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「キャリア・パスポート」導入に向けた調査研究協力者会議(第3回) 議事録

1.日時

平成31年1月23日(水曜日)15時00分〜17時00分

2.場所

経済産業省別館1107号会議室

3.議題

  1. 教材「キャリア・パスポート」作成作業について
  2. その他

4.出席者

委員

藤田委員、荒瀬委員、長田委員、安部委員、安斎委員、戎井委員、小田委員、神部委員、小見委員、西田委員、葉山委員、三川委員、和田委員

文部科学省

大濱児童生徒課長、山田大学振興課大学入試室長、鈴木進路指導調査官、迫専門職、ほか

5.議事録

【迫児童生徒課専門職】 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第3回「キャリア・パスポート」導入に向けた調査研究協力者会議を開催いたします。委員の皆様には、大変お忙しい中、御出席くださり、ありがとうございます。
議事に先立ちまして、配付資料の御確認をお願いいたします。配付資料は、議事次第に記しておりますとおり、資料1から3と参考資料の1枚物でございます。もし御不足等あれば挙手願います。
それでは、進行につきまして藤田座長の下で進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【藤田座長】 はい。どうぞよろしくお願いいたします。座ったままで失礼いたします。
今回は、議事次第のとおり、教材「キャリア・パスポート」の作成作業というものが中心になりますが、その前に、本日、説明の時間を3つ設けさせていただきたいと思います。まず1つ目は、高等教育局大学振興課大学入試室の山田室長から、「JAPAN e-Portfolio」につきまして御説明を頂きます。その後、質疑応答を含めまして、三川先生から「キャリア・パスポート」を生かした対話的な関わりについてお話を頂き、最後に長田委員から「キャリア・パスポート」の様式と指導上の留意事項について御説明いただき、そこでまた忌憚のない御意見等を賜れればと思っております。ですので、前半は、委員の皆様方におかれましては、お話しいただく前に説明を聞いていただくことになりますことをお許しいただきたいと思います。その後、議論をしていただき、その議論の結果を発表していただいて、また深めてまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。
それでは、まず、「JAPAN e-Portfolio」につきまして山田室長からお話しいただきます。
【山田大学振興課大学入試室長】 文科省大学入試室長の山田と申します。よろしくお願いいたします。
私からは、現在、高大接続改革の中で進めております「JAPAN e-Portfolio」について簡単に御説明を申し上げたいと思います。
高大接続改革、高校と大学、その改革と、その間にある入試の改革を頂き進めているというところでございまして、これは学校教育、教育課程と同じく学力の3要素、単なる知識・技能だけではなくて、思考力・判断力・表現力でございますとか、一番測るのが難しいのが受験生、生徒の主体性、主体的な取組をどう評価するのかというのが大学入試にとって難しい。実際に多くの、特に一般入試ですけれども、学力のいわゆる知識系が中心で1点刻みの評価が行われて、必ずしも十分主体性等の評価ができていないという御指摘がございます。それを受けまして我々の方では、何とか主体性の評価に資するような取組ができないかというところで、きょう、資料1でお配りいただいております「JAPAN e-Portfolio」の取組をしているということでございます。これは我々文部科学省から関係の大学のコンソーシアムに委託をいたしまして3年間の事業として進めさせていただいておりまして、本年度が最終年度でございます。
