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産業連携・地域支援部会(第18回) 議事録

1.日時

平成30年10月24日(水曜日)15時00分〜17時00分

2.場所

文部科学省旧庁舎2階 文化庁特別会議室

3.議題

  1. 2019年度概算要求の状況について
  2. 「地域科学技術イノベーションの新たな推進方策について 中間とりまとめ」について
  3. 「イノベーションシステムにおける大学の研究成果の活用推進に資する技術移転機能等の最適化に向けて(議論のまとめ)」について
  4. 「リサーチ・アドミニストレーターの質保証に資する認定制度の導入に向けた論点整理」について
  5. その他

4.議事録

【庄田部会長】 それでは、定刻でございますので、ただいまから科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会を開催させていただきます。
本日は、委員の皆様には、大変お忙しい中を御出席いただきましてありがとうございます。
当部会の部会長を務めております庄田でございます。よろしくお願いいたします。
本日は定数17名のうち、12名の委員の方が御出席予定でございます。なお、松尾委員に関しましては、後ほど少し遅れて御出席と伺っております。したがいまして、9名以上の定足数を満たしていることを確認させていただきます。
最初に、事務局から資料の確認をお願いします。
【竹之内課長補佐】 それでは、資料の確認をさせていただきます。
今回から産地部会におきましても、ペーパーレス化をさせていただいておりまして、お手元のタブレットで確認をさせていただければと思います。
開いていただきまして、左右フォルダーが分かれておりますけれども、左側に資料1から4-2、それから右側のフォルダーに参考資料の1から4が格納されているかと思います。また併せまして、お手元に資料3-2、それから4-2につきましては、冊子を配付させていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。
確認は以上でございます。
【庄田部会長】 文部科学省において、人事異動がございましたので、事務局から紹介をお願いします。
【竹之内課長補佐】 前回の産地部会以降、事務局に人事異動がございましたので、紹介をさせていただきます。
科学技術・学術政策局長の松尾でございます。
【松尾局長】 松尾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【竹之内課長補佐】 同じく科学技術・学術政策局政策課長の角田でございます。
【角田課長】 角田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【竹之内課長補佐】 同じく科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課長の西條でございます。
【西條課長】 西條です。よろしくお願いいたします。
【竹之内課長補佐】 以上でございます。
【庄田部会長】 どうぞよろしくお願いいたします。
本日の議案につきましては、お手元の議事次第にありますが、議案1が2019年度概算要求の状況についての報告、議題2が「地域科学技術イノベーションの新たな推進方策について 中間とりまとめ」についての報告、議題3が「イノベーションシステムにおける大学の研究成果の活用推進に資する技術移転機能等の最適化に向けて(議論のまとめ)」についての報告、議題4が「リサーチ・アドミニストレーターの質保証に資する認定制度の導入に向けた論点整理」についての報告ということで予定されております。
それでは、最初の議題1「産学官連携・地域科学技術施策の2019年度概算要求の状況」について、事務局から報告をお願いします。
【西條課長】 それでは、お手元の資料1をよろしくお願いいたします。「文部科学省におけるオープンイノベーション・地域科学技術関係施策の2019年度概算要求の状況について」という資料になってございます。
1枚目をめくっていただきまして、時間の関係もありますので、総評ベースになっておりますこの1枚目で御説明させていただきたいと思います。まず一つは民間投資導入によるオープンイノベーションの加速ということで、最初にオープンイノベーション機構の整備でございます。こちらに関しましては、平成30年からスタートさせていただきました。平成30年度は8機関ということで、こちらを選定いたしまして、これから始動しようというところでございますけれども、引き続き、このオープンイノベーション機構の整備を進めるということで、2019年度要求におきましても、さらに7大学程度を対象として要求させていただいております。
また、その右側にございます産学共創プラットフォーム共同研究推進事業(OPERA)でございますが、オープンイノベーション機構の方が競争領域の大型研究を取るということに関しまして、そこのある意味、苗床になります非競争領域のプラットフォーム作りということでございますが、こちらも平成30年度につきましては、OIの連携型ということで4機関。それからFSに当たります制度といたしまして、こちらの方が4機関ということでございましたが、2019年度要求におきましてもOI型、こちらが5機関、それからまたFSも4機関を今、要求をしているというところでございます。
あと、2番目にあります革新的研究成果による本格的産学官連携の推進の方はCOIプログラムやA-STEP等ございます。こちらの方は大きな要求の変更はございませんが、その右側にイノベーションマネジメントハブ形成支援事業ということで、これは、議題に上がっておりますTLO強化の部分についての支援の事業として、1億円を新規で要求させていただいております。大学、産業界、TLOのネットワーク強化を図るなどして、大学研究成果の効率的な技術移転活動を推進するというための経費でございます。また、その下にこれも本日後ほどまた御説明させていただきますが、リサーチ・アドミニストレーター、URAに係る質の保証制度の構築ということで、これは拡充にはなりますけれども、そういった予算も少額ではございますが要求させていただいているところでございます。
こういった産学官連携活動につきましては、マネジメント重視ということで、予算を大きく増やすというよりは制度の見直しを考えておりますので、後ほどそこについては御説明させていただきたいと思います。
また、今度はベンチャー・エコシステム形成の推進ということで、こちらの取組については、引き続き、大学発新産業創出プログラム(START)、あと、次世代のアントレプレナー育成事業ということで、EDGE-NEXTは引き続き要求をさせていただいているというところでございます。
最後に地方創生に資するイノベーション・エコシステムの形成ということで、二つの事業がございますけれども、一つは地域イノベーション・エコシステム形成プログラム。こちらの方も平成30年度においては、5地域を選定しておりますけれども、2019年度におきましても、7地域を要求させていただいているというところでございます。その右側にございますが、これは新規で、きょうまた地域の科学技術に関する中間報告させていただきますけれども、いわゆるエコシステムが地域におけるきらりと光る技術を伸ばして事業化していくものに対して、地域にある地域課題を解決するための取組ということで、そこで科学技術を使って解決するといった取組でございます。科学技術イノベーションによる地域社会課題解決ということで、名前はINSPIREと名付けておりますけれども、こちらを今回、新規で3.1億という形で要求をさせていただいているというところが概算要求の大きな枠組みになっています。
加えて、それぞれの施策についてはポンチ絵を付けてございますけれども、7ページ目の産学官連携施策の見直し・大括り化についてということで、こちらにつきましては、いわゆる拠点型の産学連携制度。これはCOI、リサーチコンプレックス、OPERA、イノベーションハブといった事業がございますけれども、こういった制度につきまして、もちろん、それぞれに政策目的があり、その目的は当然異なるんですが、様々な制度がたくさんあって、プログラムによっては一度限りの公募もございまして、これ自身が応募する側から見るとかなり負担を掛けているというところがあるのではないかとか、運用の部分については、制度ごとの運営管理体制による局所最適化というところが出てきているんじゃないか。また終了後については、金の切れ目が縁の切れ目みたいな形になってしまう。せっかく投資したものをどう続けていくのかというような問題点が指摘されております。また例えばA-STEPのような個別型の産学官連携制度につきましても、一つの制度にはなっているんですが、その中に非常に多岐にわたるメニューがございまして、そういった意味では利用者側からなかなか分かりづらいとか、メニューそのもの自身、柔軟に対応する必要があるんじゃないかというところも御指摘いただいておりまして、いわゆる採択重視からマネジメント重視。ある意味、運用で成果をちゃんと重視するという観点。また利用者目線での見直しということで、今回、二つの見直しをさせていただいております。
左側にありますのが拠点型の事業については、大括り化して「共創の場形成支援」という形で行っていきたいと考えております。ただ、これは今、たくさん制度が走っておりますので、一緒にくっ付けるということではなくて、運営に関して大きな全体を見る委員会も置いた上で、より運用の部分について効率化を図り、それからノウハウをお互いに使えるような形にするということを考えまして、2019年度においてはそういったものについて見直し、更に2020年度以降、また新しいものをやっていくということについては、一つの大きな事業として見直しをしていきたいと考えてございます。
また、右側のA-STEPでございますけれども、個別型の産学官連携制度につきましても先ほど申し上げたように、やはり利用者側から見て非常に分かりづらいというところがございますので、まず2019年度においては事前相談窓口みたいなものをしっかりと作って、どの制度が一番適しているかというところについて相談ができるような形にした上で、今ある右側の下にありますような現在の支援メニュー。一応、機能検証、産学共同、企業主導という形にはなっていますが、なかなかうまく流れていっていないこともございますので、どちらかというとメニュー化して相談窓口とメニューをうまく組み合わせることによってということを考えてございます。こちらもいきなり変えるというわけではなく、まずは窓口を来年度作った上で、2020年度以降、適切な支援メニューへの組み換えというのを考えているところでございまして、これは予算そのものをこれで増やしてくれというお話ではないのですが、より効率的な運用ができるように考えているというところを付言させていただきたいと思います。
以上が予算に関する御説明ですが、加えて予算関連として事業の進捗についてお手元にお配りしている参考資料1、2について簡単に御紹介いたしますと、一つは先ほど申し上げたオープンイノベーション機構でございますけれども、今年8機関選定いたしました。8機関につきまして、資料参考1にございますけれども、今回は東北大学、山形大学、東京大学、東京医科歯科大学、名古屋大学、京都大学、慶應義塾大学、早稲田大学の8機関が今、選ばれて、これからまさにスタートする形になってございます。こちらの選定につきまして、本日御出席の須藤委員には委員長をしていただきましたし、高木先生にも御参加いただきまして選定をしたところでございます。
それから資料の参考2の方で平成30年度の地域・エコシステムということで、こちらについても5つの地域ということで、東北大学、山形大学、あとは神奈川県立産業技術総合研究所、それと金沢大学と名古屋大学の5地点が選ばれておりますので、御紹介させていただきます。
以上でございます。
【庄田部会長】 概算要求につきまして、新規のもの、継続事業について、先ほどの資料1の1ページで説明いただきました。また、施策の大括り化につきましては、7ページで説明いただきました。
何か御質問、御意見はありますか。
【後藤委員】 今、西條課長から特に強調していただきました拠点型産学官連携制度の大括り化と、これは現場といいましょうか、大学の方の現場にとってもありがたい話だと思いますから是非適切にというか、円滑に進めていただいて、柔軟に。例えば大学の方で見ると同じような制度、体制を事業ごとに作るみたいなことになっているので、是非、効率的に運用できるように進めていただけたらと思います。
