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教育課程部会(第108回)・教育課程部会 児童生徒の学習評価に関するワーキンググループ(第11回)合同会議 議事録

1.日時

平成30年12月3日(月曜日) 10時00分〜12時00分

2.場所

文部科学省 第二講堂(旧文部省庁舎6階)

東京都千代田区霞が関3‐2‐2

3.議題

  1. 児童生徒の学習評価の在り方について
  2. 新学習指導要領の周知について
  3. その他

4.議事録

【天笠部会長】 それでは,定刻となりましたので,ただいまから第108回中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会及び児童生徒の学習評価に関するワーキンググループの合同会議を開催いたします。
本日も,大変御多用の中参加いただき,まことにありがとうございます。また,本部会につきましては,報道関係者より会場の撮影及び録音の申出があり,これを許可しておりますので,御承知おきください。
本日,議事に入る前に,事務局に異動がございましたので,事務局から御報告をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】 去る10月16日付で人事異動がございましたので,御報告いたします。
初等中等教育局長が,高橋に代わりまして,永山が着任しております。
【永山初等中等教育局長】 永山でございます。よろしくお願いします。
【白井教育課程企画室長】 大臣官房審議官(初等中等教育局担当)ということで,白間に代わりまして,丸山が着任しております。
【丸山大臣官房審議官】 丸山です。どうぞよろしくお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】 また,教育課程課長,望月に代わりまして,松永が着任しております。
【松永教育課程課長】 松永でございます。よろしくお願いいたします。
【天笠部会長】 それでは,本日の配付資料について,事務局から説明をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】 本日の配付資料は,お手元の議事次第にございますとおり,資料1-1から資料2-2までとなっております。不足等ございましたら,お申し付けください。
【天笠部会長】 それでは,議題1に入ります。本日は,児童生徒の学習評価に関するワーキンググループとの合同開催となります。ワーキンググループは今まで10回にわたり議論を重ねており,児童生徒の学習評価の在り方の今後の方向性についてまとまってきたところであると聞いております。
本日は,事務局から資料について説明をお願いするとともに,ワーキンググループの主査を務められていらっしゃる市川委員からも,ワーキンググループの審議状況についての御報告をお願いいたします。その後,本ワーキンググループの方向性について皆様から御意見を頂きたいと思っております。したがいまして,先ほど議題ということで,本日は主に(1),(2),2つありますけれども,多くの時間は(1)の学習評価の在り方についてということに割きたいと思っておりますので,その旨よろしくお願いいたします。
それでは,事務局から説明をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】 失礼いたします。それでは,資料1-1を中心にして御説明をさせていただきたいと存じます。
既にワーキンググループの委員の先生方には御案内してございますけれども,本日,教育課程部会との合同開催ということでございますので,少し時間を取りまして,丁寧に説明をさせていただければと存じます。
それでは,資料1-1,1ページからでございます。「児童生徒の学習評価の在り方について」ということで,これまでの議論を整理したものを御用意させていただいております。
既に平成28年12月の中教審答申において,学習指導要領改訂の方向性について御審議いただいてまいりました。今回,学習評価について,この答申を前提として審議を行っていただきたいということでございます。資料1ページの一番下の丸にございますけれども,この学習評価について,指導要録の改善・評価の充実・普及など,今後の専門的な検討については平成28年12月の答申の考え方を前提として検討するということで,御審議いただいてきたものでございます。
次の2ページに進みまして,このワーキングでは,この答申を踏まえて,各学校関係者であるとか,教育の研究者の方々,民間の教育関係者,さらに現役の高校生,大学生等からも意見を聴取して,様々な議論を行ってまいったところでございます。
2ページの基本的な考え方という点でございます。今回の中教審答申,新しい学習指導要領においてもカリキュラム・マネジメントという概念が重視されているところでございますが,指導と,それから学習評価の在り方ということは,まさにカリキュラム・マネジメントの中核的な役割を担っているということで,ここに強調して書かせていただいております。
3ページにお進みください。学習評価については,指導と一体となったカリキュラム・マネジメントの中核ではございますけれども,これまでのところ様々な課題も指摘されてきたところであります。例えば学期末,学年末などの事後的な評価に終始してしまうことが多くて,評価の結果が具体的な学習改善につながっていないのではないか,現行の「関心・意欲・態度」については,挙手の回数,ノートの取り方など一時的な態度の表出を捉えるような評価であるという誤解が払拭し切れていないのではないか,続いて,4ページでございますけれども,教師によって評価の方針が異なり,学習改善になかなかつなげにくいのではないか,教師が評価のための記録に労力を割かれてしまって,指導に注力できない,相当な労力を掛けて記述した指導要録が,次の学年や学校段階において十分に活用されていないといった課題も指摘されているところでございます。
そのようなことから,4ページの中段にございますけれども,改善の方向性としましては,1として,学習評価が児童生徒の学習改善につながるものにしていくこと,2として,教師の指導改善につながるもの,そして,3として,これまで慣行として行われてきたことでも,必要性・妥当性が認められないものは大胆に見直していくということを基本的な方針として御検討いただいてきたところでございます。
5ページです。学習評価の基本的な枠組みという点でございます。図の1を御覧いただきたいと存じますけれども,現在学習指導要領に示す目標,内容としては,資質・能力の3つの柱,知識及び技能,思考力,判断力,表現力等,学びに向かう力,人間性等で整理をしております。観点別学習状況の評価は,基本的にこれに沿った形ということになりますけれども,特に感性や思いやりなど,いわゆるその観点での評価が難しいものについては,個人内評価として一人一人の進歩の状況等を見取っていくということが基本的な考え方になろうかと思います。また,この観点別評価を総括したものが評定ということでございますけれども,評定については,また後ほど御議論いただきたいと考えてございます。
6ページにお進みいただきたいと思います。6ページでは,観点別学習状況の評価についてということで,先ほどの資質・能力の3つの柱に相当する観点に基づいた評価をどのように行っていくのかということについて記述しております。
まず6ページの中段でございますけれども,観点別学習状況の評価,3観点で行うという前提でございますけれども,その表示の方法については現行と同様に3段階でのABCの評価にしてはどうかということを原案としては記述いたしております。
6ページの一番下が,「知識・技能」の観点での評価ということでございます。各教科における学習の過程を通した個別の「知識・技能」の習得状況について評価を行うとともに,それらを既有の「知識・技能」と関連付けた活用をしていたり,あるいは他の学習,生活の場面でも活用できる程度に理解をしているかといったことを評価するものでございます。
7ページの中段に進みまして,具体的な評価方法としてはペーパーテストが中心になるかと思いますけれども,その際にも,単に事実的な知識の習得を問うだけでなくて,概念的な理解を問うような問題とのバランスを工夫する,児童生徒が文章による説明をする,観察・実験,式やグラフで表現など,様々な方法を適切に取り入れることが重要であると記述してございます。
次に,7ページ中段以降,「思考・判断・表現」の観点の評価でございます。各教科の「知識・技能」を活用して課題を解決するといったことのために必要な思考力,判断力,表現力等を身に付けているかどうかを評価するという観点でございます。
8ページにお進みいただきまして,一番最初の丸です。こちらも具体的な評価方法としてですけれども,ペーパーテストも重要でございます。ただ,それだけでなくて,例えば論述,レポート作成,発表,グループでの話合い,作品の制作や表現といったもの,さらにそれらを集めたポートフォリオを活用するといった評価方法も考えられるのではないかということを,原案としては記述しております。
次に,8ページの中段から,「主体的に学習に取り組む態度」の評価,最後の3つ目の観点になります。こちらの評価について,まず8ページの一番下ですが,「学びに向かう力,人間性等」との関係ということでございます。先ほどの図1で御説明申し上げましたけれども,「学びに向かう力,人間性等」の中には,必ずしもその観点,ABCといった規準で評価することはなじまないような部分もございますので,今回,この「主体的に学習に取り組む態度」については,観点別の評価になじむ部分を取り出して整理をしているということになります。
9ページの中段からです。「主体的に学習に取り組む態度」の評価の基本的な考え方という部分です。この態度の評価については,単に継続的な行動をしたり,あるいは積極的な発言をするといった性格であったり行動の傾向を評価するということではなくて,各教科等の態度に関する評価の観点の趣旨に照らして,知識及び技能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりするために,みずからの学習状況を把握して,学習の進め方について試行錯誤するなど,みずからの学習を調整しながら学ぼうとしているかどうかという意思的な側面を評価することが重要であると記載してございます。こちらは答申にも同様の記述がありまして,それを引き継いでいるものになります。ここではみずからの学習を調整するという言葉が入ってございますけれども,自己調整ということでございまして,また後ほど出てくる重要な概念になります。
10ページにお進みいただきまして,一番上の丸です。この「主体的に学習に取り組む態度」,先ほどの御説明を整理したものでございますけれども,2つの側面に基づいて評価をすることが求められると整理しております。まず1番では,知識及び技能を獲得したり,思考力,判断力,表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとする側面,それから,2番として,こうした粘り強い取組を行う中で,みずからの学習を調整しようとする側面,これが両方どのようにあるのかということを評価していくものになろうかと思います。
これを具体的に図に示したものが,11ページの中段にある評価のイメージというものになります。右のx軸の方で,1の粘り強く学習に取り組む態度をとっております。また,縦,y軸の方ではみずから学習を調整しようとする態度をとっておりまして,単に粘り強く学習に取り組む態度,粘り強く学習に取り組むことはもちろん重要でございますけれども,それだけではなくて,自分の学習を振り返ったりしてよりよい学びにつなげているかという自己調整の態度があるのかどうかということを踏まえて評価をしていくということで,このような,あくまでイメージでございますけれども,図をここでお示しさせていただいてございます。
10ページの一番下の丸のところになりますけれども,どちらか,例えば粘り強い取組があるとしても,自己調整の部分,みずからの学習を調整しようとする側面が認められないという場合には,必ずしも基本的には十分満足できる,A評価にはならないということになろうかと思います。
続いて,11ページの一番下の方からのパラグラフでございます。各観点ごとの関係性でございますけれども,この態度の観点については,あくまで「知識・技能」,あるいはその「思考・判断・表現」を獲得しようとすることとの関係性が重要になってくるということがございます。この態度の観点のみを取り出して評価することはなじまないということがございますので,基本的に3つの観点について大きなばらつきがあるような評価ということは,なかなか考えられないのではないか。仮に,例えば単元の導入段階で,観点ごとにCCAであるとか,あるいはAACといったばらつきがある場合には,教師側に速やかな対応が求められることになるかと存じます。