具体的には、左からごらんいただければと思うんですけれども、高校の中で様々な生徒の学びのデータを生徒さんが媒体を使って入力をすると。このときはこうやって学んだけれども、2週間後、課題に気付いてこういうふうに取り組み直したとかというような形で記入をしたりとか、課外でこういう活動をしましたよとか、こういう賞をとりましたよとか、この真ん中よりちょっと左のところにございますけれども、こういった情報を生徒さんがそれぞれ書いていって、振り返りながら学びの質を高めていくということをいたしております。例えば英検を取りましたよということになれば、その英検の証明書を添付してみたりだとか、そういうこともできるような機能が付いてございます。教員の方は、それを適宜確認したり、場合によっては承認をすると。学校としても、教員としても、これはそうでしたよと、認めますよという承認をすることができるということです。別にこれは義務でもございませんし、基本的には生徒が主体的に書くものということで、学校教育の現場でそれを使おうと思えば活用ができますよというものになってございます。
今回、高大接続改革で取り上げておりますのは、これを、右半分でございますけれども、大学に電子データで提供ができると。大学に電子データで提供ができることによりまして、入試の中でもそのデータを使うことができる。この子は高1のときはこういう観点でしか持ってなかったんだけど、こういう広い学びができたんだというような成長の過程を追うということが、やろうと思えば大学の側でもできるというふうに状況としてはなるということでございます。また、すぐに入試にそれを点数化して用いるということが難しい場合であっても、得られたデータを、一番右の端でございますけれども、大学で様々なIRの一環として分析をして、あ、高校でこういう取組をして、大学でこういう取組を更に重ねればこういうふうに伸びるんだというような形でデータをとったりですとか、追い掛けていくことができることによって大学の学びにも資する。それを活用して、じゃあ次の入試ではこういう観点で実施してみようかとか、あるいは推薦入試をこういう形で変えてみようかとかいう形で大学入試の改善にも資するのではないかということで、現在、関西学院大学を中心とした大学に委託をしているところです。
1ページおめくりいただきますと、現在、参加をしている大学の一覧でございます。これは、必ずしも入試で点数化して合否判定に使うというところだけではございません。先ほど申し上げたように、そのデータをもらっておいて、入学後、活用しようというところも含めて、現在100校を超える大学が御参加を頂いているという状況でございます。高校側もこの導入をしておりまして、ここにはございませんけれども、二千数百校の高校が既に何らかの形で導入をされているという状況でございます。
3ページ目をごらんいただきますと、その高校あるいは大学のつながりの関係をごらんいただけると思いますけれども、鍵型の「JAPAN e-Portfolio」ってオレンジ色っぽく書いてあるものでございますが、下の段ですけれども、高校生が「JAPAN e-Portfolio」に入力するとか、あるいは民間の各社がもう既にポートフォリオのソフトを販売・展開しておりますので、それを使っていただいて、それに入力したデータを「JAPAN e-Portfolio」を経由して、その民間のものには大学とつなぐという機能はございませんので、「JAPAN e-Portfolio」のパイプを利用して大学入試への出願等にご利用もいただけるし、そういうのと契約をしなくても、一番左側にございますように、「JAPAN e-Portfolio」に直接必要な情報を入力して使うということでも、どちらでもできますよと。今までもお使いになっていらっしゃる民間のものもポートフォリオ機能があるかもしれませんし、そういうのを使ってもらってもいいし、「JAPAN e-Portfolio」だけでやっていただいてもいいというような形で、現在、取組が進められているところでございます。
以上が、簡単にではございますけれども、「JAPAN e-Portfolio」について現在我々が取り組んでいるところでございまして、一番最後のページは、さらにといいますか、並行して実施をしようと考えておりまして、来年度の予算として予算案に計上されているものでございますけれども、「JAPAN e-Portfolio」は、生徒が主体になって、生徒が書く本人提出資料を電子化しようと。で、大学で使おうということですけれども、来年度からは、それに代えてというか、実施をしたいと思っているのは、高校が高校の責任で作っている調査書、内申書が、今、紙で、校長印をついてでないと送れないことになっているんですけれども、それを電子化ができるような研究をして、学校の評価ですね、国語が4でしたとか5でしたとかそういったもの、あるいは欠席日数ですとか、そういったものも電子化をして各大学が活用できるようにしようと。それは本人提出資料もそうですけれども、学校の評価というものも主体性を評価しているものでございますので、電子化にしないと、今、各大学は特に一般入試で使いづらい状況にございますので、調査書も電子化してより大学入試に反映していただくということで、高校における主体性のある学びが大学入試においても評価されるということを「JAPAN e-Portfolio」と調査書の電子化と両面で支えていきたいと考えているところです。