それから、右側にありますA-STEPの相談窓口。これも私どもで鋭意やりたいと思いますが、欲を言うとプログラムの相談だけではなくて、企業さんからいろいろお話を聞くと、こういう課題を抱えている、でもシーズはどこにあるのか分からないというお話がありますので、できればまだ我々ができるかどうか分かりませんけれども、企業の要望に対してこういうシーズがこの大学にあるぞというような、もう少し広い意味のマッチングをする。ただ、プログラムに応募する前の段階のマッチングの相談もできるようになったらすばらしいなと思いますので、考えていきたいと思っております。
以上です。
【庄田部会長】 何かありますか。
【西條課長】 どうもありがとうございます。
共創の場の点については、まさにそういう意味でしっかりと制度設計はさせていただきたいと思いますし、現場の声をしっかりと聞いたり、これまでやってきた事業の反省点もあるところもあると思いますので、拙速というよりはしっかりとしたものを作っていくというところで、是非JSTさんともお話ししながら進めていきたいと思っています。
窓口の方はおっしゃるとおりで、単なる窓口業務ではなく、まさにそこをつなげるところがJSTの得意なところでもございますので、そういう意味では是非そういった方向でお願いできたらと思っていますし、我々としてもそういった考えを持っております。
よろしくお願いします。
【庄田部会長】 ほかにございませんか。梶原委員、どうぞ。
【梶原委員】 二つお伺いします。8ページで大括り化のお話をされているのですが、制度やプログラムがそれぞればらばらで、手続上、申請などが非常に煩雑だという話をよく聞きます。今回、手続上の煩雑性をもう少し簡素化する方向になっているのか、あるいは大括り化をすることで、それが解決されるということなのか、そうした点は考慮されているのでしょうか。また、各事業については、継続性というのか、うまく根付いた形で後年度もうまく回っていくことが重要だと思うのですが、今年は何機関で何サイトというように、毎年違う数になることと、持続性や継続性のことをどのように考えればいいのか、教えていただけますでしょうか。
【西條課長】 ありがとうございます。
最初のところ、いわゆる申請の問題というのは非常に我々も言われていまして、例えばリサコンとかCOIは1回応募しただけでそれで終わっちゃって、せっかく狙ったのに次の年からということもできなくなって、特に落ちたところは徒労感も非常に大きいというようなお話もあります。どちらかというと、申請をする以上はその申請に関してはしっかりとしたものは出していただかなきゃいけないんですけれども、そういった重なり合いがあって、非常に苦労ばかり掛けているというところは絶対解消しなきゃいけないなと思っているところは、一つその要因にはなっております。
二つ目にもつながるんですけれども、継続性を求めたいんだけれども何年と言っちゃったから切らなきゃいけないみたいな形になってしまって、そうすると変な言い方ですけれども、ではCOIの次は超COIですかとか、ちょっと何か物事を変えて、その変えるのがいい方向に行けばいいのですが、何となく継続のために変えるみたいな話になりかねないところもあって、それはせっかくできてきた拠点を無理やり継続のために変える要素を入れてしまう形にもなるといったところもございまして、どちらかといえば、先ほどの終了の仕方もあるんですが、これはまた考えていかなければいけないと思っております。当然、自立化をしてもらうというのがもともとの目標ではございますが、その自立化の在り方もとか、国全体の中の拠点をどういう配置にするかも含めて、トータルでちゃんと物事が見えるように、一つの大括りの枠で見ていくことが必要じゃないかと考えているところです。ただ、これについてはしっかりと制度設計をしていかなきゃいけないと思っていますので、そういった御意見も聞きながら進めていきたいと思っております。
【庄田部会長】 よろしいですか。
【梶原委員】 はい。ありがとうございます。
【庄田部会長】 栗原部会長代理、どうぞ。
【栗原部会長代理】 細かい事柄についての質問なのですが、地域イノベーション・エコシステム形成プログラムについては、大変魅力的なプログラムだと思うのですが、例えば今年度ですと、5機関で31億、来年度は44億というこは1件当たりにすると6、7億からひょっとしたら10億ぐらいの事業費になると思いますので、大きなインパクトがあると思います。もしその理解が間違っていないとすると、これは大学や研究所の中だけではなくて、それが地域の企業とか産業にどう還元されたかという効果をしっかり見て頂き、地域産業に効果をもたらすプロジェクトに是非していただきたい。期待を込めて申し上げます。
【西條課長】 事実関係から申し上げます。これは実は毎年取っている事業なので、今、19機関、取って、今年の5機関を入れて19機関になります。ですから来年また7機関ということになると、26機関ですね。1か所当たり1.2億から1.7億という形になっているので、規模的にはそのぐらいになりますが、ただ一方でやはりそれが先ほどの5億、6億でなく1.2億であろうが1.7億であろうが、これは事業化をしっかりさせることが目的になっていますので、そこをしっかりとやっていくのとともに、これは地方の自治体をうまく巻き込んで、そこにやっぱり基盤を作って、それがベースになってエコシステムを作っていくというところをやはり一緒にやっていく必要があって、そこら辺を更に強化をしたいという形では考えてございます。
【庄田部会長】 松尾局長、どうぞ。
【松尾局長】 その点でいうとちょっと誤解もあったかもしれないですが、先ほど梶原先生からもOI機構で今年8件、来年7件というのは、単年度で8件ではなくて数年間続きますので、すだれになっていきますので、継続性はあると。ただ、ずっと継続するわけじゃなくて、3年とか5年で減っていきますから、そこはうまくその間に内製化をしていくような形で、特に産学官連携のOI機構であれば、民間からお金を取ってくるためのシステムということもありますので、それでうまく回していけるような事業計画を立ててもらうというようなことだと思います。
【庄田部会長】 ほかにいかがでしょうか。高木委員、どうぞ。
【高木委員】 OPERAについてですが、これは昨年、一昨年はマッチングファンドで3.2億で5年間ということだったと思いますが、応募する方も大変ですし、審査する方も結構大変だったということで、今年から、FS型、それからオープンイノベーション機構連携型にされたのは大変良いことだと思います。
FS型についてですが、例えば2年か3年でだめだったときにその先の何らかの救済策、あるいは再継続ということは考えていらっしゃるのかどうか、また、途中でやめたときに、そのときのアウトカム、成果は何か要求されるのか、その点についてお伺いできればと思います。
【西條課長】 ありがとうございます。
FS型でございますけれども、基本FSという形で年間3,000万ということで2年間はそれでやって、そこからこれは大きくできるということであれば本格的なということで4年間を用意しているというプログラムになっています。もちろん、そこでの評価によって前に進めるのかどうかはきっちり見ていくことが必要だと思っていますが、落ちたときにそこをどういう形でやっていくのかというところはまだ詰まってはいませんので、そこら辺はJSTさんの方とも一緒に話をしながら、良いものであれば違う形でというのはあると思いますけれども、かといって良くないものをそのまま長らえるということはやっぱりやりたくないというのもございますので、その辺の基準を明確にしながらやっていただくというところはしっかりやっていきたいとは考えてございます。
【庄田部会長】 それでは、ただいま、御質問というよりもいろいろ御意見が出ましたので、是非とも事務局にて考慮をお願いします。
【西條課長】 ありがとうございます。
【庄田部会長】 それでは、議題2に移ります。議題2は産業連携・地域支援部会、地域科学技術イノベーション推進委員会で取りまとめられました地域科学技術イノベーションの新たな推進方策についてです。事務局から説明いただきます。
その後で、推進委員会主査を務められた須藤委員から補足をお願いしたいと思います。
先に、事務局から説明をお願いします。
【生田室長】 では、先に事務局から少し簡単に説明させていただきたいと思います。
まず、背景を少し振り返らせていただきますと、この地域科学技術イノベーション推進委員会というのは、もう大分前になりますが、こちらの2回前の9月26日の第16回の産地部会で設置をお認めいただいた委員会でございまして、産地部会の下で地域に特化した科学技術イノベーション施策の方向性の在り方を検討してまいりました。9月に設置はしていただいたのですが、実質今年の4月から大体月1回ということで活動を開始しておりまして、メンバーは、こちらの須藤委員に主査をしていただいた上で、お手元のというかタブレット上の資料2-2の一番最後のページに、23ページまで行くと、参考資料2があると思うんですが、これが審議過程でございまして、4月から毎月このように開催してまいりました。一つ前のページが委員構成になっておりまして、須藤委員に主査をしていただいた上で、このほか三木委員に臨時委員としてお入りいただき、内島委員から始まる松原委員までの方に専門委員という方で構成したメンバーで委員会を開催してまいりました。
今回の中間とりまとめは、この4月から先月の9月までの審議の過程を暫定的に取りまとめたものでございまして、今後、何を狙っているかと申し上げますと、実は第6期の科学技術基本計画の検討がそろそろ始まりつつありますが、そちらの方に個別イシューとして、地域科学政策の在り方を打ちこんでいきたい。そのために少し早めの段階からこの審議会の下での議論をさせていただいたものでございました。
それでは中身の説明をさせていただきたいと思いますので、もう一つの資料2-1に移っていただきます。本体の方は少し長文になっておりますので、本日の説明は概略ということで、この概要版資料2-1を用いて説明をさせていただければと思います。全体の構成といたしましては、先ほど申し上げましたように大きな大枠として、第6期の基本計画というものを方向付けるための議論をしてきましたので、そもそも論から議論を開始いたしました。それがこの1ポツでございまして、基本的方向性のところでございます。ここでは、そもそも科学技術イノベーション活動を行う際に、地域をどう捉えるべきかについて、まず定義や範囲というものを議論いたしました。そこで出てきた議論としましては、丸の二つ目のところですが、いわゆる行政区画、県ですとか政令指定都市といった行政区画などによる境界という区域に限定をしない形で、誰を中心として人的ネットワークが形成された場が引っ張るのかという意味で、その引っ張る主体を切り口として、暫定的でございますが、Actors-Based-Communityということで、ABCという概念で、地域というものを捉えていくことが重要ではないかという形で議論をまとめさせていただいております。
続く丸のところですが、地域の科学技術イノベーション活動の成果としては、一言で言ってしまうと社会的価値、地域の社会課題解決という意味の社会的価値をもたらすのは当然ですが、資本主義の活動、事業化による社会実装を目指すことを通じることで、産業的価値にもつながり、更にはその活動を持続的なものにするという意味合いでは経済的価値の獲得。そういう三つの価値観を同時に地域にもたらすという潜在力を持っているということを考えると、どの価値に一番着目するのかということを捉えてABCを見ていくべきじゃないかという形でここをまとめさせていただいております。
二つ目の論点といたしましては、そもそも地域が科学技術イノベーション活動を行う意義・目的でございます。国が科学技術イノベーション活動をやるのはいいとして、なぜ地域がというところでございますが、一言で申し上げますと、ここにありますように、いわゆる地域経済の発展をもたらすという意味で、豊かさをもたらす。それと、誰一人取り残さない地域社会を実現する。課題が解決されれば幸せとかそういうものを感じる社会的価値が出てくるのではないかと。それから地域ごとで特性がございますので、国全体として見たときの多様性を確保し、それによって国家機関としてのレジリエンスも高まるということで、ここではまとめさせていただいております。
そして三つ目の地方創生の流れにおけるイノベーションの位置付けでございますけれども、言わんとするまでもないですが、科学技術イノベーション活動というのは次のページ、2ページ目に行っていただきまして、地方創生にとって現代においては起爆剤として利活用しなければならないほど必要不可欠なものになっているのではないかと。逆にイノベーション活動を通じて初めて地域が望む未来の社会像といったものを実現し得る。そして地方創生に結び付けられる、そのような時代を迎えているのではないかということで、まとめさせていただきました。