12ページの中段です。この態度の部分の評価の方法ですけれども,ノートやレポート等における記述,授業中の発言,教師による行動観察,児童生徒による自己評価,相互評価といったものを材料にして,教師が評価を行っていくことになろうかと思います。
12ページの一番下では,発達の段階による留意点ということでございます。特に低学年の児童の場合には,なかなか自己調整は難しい部分があることから,例えば学習の目標を教師が「めあて」などの形で提示をして,それを目標にして,自分なりにどのような工夫をしているのかといったところを見ていくことで,十分に対応できるのではないかという御議論いただいております。
13ページの中段です。評価方針の児童生徒との共有についてという点です。これまでの教員を対象にした意識調査においても,必ずしも評価の方針,方法等について教師が児童生徒と共有していない場合,伝え切れていない場合が指摘されてございます。これについてあらかじめ共有しておくことは,評価の妥当性や信頼性を高めるとともに,どういったことを目標にしていくのかといったイメージを持たせるという観点からも重要でございますので,こういったことについて記述をさせていただいております。
14ページにお進みいただきたいと思います。評価を行うタイミングや頻度についてということで,14ページの一番最初の丸でございます。従来,国立教育政策研究所の参考資料の作り方もございまして,評価についてはかなり毎回の授業で複数観点を見取るという実践が行われてきた部分もあったかと思います。ただ,常に評価ということになりますと,先生方にとっても大きな負担であるし,また,児童生徒にとっても負担ということもございますので,これについては少しタイミングや頻度を絞って行っていってはどうかということで御提言を頂いております。
14ページの一番下の方,指導要録の改善についてという点です。まず最初の丸,高等学校においては,観点別学習状況の評価については行われていたということではございますけれども,指導要録の様式欄にこれに相当する欄がなかったということがございました。そこで今回,高等学校,これは大学入試との関係性もございますけれども,指導要録の充実を図っていく観点から,指導要録の参考様式の欄に観点別評価の様式欄を設けることとして,この原案を作成してございます。
それから,15ページの中段からです。指導要録の取り扱いについてということで,幾つか改善点を提案いただいております。まず総合所見,指導上参考となる諸事項という文章で記述をする欄が指導要録の参考様式上ございます。もちろんこういったところにきちんと書いていただくことは大変重要なわけでございますけれども,一方で,日常で評価についてフィードバックを行うことも重要でございます。例えば通知表や面談でお知らせをすることも重要でございますので,この指導要録上のものについては,例えば要点を箇条書きにするなど,必要最小限のものにとどめるようにしてはどうかといったものが1つ目,それから,もう一つが小学校外国語活動の記録について,今回新しく小学校中学年で外国語活動が入ってくるわけでございますけれども,こちらについても記述欄を簡素化して,評価の観点に即して,学習状況に顕著な事項がある場合には,その特徴を記入することにしてはどうかという御提言でございます。
また,15ページの一番下です。指導要録と通知表は,それぞれ教育委員会が設定をしたり,あるいは学校が独自に作成をするもので,役割が異なるものでございましたが,実際に先生にとって子供の評価をするということでは,共通する部分もかなり多くございました。そこで,仮に両者の様式を共通化することが可能であるという御判断がある場合には,それらを1つにまとめることも考えてはどうかという御提言でございます。
また,こうした取組を後押しするためには,16ページの最初の方になりますけれども,校務支援システムのICT化等の情報化が必要です。さらに,今後様々なデータを子供たちが持つようになりますと,例えば進学,転校等の際に,データをどのように次に学校に送っていくのかといったデータ・ポータビリティー等の検討も必要になってくるということについても記載をしております。
16ページ中段からが,観点別学習状況の評価と評定の取り扱いについてということでございます。
まず16ページの一番下の丸です。観点別学習状況の評価と評定については,それぞれの役割があるということでございます。観点別学習状況の評価は,各教科の学習状況を各観点に基づいて分析的に捉えるということでございます。また,一方で,評定については,児童生徒がどの教科の学習によい状況であって,あるいは改善が必要なのかという全体的な状況の把握にとって有効であるというそれぞれの役割がございます。また,17ページの1つ目の丸ですが,評定については,現に高校入試,大学入試,あるいは奨学金の審査等においても活用されている現状があるということがございます。
一方で,評定については一昔前の相対評価という認識が保護者等にもかなり強く残っているという課題も指摘されているということがございます。また,評定を行う際には,基本的に各学校の判断に委ねられているということがございますので,観点の重み付けなども必ずしも一律ではないということも指摘されています。
17ページの一番下から,ここは学習評価のワーキンググループの方ではまだ御議論,結論が出ていないということで,ペンディングにさせていただいている部分でありますけれども,こうした指摘等を踏まえると,評定を扱う際にも,例えば重み付けをどのように考えるのか。今,観点が3つございますけれども,それを一律に判断するのか,それとも各学校の判断を尊重するのかといった点については検討する必要があるだろうということでございます。
また,18ページ,こちらもペンディングとさせていただいておりますけれども,例えば評定を扱う際には,通知表における扱いについては各学校において,あるいは入試においては,大学や高校において評定の課題等も踏まえながら,さらに観点別学習状況の評価が今後高等学校にも様式欄として導入されるようになれば,そういったことと併せてどのように使っていくのかということも考慮しながら適切な在り方を検討していくということが考えられるのではないかと記載をさせていただいております。
18ページ中段では,今後観点別学習状況の評価の記載を充実させていくことで,より一人一人に着目をしたきめ細かい入試をしていくことが,これは高校入試,大学入試いずれも可能になってくるということを記載してございます。
18ページからが,この評価を高校入試,大学入試でどのように使っていくのかということについて記載してございます。
まず19ページの最初の丸ですが,現在,特に公立の高校入試においては,一般入試においても調査書,内申書と一般に言われるものでございますけれども,それが入試において非常に大きな比重を持っているということがございます。もちろん学力検査だけでなくて,この調査書を用いることで,例えば保健体育であったり,技術・家庭であったり,様々な教科の学力を把握できる,ふだんの生活状況等も知ることができる,様々な観点をバランスよく把握することができるといったメリットがあるという一方で,19ページの一番下の丸になりますけれども,ふだんからの評価が厳格な公平性が求められる入試に利用されることから,特に先生方の説明責任が重視されてしまって,指導改善につなげていくという視点がちょっと足りなくなってしまうのではないか,多くの都道府県では中学校3年間全部の成績が内申書に評価されるということでございますので,例えば中学生が途中から勉強を頑張りましたという場合にも,なかなか高校入試では厳しくなってしまう場合がある,それから,中学校での生活指導が内申をどう上げるのかということにかなり意識をしてしまっている場合もあり,例えば先生の意向を踏まえて意見を述べるとか,あるいは本意でないのに授業中に挙手したり,生徒会役員に立候補するといったこともあるのではないかといった御指摘もあるところでございます。
そのため,20ページの中段にありますけれども,高等学校,それから,その設置者においては,この学習指導要領の趣旨を踏まえてどのような入学者選抜方針,あるいは選抜方法の組合せ,調査書を利用するとして,その利用方法が望ましいのか,さらに,学力検査とどのように組合せを考えていくべきなのかといったことについて,必要な見直しを新しい学習指導要領が導入されるチャンスに是非行っていただきたいということで,ここでは幾つかの提案をさせていただいているところでございます。
また,20ページの一番下の方では,大学入試について触れております。大学入試についても,各大学のアドミッション・ポリシーに基づいて,多面的・多角的な評価が行えるように調査書を活用することは重要であるということがございます。この指導要録に基づいて,調査書が大学入試でも作成されるわけでございますけれども,こちらについても観点別学習状況の評価をどのように活用するのかということを含めて,入試で必要な情報を整理した上で検討していくことが求められるのかと思います。
なお,このスケジュール感について,少し調査書の変更について何度か重要なタイミングがございますので,後ほど別の資料を用いて補足説明をさせていただきたいと存じます。
21ページの中段,障害のある児童生徒の学習評価です。特に知的障害を持つ児童生徒について,文章による記述という考え方を維持しながら,観点別学習状況の評価を踏まえた評価を取り入れるということを,まず1点目としてございます。それから,特別支援教育においては,個別の指導計画が重要な役割を果たしているということがございます。個別の指導計画に基づく評価が行われている場合もあるといったことを踏まえて,この個別の指導計画に基づく評価と,それから,指導要録の関係をどのように整理するのか,どのように簡素化していくのかということが重要でございます。
21ページの一番下です。外部試験,検定等の学習評価への活用についてという点です。例えば全国学力・学習状況調査や,新たに導入される高校生のための学びの基礎診断といった試験もございます。その他にも,様々な外部の試験であったり,検定等があるわけでございます。こういったものももちろん重要でございますけれども,一方で,その中には必ずしも学習指導要領の目標,内容と合致しないものもあるということがございますので,そのあたりについては,それぞれの目的等に十分に留意した上で活用していただく必要があるんではないかということを,22ページの最初の丸に掛けて記載させていただいております。
22ページの最初の丸です。例えば地域のスポーツクラブにおける活動であるとか,習い事,趣味といった全く学校の教育外で行っている多様な活動についてでございますけれども,これについては,本来必ずしも学校が把握すべきものではないという部分もあろうかと思います。そこで従来,調査書においてこういったものについても書いていた部分がございますけれども,あくまでも学校における活動の記録であるということが,調査書,あるいは指導要録の中心的な役割ということでございますので,入試を行う高校,大学等におかれては,これに過度に依存するのではなくて,児童生徒の多面的・多角的な姿を考慮するように,本人からの提出書類であるとか,申告等を通じて確認するといった工夫も求められるのではないかということを記載してございます。
22ページ中段以降,国立教育政策研究所が作成する参考資料,あるいは教育委員会,学校等に求められる取組について記載しおります。国立教育政策研究所が作成する参考資料というのは,評価を実際に行うのに当たってどのようなやり方をするのかということをお示ししていただいているものでございます。実際に各学校においては先生方にお使いいただいているものでございますけれども,これらについても,基本的には簡素化をしていく。例えば単元ごとに全ての観点を見取るということではなくて,場合によっては複数の単元を超えて評価をするといった事例を示すことも重要ではないかといったことを全体として記載してございます。
23ページの下の方です。教育委員会,学校等に求められる取組というところでございます。教育委員会等においては,教員研修であるとか,それから,今も行っていただいておりますけれども,独自にお作りいただいている各種の参考資料,そういったことを御協力いただきたいと思います。また,各学校においては,評価についての校内での研修などを,教務主任,研究主任を中心に行っていただきたいという点を書いてございます。