以上です。
【藤田座長】 ありがとうございます。
それでは、せっかくの機会でございますので、「JAPAN e-Portfolio」につきましての質疑応答の時間を設けたいと思います。委員の皆様方、是非忌憚のない御質問、御意見等を賜りますようお願いいたします。
【長田委員】 では、よろしいでしょうか。
【藤田座長】 はい、お願いいたします。
【長田委員】 1件だけ確認させていただきたいのは、「JAPAN e-Portfolio」は、狙いとしては大学入試に活用することが前提でございますか。
【山田大学振興課大学入試室長】 そうですね。高大接続改革は、高校の改革と大学の改革、その接続の改革、一体的に実施をしております。「JAPAN e-Portfolio」は、高校における学びも振り返りをしやすくできるようなものとして使っていただくというのが1点と、それを、先生が今おっしゃったように大学入試でお使いいただくというのが2点目で、もう一つは、大学に入ってからそのデータをIRなり何なりでお使いいただくという、そういう3つの大きな目的があるかなと思います。
【長田委員】 分かりました。ありがとうございます。
【藤田座長】 ほかにいかがでしょうか。お願いします。
【和田委員】 合否判定の一般入試の「各学部のアドミッション・ポリシーに基づいた、『一般入試』の評価指標・基準等による判定作業」って、つまり、この「JAPAN e-Portfolio」で自分の学びを入力している生徒と、そうじゃない生徒の選抜に差というのはどんなふうに。もう一斉に要求されるということなんですかね。
【山田大学振興課大学入試室長】 これは、今、我々が進めておりますのは、調査研究として参加したい、できる大学、高校は御参加になって、全然強制ではありませんし、これからも何かこれが強制されるような場面はないと思っております。ただ、一方で、3番目の主体性の評価というのは大変重要なものでございますので、こういった電子的なツールを使っていただくとよりスムーズにいくのではないかと考えておりますが、この「JAPAN e-Portfolio」に入ってないからといって入試が不利になるようなことはないようにしていただきたいと大学には申し上げておりまして、代替になるような何か紙を提出させるとか、「JAPAN e-Portfolio」に入っていたらこういう使い方、入ってない子についても不利にならないようなということは、各大学の御判断ではございますけれども、お考えいただく必要があるかなと思っております。
【長田委員】 よろしいでしょうか。
【藤田座長】 お願いします。
【長田委員】 1点、これは委託されている先に御確認を頂きたいのですが、私は高等学校の進路指導を担当している関係で、よく耳にするのは、今の室長のような御説明であれば誰も疑問に持たないのですが、入っていないと大学入試のとき不利益を被ると思っていらっしゃる高校の先生方が極めて多かったり、又は、これをすることが新しい学習指導要領における児童生徒が記録して振り返る教材を活用することに代替できるのではないかというような、目的が違うのにも関わらず、これを代替するということができると勘違いしている先生がいるとか、少しPRの仕方にまずい面があるのではないかと感じている部分があるのですが、室長、いかがでしょうか。
【山田大学振興課大学入試室長】 実は私も先生おっしゃっているような声を高校の現場から頂戴することはございます。先ほども申し上げたとおり、これはあくまで試行調査のものでございます。これをツールの一つとして学校の学びの中で御活用いただくのも有効と思えばお使いいただければとは思いますし、正直なところ、こういうのが広がって、高校3年間の取組、学び、振り返りが大学入試にも反映されるとすれば、それは単なる1日の入試で1点で決まってしまうというよりも、総合的な多面的な評価がされていいのではないかという思いもありますけれども、これは各大学、各高校の御判断でございますので、我々の方も注意して説明を引き続きしていきたいなと思っております。