そして第2章のところはどちらかというと、これまでの事例そしてそれから得られた教訓みたいなものをまとめているところでございます。(1)のところは歴史を振り返る章でございますので、説明はちょっと割愛させていただきますが、各基本計画に基づいて、地域科学技術イノベーションを推進してきた歴史をまとめております。
(2)のところは、主な教訓を三つでまとめております。一つ目はイノベーション・エコシステムの構築をするに当たっては、多くの人がその地域に集まる動機付けの必要性。例えばここでは書いてありますように、当然、技術であったり資金であったり、人材、市場の広がり、又はワクワク感、そういった複数の要素がございますが、それをマグネット機能としていかに与えられるか。これが一つ目のキーではないかということでございます。
そして次の3ページ目に行っていただきまして、チェックのところの一番上のところに、鍵括弧で戦略的不平等とちょっと書かせていただいていますが、エコシステムの要素を集めるときに地域内に限定してしまうといった考えを脱却すべきで、ある意味、戦略的に不平等でいいので、地域内にとどまらず、最適な要素を広く内外から集めるといった考え方が必要ではないかというのがありました。
三つ目のチェックのところでございますが、特化していく、メリ張りを付けていく、強いところに集中投資させる、そのような戦略ももちろん厳格な評価システムがあってこそではございますけれども、必要ではないか。そのような議論もございました。
二つ目の教訓でございますが、それはアプローチの捉え方でございます。一つ目にございますように、地域の科学技術イノベーションは当然ながらシーズプッシュ型とニーズプル型とがあると。そしてもう一つの分け方としては、ゼロから1を創る大学発ベンチャーのみならず、ここで少し議論があったのは、第二創業型。ここの中には若者などの起業家による地元企業の事業承継といったものも結構多いのではないかというのがありましたが、そういった第二創業型のモデル、そして更にその先を目指す、若しくは無限大、オンリーワン、そういったものを目指す、いろいろなアプローチがあって、そのアプローチによって、当然国や地方自治体の関わり方ですとか、誰がプレーヤー、メーンになっていくのか、その辺が違ってくるというような御議論もありました。
三つ目としましては、ここはまだ議論が熟していませんが、中央政府と地方自治体との力バランスの在り方。ここも当然、今後、必要になってくると思っております。
第3章のところは、現在様々な機関から今回委員会の中ではヒアリングをさせていただいておりまして、そこから得られました現状、そして課題をまとめているパートでございます。ここも四つの分類をしておりまして、まず一つ目はエコシステムの形成に関してでございますけれども、地域の科学技術イノベーション活動というと、どうしてもやっぱりシーズ志向になってしまう。これを打破するためには、やはり行政、大学、産業界、多様なステークホルダーのお互いのニーズを起点とする。そして共通目標を設定した上で事例を積み上げていくことが必要ではないかというような議論がございました。
それから言うまでもないですが、地方自治体の限られたリソースだけではなかなか厳しいであろうから、国や民間企業の投資も一定程度必要であろうという御議論もあったところでございます。
4ページ目に行っていただきまして、持続性という意味では、有能な若者の流入・定着を図り、雇用に結び付けるという観点からは、これまでのように工場を誘致するという地域振興だけではなくて、やはり知識社会型のクリエーティブな地域振興も必要であろうという御議論がございました。
少し飛んでいただいて、(2)のところ、二つ目の論点としては、研究開発・社会実装活動のマネジメントでございます。マネジメントに関しては、とにかく人だろうというところで、二つ目の丸のところにございますように、いかに人為的に研究開発活動、実装活動をマネジメントしていくか。これは言うまでもないですが、イノベーションの成功の鍵を握ると。ですので、その地域の主体の力を最大限に引き出すプロデューサー的役割を担うリーダーの存在が重要であるという御議論がございました。
三つ目の論点として、マネタイズの仕組みでございます。ここは当然ながらですが、やはり一時の、一過性のお金だけではだめであって、その後も続くためには、マネタイズの仕組みが必要であるという形でとりあえずはまとめている状況でございます。
続いて5ページ目に行っていただきますと、こちらは人材、そして主体の役割分担をまとめているパートでございます。人材に関しては、一つ目のところ、地域にはニーズプルによって地域を引っ張っていくコーディネーターというのはまだやっぱり多くはないだろうと。要するにシーズもなるべくプッシュしていくというのはだんだん増えてきたかもしれないですけれども、ニーズから来るというのはまだそこまではいっていないのではないかと。やはり「コトづくり」ができる人材、そしてコーディネーターにとどまらずプロデュースできて、イノベーション全体を俯瞰できる人材の育成が重要ではないかという形でまとめております。
役割分担のところは、当然ながら大学、自治体、企業のそれぞれのいろいろな役割がありますが、重複する部分にこそ、地域全体としての目的の共有化をいかに図っていくかという鍵があるのではないかというような御議論がございました。
二つ目、地域全体としてどのような未来を目指すのか、逆に言うと、未来ビジョンを、若者中心のマルチステークホルダーによるABC、先ほど出たActors-Based-Communityにより定めていくことが求められるということを書かせていただいております。
第4章、こちらが最後の章でございますけれども、第3章に記載した課題や現状を踏まえて、今後何を期待していくのか、何が期待されるのか、そのようなところを先ほどと同様に四つの論点に分けてまとめたものがここにございます。まず一つ目のエコシステムの形成のところでございますが、これは当たり前ですが、イノベーションに取り組むためには、変わっていくことへの受容性や求心力、そして失敗に対する寛容な仕組みが必要である。そして更に地域がやりたいことと、地域ができること、地域が有する強みを生かすこと、そして地域に求められることの三つをいかに調和していくことが必要ではないかという形でまとめております。
そして6ページ目のところは連携に関してでございますけれども、これは先ほど戦略的不平等という言葉もございましたが、自治体単独ではなかなかやっぱり行政単位、その地域の中に縛られてしまう、そのようなことからある意味、国が一定程度で先導して、中立的な大学を中心として行政単位を超える活動をしていく必要があるだろうという形で書いております。
二つ目のマネジメントに関する部分でございますが、二つ目の丸のところでございます。地域のマルチセクターによるABCによって、地域の抱える社会的課題と地域が持つ強みや特徴を把握して、トータルビジョンを描き、例えばSDGsなど、分かりやすい共通言語をベースとして、一体的にプロジェクトを進めていくべきではないか。そのためには当然、産業的価値、経済的価値のみならず、社会的価値も含めてフォローアップ評価をしていくことが必要だろうと。なお、この辺の記載は先ほどの事務方からの説明で新規事業としてINSPIREというものが出てきたかと思いますが、これに通じてきている部分ではございます。
そして、三つ目のマネタイズのところでございます。ここもいろいろまだ議論は尽くされてはいませんが、書いてございますのは、地域経済を牽引する地域中核企業に地域の大学の技術シーズをつないでプロセスイノベーションを起こすなど、地域企業をエンジンとして、富の循環を引き起こすことも必要ではないかという形でまとめさせていただいております。
最後の人材のところでございます。これは幾つか書いてございますが、例えば地域の大学における教育と研究が一体化してイノベーションが生まれる仕組みといったものが必要じゃないかとか、あとはさっき第二創業型アプローチというイノベーションの例がございましたが、そのためには当たり前ですけれども、地域の若手経営者同士が切磋琢磨して議論するといった観点からもリカレント教育みたいなことも並走させることが重要ではないかという御議論がございました。
また、人材育成というとどうしてもリーダーの方に光が当たりますが、リーダーだけではなくて全体の意識が変わらないといけないといった意味で、一人一人のイノベーション力の底上げを行っていくことが必要だろうという御議論があった次第でございます。
なお、先ほど申し上げましたが、これはまだ中間段階でございまして、今月、実は金融界として、地方銀行ですとか、地方中心に活動をされているベンチャーキャピタルからヒアリングを行い、更に来月はグローバル関連として、ちょっと現時点ではグローバルの内容が少ないですので、グローバルの現状を調査会社から御発表いただいたり、12月には中教審で、大学の2040年に向けたグランドデザインという答申案が出ているかと思いますので、そちらの動向なども踏まえるべく、ヒアリングをしつつ、来年の1月、2月にこの内容を最終的に取りまとめていきたいと思っている次第でございます。
事務局からは以上でございます。
【庄田部会長】 ただいまの事務局の説明に加えて、須藤委員、よろしくお願いします。
【須藤委員】 この委員会の主査を担当しました須藤です。今、生田さんから説明がありまして、全体の流れは御理解いただいたと思います。なので、私から重要なキーワードだけを少しもう1回繰り返して述べたいと思うんですけれども、最初に生田さんからありました地域をどうやって捉えるかと。地理的な区切りで捉えるのかどうしようかという議論をしたんですけれども、やっぱり人的なネットワークを中心にやるべきだろうというので、ここでABCという変な造語を作ってあります。Actors-Based-Communityということで、委員会としてはこの単語をなるべく日本中に広めたいというのがあります。ここれが一つのキーワードです。
目的のところでは、三つの価値というのを、技術的な価値とか産業的な価値に加えて、大学、産業界両方に、あとは自治体も両方に全部に当てはまるんですけれども、経済的な価値を入れております。この三つの価値がもう一つのキーワードになっております。
それからよく言われるイノベーション・エコシステムの形成というところは、もう非常に重要なところで、この報告書全体を通してこの流れで書いてありますけれども、当たり前のことですが、自治体、大学、それから企業、ベンチャーも含めてですけれども。それから金融という四つのエコシステムをきちんと回さないとうまくいかないだろうということで、これは全体を通してこの流れで書いてあります。実際にいろいろな視察等もやっているんですけれども、やっぱりこの四つは重要なんですが、その中でもトップの意識の強いところは比較的うまく回っているなという気がします。自治体でいえば首長、それから大学でいえば総長、学長クラス、企業でいえば社長。ベンチャー企業が特にそうですけれども社長。金融機関のトップと。この辺の意識が強いところほど、やはりこのエコシステムがうまく回るんじゃないかということが出ております。
次のキーワードは何度か生田さんが言っていましたけれども、戦略的不平等と。これはいろいろな委員から出たんですけれども、やっぱり平等にやってもだめだろうと。ある程度、戦略的に不平等を意識的にやって、この地域はこういう分野だけでもいいから伸ばそうと。全部の分野を伸ばすのではなくて、ここで伸ばそうという意識的にこういう不平等をやるのも一つの方策ではないかという議論がありました。
次は、よくイノベーションで言われますけれども、ゼロから1、1から100、100から無限大と三つのアプローチの仕方があるだろうということで、それぞれに応じた地域イノベーションを作り上げる。地域に合ったやり方があるのではないかということでございます。
大体キーワードはこういうところなんですけれども、最後に今までやってきたのが、自治体の話を聞いたり、大学の話を聞いたり、あるいは企業、特にベンチャー企業の方に来ていただいて話を聞いたりしてやりましたので、もう一つ抜けているのが、生田さんも言いましたけれども、マネタイズといったところはやっぱり重要なので、少し今後、金融ベンチャーキャピタル等の話を聞いて追加していこうかなと考えていますし、グローバルな視点ももちろん足りないので、これも入れていこうと考えています。