また,最後のページです。24ページに参りまして,この評価を効果的・効率的に行っていくという観点から,例えばデジタル教科書,タブレット,コンピューター,録音・録画機器等Edtechを適切に活用することで,人間の先生だけでは十分に見取れないような部分についても評価をしたり,見取っていくことが可能になると考えられますので,各学校設置者等におかれても,こういった点についても御検討いただきたいということを書いてございます。また,民間の事業者においても,学校や教師のニーズを踏まえた技術の開発が期待されるということもございます。
また,24ページの中段です。大学,教員養成課程においても,学習評価について新しい学習指導要領の下にどのように行っていくのかということを御指導いただきたいという内容です。
24ページの一番下,学校関係者,保護者,社会一般への周知という点です。評価についてのパンフレットの作成などを通じて,広く一般に周知をしていく,それから,評価の改善というのが教育課程全体のサイクルに,カリキュラム・マネジメントの中に位置付けられていくんだということについても十分に御理解いただくことが重要ではないかということを最後にまとめさせていただいております。
資料1-1は以上でございます。
資料1-2の1点だけ御説明をさせていただきたいと存じます。18ページです。学習評価に関する資料というカラーの資料でございます。高大接続に関わる指導要録及び調査書のスケジュールについて記載してございます。新学習指導要領については既に告示が終わりまして,これから教科書の作成,それから,移行期間を踏まえて新学習指導要領が始まっていくということでございます。学習評価についても,今,御議論いただいておりまして,今年度末頃を目途にしまして,指導要録の参考様式を御通知させていただくということで考えてございます。
一方で,現在,高大接続改革の方も進行しておりまして,新しい調査書の様式については,2017年度に,既に大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告通知というものが出されておりまして,そこでお示しいただいているということがございます。そこで,これに基づく新しい調査書様式による選抜が,2020年度,平成33年度入学者選抜実施要項の発出というところから始まっていくということでございますので,その後に,今回御議論いただいている指導要録についての新しい参考様式に基づいた調査書が使われるようになってくることになります。それが公表されるのが2021年度,そして,2024年度からは新しい指導要録に基づいた調査書による選抜が開始されるということで,ちょっとこのあたりは段階的に何度か調査書の変更があるということでございまして,なかなか複雑になってございますので,この図を用いて補足説明をさせていただいたところでございます。
長くなりましたけれども,こちらからの説明は以上でございます。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
続きまして,本ワーキンググループの主査を務められた市川委員からも説明をお願いします。
【市川主査】 市川と申します。ワーキンググループの主査を務めさせていただきました関係から,どんなことが論点になったかというのを少しまとめさせていただきたいと思います。
比較的早くから合意が得られた点を3点申し上げたいと思います。まず評価というのが,指導要録,あるいは通知表が,ややもすると最終通告のような形で子供や保護者にフィードバックされるだけになっていたのではないかと。授業改善,学習改善のための評価として十分機能していなかったのではないかという観点から,学習のプロセスにおける形成的な評価という言葉が出ましたが,それを重視していくという方向が盛り込まれることになりました。通知表もそうですが,面談,あるいはアドバイスのようなことを通じて,学習の途中において子供たちに与える広い意味での評価を重視していこうということです。これが第1の点です。
第2の点としまして,観点別の評価,これまで4観点であったものを3観点にするということです。これも比較的早くから合意が得られたと思います。学校教育法,あるいはおととし12月の中教審答申,それから,新しい学習指導要領,ここでも学力の3要素ということでかなり貫かれていまして,これに沿った3観点にしていこうということは,比較的合意が得られたと思います。
それから,3番目の点ですが,観点別の評価,今度3観点ということになりますけれども,これを高校にも求めるということです。高校の先生方にしてみると,これまで,やっていたという学校もあると思いますが,やっていなかったという学校も多い中で,3観点による観点別評価を求めることがかなり負担になる,大変であるということも考えられたのですが,高校の先生方からもかなり合意が得られまして,これは基本的にいいことであると。初等中等教育全体を通じて,この観点別の評価を導入していくことについては,比較的合意が得られたと思います。
次に,議論になったところ,必ずしもすんなりと合意が得られたわけではないという点を2点申し上げたいと思います。
まず,「主体的に学習に取り組む態度」をどういうものとして捉えるか,具体的にどういう方法で評価していったらいいのかということです。これまで「関心・意欲・態度」と呼んでいる1つの観点があったわけですが,一体これとどこが違うのか。もちろん共通する部分はあるわけですが,名称も変えて,やっぱり中身も変わっていくべきであろうと。ここでこれまで余り出てこなかった言葉,学習の自己調整であるとかいうことが中教審答申にもかなり盛り込まれています。単に意欲的に取り組めばいい,たくさん勉強して頑張ればいいというだけのものではないだろう,あるいは関心を持っているというだけではないだろうということで,もちろん粘り強く取り組むことは大事ですけれども,そこに自分なりに学習を計画して,工夫して,そして自分なりに自己評価して学習を高めていくという側面を評価していく,それが,やはり態度ですので,表に表れたものから評価せざるを得ません。これを具体的にどういうふうにやっていくのかということについては,かなり議論がありました。最終的にはかなり整理された形にはなっていると思いますけれども,議論があった点です。
それから,もう1つ議論になった点ですが,観点別評価を総合した各教科ごとの1,2,3,4,5という,これを短くは評定と呼んでいます。教科ごとの総合的な評定ということになりますが,これを残す必要があるのか,あるいはもう要らないのではないかという議論です。観点別の評価があれば,もうそれでいいのではないかと。むしろ観点を細かく分析的に見ていって評価することが行われるのであれば,子供や保護者にとってもそれが重要であるし,また,指導要録が使われるときにも,引き継ぎなどで使われることがあるわけですが,せっかくそういう観点別の評価をするのであるから,それを見てもらえればいいではないかという御意見が一方ではあると。しかし,一方では,やはり評定というのがかなり現場でもなじんだものであるし,残した方がよいだろうという意見も強くありました。
この点は本日も是非いろいろな御意見を伺いたいところなんですが,当初は少し議論の混乱も見られたと思います。評定は不要か,残すかというのは,あくまでも指導要録の話です。子供や保護者にフィードバックする通知表まで制限を加えるというものではないんですが,そのところが少し,最初議論の混乱もありました。最終的には指導要録の話をここでしています。ただ,指導要録と通知表はやはり内容的に一体であるべきだと,残すのなら両方残した方がいいという御意見も強くありましたし,また一方では,逆に指導要録からなくすということが,ただ評定だけを見るんではなくて,しっかりと観点別の評価を見てくださいという強いメッセージにもなるので,指導要録には残さない方がよいという御意見もあったということで,これはかなり両方の御意見が出たところです。
そのような議論であったということを,私の方から報告させていただきまして,本日,さらにこの合同部会での御意見を頂ければと思います。
【天笠部会長】 それぞれ御説明ありがとうございました。これから委員の皆さんから御意見を頂きたいと思いますけれども,御発言につきましては,いつものとおり名札を立てていただければと思います。
そこで,これから時間的にはおよそ65分から70分ぐらいを予定したいと思っております。ついては,下のページをちょっと見ていただきますと,まず14ページあたりまでのところを前半とさせていただき,そして,その後の方を後半ということで,それぞれおよそ30分ずつぐらいを時間的には目途としたいと思います。ただし,御発言の中では恐らく前と後ろが重なってくることがたくさん出てくると思いますので,それはそれでということで,御自身の発言のタイミングというんでしょうか,それをどこら辺か目印にしていただいてという意味もありますので,そこのところで前に戻ったりですとか,後の方に関わって,既に先に御発言いただくということでも構いませんが,大体の目途という意味で捉えていただければと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
ということで,今,名札が上がっている髙木委員からということになりますので,まず髙木委員,よろしくお願いいたします。
【髙木委員】 お願いいたします。13ページの評価方針等の児童生徒との共有についてという点,大変大事な点になると思います。既に委員の皆様は御存じだと思いますけれども,観点別学習状況の評価というのは,日本の学習指導要領の内容を基準にして質的に評価するという評価です。ですから,学習指導要領は国の教育の機会均等を保障していますから,それを基準にしているということを,まず私は押さえることが大変大事だと思います。それは,今行われているのは,単に数字として示されているだけではなくて,子供たちが学習した内容を,子供たちも具体的に内容として把握できる,そして教師もまた自分の指導が適切であったかどうかについても知ることのできる評価だと思っております。その評価を具体的に示し過ぎる余り,AやCの具体例を示すことになりますと,各学校や各教師の創意工夫や,各学校の児童生徒の実態から離れ,その事例そのものが基準となり,評価が教師の指導によるものではなくなり,一般的な評価としてあてはめられる危険性を持っていると思います。ですから,AやCの具体的な姿は,私は必要ないと。ましてや,国が示すとそれが絶対的な基準になりますので,この点は十分に注意していきたいと考えています。
Aの事例を示すことにより,それ以外の評価を示すことにも縛りが出てきます。そこで,評価規準として示すのは,11ページの図が,私はいい図だと思っているんですが,学習指導要領の内容に示されているのをB基準として,それを示し,あとは示さない。Cはそれを実現していない状況,Aは現行の学習指導要領でもそうですが,青天井としてきました。例えばルーブリックで5段階にその基準を定めると,5の段階に定まってしまい,それ以上の評価ができなくなります。ですから,ルーブリックよりも,私はこの日本の学習指導要領を基準としたABCの評価がいいと考えています。したがって,それぞれの学校で児童生徒に合わせてそれを作成するということが出てきますが,そうなると,ABCの具体的な規準をそれぞれ一々作成することは先生方の大きな負担となります。現在,働き方改革ということもありますが,先生方の御負担になるよりも,学習指導要領に書いてある内容そのものを対象として評価を考えることが大変重要だと考えています。それが第1点です。
第2点目です。そのすぐ下の丸ですが,シラバスという用語が出ていますが,シラバスというのは教育課程のない大学等でよく使われている言葉で,最近高校でも使われておりますが,私は,これは教育課程という言葉でいかないと,教育課程が生きていかないと考えています。是非その用語を用いるべきだと思っております。そうなると,2行目に基準と書いてありますが,基準というと数字的なもの,量的に量れるものをこの形で使っておりますので,学習指導要領の内容を基準にした場合には,規準という言葉を今は一般的に小中高等学校では使っておりますので,そのあたりの「キジュン」という言葉の整合性も,是非使い分けを今後検討していく必要があると考えています。
以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。今の髙木委員の意見に関連してという御発言がありましたら。
それでは,鈴木委員,佐藤委員の順でお願いしたいと思います。鈴木委員,お願いいたします。