【藤田座長】 よろしいですか。私は大学で教員として勤める立場ですが、大学教育、初年次教育も視野に入れてというような御構想があるかと思うのですが、今、繰り返し御説明のように、どうぞ自由意思で御参加くださいというものだということを前提とした場合、初年次教育ではやはり活用しにくいな、そういう構想と御説明が何かずれているなというイメージがあるのですが、これはどんなイメージで初年次教育に活用し得るのでしょうか。全然参画していない高校生と参画している高校生がいることが前提で、それに強制力を伴わずにやりましょうというのは、それで初年次教育にどうつながるのか、ちょっとビジョンとして見えないなと思ったのですが。
【山田大学振興課大学入試室長】 やり方はいろいろあろうかと思いますけれども、例えば出願サイトでも、これは出願された各大学が各大学の御判断で設けていらっしゃいますが、その出願時に必要な事項を記入させているという例は幾らでもございますし、そういった電子的なところで、「JAPAN e-Portfolio」、入力し得るのはすごく膨大な選択肢、すごく膨大な量があるんですけれども、全部使わないといけないということは全然なくて、大学の方でこのデータとこのデータを欲しいなとか、こういうことを書いてほしいなとかというものを示して、それだけをお使いいただければいいと思うんですけど、それと同じようなものを例えば各大学の出願サイトに、「e-Portfolio」の人は「e-Portfolio」でもう書いてあるのでそれを使ってねと。書いてない人はここの出願サイトで書いてくださいねとか、そこは各大学でどうお取り組みになるかというのはありますけれども、やり方としてはあり得るのかなとは思っておりますけど。
【藤田座長】 要するに、これがデフォルトということではなくて、ある活用場面でいわゆる手間が省けるツールとして活用し得るものだということですね。
【山田大学振興課大学入試室長】 おっしゃるとおりです。
【藤田座長】 はい、分かりました。
【山田大学振興課大学入試室長】 はい。それを1回書けば、いろいろな大学に出願をされるときに、「e-Portfolio」からやれば簡単にいろんな大学に同じ文面あるいは同じ記録を提出できるという意味で、受験生の本人提出資料の提出の手間も若干軽減される部分があろうかなとは思います。
【藤田座長】 そうですね。もう一つ懸念されることがありまして、例えば先ほど例に出された英検合格というのはエビデンスがあって、これはエビデンスですから記録は変わらないと思うのですが、例えば探究活動の記録であったり、生徒会・委員会活動の記録であったりとか、やはり探究ですから失敗してしまう、構想どおりいかない、生徒会も問題がいろいろ出てくる、そういったものから学ぶということが重要な部分もたくさんあると思うのですが、どうしても入学選抜の資料となると、そういったものを一度、自分の中で引き取って、ストーリーを再構成して、他者の目にかなうようなものに書き換えざるを得なくなってしまうのではないか。そういったものが果たして主体性というような評価になじんでくるかどうかというのはちょっと見えないなというところがありまして、恐らく多くの方が懸念されるところだと思うのですが、今のところはどういう方向性で主体性と選抜というものがうまくかみ合うのかということについて、議論の在り方について教えてください。
【山田大学振興課大学入試室長】 我々でこういう使い方じゃなきゃいけない、高校はこう使わなきゃいけない、大学はこう使わなきゃいけないというのを決めているわけではなくて、なるべく多様な使い方をしていただけるようにしようと思っております。ですから、振り返りの、最初は多分、その振り返りが十分でなかったりだとか、課題を自ら見付けられてなかったり、いろんな状態があるのをそのまま書いてしまう。それがそのまま大学に行っちゃうとすると、まともに書けないよねということもございますし、ちゃんとした振り返りのデータにすらならないという御指摘もあるので、それは、このデータを大学に提出していいかどうかということも生徒が選べるような、場合によっては1年生まで振り返るのを出さなくちゃいけないんだったら、じゃあ清書してから出そうかなとか、一まとまりで全部1年から3年までの振り返りの流れを書き直してから大学に提出してもよしというようにするとか、そういう機能を設けまして、生徒が知らないうちに、このとき学校をサボってゲームセンターに行っていましたって書いちゃったのをすぐ大学に使われると思うと正直なことを書けないので、そこは選んで使えるように。大学の方もそういうものだろうという前提で、お使いいただけると思うところをお使いになると。本人出願資料を電子化したというようなことでお受け止めいただければいいのかなと思います。