毎月、やらされたと言っちゃいけないですけれども、やっていて、非常に活発な意見でなかなか時間内に終わるのが大変なぐらいの委員会になっていますし、委員の先生は物すごく活発ですし、それから特に事務局の方々が非常に大変だと思うんですが、資料を非常にうまくまとめていただいてますので、まだ半分残っていますので、もう少し我々頑張って、最終報告をうまくまとめて、第6期の提言にまとめたいと思っております。
以上です。
【庄田部会長】 ありがとうございました。大変精力的に検討いただきました。特に本部会の名称の一部にある地域支援について、地域の定義から御検討いただいたという報告もありました。御質問、御意見はありますか。
木村委員、どうぞ。
【木村委員】 御報告ありがとうございます。
都道府県の枠組みではない括りを作るという取り組みは、ぜひ推進して頂きたいと思います。たとえば京都を例に取ると、近接する滋賀に産業的に強い連関があるエリアがありますが、実際には県の壁を越えて協力しあうということには限界があります。国のリーダーシップが期待されるところです。
また、中間取りまとめの報告書を拝見し、今後の政策にとって、人材育成という観点が重要なポイントになってくると感じました。高度な専門人材、地域を支える人材など、望まれる人材は多様です。私が現在拘わらせて頂いている京都大学のデザインスクールでは、専門性を活かしながらも他領域の専門家と一緒に社会課題に取り組める博士を育成しています。残念なことに期限付きのファンドが終わってしまうと、博士進学をしたいと思っている学生たちが、進学を断念するという状況も現実です。そこで、デザインスクールと協力関係にある企業コンソーシアムが学生への経済支援をできないかということを検討し始めています。産学連携というと、共同研究とかオープンイノベーションとかのイメージが強いですが、さらに一歩進んで、人材育成という面でも企業がもっと貢献していける部分があるのではと考えています。こういう観点からもどこかで御議論いただける場があればと思います。
もう一つは、社会人です。もう一度勉強したい、本格的に研究もしたいと思っても、ボトルネックになるのは企業の理解がなかなか得られないということです。大学院に入っても、最終的には大学を辞めるか会社を辞めるかという結果になる。私自身も社会人ドクターを経験していますが、会社に理解があったから続けることができたと感じています。日本には、潜在的な人材が数多くいます。そういう人材を育成するための基盤作りを、企業も一体となった産学連携の仕組の中で再考していくことが必要ではないでしょうか。
また、これから検討されるとおっしゃっていました国際連携についても同様に、異文化の中で活躍できるような人材がキーファクターではないかと思いますし、結局は人材につきるのではないかと思います。
【庄田部会長】 栗原部会長代理、どうぞ。
【栗原部会長代理】 広範にわたる御議論をされているようで、大変有り難いと思います。
マネタイズのところがまだ弱いかなと思っていましたら、議論を継続されるということなので、期待しています。そこでこのマネタイズについて、これから金融機関ですとかVC等にもヒアリングされるということなので、その際の視点として、こういう分野に投資をしていくというか、資本性の資金を入れていくときには、目利きが重要だと思います。この資料の中ですと、プロデュース的役割を担うリーダーのような人達が地域にいることも必要ですが、それ以外にも、例えば大学に目利きになってもらうとか、いろいろな研究所や独立行政法人等で高度な知見を持った人達に目利きになってもらうことも資金を投下していくときに大変有効です。逆に言うとマネタイズする際の金融機関の側からすると、競争優位性等を見極めることに限界があるので、そういう連携があるとより資金と結び付きやすいと思います。是非、そういう意見も吸い上げていただけたらと思います。
あと二つありまして、二つ目がエコシステムと言ったときに、何がエコかというか、先ほどの資金と関係するのですが、その研究とか技術が、地域の産業とか企業に結び付いて産業や企業が成長することによって、またその資金が還流してくるというのがシリコンバレー等での資金的なエコサイクルだと思いますので、是非、企業が成長するという事、それによってまた新たな資金の出し手になるというところを目指すにはどうしたら良いかという観点も入れていただけると良いと思います。この資料ですと、大学等に対してだけ期待しているようですけれども、本当はもっと企業に期待することもあるのではないかと思います。
三つ目に、大学と企業あるいは地域のステークホルダーの出会いの場というのが大変重要で、ここにも同様のニュアンスが感じられますけれども、人材が出会う機会や、どこにシーズがありどこにニーズがあるか模索され出会う機会を是非地域に設けていただきたい。そこが大学が果たし得る1つの役割になっていくのではないかと思います。大学において、地域企業等に開けた何か場やカリキュラムによって産業界と大学、研究者が出会いチームアップしていく機会が設けられることが非常に有効ではないかと思いますので、是非そんな観点から御検討いただけたらと思います。
【庄田部会長】 佐々木委員、どうぞ。
【佐々木委員】 すばらしい資料をまとめていただいてありがとうございます。中間ということですから、後半も楽しみにしております。
私自身も九州というある意味で地方にいる人間でもありまして、こういう形で地域を活性化するかということで検討いただいているのは非常にありがたいと思うんですけれども、やっぱりえてしてよくあることは、東京がやっぱり強くて弱い地方をどうサポートするかという、ちょっと上から目線にならないようにというのが大事なポイントかなと思います。弱い地方をどうサポートするかという観点も大事だし、それが現実なんですけれども、個人的にはむしろ海外のエコシステムをうまく作ってきた事例を調べていただいて、日本にないものをうまくピックアップしていただくという視点もあった方がいいのかなと思います。例えばVCさんですと、もう世界中飛び回っていて、シリコンバレーのみならず、海外のいろいろな東南アジアも含めて、成功した事例をどんどん吸い上げて投資しています。ですから、そういう方がまさにリアルで今、アジアで起こっているようなエコシステムを本当に作って伸ばしているような事例を存じ上げていると思いますので、そういうのを入れていただきたいというのが1点目です。
2点目はもう一つ、やっぱり歴史をさかのぼっていただきたいということです。、ちょうど大学トップマネジメント研修でスタンフォードに行ったときに学んだことですが、80年前は西海岸に産業はほとんどなかったんですね。それで皆さん当然就職するときに、地方の学生さんが東京に行くのと同じように、東海岸の大企業に就職していた時代に、いや、西海岸に残って何か会社創ってくださいよといって、ヒューレットさんとパッカードさんが事業を始めて、80年掛かって今のシリコンバレーがあるんです。ですからやっぱりそういうようなエコシステムを作った世界の歴史から学ぶというところも是非入れていただけると、本当に将来に向けたすばらしいビジョンが固まるのかなと思います。済みません、過度な期待になるかもしれませんけれども、是非将来につながる案を作っていただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
【庄田部会長】 ただいまのお二人の委員の方の御指摘について、何かありますか。
【生田室長】 本当にたくさんの有難いコメントありがとうございます。是非、今後取り入れていきたいと思います。人材の話とかはどの分野にも必ず出てくる特に地域に限定しない話なのかという気もしますが、だからといって一つだけ何かやれば対応できるというものでもなく、恐らく総合的にいろいろなことを組み合わせて多分やっていかなきゃいけないと承知しております。文章にすると平べったくなってしまいますが、いろいろな意味で大学が担う役割として人材育成というのはやっぱり大きいと。それから先ほど企業に期待する部分がもっとあるのではないかというお話があったんですけれども、確かに、例えば今、経産省さんでも地域中核企業というものを指定して支援をして、そこを中心にしながら、地域の盛り上がりを作ろうといった動きもあるやに聞いておりますし、他省庁の施策や、政府全体としての地方創生の流れもあるので、うまく連携しながら、是非、企業という目線でもこれから我々うまくやっていきたいなとは思っているところでございます。
グローバルの方も、次の1回のヒアリングでどこまでできるのかというのはありますが、もちろんやはり我々海外から学ぶことも多いと思いますので、そこもしっかりと取り入れていければと思っておりますし、当然歴史から学ぶことはやっていきたいと思っております。
以上でございます。
【庄田部会長】 松尾委員、どうぞ。
【松尾委員】 済みません。きょう遅れて来まして、今、ちょっとモンゴルから帰ってきたばかりで。
二つ申し上げたいと思うんですが、一つはどこかにありました役割分担というところがありまして、私は地域を県とか市とかに限定せずに、少し広域に広げて地域創生をしていくというのはもう大賛成なんですけれども、実際問題としては、よく、例えば中部経済連合会の会議とか、それから自治体がやっている会議とかあるいは国の出先の中部経産局とか、そこへ行きますと、よくあるパターンは県や市や自治体がそれぞれの課題をざーっと述べて、ほぼそれで時間が終わってしまうという。なかなか地域全体が戦略だとか、そういうのにのっとってやれないというのがあります。ですからここに自治体、それから産業界、大学というプレーヤー。多分、国の出先もありますから国も入るんでしょうけれども、そこでやっぱりどうしても縦割りになっているという感じが非常にするんです。特に地域といった場合に、自治体同士の連携は、一部うまくいっている地域もあるんでしょうけれども、結構これがネックになる可能性がありますので、以前、今もあるのかもしれませんが、道州制の議論もありましたけれども、ちょっとその辺りのやっぱり自治体での、地域での連携というのを入れていただきたい。
二つ目は大学連携の話なんですが、もう今やっぱり個別の大学でどんなに頑張ってもなかなかそれが世界に雄飛できるような状況ではなくなっているということで、今、我々、東海機構とかいうのでやっていますけれども、それのいい点は例えばここの中、産学連携のどこかにも書いてありましたけれども、やっぱり産学連携を進めるときに個別の大学で随分状況が違って、すごくスタッフもそろっているところもあれば、本当はやりたいんだけれども、支援部隊がいないために泣く泣くいろいろなシーズを持っていても生かせないという大学があるんです。私は今の日本を考えたときには、日本中、根こそぎでそういった知的財産というか知的な成果は有効に生かさないといけない。そのためにはやっぱり持っているリソースを有効活用することは極めて重要です。その一つは大学連携なんですけれども、もう一つはこれはやるときにやっぱりお金が掛かるわけですね、すごく。私は例えば九州だったら九州とか、中部だったら中部で、個別でなかなか大学の基金を作るのは難しいので、これは一つ提案なんですけれども、やっぱりこういう地域を広げてやるときに自治体、住民、それから産業界も含めて、やっぱりしっかり基金を作って、必要なところに必要な人材育成や産学連携につぎ込めるような支援も是非お願いしたいなと思います。そのことによって、地域、産業界、大学一体になって、戦略を作って人材育成も計画的にやっていくみたいな、そういうイメージがあるといいのかなと思いまして、ここの役割分担の書き方はもうちょっと突っ込んで書いていただくとありがたいなと思いました。
【庄田部会長】 大変貴重なコメントを各委員から頂戴しました。また、この委員会の検討に非常に大きな期待を皆さん持たれていることがよく分かりました。最終的には、来年の1月あるいは2月の最終とりまとめに向けて、さらに検討をよろしくお願いいたします。
それでは、議題3に移りたいと思います。議題3は、イノベーションシステムにおける大学の研究成果の活用推進に資する技術移転機能等の最適化についてです。
事務局から説明をお願いします。
【村瀬室長】 村瀬と申します。よろしくお願いします。
お手元の資料3-1のフォルダーを開いていただければと存じます。それから、お手元に冊子といたしまして黄色の冊子も御用意してございますので、参考のデータ等につきましては、必要に応じて御高覧いただく場面がありますので、よろしくお願いします。
実はこの報告でございますけれども、当局に設置いたしました検討会がございまして、こちらで主として知財活用といいますか、これを推進する観点から提言を頂いたものであります。検討会の座長は大学間連携等の論点もありましたことから、静岡大学理事の木村先生にお願いしたところでございます。