【鈴木委員】 国会で,今,法案を審議中ですので,それについてではありませんけれども,外国人材に我が国にももっと来ていただくという法案が国会に掛けられております。その中で,私が特に気になるのは,高度な技能を持った人材に,もっと我が国に来ていただかないといけないという問題点です。産業界では人手不足ということが言われておりますが,特にその中で私は,非常に考えなきゃいけないのは,高度な技能を持った人材が我が国には不足しているから,海外から来ていただかなきゃいけないという産業界の受け止め方です。
これは結局,教育に関しても無関係ではないと思っております。要するに教育がもっと高度な技能や能力を持った人材を育成しなければいけないということを意味していると考えます。ですから,今回の学習指導要領及び,ここでは評価に関することですけれども,その評価の点でも,どうやったらそういう高度な技能を持った人材を育成できるかということを考えなければいけないと思います。
これまでいろいろな先生方が努力をなさってきたわけですが,現実に産業界からは,もっと高度な人材が必要だと。はっきり言えば,外国から来ていただかなければ無理だということを言われているわけですので,我々はもっとこの点を厳しく考えるべきではないかと。要するに,我が国の教育の中で十分に高度な能力や技能を持った人材を育成することをもっと考えないといけないのではないか。ということは,今までのようなやり方で本当にいいのかどうかということを,やはり考えなければいけないと。
私は高等学校で社会科を教えておりますけれども,一番困っていることは,例えば社会的な思考や判断というものをどういう指導過程で教えたらいいかと,はっきり言ってよく分かっておりません。もちろん指導要録には概略は書いてありますけれども,一定の段階に来たら,次の段階は何なのかということが,実は私自身評価を勉強している方だと思っておりますけれども,私自身ですら十分に,じゃ,ここまで行ったら次の段階はどうなのかということがはっきり分かっているかというと,分かっておりません。ただし,例えばイギリスのナショナル・カリキュラム,それから,オーストラリア,特に西オーストラリアのカリキュラム,特に評価基準,それから,さらにイギリスのAレベル試験の高度なレベルの評価基準及びGCSE試験の高度なレベルの評価基準,これらを検討して,ああ,そうかと,社会的な能力はこういうふうに伸びていくものだということがようやく分かったということで,そこまでやって,例えば社会的な思考・能力というのが伸びるということが分かってきたにすぎません。
こういうのは大変言いにくいんですけれども,私ですらこの程度ですから,全国の教員がそういうことをきちんと把握しているかということは,非常に難しいんじゃないかなと思うんです。そうなりますと,今までのようなやり方で本当にいいのかということをやっぱり真剣に考えないと,ここまで産業界から高度な人材が不足していると言われているのに,教育が今までどおりでいいということでは全くまずいんではないか。特に問題点は,「思考・判断・表現」の部分が,いわゆる高次の技能と欧米では言われておりますけれども,これを持った人材が不足していると言われていますので,我々はこれに対処しなければ,きちんとした責任を果たしていないんじゃないかと思っています。そのために,やはりどうやってそういう高度な技能というのが伸びるかという評価基準が必要ではないかと思います。
イギリスやオーストラリアでやっているやり方は,評価事例と評価基準を一緒に示すという方法です。確かに評価事例をたくさん示すと,その事例に引きずられるのではないかという意見ももちろん,今,髙木先生もおっしゃられたとおりですけれども,実際には評価事例はたくさんあるわけでして,事例が増えれば,必ずしもその事例に引きずられることはない。それから,お読みいただければ分かりますけれども,イギリスやオーストラリアの評価基準はかなり抽象的な用語を使われております。ですから,解釈の余地は十分ある。そこが一番の特徴です。ですから,ある程度抽象的な評価基準であれば,学校現場を不当に縛ることはないと思います。解釈の余地は十分あると思います。
ですから,今,この原案は,これで私は適当だと思っておりますけれども,1つだけ欠けているのは,思考力・判断力がどういうふうに発達するか,それをやはりもっときちんと示さないと,なかなか現場の教員には,私自身も現場の教員で,実際に教えているわけですから,社会科の思考・判断がどういうふうに発達するか,よほど勉強しないと,私自身も勉強したつもりですけれども,ようやく最近分かってきた。じゃ,全国の教員がそれで分かっているのかと言われれば,なかなかそれは難しいのではないかと思います。
【天笠部会長】 どうもありがとうございます。
佐藤委員,お願いいたします。
【佐藤委員】 2点申し上げたいと思います。先ほどの髙木委員に関連して,13ページの点ですけれども,児童生徒との評価方針等の共有ということですけれども,現行の学習指導要領でも「見通し・振り返り」というのが,小学校は教育課程の配慮事項の2の(4),中学校は2の(6)にございます。高等学校にも前回の2008年版から入っております。その「見通し・振り返り」の中で,見通しといった場合に,現在の学校現場でどのようなことが行われているかと申しますと,「マル目」と書いて目当てを書くですとか,それから,学習の計画を示すとかいう形でやられているわけですけれども,最も重要なことは,そこにあるようなルーブリック,ruberという赤い布です。どの点まで能力を高めるかということが,教員の狙いと子供の目当ての中でなかなか一致されていない。活動目標にはなっているけれども,資質・能力目標にはなっていないという点があるので,この点の目標,目当ての示し方,ここには分かりやすい言葉と書いていますけれども,適切な言葉,的確な言葉の方が分かりやすい,かつ,そういう言葉がよいのではないかと思います。
とりわけ見通しと振り返りが一致していなくて,見通しは見通しであるけれども,振り返りは振り返りで別個にあって,Society5.0の中でもスタディ・ログとか出ていますけれども,今のデジタルポートフォリオにしても,あるいはキャリア・パスポートにしても,子供たちが学び続けるためのシステム化が,日本の場合にはポートフォリオのようなものがやられている学校とやられていないところがあって,ノートで一過性にしかすぎない。一過性じゃなくて,これを継続的に進めるようなシステムを作っていかなきゃいけないし,これがさらにはデジタル化していくということで,将来的にもずっと人生,キャリアにおいてこれを学び続けて,キャリアが自分の中で可視化されることが非常に重要じゃないかと思っていますので,その点を,第1点申し上げたいと思います。これは教師と子供の関係。
もう1つは,この点をやろうとすれば,教員相互の共有理解が図られているかということがもっと問題でして,それぞれ観点が明確ですけれども,規準がどうかという,やっぱり教員間でのモデレートができていないんじゃないかと。同じような現行での「関心・意欲・態度」でも,「思考・判断・表現」,「技能」でも,「知識・理解」でも同様ですけれども,この点において,観点の意味合いについて,評価規準がどういう順であれ,B規準であれ,それがどういうものかと。
それは先ほども鈴木委員からお話ありましたけれども,2000年の教育課程審議会の答申の中でも既に評価事例集という言葉が出ているはずです。その評価事例集に基づいて評価規準を見ていかなければ,それも言葉だけではなかなか具体がよく分からない。人によっては分かりやすいということを,ただ文章を見ずに,その文章の表記の仕方ですとか,表面上の何かデザインで見ている。そうではなくて,主語があるとかとか,述語があるかとかいう形で,きちんと文章の,言語活動の充実ということでも言われましたけれども,このようなことで精緻に見ていくことができるかということは,やっぱり事例集がないとなかなか難しいんだろうと思います。そういう点では,教員相互のモデレート,それは今回教員養成課程の中においてということで24ページにも書かれていますし,23ページの方でも教員研修のことが書かれていますけれども,教員同士のモデレートがないところで,それぞれのスケールが違うところで評価をしても,なかなか難しいんじゃないかと。それをモデレートしていくのが最も重要なことじゃないかと思っております。
以上2点でございます。
【天笠部会長】 続きまして,渡瀬委員,お願いいたします。
【渡瀬委員】 髙木委員の御発言に関連してお願いいたします。4ページのところに,学習評価についての課題ということで,教師が評価のための記録に労力を割かれて,授業に注力ができないことがあるとなっております。こういう現実が確かにあると思うんですけれども,この新学習指導要領に基づいた学習評価を行っていくと,今まで以上に,私は時間が必要になってくるだろうと思います。
特に新学習指導要領の改定の趣旨を生かした評価を行おうとすると,指導計画の段階で評価の計画を具体的に立てなくてはいけなくなる。学習指導要領,又は,今お話に出ているような規準とか事例に基づいて本時の授業を,それから,その単元,学期をどういうふうに評価をしていくのかということについて,何をどのように評価するのかということについて事前にかなり綿密に計画を立てなくてはいけなくなります。今までは事後に評価の記録をすることに時間が掛かるというイメージが強かったけれども,これからは事前にかなり評価の計画をきちんと立てなくてはいけないということを現場に周知していく必要があると思います。
一方で,教師の働き方改革が必要だということも,そのとおりだと思います。そういう意味では,評価の部分での教師の負担を軽減するというのは,難しいと思います。教師の本業は何なのかということをよく考えて,課外活動等々いろいろありますけれども,本業という言葉がいいかどうか分かりませんけれども,ほかの方たちと一緒にチーム学校でできる部分は何なのかということをよく考えながら,教師の働き方改革についても考えていく必要があると思います。
以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
善本委員,お願いいたします。
【善本委員】 ありがとうございます。市川先生から,この場でも観点の評価を統合する各教科,科目の評定が必要かどうかを広く議論してほしいというお話がありましたので,これまでほとんど議論されていなかった視点で1点だけお話を申し上げます。
私は中高一貫校の校長ですので,中学生,高校生両方見ていますけれども,高校の評価,評定と,小中学校とは決定的に違うところが1点ございます。それは,高等学校においては,評定の5段階の1はその科目の単位の不認定を表し,単位が修得できないということです。そして卒業できるかどうかというのは,必履修科目は履修すればいいですけれども,履修すれども修得せずというのが1という評価です。ですから,習得できた単位数を合計して,各学校によって,国全体では74単位が最低になっていますが,それぞれ学校によっても定めがございます。
ですから,高等学校においては,どのような表し方をするかは別にして,3観点を統合する評価が絶対に必要です。そして,その科目が修得できたかどうかを判定しなければならないので,3つの観点のままだけで3観点を統合するような評価,評定は,必要か必要でないかということで言うと,これはもう議論を待つまでもなく絶対に必要だと思います。それが5段階なのかどうかというのは議論の余地があるかもしれませんけれども,この科目を習得できたかどうかということを高等学校では絶対に示さないといけないので,それが小中学校とは決定的に違うことだと思います。この点についてはほとんどワーキンググループでも議論されてきませんでしたけれども,ここでもさらに拡大的に話をしてほしいということでしたので,高校に関しては,観点だけでよいというのはあり得ないんじゃないかなと思います。
以上です。
【天笠部会長】 続きまして,笹委員,お願いいたします。
【笹委員】 よろしくお願いします。これまでの議論の整理についてという形で,高等学校側からの意見も十分に組み入れていただき,いろいろ書き加えていただいたことに感謝申し上げます。
まず,前提ですが,この新しい冊子の3番のところで,学習評価に指摘されている課題というところですが,これについては前回も私の方で幾つか意見を述べさせていただいたとは思います。確かにこういう現状もありましたが,特に高等学校においては,高大接続改革で大学入試が変わるという時期にあり,現1年生が新しい大学入試を受けるにあたって,様々な学習履歴を自分で記録し,それを自分の自己改善,自己調整に使っていこうという動きは,もう既に必要となっており,そのための実践を徐々に積み重ねている学校は多いと思います。