【藤田座長】 ありがとうございます。
ほか、皆さんいかがでしょうか。
【和田委員】 そうすると、生徒の側からすると、そこの教員にも選抜でこの「e-Portfolio」に参加してないと有利か不利かとかいうようなことがよく伝わってない中で、そうすると高校生だともっと伝わらないので、入試に、例えば英検2級ということを「e-Portfolio」経由で行くか、調査書の中に英検2級ということが書いてあるか、だから電子版で行くか紙で行くかの話だと思うんですけど、やっぱりそこの選抜の公平性というか、生徒が受け取る公平性という点で不公平にはならない、不利にはならないんですよというところのそこをやっぱり明確に示していただかないと、高校生は大変混乱するのではないかなと思います。
【山田大学振興課大学入試室長】 十分配慮して、必要な周知をしたいと思います。
【長田委員】 いいですか。
【藤田座長】 はい、お願いします。
【長田委員】 これは室長にということではなくて、我々初等中等教育側の人間が気を付けなければいけないことなのですが、この「JAPAN e-Portfolio」の動きが始まってからこういう事例があるんです。ある高等学校の部活動の顧問が、毎月、部長、キャプテンを代えるんです。これ、何が起こっているか分かりますか。
【山田大学振興課大学入試室長】 その方が評価が高いという。
【長田委員】 そういうことです。全員が部長、全員が主将と打ち込めることで、これが本来の教育活動をゆがめてしまう。これは「JAPAN e-Portfolio」があるからではないのです。初等中等教育側の指導の柱がきちっとしていないので、そういうものを子供が入力して、入試にもしかして影響があるのであればということで、そこに指導者側がなびいてしまっているという思わしくない、室長も当然想定されていないようなことも現場にはあるということはここで共有をさせていただきたいと思っています。
【山田大学振興課大学入試室長】 我々は、ツールとして、今、本人提出資料、紙で多くの大学で求めていらっしゃるものを、電子的に共通のものとしてやったら便利じゃないかということで御提供しております。私も、今、先生からお伺いしたような、毎月というのは初めて聞きましたけれども、いろいろなケースがあるという話は伺っております。ただ、それは今の調査書あるいは本人提出資料でも起こり得る話ですし、それは大学の方も見抜くと言うと変ですけれども、キャプテンをしていたから1点プラスとかというふうに単純にやっている大学は余り多くなかろうと思いますので、そこは冷静に我々の方の周知も気を付ける必要あると思いますけれども、大学側も高校側も御対応いただければいいのかなと思っています。ありがとうございます。
【藤田座長】 ほかにいかがでしょうか。時間もそろそろ切り上げなくてはいけない頃でございますが、よろしいですか。ほかに先生方いかがでしょう。
【荒瀬委員】 いいですか。
【藤田座長】 はい、お願いいたします。
【荒瀬委員】 言わずもがなですけれども、みんな分かっていて話をしているということもみんな承知しているわけですが、ただ、実際に何か1つのものができると、それが金科玉条のようになって、これにこう書いてあるということになるのはよくあることです。さっき懸念というのが幾つも示されたわけですけれども、その懸念というのが全部抜け落ちてしまって、ここに書いてあるからこうなっているんだ、ここに書けるような活動でなければ駄目なんだとかなっていって、教育が、場合によってはゆがめられていく可能性が、これに限らずですけれども、あるんだということを改めて思います。ですから、そのように少し臆病になりながら、しかし、データとして使えるものは大いに使えばいいわけですから、山田室長が「見きわめ」という言葉をお使いになりましたが、大学も高等学校も目利きとしてすぐれていることが必要になってくるということを改めて思いました。これは、しっかり注意しながら進めていくということが大事なんじゃないかなと思います。