画面の方、御準備よろしゅうございますか。では、お手元の資料3-1に沿って、それぞれ縦1、縦2、縦3とございますけれども、左上から順に御紹介してまいりたいと存じます。
まず、最初に縦1、現状・課題でございますけれども、御案内のとおり、前提といたしまして、大学、研究力の向上と研究成果の社会還元といったものが公共的使命として求められているところでございまして、こういった観点からイノベーションという文脈で申し上げると、丸2のところでございますが、研究成果、知財というのは必要不可欠な存在であると、もう御案内のとおりでございますけれども、単独の知財を有していることがコンサルティング機能あるいはマーケティングといった機動性と相まって、共同研究であったり、あるいはライセンスであったり、大学発ベンチャーといった形で、産業界の方々との産学連携のキーになるところがございます。
さはさりながらということで、では丸3ということになりますが、一つの視点として知財収入という観点から見たときに、先に結論から申し上げると、丸3に書いてございますけれども、保有する研究資源に照らして知財活用が不十分な大学が実はあるということでございます。このことは下で小さな字で書いてございますけれども、原因といたしまして、大学においては戦略面で知財戦略等が不全であると。実施面では成果の上がっているTLOの活用が十分できていないじゃないかといったものが挙げられておりました。このことについて、ちょっと口頭で恐縮なんですけれども、実は1枚、次のページにちょっとだけ移っていただくと、左斜め上にちょっと知財収入が不十分ということで円グラフを描いてございます。こちら、日本全国で知財収入35億という規模感でございますけれども、アメリカと比較した場合には100分の1以下といった格好になっていまして、更に国内だけで見たときにはちょっと青で囲ってございますが、1億円以上のところはわずか9大学でございまして、一部の大学に偏っていると。この1,000万から1億までのところの帯に、30大学ほどございまして、ここにある意味、一つの指標として科研費、年間10億円以上、国費が投下されているといった学校群が相当程度入っていると。まさにこういった学校群の社会実装が知財収入だけで単眼的に、単一的に見ることはできないんですけれども、課題としてあるということがございました。
1枚目に戻っていただきまして、なんですけれども、では今度TLOについて着目して見た場合には、丸4のところになるんですが、産業技術への応用展開ということでTLOの役割があるんですが、実は単年度フローで見たときに、赤字のところは今、現在4割と全体として20ほどあるわけでございますが、4割ございます。この中には公益法人の形態がございますので、単純に収益、黒赤では言い切れない部分もあるんですが、決して望ましい状態でないというのがまずあります。ただ、他方で先ほど二極化と申し上げたかと思いますけれども、複数大学との取引で安定的な収入を得ているTLOもあるといった状態でございます。したがいまして、以上を踏まえまして、縦2の取組の今後の方向性ということで、三つほど書いてございますけれども、大学にあっては戦略マネジメントを進めて、しっかりと行っていく、TLOとの効果的な連携を進めていくということでございます。
口頭で恐縮なんですけれども、実は今、大学にあっては特に国立大学法人化以後、単願率というものがどんどん減少してきていまして、単願の数でも700件程度減ってきている状況にございます。さらに保有する特許という面で見たときに、どれだけ使われていますかという意味においては、ものの調査では1割程度といったものもありまして、企業と比較すると大きく低いという状況にございます。こうしたことから戦略といってもどうやるのかという部分があるんですが、量の部分ではいわゆる大学における発明者人口を増やしていく。数千人単位の大学、有力大学の規模感であったとしても、実際、発明届を出しているのは数百人ということでございます。こういったものを上げていく。さらに発明届を出していただいたとしても実はいわゆる俗っぽい言葉で言うと穴のある特許といったものでございますので、ある意味、回避されてしまうというものもございますので、この辺り、量と質で戦略をしっかりと働かせていくというものがございます。やはり営業活動という部分においてはやっぱりTLOに一日の長がございますので、TLO全体として水準の向上を図るということを促しつつ、政府といたしましては、やはり日本全国先ほども御議論がございましたけれども、地理的な制約ということで、TLOを活用したくてもなかなか活用しにくい、それも成果のあるTLOを活用したくてもしにくいといった事情もございますことから、ある意味大学の活動を補完するという意味で、知財活用の最大化を図っていくという方向で進めていくことを報告書では御提言いただいたところでございます。
具体的な展開が右側になりますが、縦3ということでございます。丸が1、2、3と三つございますけれども、一つ目のところはただいま申し上げた単独特許の確保ということで、経営資源としてフリーハンドというのが単独特許のいいところでございますので、企業様との共同研究を行っていくことをより進めていくという文脈も含めまして、目利き、それから途中で辞めるという損切りの判断をしっかりやっていただくという部分、今度括弧2のところがありますけれども、そういった部分の判断を基礎付ける情報収集というのは、やはり何といいますか、先ほど来申し上げているTLOと外部機関の活用がやはり効果的でありまして、先ほど御紹介した1億円以上のところはほぼそういった活性化しているTLOを活用しているところでございます。ある意味、大学におかれては、国立大学の今後の機構改革1法人複数大学、国公私連携といった動きもございますことから、自らの機構、組織、機能を見直すという文脈と相まって、戦略と実施に応じた実施体制について見直していただいて、御覧のア、イ、ウというような展開を御検討いただくということがございます。
今度、丸2ということで、TLOに着目した場合なんですが、ただいま申し上げた事柄を一つの例として、好循環ということで、赤、緑という形で円に書いてございますけれども、いわゆる赤のところからスタートすると、TLOを活用するとマーケティングを通じた大学知財が蓄積されて、緑で今度有用な知財が大学からTLOに供給されて、紫、売れて、水色のところでもうかる。で、基礎研究にも投資されるという、いわゆる円環構造といいますか、好循環が期待されるところでございますので、これを狙っていくと。そういったときにやはり大学とTLOの関係をしっかり図るということでございますので、優れた知財を供給するとともに、ある意味大学がTLOに対して資本参加をしていくという形でもって緊密な関係を構築していくということが一つあると御提言いただいています。
他方で今度、TLOということになりますと、先ほど二極化と申し上げまして、なかなか技術移転だけでしっかりと自活していくというのは難しい。これはもうアメリカでも言われていることでございますので、TLO自体、共同研究のマッチングだったりベンチャーへのVCとのつなぎといったような機能の高度化、複合化といったものも論点としてあるわけでございますが、やはり技術移転といったものが本旨であることについて御認識いただいた上で、その際、一つ、複数大学との取引を進めていくということであれば、コンスタントに良質な知財を供給される可能性が高まるということでございますので、そういった御提言を頂きました。
以上含めまして、では具体的な事業展開としてどうしていくのかが丸3でございまして、これは来年度の概算要求でも今、現在要求しているところでございますけれども、御覧のようなハブといったようなものを設けていくことを目的といたしまして、大学の活動を補完するという取組を行っていくというものでございます。さらに今、資金を調達する観点からTLOを活用することが望ましいという文脈でお話ししてきたんですけれども、調達資金という観点でいうと、丸3、二つ目のポツになるわけでございますが、外国企業との取引を進めていくことも一つのツールになりますので、これを狙っていくと。データで申し上げると報告書の方にもちょっと記載しているんですが、35ページのところ、報告書、巻末になりますけれども、こちら最後に御覧いただきたいと思います。右斜め下でございますけれども、例えば知財収入でいうと、国内外の企業からトータルで20億の収入があるところ、また共同研究という、500億の全体に対して外国企業から10億といった状況でございます。外国企業につきましては、与信管理、契約の処理、紛争時の場合の対処等いろいろと論点があるわけでございますが、このたびのこの検討会の御提言等含めまして、今後また更に検討を進めていくというような状況となってございます。
以上でございます。
【庄田部会長】 技術移転機能の現状の分析と委員会の提言を説明いただきました。何か御質問、御意見はありますか。
佐々木委員、どうぞ。
【佐々木委員】 九大の佐々木です。
我々、産学官連携をする中でTLOについては苦労しているところもありますので、それをきっちりケアしていただいていることは非常にありがたく思いました。こういう事業が是非、日本の中でスタートできればなという意見を持っております。同じ思いを持っております。
例えば私どもの九大の例で申し上げますと、自分の大学にTLOもありますし、ただし三大都市圏から離れているような我々の大学ですと、やっぱり企業さんがやっぱり三大都市圏にほとんどいらっしゃいますので、我々の場合ですと関西TLOさんといろいろコラボして御支援も頂いているということがありますので、自分のところの大学だけではなくて、地域の、若しくは中央のハブになるようなTLOさんが地方の大学もケアしていただけるのは非常にありがたく思いました。
そのときに、是非、御配慮いただきたいのが、私的には3点ございます。一つは、これはやはり地方大学さんのシーズをある意味で売られるということになりますので、特に地方大学さんは財政状況が非常に厳しいので、地方大学さんも潤って、地方の大学で頑張っている先生にもきっちりキックバックがあるような、潤うような制度をきっちり設計していただきたいのが1点目でございます。
それから2点目が35億円しか日本の大学は稼いでいないということで、一教員としても力不足で申し訳ないなと思うんですけれども、我々現場の感覚でいきますと、やっぱり特許のライセンスでもうけるというのはかなり限られたケースです。むしろ、我々現場で、例えば私なんかがやっているのは、特許はちゃんと取って、でも佐々木先生のところはきっちり特許取っているから、では佐々木先生のところと共同研究をやりましょうということで、共同研究費やその間接経費でリターンをもらっているという形なんです。ですから、知財収入が金額が少ないから、ではどんどん知財を売ればいいということになって、我々の大事な特許をただ単に売り物として、どんどん売られてしまうと、企業さんとのお付き合い、特に競争関係の企業さんとかに流れてしまうとちょっとやりにくいかなと思います。その辺のセンシティブな配慮が大事になってくるかなというのが2点目です。
3点目はこの中で海外企業とのマッチングということで書いていただいていて、アメリカも含めてこういうのは世界中でやっているわけですから、日本の大学ももちろんこういうことをやっていくべきだというのはおっしゃるとおりだと思います。ただし、この辺りになりますと、国際競争の面も出てきまして、特に私の水素の分野ですと、きのう水素閣僚会議が開催されましたが、日本の大学のいい知財はもう全部買いますという企業さんが隣の国あたりからは出てくる中で、では本当に日本の大学の知財を、TLOさんがどんどん切磋琢磨して海外企業にどんどん売られてしまうと、では日本の国の税金でやった事業でその成果が日本にキックバックされずに、むしろ競争相手である海外の企業に行ってしまうことになります。それがいいことかなというのは、ちょっとやっぱり悩ましいところがあります。それは一大学とかでは判断できないし、一研究室でも判断できませんので、是非、上のレベルで日本としてどういうスタンスをしていくのかと。例えば日本で税金を払っていない企業さんに知財を売る場合は、それこそ5倍ぐらいは払ってもらわないとだめだとかにした上で、日本の企業にも買っていただいて、日本の大学から出てきた知財を国内外で売ってそれらのリターンで大学の収入も確保していくと。多分そういう時代に将来はなってくると思いますので、多分、まだ体制が十分には整っていないですが、こういう制度をきっちり作っていただいた上でやっていただきたいなと思いました。
三つ、発言させていただきました。
【庄田部会長】 林委員、どうぞ。
【林委員】 ありがとうございます。