そういう現状を背景にこの2年間,3年間で現場は著しく変わった。さらにこの先,新しい様式の調査書を出していく受験までの間に,時間的にはゆとりがまだまだあります。この中で,高校現場はもっと目まぐるしく評価について変化できると思います。今提案されているようなことが具体的に実現できる状況が高校現場に整っていく環境にあると思います。
これまで議論の中で,小・中と高校と区別した形で議論されてきたと思います。やはり小・中と高校では観点別評価の今までの扱い方も違います。評価の結果を具体的に外に出す出し方も違います。そうした明確な差がありますので,観点別評価が適切に定着するかを分析していただいた上で高等学校でどういうふうにすれば,それが実現できるのかという具体の設計をしていただきたいと思います。
教科数,科目数を例にしても,小・中と高校では違います。小学校であれば,例えば理科1つという形で評定されると思いますが,高等学校になれば,その理科が少なくとも4つ,物化生地に分かれ,さらにそれが基礎ありなしという形になって,指導要録には8項目が書かれます。その8項目に対して,観点別,3つの観点を書き,その観点別を今後,丸にするのかABCで付けるのかはまだ分かりませんけれども,それを付けていくというふうになったとき,単純に考えても非常に項目の多い,枚数の多い指導要録の様式が私の中ではイメージできます。そうした具体的な設計も高校現場には出していただきたいと思います。
それから,今までは4観点でしたが,これから3観点になります。いわゆる従来の「関心・意欲・態度」,「主体的に学習に取り組む態度」が大きく評価される分量となります。例えば国語のような教科であれば,どちらかというと,「思考・判断・表現」の観点で子供たちがどういうふうに変化してきたか,力を付けてきたかというのを見たいと思いますが,専門高校で実施されている実験や実習を主とした教科では,学習に対する学ぶ態度の方を評価することによって,自分がいかに実験のやり方を考え,自己変革をし,よりよい実験ができ,そしてそれが知識につながった,表現につながったと考えます。高等学校では,校種によっても,教科によっても,この3つの観点の考え方は違うというところを御理解いただきたいと思います。
評定についても,今回,この冊子の中に評定の利点を記述していただきました。前にはなかったことなので,ここも本当にありがたいと思います。評定はこれだけ利点が記述されているように,一般にかなり浸透し,それが保護者にも生徒にも理解され,活用側にも受け取り側にも求められているものであります。この評定をどういうふうにすれば,この委員会が求めている形で活用できていけるかという手だてを十分に考えていっていただきたいと思います。
それぞれの校種,教科の差,受け手である大学や就職先,いろいろなところで様々な考え方があります。具体的なガイドラインを出していただくなどしながら,共通理解を図って実施にこぎ着けていただきたいと思います。カリキュラム・マネジメントの視点からも,評価は学校にとって一番大切なことです。学校がその特色を生かし,自分の学校経営をしていくに当たっても,ガイドラインは必要ですが,そのガイドラインは,画一的な,一斉にこうであるというようなものではなく,学校の裁量を残していただくことも必要ではないかと思います。
以上です。
【天笠部会長】 続いて,奈須委員,お願いいたします。
【奈須委員】 先ほどの髙木委員,鈴木委員の発言との関わりなんですけれども,今回,改めて見て,「思考・判断・表現」の評価のところが確かに薄いというのは,鈴木委員の御指摘,なるほどなと思って受け止めていました。ただ,今,ここで書き込むことがどうできるかということを悩んでいます。「思考・判断・表現」について,日本の学習指導要領の書きぶりだと思うんですけれども,つまり学年ごと,あるいは複数学年ごとにこういう内容を教えていくというふうな体系として日本の学習指導要領は作ってきて,いわゆる内容中心で作ってきて,どちらかといえば「知識・技能」中心で作ってきた経緯があって,今回も形式的にはそれを踏襲している。「思考・判断・表現」というのを明示しているけれども,学年なり各学年で特定の内容を指導する際の「思考・判断・表現」が描かれているということだと思います。
鈴木委員がおっしゃったのは,そういうこともあるのだけれども,例えば読解力であるとか,社会的な思考であるとか,あるいは類比的な考え方というのは,もっと長期的に,ある教科の中で様々な学びの経験を経て,もっとダイナミックに長期的に発達するというか形成される。そういった形成,発達をむしろ本当は踏まえて,今の学習指導要領の思考・判断も作られているはずなんですよね。ただ,書きぶりの縦横がどっちをとっているかという違いだと思うんですけれども,例えば算数の解説書なんかを拝見すると,6年間の中で,例えば機能的な見方とか,類比的な見方とか,一般化とか,モデル化とかいう算数的な思考が,こんなふうに6年間の中で成長発達するということがきっちりと想定されていて,だからこそ,この学年ではこの内容をこんなふうに指導してくれということが今回描かれているし,解説なんかはすごく分かりやすく書かれていると思うのですけれども,個々の学年や個々の内容を超えた縦の,いわゆるカリキュラムの資質・能力のシーケンスのような軸を教師がしっかりと意識しながらこの学年を指導し,この学年の評価をしてくれればいいのですが,実際にはどうしても学年ごとに,内容ごとに,まだ日本の学習指導要領というのはできているので,その意味では髙木先生がおっしゃったとおりに,現実の評価場面では,個々の内容に沿って,つまり学習指導要領に沿って評価するということでいいし,そうすべきだと思うのですけれども,どうしても個々ばらばらにやったのでは弱い。その個々ばらばらに現場では日々やっていくわけですけれども,その奥に,ある種のカリキュラムシーケンス,資質・能力のシーケンスがあって,小学校6年間だけじゃない,場合によっては高校まで一貫したものがあって,それを教師が意識化して,今回,特に「思考・判断・表現」の評価活動に取り組めるかどうかということが多分,課題になってくるんだろうと思います。
ただ,そのことを今ここでどう書くのか,あるいは,今回,この評価の議論が出る中で,むしろ,今回の学習指導要領はとても大きな改革を図ってきたわけですけれども,まだその部分はひょっとしたら積み残したのかもしれない。つまり,最終的な学習指導要領の表現様式として,目標,内容,それを学年ごとに列挙していくという書き方は変えなかったので,それぞれに書かれている奥には,その教科の6年間とか3年間の系統の中で,もっと汎用的で,特定の内容にとらわれない能力の発達とか成長とかいうことが想定されているはずですけれども,それが見えにくくなっているということで,これは後の今後どう示していくかという話,あるいは,今度,国立教育政策研究所の方で作る資料なんかの際に何とかうまく出していくということが大事なのかなという気がしています。
そうじゃないと,確かに鈴木先生が言われる,本当に思考・判断というのを段階的に着実に高度化させていくというふうな教育課程の実施や,その適切な評価ということができないという危惧は全くそのとおりだと思っています。
もっと厳しく言えば,今回の学習指導要領が本当にそうなっているのかということも,まだ実施もされていないのに言ってはいけませんが,次の改訂,あるいは実践に向けてのよりブラッシュアップに向けて,そういう目でも見ていく必要があるのじゃないか。あるいは,この内容をこの学年で教えておかないと困るというコンテンツ側の論理で,ある内容があるところに入ってい過ぎていて,むしろその思考なり判断なり表現力の着実な,あるいは高度な育成ということからすると,ひょっとしたらまだ不整合な面や足りない部分があるのかもしれません。むしろ,今回,鈴木先生御指摘のような評価の議論を縦横両面から見ていくことで,そのこともむしろ再吟味できると。あるいは,これは今,学習指導要領の話をしていますけれども,学校レベルになると,学校のカリキュラムレベルでも,この学年でこれを教えればいいのね,1段進んで,この「思考・判断・表現」,あるいはそれを評価しようというところまで進んだと思いますけれども,それが例えば中学3年間,小学校6年間の中で,ここまで育ててきて,それが育っているのか,この1年間では何をどう育てて,次にバトンタッチするのだという,ある種のシーケンスの面でのカリキュラム・マネジメントが,評価を通じて各学校で行われるということも期待したいというか,それをどう促していくかということがここから出てくる大事な課題ではないかなと伺っておりました。
以上です。
【天笠部会長】 冒頭,およそ全般としてということで,14ページ前後ぐらいまでということで,お気付きの点,御発言をということでお願いしました。既に御発言,それぞれお気付きのとおり,そこら辺のところは融通無碍に全体としてやっているということでもあるかと思いますので,全体を通しまして,14ページ以降も通しまして御発言がありましたらお願いできればということで,全体を通しましてということで,吉田委員,お願いいたします。
【吉田委員】 ありがとうございます。
私,それこそ全体になるのかどうか分からないですけれども,今回の評価のことで,学習評価と観点別評価って私は全く意味合いが違ってきているのではないかと。非常に難しい問題があると思いますのは,そもそも論なのですけれども,今回の学習指導要領の改訂も,高校,大学,高大接続という三位一体の改革の中で学習指導要領の改訂というのが求められるようになったと思うのです。当初は,1点刻みの評価から,段階的評価をするとか,それから,教科1つをとっても合教科をするとか,先ほど来お話があったアメリカのSATとか,イギリスのAレベルとかと同じように,例えば理科とか細かいものも,サイエンスならサイエンスという1つ,マスマティクスならマスマティクスという1つという大きなくくりに変えて,そういう学習をしていくのだという話で進んできたわけですけれども,結果として学習指導要領では相変わらず細かい教科名になりました。この細かい教科になって,それを学力の学習評価と,それに観点別評価を加えるということは,まさに仕事量は増えていくだけになるわけです。
そこでもう一点,大きなことは,これは14ページ以降のことになるわけですけれども,現実に今,例えば公立高等学校の入試で,入学者選抜の際に,学習評価というか内申書の比重というのは非常に大きいです。これの点の取り合いと言うと言い方は変ですけれども,その1点刻みの取り合いというものが中学校の中で行われていることも事実であり,それによって先生に気に入られる,気に入られないとか,そんな話にまで発展しているのも事実であり,そういうこと自体がやはり変えていかなくてはいけないことだというのが今回の原点だったと思うのです。
ですから,逆に言うと,大学入試も同じことなのですけれども,これだけ変えた,例えば高等学校に観点別評価まで加えたような内申書を作り,そしてそこにもし細かいことまで入れるとしても,この中では,例えば外部団体でのスポーツのこととか,外部試験のことも高等学校の評価では入れないというようなことがありますけれども,今度の高大接続改革では,例えば東大の英語4技能については,内申書に入れてくれたらそれでいいからというようなことを言ってみたり,全てがバランスがとれていないというか,統一性がない。逆に大学,高校側が,今回,こういうような内申書を頂ければこういうふうに評価しますと言ってくれれば,中学校,小学校,高等学校の先生方も,その評価の仕方が変わってくるのではないかなと。何かばらばらにみんな細かいことをやろうとしており,負担ばっかりが掛かってくる割には,使われるか使われないかがはっきりしないという改革は,私はどこかで何か統一しなくてはいけないのではないかという気がしております。
以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございます。
山本委員,川間委員にお願いしたいと思います。山本委員からお願いいたします。
【山本委員】 ありがとうございます。現場では中学校の校長でございますので,その立場でお話しさせていただきますが,学校において,教育において評価というのは非常に重要です。ただ,大きく捉えれば,ここで論議されている例えばABCであるとか,評定の54321だけではなくて,日々,一瞬一瞬の児童生徒との触れ合いが,言ってみれば評価であると言っても過言ではないかなと思っています。受け取るまなざし1つ,掛ける言葉1つで,子供たちの可能性が開いてくる,そんなことは日々,私たちが実感をしているところです。
