備する。
図-3 阪急新駅周辺整備事業平面図
図-4 イメージパース
阪急新駅「西山天王山駅」
周辺整備事業 平面図
P&R駐車場
自転車駐車場
東西自由通路
東側駅前広場
(4,700 m2)
西側駅前広場
(3,300 m2)
至 大阪方面
至 京都方面
新駅
下り線 高速
バスストップ
上り線
高速バス
ストップ
京都第二外環状道路
至 沓掛IC
京都第二外環状道路
至 大山崎IC
2)高速バスストップ
東側駅前広場内において、京都第二外環状道路
の高架橋上に高速バスストップのプラットホーム
を整備し、高架下部分の東側駅前広場と結ぶエレ
ベーターを京都第二外環状道路の上り・下り線に
1 箇所ずつ設置する。
新駅にほぼ直結することから、鉄道からのアク
セスが格段に良く、
大山崎 IC 方面となる上り線施
設の 1 階部分に待合室を設けるため、快適に高速
バスを待つことが可能である。
図-5 長岡京バスストップ施設
(上り線 大山崎IC方面)
5.交通結節点周辺のまちづくり
現在、
長岡京 IC と新駅といった新しい交通結節
点周辺は劇的な環境変化が起こりつつある。
また、
京都第二外環状道路により街が分断され、宅地利
用しにくい残地が沿道に存在することから、長岡
京市としては将来を見据えたまちづくりとして、
沿道の都市的土地利用を誘導していく必要がある
と考えている。
そこで、平成 18 年度から「阪急新駅設置に関わ
るまちづくり協議会」を学識者、地元自治会役員
および地元企業の参画を得て発足し、街の将来像
についてご議論をいただいている。
平成 21 年度には、
「土地利用のイメージ案」が
まとめられ、
新駅周辺には
「駅前にぎわいゾーン」
として歴史ある地区の良好な住宅地の玄関口とし
て、おだやかな雰囲気の中にもにぎわい、もてな
しの雰囲気が感じられるイメージとしており、長
岡京 IC 周辺は「魅力ある交流ゾーン」として広域
的に集客できる施設があり、良好な住宅地環境に
調和した洒落たレストランや地場産の物品を扱う
商業施設などがあるイメージとしている。
このイメージ案を参考に、土地所有者とまちづ
くり勉強会の開催を重ねており、
平成 25 年 3 月に
は「下海印寺地区土地区画整理世話人会」が発足
し、現在は土地利用についてアンケート調査等の
活動が行われている。
今後は、土地区画整理事業等の面的整備手法や
地区計画等の規制誘導手法の実施に向けて更なる
検討が行われる予定である。
6.お わ り に
京都第二外環状道路は、平成元年当時の都市計
画決定には多くの反対があったが、用地協力者や
周辺住民、関係者の多大な協力を得て、24 年後と
なる今年度にようやく開通したものである。
長岡京市において、京都第二外環状道路は未知
(道)の黒船であったが、高速道路と新駅という
新たな交通ネットワークを最大限に活かすことに
より、将来の都市の発展が可能になると考えてい
る。
今後とも、高速バスストップに関してはバス会
社への利用を促進させるための活動を行っていき、
P&R駐車場については利用者増加のための施策
を行っていく等、公共交通への転換の推進に尽く
してまいりたい。

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