私も今、資料3-1で御説明いただいた現状の整理、問題点、課題の整理と、それから取組の方向性として整理していただいたところについて、具体的に進めていくべきではないかと考えております。御説明の中では特に言及はなかったんですけれども、このクリーム色の本の参考資料の31ページに、大学における知財収入等の状況が具体的に数字で出ております。これを拝見すると、科研費獲得額、共同研究の獲得額がある程度、ある大学が限られているんですけれども、その中で知財収入が1億以上というのが9大学というのがどこかというのもこれで確認できたわけですが、こういったものを出すと、常に「こういう数字では評価できない」という議論があるかと思います。
しかし、では何をもって評価するのかというと、やはり客観的指標としてはこれは一つ使える指標だと思います。民間企業ですと、赤字が出れば、お金をかけてでも改善をしなければいけないとなります。例えば改善といえばトヨタが有名でいらっしゃるんですけれども、トヨタを定年退職された方々を集めた会社をリクルートさんと一緒に創って、中小企業などに「カイゼン」のコンサルティングのサービスを事業として株式会社でなさっています。実際になさっているやり方を勉強させていただくと、例えば半年間、その会社から3人ぐらいコンサルタント先の会社に派遣されて、毎日、派遣先の会社の担当者3人なり4人なりと、顔を突き合わせて、10か条といって、「言い訳するな」、「まず現状を否定せよ」、「できない理由よりやる方法を考えろ」など、、私も自分自身に言われたらかなり厳しいと思うんですけれども、そういう考え方を指導したり、朝の朝礼、退社するときの終礼で、紙に「きょうのヒヤリハット」したことは何か、改善点で気が付いたことは何か、そういうのを洗い出していくと。そうすると、マインドセットが変わっていくというんですね。今回の件についても、例えば、東京大学のTLOの山本先生のような方を派遣して出先の方々とそういう活動を一定の期間でやっていくと、成果があるのではないかと思います。国として派遣についての補助をしたり、成果が上がったかを見てPDCAを回し、イノベーション、マネジメント、ハブの形成をやっていければ、課題への一つの具体的な取組としてやってみる価値があると思います。是非、具体的にこれを試みてみるべきではないかと思います。
以上です。
【庄田部会長】 渡部委員、どうぞ。
【渡部委員】 個々のTLOの目線でできるだけ頑張ってくださいというのは、それはそのとおりだと思うんですけれども、基本的に恐らくTLOが1998年、TLO法ができたときの観点に立ち返れば、ナショナル・イノベーション・システムとしてこういう機能が必要だろうというところから来ていると思います。そういう意味では、個々のTLOの話と別に、本当に今のいわゆるTLOというものの機能がもともとの目的に即してどうだったのかという話と、それから今の時点でどうすべきかという話として整理すべきなので、決してTLOをみんな何とか応援しないといけないという話でもないわけです。もともと、このTLOというのはアメリカ型の仕組みを入れようとしたのですが、基本的にはアメリカのTLOを見てみると、ベンチャー支援なのです。基本的にはやっぱりベンチャーに移転をしてきたものが収入の源になっているということだと考えれば、今の日本の特許の、大学の特許の行き先は、必ずしもベンチャーはメジャーではないですよね。むしろ非常に限られたところしかない。別にそれが悪いというわけじゃなくて、日本の場合は製造業を中心に既存産業が盛んに研究をしてきたから、研究開発費の比率が欧州に比べても大きかったですし、そういうシステムの中で大企業との連携を知財に関しても深めてきたという経緯がありますから、そこは実はだからアメリカと同じ物差しを当ててもやっぱり同じ結果にならないんです。
さらにTLOは最盛期は幾つあったのかな。47だったですかね。いわゆるアメリカ型のTLOはそのうちの半分もなくてどっちかというと地域の産業支援機関だとか、地域の自治体だとかがその立場で作ってきたというものだった。とすると、やっぱりそれはいろいろ何だかんだあったとしても地域に還元しないといけないということになるので、それは大学の知財の行き先を制限することになってしまうので、実は効率はもともと悪かったはずなんです。その目的だとさっきお話に出た地域イノベーションシステムの中で評価をすべきものであって、技術移転収入で物差し当ててもそれは無理ということになる。だから何を言いたいかというと、今、TLOと言っているものを一緒くたにしても余り意味がないだろうと思うんです。だからアメリカ型のTLOでやれば、やっぱりこれはベンチャーと接続させていて、リターンを出さないと、東大の場合もそうですけれども、そういうことで考えないといけないし、それから地域で考えるんだったら地域のさきほど話題に出たイノベーションシステムの中で本当に役割を果たしてもらって、それが満足できるものかという考え方になるし、それから大企業との連携でいえば、先ほどおっしゃったように共同研究が基本的に円滑に進むことの方がメリットが大きいわけだから、そこの収入を何らか還元してサステナビリティが出ればそれでいいわけなので、同じ物差しを当てるということではもうないなということだと思います。
そういう中で、結局は何かというと、大学の意思なんです。大学の選択肢。大学がどう考えるのかと。うちはもうアメリカ型でやるという考え方なのか、やっぱり地域の中で一つの役割を果たすような形で機能させようと考えるのか、大企業と大型のそれこそ今、組織間連携とかありますが、そこにコンシュームさせれば別に対価としてライセンス収入ということにはなりませんけれども、それはそれでいいのだと考えるかで、大学の意思なんです。大学の意思を何かここにないものとして比較してしまうと、多分結構気の毒な話だし、意味がないのかもしれないと思います。なので、基本的にはまず大学の意思です。大学の意思がTLOをこういうふうに使おうと思ったときに、基本的にTLO側からすれば分母はでかい方がいいというのは、これは常識なので、それは成り立ち得る話ですけれども、ではそこの大学が、例えばいい特許をそこに出さないと意味がないわけですよね。だめなものを出してもしようがない。そういう意思決定を本当にするのか、三つの選択肢の中でよく意思決定して、その上で外に出すとかとやらないと中途半端にやっても多分だめだと思います。
それからあとは海外の話というのが、これが個人的には余り今、何かガイドラインとか作らない方がいいという意見ですけれども、内閣府さんが作ろうとしているので、それは適切なものを作っていただくということです。ちょっと前に私、その手のことは整理したことはあります。そのレベルで整理して、例えば雇用創出という観点で見たときに、適切な技術移転なのかとか、いろいろなことがあるのでその範囲で整理していただく。一方できょうもちょうど午前中というか、今、スタンフォードのコンプライアンスオフィサーに来ていただいて、今、米中関係が非常に緊張していますので、その影響でNADDという大統領権限法、トランプ大統領が8月にサインしたものの影響というものがどう出てくるかというのは、かなり厳しいですよ。それがどういうふうになっていくのかよく分からないです。そこに制裁リストに入っているのは、実は日本経団連企業もあるんです。だからそういうことを考えると、ちょっと今、何か変なものを作らない方がいいというのは個人的な意見なんですけれども、とりあえず適切なものを作っていただくということでお願いをしたいと思います。
【庄田部会長】 ありがとうございました。
菅委員、どうぞ。
【菅委員】 御説明ありがとうございます。
最初に注文で、このTLOとオープンイノベーション機構との関係をもうちょっと明確にどこかに書いておいていただいた方が、今後、オープンイノベーション機構がもしもっと発展していくと仮定するならば、TLOの役割は非常に重要になってくるので、そこを戦略的にどこに位置付けるかときっちり書いておいていただきたいというのが1点です。
もう1点は、注文というか、先ほどのクリーム色のやつの35ページを見ると、先ほど渡部先生からお話がありましたけれども、日本は共願と単願だと共願が多くて、アメリカは単願が多いと。アメリカの場合は単願した後に各企業にライセンスしていくという戦略を取っているわけで、これの要因がTLOが日本は弱いからということも考えられるとは思うんですけれども、その辺の分析もやっぱり少し必要で、アメリカだけじゃなくてほかのドイツとかそういうところは一体どうなのかとか、イギリスはどうなのか。イギリスもいろいろベンチャーが盛んなところなので、それをちょっと比較もしていただきたいなと思います。
その上で、TLOというのはTechnology Licensing Organizationなんですね。日本の先生方が常に勘違いしているというか、そういうふうにTLOがなっているのかもしれませんが、特許を出すところ、仲介するところだと思っている場合が非常に多いです。実際はTLOはライセンスをする先を含めて対処するのがTLOであると。この辺の業務の位置付けをもう少し明確に書いた方がよくて、マーケティングとかいろいろな言葉を使ってはいるんですけれども、TLOが一体どういう業務をすべきかを非常に明確にしておいていただいた方がいいと。それで、最近ちょっと別の大学のTLOじゃないですけれども、知財部と交渉していたんですが、まあ頭が固いです。もう交渉になっていないです。交渉だからネゴシエーションなので、どこかでウインウイン関係を見付けるのが基本的なスタンスなんですけれども、向こうは一方的にこれが決まりですから、これが決まりですからと、変えようとしない。それをちょっとでも変えてもらうために時間を物すごく使うという事態が生まれてしまった。これが一番日本のいかんところかなと思うんです。大学からの産業の発展が止まっている部分で、東大の場合は、東大のTLOは会社なので、もう少し柔軟に対応してくれるんですけれども、そういうところは少し差があるのかなという感じは実際にほかの大学の人たちとお付き合いして分かっていますので、その辺も含めてTLOが一体どういうべき立場のものか、あるいはそれにつながって今度は東大の知財関係でやっている東大、各大学の知財関係の人たちがどういう立場なのかというのを関連をちゃんと付けた方がいいかと思います。
以上です。
【庄田部会長】 高木委員、どうぞ。
【高木委員】 先ほど、御説明にございました単独特許の確保という点についてですが、これは少しそのステージを分けて議論した方がいいように思います。例えば共同研究で産業界が大学にお金を出したときに、ではその成果の知財が大学は単独確保なのかというと、これは産業界にとって抵抗があります。そうではなくて、例えば科研費など国の競争的資金を使って、大学が基礎的な研究をされる。例えばiPS細胞みたいなものですね。非常に産業界にとっても魅力的なものがある。これは大学が単独で確保する。そうすると非常に産業界にとって魅力のある知財を大学が持っているということで、産業界の方から、次のステージとしての共同研究が非常にスムーズに回っていくということだと思います。
一方、共同研究のときは知財の収入を得るのか、あるいは共同研究の収入を増やすのか、これは今、議論に出ていましたけれども、大学の戦略によると思います。大学全体の戦略かもしれないし、個々の領域の戦略かもしれません。今日拝見した資料の31、32ページでこのデータがありますけれども、この中で科研費と共同研究の金額を比べたときに、産業界からの共同研究の費用の方が大きい大学が二つだけあります。そのうち一大学では、逆に知財の収入が非常に少なくなっています。その大学の考え方として、共同研究における知財の収入のハードルを下げて、その分共同研究の費用を取るという戦略が明確だと思います。もう一つの大学は、かなりの収入も得ているので、この辺は少し詳しく知りたいと思いました。これが1点です。
もう1点は、大学が魅力的な単独特許を保有しているときに、企業がその大学と大型の共同研究を進めていく場合は、企業にとって当然その成果をグローバルビジネスでも使いたいと考えます。ところが今日お示しいただいた資料の34ページを見ますと、大学の単独特許は国内出願が多くて、外国出願、PCTが少ないです。これだと非常に困ります。外国出願、特にPCTは非常に費用が掛かります。トリッキーなやり方ですと、国内出願してから、パリ条約だったら12か月、PCTだったら20か月、30か月の間に共同研究の企業を巻き込むということもできなくはないと思いますが、なかなか難しい。外国出願のときの費用の考え方をお伺いできればと思います。
【庄田部会長】 事務局、どうぞ。
【村瀬室長】 非常に多岐にわたる御指摘を頂きまして、まことにありがとうございます。