評価の精度を上げていくということは大切なことですので,今回の提案は,それを投げ掛けているものと捉えれば,それこそ評価ができるものかと思います。ちょっと先行して報道にあってびっくりしてしまったんですが,評定をなくしますというお話があって,私ども校長会においても非常に激震が走りました。本当に54321をなくして成り立つのかという疑問です。
ただ,いろいろ意見があって,そのことについてはここでは省略をいたしますけれども,現在,絶対評価に基づくところの観点別評価,そこから評定への流れというのは,現場ではもう既に定着をしています。ページで言うと, 19ページの下のあたりの記述が少し気になりました。中学校の段階というのは変化,成長が大変著しい時期でございます。調査書の取扱いについて,決して子供たちの未来や可能性を閉ざすものであってはならないという中で,説明の中にあったように,一,二年生のときに芳しくなくて,それが3年生になって,まるで高校入試の足を引っ張る,そんなことがあるんじゃないかということで書かれていますが,このことは大変気になります。
ちなみに都立高校への入試については,内申書,調査書の記述というのは,基本的に一,二年生のことは公立の場合には問われていませんので,私立等の入試のときにはそういったことも起こっているのは事実です。このことは,現行の評価システムの中でも場合によっては指導が可能な部分でもあると思いますので,この点については,今後とも各都道府県に対しての御指導をお願いしたいなと思っているところでございます。
以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございます。川間委員,お願いいたします。
【川間委員】 障害のある子供たちのことですけれども,その子供たちが学習を進めていくために必要な配慮,様々必要ですが,それが行われないで低い成績が付くという現状をかなり相談で聞くわけですので,そこをまずなしにというふうに思います。通常の小中学校には,発達障害と呼ばれる子供たちが文科省の調査で6.5%,そのほか,視覚障害や聴覚障害,肢体不自由や慢性疾患等で配慮が必要な子供たちを合わせると,およそ7,8%くらいの子供たちがいると思うんですけれども,その子たちに必要な配慮というのは個別性がありますけれども,例えば発達障害の子供たちだと,耳から聞いたのはよく残るけれども,文字を読むのがすごく苦手であるとか,逆に耳から聞いたものは全く分からないけれども,文字だと分かるとか,そうした子供たちがいます。それから,字を書くことがなかなか難しいとか,字を書くことが難しい子供たちはほかにもたくさんいますし,例えば手に麻痺がある肢体不自由の子供たちもいますが,こうした例えば字を書くことが難しい子供たちは,タブレット端末等を活用したりしてやるわけですけれども,ある小学校なんかは高価なものを持ってくるのは学校のルールとして認められないと。要するに,子供にとっては板書とか字を書いちゃいけませんという中で,一生懸命,頭で覚えるしかないというようなこともあります。
それから,よくあるのは,発達障害の子供たちもそうですが,スマホを使ってすぐ調べるとか,文字をするとか,メモをするとか,緘黙の子供たち,人と目を合わせてしゃべれない子供たちは,声でしゃべる代わりにLINEを使って先生とやりとりをしているとか,そういうときにスマホを禁止されたこと自体で,非常に不適応状態が出るというか,そういったときにスマホを使ってはいけませんということ自体は多分,障害者の差別に当たるかなと。必要な合理的配慮をしていないと。
このほか,例を挙げると切りはないんですけれども,ある程度コストとか仕組みとかで,学校で対応できないこともすごくたくさんあります。全てのプリントを点字にしなさいとか,要約筆記者を全ての授業に付けなさいというのはコスト的に対応できないとは思うんですけれども,そこのところが僕から見ると,対応は十分できるのにルールでできなくしているようなものが多い中で,障害のある子供たちの学習が,非常に力があるのに学習できない状況になっていて,そこで評価というのはちょっとあり得ないなと思いますので,例えばここの報告書にするときに,21ページの障害のある児童生徒に係る学習評価のところに1行でもいいんですけれども,必要な合理的配慮を行った上で学習を進め,適切に学習評価を行うくらいの一文が入ってほしいと思っています。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
今の21ページのここなんですけれども,障害のある児童生徒に係る学習評価,これはこれでということなんですけれども,今回の学習指導要領の場合は,御承知のとおり特別な配慮を要する云々と,そういう配慮を要するという中に,障害を抱えた子供たちへという構成になった。それを受け止めた場合に,ここのところだけ特別に配慮を要する子という考え方と,そういう子たちに対する評価の考え方と在り方,ついてはということで,ここに障害と。ここら辺のところは何か突如としてということで,構成を考えたりですとか,位置付けを考えたりですとか,考え方とかというあたりのところもしっかり組み立てていく必要もある一画ではないかと思いますけれども,どうぞ御検討をよろしくお願いいたします。
ほかにいかがでしょうか。生重委員,お願いいたします。
【生重委員】 先ほどの奈須先生のお話を聞いて少しほっとしたんですが,9ページのところからつながる10,9という形ですけれども,学習に関する自己調整の関わるスキルが重視されるというところで,後半に,主体的に学習に取り組む態度の評価の基本的な考え方も書き込まれていますが,本当にこの6年間にわたって,3年間にわたって見取っていただけるということがしっかり広まらないと,これは余計に教員の労働の,今,働き方改革が言われていますが,年度年度での負担になっていくということプラス,家庭においても,自己調整力のスキルをどう身に付けさせていくのかとかというのも,育てている側の保護者も分からなければいけないと。
それと一方で,19ページにあるように,地方によって以下のような課題が指摘されているというところにもつながるんですが,本当に行き渡っていない部分を大きく感じます。学習指導要領移行措置期に入っているのに,一昨日伺った町も,これからの学習指導要領に係るキーワードをお話しするだけで,学校関係者がみんな「え?」と言っているというのを肌で感じると,評価というところにまで本当に深い部分で理解が行くのか,この改革の中で意図されているものが伝わっているのかというところを,もっと懇切丁寧に広報普及というか,学習,研修を広めていっていただきたいなと思いました。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。とりわけワーキンググループで御議論を重ねられている委員の方々もさることながら,本日御覧になってお気付きの点等々がありましたら,お願いできればと思いますけれども,若江委員,お願いいたします。
【若江委員】 ありがとうございます。企業では学習評価ではないんですけれども,評価についてまさに人事評価について今同じようなプロセスを踏んできているところです。ですので,奈須委員がおっしゃったように,評価はカリキュラム・マネジメント,つまり,何が目標かは渡瀬委員がおっしゃったように,先にこんなことを目標とするために具体的に何をするのかということが明確に必要だと思っています。
そうしたときに,ちょっと資料が違うのですけれども,御提示があった1-2のところの2ページ目の下のところに,現行学習指導要領に係る学習評価の改善に関する基本的な考え方とありますが,当然,そういうことをしようとすれば,教育委員会,管理職の正しい理解,そして,管理職の正しい理解に基づいて,学校内の教員若しくは学校に関わるステークホルダーに正しい理解がなされていくのだと思います。そうすると,一番下のところの1,2,3の3の部分ですが,学校や設置者の創意工夫を一層に生かすこと以前に,大変失礼な言い方かもしれませんが,学校や設置者の創意工夫以前に,正しい理解であるとか,徹底した理解であるとか,それがまずあって,その上で創意工夫をというふうにしていかないと,またここの基準がちょっとずれていくような気がいたします。
以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございます。
伊藤委員,お願いいたします。
【伊藤委員】 この報告書の取りまとめに当たってということで,1つ,気付きになるかと思います。1ページの2つ目の丸のところに,学校と社会との連携・協働を求める「社会に開かれた教育課程」の実現に向けてという非常に重要な言葉が出てまいります。たしか第7回のワーキングで,田熊先生からのヒアリングが行われたときに,これは日本のクラスサイズの問題に関連してということだったと思いますが,外部人材を生かした日本独自の評価モデルを検討していくということも考えられるのではないだろうかというお話を頂いたと思います。
最後の24ページで,保護者,社会一般への周知について述べられているわけですけれども,授業に教員以外の方々が入ってくださって,教員とともに授業作りに関わってくださるといったことが今後ますます増えていくだろうという状況の中で,この評価活動に対しても,どういう連携の在り方が考えられるのかというところに,この記述よりももう一歩踏み込んだ記述を加えることが必要なんじゃないかなと思いましたので,気付きとして御意見を言わせていただきました。
【天笠部会長】 嶋田委員,お願いいたします。
【嶋田委員】 現場の小学校の校長の立場から2点述べさせていただきたいと思います。
「関心・意欲・態度」の評価と,これからの主体的に学習に取り組む態度の部分の,特に主体的に学習に取り組む態度の評価の在り方は変わってきているという部分のところが,若い先生方に非常に多くなっていますので,先ほどの御指摘にもありましたけれども,管理職マニュアルをしっかりと理解し,それぞれの評価につなげていくのか,そういったときに,評価のABCのAとCの例といったところが,もちろんB規準はあるわけですけれども,そこのある程度の指針というものは示していただく必要が,現在の学校の現場の状況から考えれば,学校現場は評価だけをずっとやっているわけにはいかないので,そういう視点が必要かなと思いました。主体的に学習に取り組む態度,小学校低学年,中学年においての在り方といった視点を,より丁寧に説明をしていく必要があるかなと思いました。
2点目ですが,指導要録についてです。4ページ目のところで,改善の方向性として,大胆に見直しをしていくということ,それから,15ページのところで,取り扱いの,特に所見欄についての箇条書き等をするなどというところが出ておりますけれども,昨日も私,日曜日ですが,学校で仕事があって行ったときに,若い教員が来ておりまして,道徳の評価について,今,所見というか記述ですので,それをずっと書いているんです。働き方といった視点から考えたときに,小学校段階で大幅に記述欄が増えていることは皆様も承知のことだと思います。ここで総合所見においての要点を箇条書きとするなどという項目がありますけれども,一体どういうような姿なのかということ,それから,外国語活動,三,四年生におけるところについては,このように顕著な場合があるなどにと書いてあるんですが,五,六年生についてもこれまでどおりでいいのかという視点も考えていく必要があるかなと思いました。
最後に,ICT等の活用のところがありますが,16ページにありますように,総合型の校務支援システムのICT化が進んでいるところと進んでいないところでは,指導要録に関わる労力は非常に大きく差が出てまいりますので,この部分については是非,文科省から各県,各自治体についてのお声掛けや働き掛けをお願いしたいと思います。
以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
大方委員,お願いいたします。
【大方委員】 ありがとうございます。学習課程においての意味を評価し学習の評価に関して3観点が統一されたということは,社会的教育課程を目指してきた中で非常によかったなと思い拝聴しました。