【藤田座長】 そうですね。そういった点、十分御配慮いただきたいと思います。先ほど長田委員からもありましたけれども、例えば本日の資料1の1枚目の裏面ですが、この1枚の資料だけでも、これは事実に基づく資料で、何らここには嘘はないですが、受け止め方によっては、「こんな多くの大学がもう利用しているんですよ、おたくの高校さん、入らないと遅れちゃいますよ」というメッセージにもなり得るものですし、一部の高校の先生方はそういうふうにこういうデータを読み取られてしまします。ですから、そういうことがあってはならないと思いますし、まだ委託研究の最終年度であって、これから制度としてどうなっていくのかという可能性を追求しているところだと思いますので、そういった可能性の追求は当然しなくてはいけないですし、これからますますAI化も進んでいきますし、紙ベースではないところでの働き方改革も必要になってくるかと思いますので、先生方の負担を減らしていったり、子供たちの主体性を十分酌み取ったりということは、その重要性は誰も疑わないわけですが、それに至る道のりを丁寧にやっていただけると、初等中等教育、特に高等学校の先生方は混乱しないなということを改めて感じました。よろしくお願いいたします。
先生方、よろしいでしょうか。
それでは、本日2番目でございますが、三川委員から「キャリア・パスポート」を生かした対話的な関わりについてお話しいただきたいと思います。
【三川委員】 それでは、三川の方から、この「キャリア・パスポート」を活用する要点として、私は要になるのがキャリア・カウンセリング、キャリア発達を促すキャリア・カウンセリングだと思っております。そのことをこれまでの経験を踏まえて少しお話をさせていただきます。
私自身がこのような「キャリア・パスポート」につながるようなあるエピソードを経験したところから御紹介いたします。
大阪府内のある市のある中学校、中学2年生男子の職業体験の後のことでした。実は中学2年生の職業体験、生徒たちの希望をとって行きたいところに行けるようにという配慮はあるのですが、状況によっては実はそれがかなわないことがあります。私がここでエピソードとして取り上げる中学2年生の男子生徒も、実は行きたいところは何々ショップというところでございました。ところが、先方の受入れ条件というのが、お客様相手のところがありますので、具体的に申しますと、生徒指導上の問題や課題がある生徒は御遠慮いただきたい、そういった意向があったようです。本人の希望は今申し上げた何とかショップではありましたけれども、残念ながらそこに行かせることはできない。それで、本人は希望していなかった地元の地域の地場産業でありますけれども、造園業に、いわゆる植木屋さんですね、職業体験に行くことになった。本人はもう嫌々、それこそ渋々ですけれども、先生方はなだめすかし何とかそこに行かせようということになった。
本当に行くだろうか、行かないのではないかとか、休むのではないか、いろんな懸念がありましたが、まず初日、本人は何とかそこに行くことができた。先生方は午後に巡回をされますけれども、何とかその職業体験をやっているようだということで、1日目はほっといたしました。2日目も、本人は遅れずに朝からそこに出向いていったようです。1日目よりは積極的に取り組んでいるようだという、その様子を観察されていました。3日目はというと、もう1日目とは打って変わって、にこにこしながらその作業に取り組んでいた。そこが先生方も驚きでありました。
それで、終わってからですけれども、正にポートフォリオのように様々に書くワークシートがあったんですけれども、その生徒はたった1行だけ、「行ってよかった」と書いてあったんです。「行ってよかった」という、この1行で先生方は胸をなでおろされたわけです。あ、「行ってよかった」、この一言があるだけでよかった、先生方は思われたんですけれども、私はその中学校で少しお話をいたしました。「先生、どうしてこの生徒は行ってよかったというふうに書いたんでしょうか」。先生方は、「行ってよかったというのは、案外面白かったんじゃないでしょうか」と、そんな御意見がありました。でも、今申し上げた地域の地場産業の造園業ですから、子供の頃からもう遊び場にしているようなところです。