一つ一つお答えするのは恐らく多分、時間の制約もあると思うので、ちょっと基本的な考え方を申し上げたいと思うんですが、先生方がおっしゃったようにまさに大学が共同研究ないし、ベンチャーの創出という形で、財源の多様化を含めてしっかりと知財活用を図っていくのはもちろんそのとおりでございます。基本的なコンセプトといたしまして、やはり大学は公共的な使命としてしっかりと得られた研究成果をしっかり社会実装していくということになるわけでございます。そうなったときに、やはり必要な、出てきた研究成果、とりわけ例えば科研費だとか、基礎研究が出てきた成果をしっかり活用するというのが極めて重要で、先ほど口頭で申し上げたんですが、私の手元にあるデータでは、保有特許の活用率が企業さんは大体5割、大学は東大、京大を除きますと1割という格好になります。このことをどう考えるかというときに、やはりまだまだ欠落しているのではないかと見ることができると思います。
したがいまして、共同研究に結び付けるにしても、やっぱり良質な研究成果がこれまであったからこそ、今、共同研究につながってきているということですし、どちらがお金を出したのかという部分もありましたが、実はお金を出したところという部分ももちろん大きいと思うんですが、どれだけコントリビューションしたのかという部分と、そのいわゆる特許の性質、基礎的、基本的な性質なのかという部分を含めて多元的に考えていくこともあると思っておりまして、したがって前提として私的自治という中にあって、大学がしっかりと活用を図る際にどうしても不具合が生じてしまうというようなところを、政府が支援していくというスタンスで考えていく。それが例えば単願、共願の権利処理であれば、昨年来御指導いただきました、通称さくらツールという契約モデルであったり、あるいはグローバル特許対応であるとJSTが外国特許権利化支援を行ってございますので、真に必要な特許につながると思われるものについては、きちんと財源を確保して支援をしていくという事柄になったりだとか、そういったことをもろもろ含めまして、大学が外国企業との関係では、そもそも権利化しているのか、あるいはそもそも基本特許を持っているのかどうかをちゃんと国益を踏まえて考えていく。もちろんバイ・ドールにつきましては、政府による当該特許の移転譲渡の場合には事前承認制といったものもございますので、その辺りも含めて対応していくことかと思っております。
すみません。お答えがちょっと十分ではございませんが、かように考えております。
【菅委員】 一つだけコメントさせてください。特許というのは、今の話で混同していると思うんですけれども、特許というのはオリジナルのアイデアに権利があるんです。金を誰が出したかは関係ないんです。なので、例えばアメリカなんかはよくあるのは、この先生のこのアイデアでこれが面白いと。だからそれにお金を出して、それを育ててもらって、それを自分たちが共願で取るということはしないです。それを育ててもらって、単願で出してもらって、それを最初にライセンスを受ける権利を得ておくということが本来の大学を育て、ベンチャーなり大企業の技術を強化するという方向に向くので、日本はどうしてもそこをちょっと混同していて、金を出したら俺らのもんだというその考え方をどこかできっちりと分ける必要はあります。
【高木委員】 お金を出すだけであれば、これは委託研究ということで分かります。共同研究といったときに、大学の研究者と企業の研究者が一緒になって研究するというケースの場合、共願でいいと思います。
【菅委員】 それは人を派遣して、そこで一緒に共同することが前提で、お金だけ出して話はしたけれども、では我々の特許ですよというのは、私も今、すごく大変な経験をしているところもあったりして、やっぱりそれはよくないなと思います。
【高木委員】 ありがとうございます。
以前、私がアメリカの東海岸の大学に滞在して共同研究をしたことがありますが、そのときは共願です。ただ、日本の特許法と違って73条の縛りはないので、大学も勝手に使えるというところは少し違うと思いますけれども。
【庄田部会長】 後藤委員、どうぞ。
【後藤委員】 私も大学で知財の実務やっていた経験から菅先生の御意見に非常に共感で、企業は金を出すから俺の権利書にしろみたいなのが結構多いので、非常に不健全だと思うんです。そういう点では大学が知財に関する予算はやっぱり持てるように、あるいはPCT、海外出願で大学が足らないならばやっぱり国として援助をしてくというのはやはりきちっとやっていっていただきたいなと思います。
それからもう1点、この会で言うのがいいかどうか分かりませんが、外国の話が、海外企業が出たのでちょっとコメントさせていただきますと、日本の大学特許支援が少ないという話がありますけれども、逆に非常にいい発明もあって、非常に高く売れる可能性を持った特許はあるわけです。多分それがライセンス交渉なんかが今後来て成功すれば、今、議論されている桁の100倍ぐらいの価値になるものが出てくると思います。ただし、二つ難点があって、技術移転先がもう日本企業はないと。海外、日本の産業構造が変わって海外企業しかないというパターンもこれから生まれてくると思います。そういうときにどうするかという話。それからもう一つ悩ましいのは、そういう大きいライセンスになったときに、恐らく特許侵害訴訟を経ないで、契約が成り立たない場合も起きてくると思います。それに耐え得るような体力をどうやって身に付けておくかはこれからの課題だと思います。
私どもJSTでも何件かそういう有力特許があって、ライセンスしているとやっぱり侵害訴訟になっている例もあります。今、やっているのは比較的少額なので、比較的まだ穏便ですけれども、これからもっと多額のライセンス交渉で多額の侵害訴訟をしないといけない事態が恐らく近いうちに起きてくると思いますので、そういう内容のこともちょっと御配慮いただければと思います。
【庄田部会長】 今回の検討会の議論のまとめが最終ページにありますが、文科省ではこの後、どのように進めていかれますか。
【村瀬室長】 この検討会といたしましては、ひとまず一旦閉じた形になっていますが、当局に設置した検討会でございますので、本日の御指摘を踏まえまして、局として受け止めまして、上司とも相談しながらしっかり対応してまいります。
【庄田部会長】 よろしくお願いいたします。
それでは、議題4に移ります。リサーチ・アドミニストレーターの質保証に資する認定制度の導入に向けた論点整理についてです。村瀬室長、よろしくお願いします。
【村瀬室長】 続けてで失礼いたします。
お手元に、次は資料4-1という概要の方の資料を御用意いただければと存じます。そして冊子の方はピンク色の冊子をお手元にお配りしてございますので、そちらをお手元に御用意いただければと思います。御準備のほど、よろしゅうございますか。それでは、同様に資料に沿って御説明してまいりたいと存じます。
このリサーチ・アドミニストレーターでございますけれども、こちら縦1の丸1のところでちょっと太字で書いてございますけれども、御覧のように研究プロジェクトの企画であったりとか、とりわけ研究資金をしっかり調達してくるといったような役を行ってございまして、調達後の研究成果の活用推進、そしてここには書いてございませんけれども、最近は大学の経営戦略、研究戦略を立案するといった業務を担っておりまして、学術研究あるいはイノベーションの源泉となる知の創出に貢献しているという者でございます。
これまで文部科学省、平成23年度からの配置整備事業等も通じまして、今現在、各大学に一定の配置が行われまして、ちょっと小さな字で恐縮でございますけれども、全国102の大学等に900人以上が配置されているといった状況になってございます。そしてこのたびのこの提言でございますけれども、やはり同様に局に設置した検討会でございまして、座長は金沢大学の山崎学長にお願い申し上げましたが、ただいま申し上げた量の部分が一定程度進んできておりますので、次は量と対応する質、質保証ということに着目しまして、URAに対する取組方策を検討していただいたというところでございます。
丸2のところでございますけれども、では今現場からどのような報告が寄せられているかといいますと、御覧のような課題があると聞いてございます。実はこのURAの方々、非常にパフォーマンスに個人差が場合によってはあると。突き抜ける方は非常に突き抜けていらっしゃるということがございます。そこに小さな円グラフがありますが、少し拡大を、うまくパソコン広がるでしょうか。ちょっと広げていただきますと、右側の方になりますけれども、URAの前職とございます。肌色で左側に書いてございますが、4分の1が民間企業からお越しになった方。水色の部分がもともと大学にいたという者でございます。大学の部分はちょっと右側の方に拡大しますと、赤、青とございますけれども、事務職員から転換した者が2割、もともと教員の方がシニアのURAになる方等が2割、緑のポスドク等からは1割弱といった格好になっていまして、要するにいろいろなバックグラウンドがおありだと。大学のいいところはダイバーシティなんですけれども、やはり大学になれていないという部分がなかなか自らの力を発揮できない部分もあったりだとかもするという部分もございますことから、一つこれが課題になってございます。
あと、もう一つがやはりURA始まって日が、年が浅いということもございまして、自分がどういった能力を持っているかというのがなかなか見える化された形になっていないということで、場合によっては採用配置上ミスマッチが生じていると。それから先ほど冒頭申し上げたこととも関連するんですが、入った後の人材育成の専門的な機会が十分でないと。とりわけ大学の中で人材育成をURAのために専門的にやろうと考えているところはアンケート調査でも2割程度しかないといった格好になっています。
それから最後にURAを巡る雇用環境を申し上げると、大部分が、8割が有期雇用ということで、不安定な雇用形態になっておりまして、そのことを財源が補助金等に依存しているといったことも影響しているわけでございます。
続いて、ただいまの課題を踏まえて今後の方向性でございますが、縦2でございます。結論めいた形で質を図っていくという部分でございますけれども、このことについてどのように捉えていくのかということなんですが、丸2のところにございますけれども、URAに期待される実務能力をしっかりと担保を図っていこうということでございまして、このことは先ほど申し上げた人材育成の部分とも相まって、制度化できないかということを御検討いただきました。
丸3のところでございますけれども、質保証ということで、具体的な取組としましては、認定ということが一つあるだろうと。実務能力が一定水準に達しているかどうかという意味での認定でございますが、一定程度の大学における実務経験とURAに特化した専門的な受講を前提として、人材育成の観点から実施するという考え方でもって、そのことにより、二つほど、丸3のところにポツが書いてございますが、URAの知識・能力の向上が図られる。更には客観的な実務能力の見える化を通じて、取引先、大学の中での信頼関係の確立が図られるということで、最終的には質の高いURAが供給されることによって大学自体の研究環境の改善であったり、教育研究機能の強化を図るということを目的として、取組を図っていこうではないかということを御提言いただきました。
最後に右側の縦3でございますけれども、主だったところのみ申し上げます。まず、コンセプトでございますが、主たるところといたしましては、(1)、(2)に書いていますけれども、(1)一定水準の実務能力を保証するという基準適合性。最低基準性ということでございます。それから丸2、認定のスキームでございますが、ここも字が小さくなっていて、すみません。恐縮でございますけれども、下から上にという流れになりますが希望するURAは左の青のところになりますけれども、必要な研修を受講していただいた後、大学による推薦(評価)を得た後、認定の申請を行うと。認定機関はURAに関する関係団体等を念頭に置いておりますけれども、認定を行っていただくという内部、外部の組み合わせで行っていくというものでございます。更には更新制といった形で、変化の激しい社会の中での対応でございますので、他の例等も参考にしながら更新制がよいのではないかと賜りました。
続いて、丸4でございますが、URAの方でございますけれども、まずは現在の大学の機能を高めるということを考えれば、原則としては現職のURAから優先的に進めていくんだろうという御指摘がございました。
丸7、認定の対象範囲でございますけれども、URAが担っている業務があるわけでございますけれども、そういった業務とあと習熟度といった意味でのレベル。この業務とレベルの組み合わせを一つ基準とするんだろうということでございます。