20ページの下のところに,「大学の入学者選抜においても,今後の議論を通じて,各大学のアドミッション・ポリシーに基づいて,多面的・多角的な評価が行われるよう,調査書を適切に活用することが必要である」ということを書いていただいていますが,今後18歳人口の減少において,AO入試等,センター入試以外のいろいろな議論がされています。この3つの観点,資質・能力ということ,それから,先ほど鈴木委員もおっしゃっていた,世界に通用する高度な人材というのは,単に点数を取る,内申書を上げることではないということが大きな目標だったかと思います。その辺がより分かりやすく御提案いただけたらと思います。同時に,先ほど評価は要らないという話が,マスコミの方からあったということですが,大学は初年次教育ということで,基礎学力をもう1回大学の初年次でと一方で言われています。その両方のバランスというものを是非お願いしたいのと,もう一つは,保護者の方々に,幼児教育の時期から,「こういった人材養成が大事だ」ということを幼児教育としても周知することが大切です。そうしないと結果的に保護者がまた混乱されることになるかと思います。よろしくお願いしたいと思います。
以上です。
【天笠部会長】 今,寺本委員と種村委員から札が上がっていますけれども,ほかの委員の方,いかがでしょうか。そろそろ時間的なことからしますと,今,それぞれ名札が立たれている方をもちまして発言を区切らせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。
その後を受けて,主査からコメントをお願いするということでいきたいと思いますので,まず,寺本委員からお願いいたします。
【寺本委員】 16ページの上のところに,「進学や転校等に際してデータ・ポータビリティの検討が求められる」という点があったんです。これはデータ化されたらポータビリティーというのではなくて,今現在でも必要なことだと思うんです。
実は,私の知り合いの実例として,他県から転校してみえた中学生がいました。ですが,そこの転校先の中学で,まだ学力考査等していないので,高校入試に当たっての内申がなかなか付けにくいというところがあって,では,前にみえた学校のデータはというと,余り参考にしていただけないのか,なかったのか,そのことも明確に教えていただけなくて,結果的に,どこの高校を受験したらいいんだろう,自分の学力はどれぐらいなんだろうということが全く分からないまま,受験の時期に来てしまった,学校どうしようかということが実際にありました。
こうやって,実際に生徒が惑ってしまうようなことがないように,せっかく作っていただく評価,評定だとするならば,有効に活用していただかないと,本来の児童生徒のためにならないのではないかというところで,これは今でもしっかりとした連携が必要だと思っています。
もう一つ,これは公立だけに限らずですが,公立も私立も,また附属も,こういったことが十分にあり得るので,他県に移る場合に限らずですが,そういったことも念頭に置いて,せっかく作る評価,評定の部分は生かしていただきたいなと思っています。
それから,先ほどもお話があったとおり,一般的に社会に開かれた学校という中で,学校の先生方,教職員の方々は十分御承知のこの中身だとは思いますが,作ることでも大変だろうと推察できます。しかし,作っていただいたものを読み取る力が保護者や社会の方々にないと,一生懸命作っていただいたこの中身が理解されないまま,間違った過去の考え方,保護者だとか,また,もっとさきに学んだ経験のある方で,いわゆる通知表の見方しか知らない方からしてみると,一体これはどういうことなんだろうということ,それから,これはこれからの学習にプラスになるように,中間的な現在の状況をお知らせしていますよというものが伝わらないと,先ほどの議論のとおり,どうやってこれから学んでいったらいいんだろう,どう自分たちは深めていったらいいんだろうというところにつながっていかないので,その部分についての,これから皆さんが理解しやすいようなPR,周知もいろいろと必要だろうと思っています。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
種村委員,お願いいたします。
【種村委員】 大きく分けて2点,お話をさせていただきたいと思います。
1つ目は,周知についてです。中教審で,「関心・意欲・態度」の評価が表面的になったということが言われているんですが,なぜそうなったのかという分析をされていると思います。今回の「主体的に学習に取り組む態度」も同じようにならないようにということも今言われていますので,「関心・意欲・態度」が表面的になったということも含めて,その辺を御検討いただきたいのと,例えば,先ほど道徳の評価について出ましたが,教育委員会の中でも説明が若干ずれていたり,専門家が書いているものを見ても若干ずれているという中で,そういう人たちがずれているのに,現場はどうなのかということもあります。ですから,正しくどうしていくかということをしっかり踏まえながら現場に周知をしていただきたい。そのためには,どういうやり方がいいのかということをしっかり御検討いただければありがたいと思います。
2点目は,15ページの指導要録の取扱いについてでございます。指導要録の簡素化ということで,こういうふうに御検討いただいて,とてもありがたいなと思っています。是非これはもっと簡素化できるように,さらに御検討いただけるとありがたいと思います。
以上です。
【天笠部会長】 ありがとうございました。
土井委員,お願いいたします。
【土井委員】 2つあるんですが,第1に評定の問題で,16ページから17ページに書かれていることを踏まえてですが,結局のところ,評定を観点別学習状況の評価から一定の計算式で算出されるものだと位置付けるのか,評定自体にはそれには還元できない,それ以外の要素が加わるのかという点が問題であろうと思います。もし計算式で出てくるということになれば,それは書かれていようと書かれていまいと,計算すればいいという話になり,問題は,その一定の計算式を国が決めるのか,例えば,高校,大学入試の問題であれば,高校の側がお決めになるのか,大学の側が決めるのかという問題になります。国が統一的に決めるというのであれば,高校の側で一定の計算式でおやりいただければ,どちらが計算するかという負担だけの問題ですし,それは大学の方で独自に計算式で判断してもらえればいいんだということであれば,そこに書かれている高校の評定は,高校が望ましいと思っている評定なだけで,大学は違う評価をする可能性があるということになるわけで,そのあたりをどうするのかというのをお考えいただければいいのかなと思います。
もう一つは,「主体的に学習に取り組む態度」ですけれども,これを評価していただくのはありがたいとは思います。ただ,私が考える枠組みは,人間には潜在的能力があって,それを用いて学習に取り組んだ結果,一定のアチーブメントが出る,そういう構造になっているんだと思うんです。結局,そのアチーブメントの部分をどこで評価されていて,そのアチーブメントに至るもともとの潜在的能力だとか学習に対する姿勢というのがどうなるのかという,その相関関係だと思います。
能力自体を達成度とは離れて評価するというのはなかなか難しいところですけれども,ただ,考え方によったら,同じ達成度を示しているんだけれども,必ずしもこの学習にそれほど努力はしていなかったということになると,潜在能力が高いのかといことになりますし,逆に,潜在的能力は高いようだけれども取り組む姿勢が十分でないから達成度が出てこないとか,そういう関係が出てくると思います。
その意味で,私が少しだけ気になるのは,「知識・技能」とか,「思考・判断・表現」の評価が,専ら達成度の評価だということなのか,それ以外のものが加わってくるということなのか,そのあたりを少し整理して教えていただけるとありがたいなと思います。
【天笠部会長】 髙木委員,お願いいたします。
【髙木委員】 今,OECDはじめ世界潮流の中で,これからどういうふうな資質・能力を育てていくかという未来へ向けた志向が始まろうとしているわけです。しかし,今ここで考えてみると,例えば,評定と言われている54321は,昭和23年から70年前の評価をいまだに引き継いでいるということを私たちは知っておきたいと思います。
数値を示すことよりも,私は子供たちがアセスメント,値踏みの評価ではなくて,アセスメントとしての支援する評価として,子供たちの資質・能力を,先ほど鈴木委員が言われたように,長期にわたって,実は,今回,学習指導要領は系統性がどの教科でも全て出ています。その系統性に沿って評価していくことだろうと。
ですから,評価,評定の問題はありますが,働き方改革も含めて,せめて,例えば,今回,小学校,若しくはできれば中学までですが,評定はやめて評価ということを指導要録の中で考えていけないかどうか。高校の話を本日伺っていますと,どうも高校の先生方のパラダイムシフトはなかなか難しいようなので,できるところ,特に働き方改革を含めて,小学校の先生の御負担は大変多いですから,せめて小学校の評定をなくすということも考えられるかなと思います。
【天笠部会長】 委員の皆さん,いろいろ御発言ありがとうございました。
これまでのところで,市川主査,何かコメント等ありますでしょうか。
【市川主査】 いろいろな御意見をどうもありがとうございました。私の方で感じたことですけれども,3点申し上げようかと思います。
1つは,観点別評価を導入するということについて,あるいは小学校,中学校でも,現行でも観点別評価をやっているわけですが,先ほど中学校でも非常に定着しているんだと。中学校から観点別評価は余り意味がないからやめましょうというような声はほとんど出ていないのではないかとお見受けしました。
それを高校でもといったときに,これまでのワーキンググループの議論では,とにかく高校でそんなことをやりたくないという意見はまず出ていませんでした。それはもっと丁寧に分析的に生徒を見ていく,また,それをフィードバックすることで学習の改善にもなるということであれば,これはやっていく意味はあるだろうという声が高かった。本日も,高校では観点別評価を入れたくないという御意見ではなかったと思います。もちろん,負担増ということは出てくると思いますけれども,それが意味のあることであれば,負担をいとわずにやりましょうという方向なのであろうと私も理解いたしました。
それから,2番目ですが,とはいえ,やはりこれまでやっていなかったことは難しいという御意見も出ました。ただ,これまでやっていなかったから難しいのでやめておこうというと,例えば,観点別評価を初めて義務教育に導入したときも,これはありました。最初は,そんなのどうやってやるんですか。新しい学力観というのが出てきたときにも,そういうことがありました。それから,現行の学習指導要領ですと,教科横断的に言語力を育成するというようなことが出てきたわけですが,一体それは何をやるんだと初めは言われました。国語科以外の教科で言語力を育てるなんて何をやるんですか,理科で何をやるんですか,実技教科で何をやるんですかということを初めは言われました。しかし,どの教科でも,例えば教科書というのがあって,教科書は言語で書かれています。先生は言語を使って授業をなさっています。子供たちも発表したり討論したりということは言語を使っています。それを各教科の中で言語力としてブラッシュアップしていくことと言うと,だんだん理解されて,それぞれの教科で言語力を育てるということも浸透していったんだろうと思います。
ですから,今回,特に「主体的に学習に取り組む態度」というのは,これまでほとんどやってこなかったし難しいというところもあるかもしれませんが,それはやっている事例もありますし,また,学習に関する諸科学の中で,こういう方法でという事例もありますので,是非それを文部科学省側からも事例として十分提示していただいて,例えばこういうやり方があるのだということ,そのうちに学校でも先進的な事例がどんどん出てくると思いますので,是非そういう方向に行くといいと思います。
それから,3番目ですが,評定を残すかということです。小学校,中学校,高校の先生方の御意見では,やっぱり評定は必要である,評定は残したいという御意見が割と強いのかなということを改めて感じました。
ただ,やはり評定は残すとなった場合にも,もしそうなったときには,こんな問題があるのではないかという御指摘もありましたので,そのことは十分踏まえた方がいいかと思います。つまり,評定がもし残ると,評定にばかり,保護者も子供も,あるいは進学先の高校や大学でも,ついつい目を奪われてしまうのではないか。肝心の観点別評価で自分の学習を生徒が分析的に見ていくとか,保護者も丁寧に見るとか,あるいは高校,大学も丁寧に一人一人の受験生を見てくださいということが失われてしまうのではないかという懸念が恐らくあったと思われますので,評定は残すにしても,そういう点には是非御注意いただきたいと,この観点別評価をせっかく行うのであれば,これを活用してくださいというメッセージは出していく必要があるかと思いました。
以上です。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