「行ってよかった」が面白かったとは私はとても思えないので、「それでは、その『行ってよかった』の内容を生徒と会って話をしてみてください」、そんなふうに先生にお願いをいたしました。担任の先生とはこういうコミュニケーションがとれたのでありましょう、「行ってよかった」の意味が後で分かってまいりました。それは何かというと、とにかく初日、行ったところで、植木屋のおやじさんですよね、その方が「よく来た、よく来た」と本当に受け入れてくれたんだそうです。それがうれしかった。それから、小さな仕事の手順を丁寧に教えてくれた。1つできるたび、2つできるたびに「よくやった、頑張った。おっちゃんはうれしい」という声を掛けてくれたんだそうです。そんなやりとりをする中で、この生徒、「僕は褒めてもらったことがうれしかった」。この本人の気付きを引き出してくださったのが先生の声掛けでした。さらには、「僕は褒められると頑張れる」という、この言葉もまた生徒から引き出してくださいました。さらには、ここはこの後の課題だったかもしれませんが、「僕は褒められるように頑張りたい」、そんな思いがその生徒から引き出された。ここなんです。職業体験に行って、確かに造園業ですから、例えば高い木へのはしごの掛け方あるいは植木の剪定の仕方、その職業理解、知識でしょうか、これを身に付けてくることは非常に大事です。でも、この体験、行きたくなかったところでこの体験をしたことから、「僕は褒められることがうれしかった。褒められると頑張れる。褒められるように頑張りたい」、その背景のある生徒がこんな気付きや学びを得たということこそ、私は職業体験のとっても大きな意味だと気付くことができました。
そこから、きょう御紹介する対話ですが、私はもうキャリア・カウンセリングそのものだと思っていますけれども、その重要性をお話しするようになりました。少し御紹介いたします。
キャリア発達を促すキャリア教育というのがキャリア教育でございますけれども、体験的活動が非常に重視されております。その中でやはり大事なのは、自らの体験を振り返る、さらにはそれに気付く意識化、さらに、それを言葉で表現する、ポートフォリオのように文章で表現する、これが他者との対話あるいは自分との対話によって進められること、ここを大事にしていく活動がキャリア教育のキャリア・カウンセリングにも通じると思っております。
少しその先、御紹介をしてまいりますが、キャリア教育についても、もう皆様御承知のとおり、進路の選択や決定のための援助ではなく、キャリア発達を促進するための援助というのがキャリア教育の取組でございます。基礎的・汎用的能力を育むためのカリキュラムやプログラムがありますけれども、一人一人のキャリア発達に応じて個別対応を図る、このキャリア・カウンセリングが必要であること。ただし、このキャリア教育のキャリア・カウンセリングは特別なカウンセリングは想定しておりません。教師と児童生徒との日常的な人間関係の上に成り立つ適切なコミュニケーション、私はこの言葉が大好きでございます。つまり、児童生徒が自らの体験に気付く、それを言葉にして表現できるようにしていく、その援助がこのキャリア・カウンセリングだと理解しております。
新しい学習指導要領では、集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンスと、さらに、一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカウンセリング、このカウンセリングとガイダンスの双方が必要であると、これが明記されたこと、私は大変うれしく思っております。また、特別活動の目標に「一人一人のキャリア形成と自己実現」が掲げられ、今回のこのキャリア・パスポート、活動を記録し、蓄積する教材等を活用することが明記されておりますが、このキャリア・パスポートには、恐らく記録にも活用にもキャリア発達を促すキャリア・カウンセリングの視点が必要不可欠であると思っております。
キャリア教育のこのような取組が推進されるに当たって、私は随分研修を担当させていただきました。そのときに今申し上げたキャリア・カウンセリング、適切なコミュニケーションと言い換えて用いてまいりました。この適切なコミュニケーションというのは、ある目的のためにある意図を持って行われる対話。目的というのは、例えば問題解決とか意思決定、アメリカではカウンセリングというのはこれを狙いにして行われると言われておりますが、さらには、その意図として、例えば自己理解でありますとか情報収集、将来設計、選択肢の検討、基礎的・汎用的能力に言い換えれば、例えば人間関係や自己理解、課題対応やキャリア・プランニングなどを促す。これは一斉指導のプログラムでも重要でありましょうけれども、今申し上げた適切なコミュニケーションの対話の中でも図られる、そんなふうに思っております。