それから丸10、導入時期でございますが、実は先ほど済みません、有期雇用が8割と申し上げたんですが、財源として補助金等も申し上げました。今、補助金による財源措置が全体の3割といった格好となっております。この補助金が御覧のような米印で書いてございます。丸10のところ、西暦2022年度末までということでございますので、一つ、社会的環境が今後、整ってくるのであれば、これは論点整理でございますが、様々なところで御意見を頂いて、よろしいということで社会的環境が整えば2021年度からの開始ということで、補助金の実施期間終了後もにらんだ形で、導入時期を御提言いただきました。
最後に11番でございますが、このような制度といったものは実質化を図ることが極めて重要でございます。したがいまして、ポリシーミックスも含めまして、的確な普及促進を図るための方策を文科省といたしましてもしっかりと検討していくといったことで御提言を頂いたところでございます。
簡単でございますが、以上でございます。
【庄田部会長】 ありがとうございます。
URA業務の強化に関して、認定制度の導入という具体的な提言となっていますが、御意見、御質問等いかがですか。
私からの質問ですが、導入時期について、「社会的環境が整えば」という表現がありますが、どういう意味ですか。
【村瀬室長】 まずはこういった方向性について大学、経済界含めまして御賛同いただくということがまず前提としてありまして、あと具体的なところで申し上げますと、実はこの認定制度は人材育成の中で研修を行うことになっております。そうすると、研修をしっかりと供給する団体がしっかり確保されるかどうか、具体的には今、有力大学はしっかりと専門的な研修が行われていますので、他大学含めて開かれた形として運用できるかどうか。また、関係団体は専門分野、例えば大学の知財、管理だとかいった部分については、大学技術移転協議会はじめ、そういった団体があるわけでございますが、量、質ともにしっかりと確保されるかどうかがこの環境整備ということになろうかと存じます。
【庄田部会長】 高木委員、どうぞ。
【高木委員】 認定をして質のレベルを高めるというのは大変いい方向性だと思います。そのときに、ではどういうスキルが必要かということを整理しておくことが重要ですが、多分これは報告書の37、38ページでよろしいのでしょうか。これを見ますと、非常に範囲が広いです。これを1人の人間が全部できるとしたらスーパーマンですので、自ずとある人はこことここが得意ですという形で認定をするとか、加えてその後の継続的な教育をしていくことが必要になると思います。今、環境がどんどん変わり、制度も変わっていますので、継続的な教育をする際に、何らかのポイントみたいなものを付けて、そのポイントを奨励する、あるいは義務付けるというやりかたもあると思います。例えば技術士会など、ポイント制を取っているところもありますよね。御検討いただければと思います。
【庄田部会長】 渡部委員、どうぞ。
【渡部委員】 これはさっきの37ページのところのスキル標準ですよね。スキル標準を作るときに、これは東京大学が作ったのですけれども、やっぱりいろいろ悩ましいところがあって、こういう例えばライセンス・アソシエート、さっきのTLOの人たちのスキルなんかも、これが一部にかぶったりしているんです。それをどこまで含めるかと。全部短冊にしてもまた複雑になる。恐らく、運用としては東大もそうなんですけれども、ある程度の広さはないといけないけれどもやっぱりどこかが中心ということでもいいという考え方はしていますけれども、スキル標準を作ったときに、これはそういう前提で、必ずしも全部でないとだめだという前提では作っていませんので、そこの運用はやっぱり考えていただく必要はあるなと思います。
それからちなみにこれは直接のテーマじゃないですけれども、伊藤先生が副座長をやられていて、伊藤先生自身はURAについてはかなりアンケート調査とか実証分析をやっておられて、URAの分析をやりますと、適切なスキルがあって職場環境。これが結構マッチングが必要なんだけれども職場環境とうまくマッチしていると本当に成果が出ているという分析になっていまして、統計的有意に受託研究費が上がるという大変すばらしい結果が出ている。これがやっぱりもう少しスキルだけじゃなくて職場環境とのマッチングがないと、全然パフォーマンスが上がらないので、だからそういう意味ではこれをやるときに個人が能力が高ければいいですよという話ではないと。そこはやっぱり受け入れる側の職場環境みたいなものが非常に重要だというところをどういう形で浸透させるかも課題かと思います。
【庄田部会長】 菅委員、どうぞ。
【菅委員】 これはプログラムマネジャーなんかと同じような問題点だと思うんですけれども、こういうことをやることの心は、URAとしての職が皆さんにちゃんと認められて、地位があることが重要だと思うんです。余り上から目線で、こういうスキルがないとあなたなれませんよというよりは、地位をしっかり見定めるためのこういう制度ですというのをやはり前面に出した方がいいと思うんです。もちろん先ほど渡部先生からありましたけれども、例えば産学連携とか知財に関してのURAの専門家が各部局に必要はなくて、それだともう少し少ない数だといいと思うんです。一方で、教育プロジェクトや国際連携といったりするのは、本部を含めいろいろなところで部局で必要になってくるURAだと思いますので、そういう区別をしながら、彼らの地位がしっかりと認知されることを目的にするということをしっかり最初に言ってください。でないと何かフィルターするためにやるみたいな質保証ばかりが表に出てしまうと意味がないことになってしまいます。
【庄田部会長】 佐々木委員、どうぞ。
【佐々木委員】 手短に1点だけ。今回、URAのこういうのを作っていただく中で、質の保証というのは第一歩で大事だと思います。ただし、やはりURAはうちもいろいろ苦労していますけれども、また何か職種とかキャリアとしてまだ確立されていないのが我々も苦労している本質的なところかなと思います。教員ですと、例えば学会で成果を発表して、その人となりをアピールして、それで教員公募に応募して、そこで限られたポストの選抜を勝ち抜いて着任し、その人が助教から准教授、教授になったり、他大学に転出したりして、キャリアが上がってくるんですね。その日本全体のキャリアのシステムがまだできていないというのが一番本質的なところだと思います。なので、質の保証は大事なんですけれども、例えばいろいろな大学で職種の名前も違ったりしますので、その辺はある程度、日本全国で統一していただくとか、我々教員ですと、業績書の書き方が大体ありますけれども、それに対して、ではURAの業績って何なのかというところをこういう議論の中でしていただくとか、日本全国でURAという形で公募しましょうとか、あと最後にやっぱりこういうURAの方が例えば年に一遍どこかに集まって、自分の活動を紹介して、その中で、自分の大学でこんな人が欲しいので、こんなURAがいたらちょっとうちに来てくださいといって声を掛けられるような何かジョブマーケット的なものが将来的にできると、やっぱり職種としてきっちり認知されるかなと思いますし、我々大学としてもこういうところを強化したいといったときに、あそこにこんな人がいるとなったとき、むしろそういう方に来ていただくというふうにお互い引き抜き合いながらというか、そういう人もキャリアアップしながら、多分成長していくということなので、質の保証も大事なんですけれども、やっぱり切磋琢磨するキャリアパスを作っていただくというのも大事かと思いました。
ちょっと1点だけコメントさせていただきました。
【庄田部会長】 須藤委員、どうぞ。
【須藤委員】 URAのキャリアというか地位をしっかりと確保するという意味では非常にいい制度だと思いますので、これは是非進めていただきたいと思うんですけれども、ちょっと分からなかったのが、この資料で一番最後にこういった認定制度を定着させていくために、大学はいいんですけれども産業界に向けてと書いてあるんですが、何をしたらいいんですか。基本的には大学でやることだと思うんですよね、これは。産業界に向けて何をして。では産業界は何を応援したらいいのかがよく読めないので、もう少し発信していただきたいんですけれども。
【菅委員】 恐らく人材ですよね。産業界から人材が欲しいと。
【庄田部会長】 梶原委員、どうぞ。
【梶原委員】 同じ脈絡かもしれないのですが。資料の15ページに、認定を取得するためには大学等における実務経験というのが冒頭にあって、これを見た瞬間に、産業界の人はすぐにはこのプロフェッショナルにはなれないのかと、産業界としては、何となく後ろ向きになってしまうのではないかと感じました。この表を見て、まさにスキル認定をするのだなと言うのは分かりました。IT分野でも、ある分野のアーキテクチャーやプロマネなど、本当にプロフェッショナルのスキル認定をしています。今後の方向感としては、兼業副業ではないですけれども、一つの組織ではなく、複数の組織を渡り歩くようになるのではないでしょうか。URAが一つの大学に所属する人なのかどうかということも、将来的には出てくると思います。先ほどの地位の問題と同じだと思いますが。
新たに資格を取るとどのような良い点があるのか、ということは当然必要であり、一番端的なのは、給料が増えることだと思います。質を上げるためにスキル認定をするというところに付随していろいろなことが出てくるので、周りの環境を含めて魅力ある形で導入していくことを期待します。産業界としても、URAにどのような人材を輩出できるのかという関心もあるので、URAの平均年齢など、伺ってみたいことがあります。
【庄田部会長】 松尾委員、どうぞ。
【松尾委員】 我々のところはURA、キャリアパスを作って、供用性を作って、今、四十数名のうち、15名ぐらいを無期化しました。結構無期化される人は相当厳しい倍率の中で無期化されるんですが、これは一大学でやっている間はいいんですけれども、URAの人たちの流動性だとか、また拡張性とか考えると、やはりできるだけ早く認証制度とともに、キャリアパスというか、人事給与制度というか、こういうのを本当は完璧に統一するのは難しいと思うんですけれども、それをやっていただくといいなと。そう申しますのは、大学の中でもURAって何する人と。そんなところへお金を掛けるんだったら教員を増やしてくれという声が結構学内で強いんです。いや、そうじゃないんだよということは言っているんですけれども、これはですからそういう意味では、ある意味で外から力を押していただくと、我々としては非常にありがたいと思います。
一方で、やっぱり中身を作って、この人たちは本当に活躍をして、いろいろな分野で社会貢献ができていくということは示す必要もあるんですけれども、是非そういう意味ではよろしくお願いしたいと思います。
【庄田部会長】 それでは、時間となりましたので、議題4については、ここまでとします。 最後にその他を事務局からお願いします。
【西條課長】 ありがとうございました。
1点、御報告をさせていただきたいと思います。参考資料3には付けてございますけれども、科学技術学術審議会の総合政策特別委員会。これは7月19日に開催されましたけれども、ここで実施いたしました第5期の科学技術基本計画の進捗状況の把握と分析結果に関しまして、産業連携・地域支援部会関係部分につきましては、メールで失礼いたしましたが、先生方から頂いた御意見を踏まえまして、御説明させていただきましたということでございますので、御報告だけさせていただきます。
【竹之内課長補佐】 続きまして、今後の予定の連絡でございます。次回の開催の日程につきましては、部会長と御相談の上、追って調整をさせていただければと思います。
また、本日の議事録につきましては、事務局から委員の皆様にメールにて確認をさせていただいた後に、文部科学省のホームページで公開いたしますので、よろしくお願いいたします。
また、本日使用しました資料、きょうはペーパーレスでございますけれども、冊子がございますので、御希望がございましたら、後ほど郵送いたしますので、事務局までお申し付けください。
以上です。
【庄田部会長】 4つの全議題を通して、大変活発な御議論を頂戴しまた。
これをもちまして、本日の部会を閉会とさせていただきます。


―― 了 ――

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(科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課)

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