議題1につきましては以上ということにさせていただきたいと思いますけれども,本ワーキンググループでは,年内をめどに議論をまとめる方向にあると聞いておりますので,本日の意見を踏まえつつ議論を整理していただくようにお願いいたします。
その際,私からですけれども,中教審の答申の基本的な方向を踏まえてということは,確かにここに記されていますが,評価に関わっては,こういうことで示されているんですけれども,答申全体から見たときに,私の視点からするならば,学校種の連携とか,学校種の接続ということも今回強調された1つではないかと。そういう観点から,どういうこの評価についての議論はあるのかというあたりのところも,その中で位置付けていただければと思っております。
もう一つは,本日の議論でもありました評定についてということでありますけれども,引き続き位置付けることとしつつ,評定と観点別評価のそれぞれの役割や意義,課題を意識した上で活用していく方向性と理解というんでしょうか,これを踏まえて,ワーキンググループの議論として整理していただき,まとめていただくということでお願いしたいと思いますので,どうぞよろしくお願いいたします。
ということで,この件については,ここまでとさせていただきます。
もう一つについてですけれども,時間も限られておりますが,新しい学習指導要領の周知につきまして,事務局に私からお尋ねさせていただきたいと思うんですけれども,文部科学省では,学習指導要領の周知のための保護者用のパンフレットを作成したと聞いておりますが,この件等を踏まえまして,学習指導要領の周知についてということで御説明をお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】 失礼いたします。それでは,お手元の資料2-1と2-2に基づきまして御説明をさせていただきたいと存じます。
周知の方策については,以前より,この部会でも御報告させていただいておりましたけれども,今回,保護者向けのパンフレットということで御報告させていただきたいと存じます。
保護者向けということですので,少し専門的な内容については,ある程度抑えた形で作成してございます。また,現在,民間の広告会社に委託しているところでございまして,おおむね最終段階ということでございますので,もし,本日の段階で御意見がありましたら頂戴できればと思います。
まず,カラーの資料2-1でございます。今回,「生きる力 学びの,その先へ」とキャッチコピーを付けまして,この鳥が羽ばたいていく姿をイメージキャラクターといたしまして作成しております。
これはちなみに,全体としては6ページで折り畳んで作成するような構成にしておりますけれども,本日はコピーの関係から,全部で4枚のカラーの資料として配付させていただいています。
続いて,2ページです。学習指導要領に関する基本的な考え方を掲載しておりますけれども,特に2ページ右側では,「保護者の皆さまへ」ということで,家庭での教育に対する御協力ということで,例えば家庭での会話であるとか,テレビ,ビデオのルール,そういったことについても,全国学力・学習状況調査などを踏まえた資料を少し作成して,学びのきっかけにしていただければと考えております。
3ページ目です。これが中心になるところでありますけれども,今回の学習指導要領の改訂の主なコンセプトであります主体的・対話的で深い学び,アクティブ・ラーニング,それからカリキュラム・マネジメント,こういったものを通して,3つの資質・能力をバランスよく育んでいくと。
さらに,保護者の方は,今,学校で教えている教科,科目名について,必ずしも御存じない場合もあるようでございますので,中段では,幼小中高と,どんなことを学んでいるのか,また特別支援学校も含めて,全体の像を掲載し,一番下では,特に今回の学習指導要領で新たに始めたり,あるいは充実することとして,例えばプログラミング,外国語,道徳といった事項について特出しをしています。
最後のページになりますけれども,ここでは「新しい学習指導要領で目指す学びを体感! オリンピック・パラリンピックのメダルづくりに挑戦!」ということで,御家庭でも少し考えていただけるような内容ということで,現在,最終調整中ではございますが,過去のオリンピック・パラリンピックのメダル,例えば,ロンドンの場合には,テムズ川をモチーフにした曲線を施したメダルだったり,長野オリンピックの場合には,日本の伝統技術や文化を生かした漆,まき絵,七宝のメダルであったりということで,様々な考えがメダルにも反映されております。
まさに,こういったどんなメダルを作るのかということは,各教科の見方,考え方を働かせた考え方を反映するようないい機会にもなるかと思いますので,こういったことを御家庭でも考えていただきたいということを,今,計画しているところでございます。
このパンフレット自体は,あくまで情報の入り口という位置付けでございまして,一般の保護者の方にも手に取っていただいて御理解をいただく。もし御関心のある方については,この下にQRコードも掲載しておりますけれども,そこから,さらに文科省のホームページ,学習指導要領のウエブサイトも,今,全面改定を考えてございまして,そちらで各界で活躍しているいろいろな方のインタビュー記事なども掲載しておりますので,そちらでより多くの情報を得ていただきたいと考えてございます。
また,現在,動画についても鋭意作成中でございまして,ユーチューブ等でも動画についても見ていただけるような工夫をしているところでございます。
このパンフレットの内容でございますけれども,資料2-2で,昨年,周知のポイントということで,この部会で御議論いただいたものになります。少し古い資料になりますけれども,平成29年11月に御議論いただいたものでありまして,おおむね,こういったポイントが周知の中に入ってくるといいのではないかということで御審議いただいたものでございまして,これらについては,先ほどの簡易なパンフレットでございますけれども,こちらにも,おおむね入れ込んでいるかと考えてございます。
以上です。
【天笠部会長】 限られた時間でありますけれども,今,御説明いただきました件につきまして,委員の皆さん,御意見がありましたら,短くて恐縮でございますが,コメントをお願いできればと思います。
篠原委員,お願いいたします。
【篠原委員】 意見と質問ですが,これは保護者だけでなく,どういうルートで配るのでしょうか。どういう人たちを対象にするのでしょうか。
【天笠部会長】 お願いします。
【白井教育課程企画室長】 今,予算の関係もございまして,具体的な配付ルートについては検討しているところでございますけれども,基本的には,学校に送付をいたしまして,各学校から保護者の方に,それを用いて御説明をいただくようなことを考えてございます。
ただ,予算の関係等もございまして,実際に,全ての方々にお届けする形では,もう少し簡易なもの,これをさらに簡略化したようなものも別途考えているところでございます。
【篠原委員】 全ての人というのは?
【白井教育課程企画室長】 予算の関係で,全保護者になりますと,数千万人規模になってしまうということがございまして,もう少し簡易なもので,簡単に学校等でも印刷いただけるようなバージョンを別途作成いたしまして,そちらであれば,全ての保護者の方々にもお届けいただけるのかなと思っております。
【篠原委員】 予算がどうだこうだという話はさることながら,これは全てに行き渡らなくては意味がないと思います。それと,これはいい試みですが,今の学習指導要領の段階などで,今までこのような試みはやっていないのでしょうか。
【白井教育課程企画室長】 このパンフレットのような形では,今,これが新しいものとして作業しているところです。
【篠原委員】 最後に,短く。この資料の中で,「DATA」というのがありますよね,「保護者の働きかけがある子供の学力は高い」と。一方で,携帯,スマホなどの使用ルールを作っている場合の記述が見当たりません。それから,新聞をよく読んで活用するケースのデータも入っていません。もっと総合的にデータを並べていただくといい。データを絞り込み過ぎている感じがします。調査が違うんだったら,いろいろな調査の名前を入れればいいと思う。よろしくお願いします。
【天笠部会長】 どうもありがとうございます。
今,名札が立っている大方委員,善本委員,若江委員,山本委員ということで,この四方でよろしいでしょうか。
では,大方委員からお願いいたします。
【大方委員】 3枚目のところ,真ん中の黄色の鳥が飛んでいるラインがありますが,そこの一番左端に「子供たちが学ぶ教科等は?」とあり,最初は,「幼児期の教育」と示されています。一方,こちらの鳥が飛んでいる表紙の下には,小さい字で「幼稚園は,2018年度に新しい幼稚園教育要領がスタート」となっています。記載の仕方を合わせていただいて「幼児期の教育」という言葉を使っていただくか,または,「幼稚園,こども園は,2018年度に新しい幼稚園教育要領等がスタート」にしていただくか。配付先は,こども園もお願いできたらと思います。
以上です。
【天笠部会長】 善本委員,お願いいたします。
【善本委員】 同じく3枚目のところで,1つは,すごく小さなことです。多分これは誤字だと思うので,カリキュラム・マネジメントの2番目の「教師が連携し,教科等の枠組みを超えた授業をつくる」の超えるは,超ではなく,越が正しいかと思うので,そのように直していただければと思います。
あとは,学習指導要領のところで,各学科に共通する各教科,主として専門学科において開設される各教科と書いてありますが,「共通教科等」と「専門教科」という表現が,片方は等がついていて,専門教科となっている。これでいいかどうか,もう1回検討していただければなと思います。このままでも,学習指導要領には各学科に共通する各教科と書いてあるので間違いではないと思うのですけれども,一度検討していただければと思います。
【天笠部会長】 若江委員,お願いいたします。
【若江委員】 私は内容ではなくて配付についてですが,保護者の大切ですが保護者対象では遅いと思います。ですので,それこそ,産業界でこれから親になっていくような人,若しくは社会等に開かれた教育課程ですから,いろいろな社会機関との連携があると思いますがまずは産業界への広報が重要です。あと大学生はもう既に自分たちはそれを終えてしまっているんだけれども,本来ここを目指して,ここが土台になっているんだよということを知る意味でも重要ですので,もっと広く,保護者以外のところのチャネルを考えていただくべきだと思います。
【天笠部会長】 山本委員。
【山本委員】 3ページのところの内容です。主体的・対話的で深い学びに加えて,カリキュラム・マネジメントは非常に重要な説明のポイントかと思いますが,カリキュラム・マネジメントについて,右側の小さな字の説明が,上の項目に比べてちょっと貧弱な感じがしますので,分かりやすく説明していただきたい。
例えば,カリキュラム・マネジメントを確立して多面的でより効果的な指導となるよう教育活動の改善を進めますとか,そういった記述内容を補足していただけるとありがたいと思います。
【天笠部会長】 どうもありがとうございました。
まだお気付きの点いろいろあるかと思いますので,ありましたら,事務局に直接お伝えいただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
それでは,今回はここまでということにさせていただきたいと思います。
次回以降の予定につきまして,事務局からお願いいたします。
【白井教育課程企画室長】 本日は御議論ありがとうございました。
次回の教育課程部会の日程については,また後日御連絡させていただきたいと存じますけれども,本日御審議いただいた学習評価につきましては,先ほど部会長からも御紹介いただきましたが,12月中旬にワーキングを開きまして,ワーキングとしての最終的な決定をして,その後,パブリックコメントに付しまして,その後,また,この教育課程部会で最終的な御決定をいただきたいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。
【天笠部会長】 本日は全て,これで終了いたしました。どうもありがとうございました。

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お問合せ先

初等中等教育局教育課程課教育課程企画室

電話番号:03‐5253‐4111(代表)(内線2369)

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