このようなワークショップをこれまで御提供してまいりました。例えば対話のパターンという2人1組のワークをいたします。中学3年生のAさん、その中学3年生のAさんに向き合う担任の先生の役割、この2人1組のペアのワークを今まで随分御紹介いたしました。受験を控えた中学3年生のAさん、「自分の志望校に合格できるでしょうか」。この「合格できるかな」というところからの対話のパターンですけれども、さて、担任の先生、この生徒にどんな言葉を掛けるかというのを考えていただくのがワークショップの中身でございます。このようなコミュニケーションのワークを対話の場面、今申し上げた放課後の教室で高校入試を控えたAさんが一言、「自分なりには頑張ってきたんですが、先生、試験に本当に合格できるでしょうか」。そこで担任の先生、ここはB1という生徒に対する言葉を書き入れていただく。さらには、Aさんにこれを戻して、Aさん役の方にも書いていただく。このシートの上で対話のパターンというのを再現していただくわけですね。既にそこにコミュニケーションがかみ合うか、かみ合わないか、明確な違い、区別というのが出てまいります。
例えば、具体的に「Aさんが試験に合格できるでしょうか」。よくあるパターンがこの実際にありますけれども、例えば「大丈夫」。大丈夫という言葉がAさんの心に響けばいいんですが、もう最初の対話のやりとりからずれることがあります。「大丈夫」と言っても、Aさんが「でも、やっぱり心配」。「でも」ですから、最初の一番のこのやりとりからずれが起きているわけです。「でも」というのは反論です。「でも、やっぱり心配です」と言われているにもかかわらず、例えば担任のB先生が気が付かない。1つの言葉で相手が理解しないとすれば、もっと強く言おうとか、あるいはもっと重ねて言おうとか、「あなたなら大丈夫」、こう言いますけれども、「そんなことを言われても困る」。「でも」の次は「ても」でありますけれども、異論・反論が続きます。B先生の方が、余りにも異論・反論を唱えられますので、最後には「絶対に大丈夫だ」、この説得モードでありますけれども、そこまで強力に説得されるとついその気にさせられて、「そうかな」、明らかにこれ、疑いの念を含んでおります。この対話、もうかみ合ってないということは最初の出だしのところからお気付きいただけるだろうと思います。
いろいろこんなパターンがあります。例えば「何とかなるよ」、「でも、やっぱり心配」、もうずれております。「心配だ」と言うんだけれども、「そんなに心配しなくていい」、「そうかな」、「落ちてもまた頑張ったらいい」、こんな対話がよく世間では行われているようですけれども、お気を付けいただきたいことの幾つかの例でございます。
もう一つ、くどいようですが、申し上げます。Aさんが「試験に合格できるでしょうか」、「あと1週間しかないのに、今頃になって手遅れ」、こんなふうに追い詰めるから、「だって」って言い訳が出てくるわけでしょう。さらには、「みんなそんな気持ちになるもんだ。実は私もそうだった。みんなそうだよ。あなたの友達のCさんもそうなんだよ」、「けど、先生は秀才だから」。これはもう会話をしないという宣言であろうと思いますけれども、さらには、「とにかく今は全力を尽くすしかない」、こんな、それこそAさんが反論できないような言葉を掛けて、A1の「……」ですから、もう返す言葉もない。よく聞いて反省しているわけではありません。正しいことを正しいまま言い放たれると、もう返す言葉もないといったことがいろいろあります。
先ほどのワークショップ、先生方の日常的なコミュニケーションを振り返っていただくためのワークショップであります。そこで、第1発言、気を付けていただきたい言葉、例えば「大丈夫」というのは安易な保証、「何とかなる」は気休め、心配するのは気持ちの否定、それから心配の先取り・先送り、泣き面に蜂、的外れ、それから「とにかく頑張れ」という追い込み、正し過ぎる意見を少しでも気付いて修正していただくと、適切なコミュニケーションにつながりますよ。何度、何十回、何百回申し上げてきたか分かりませんが、私がお伝えしたかったコミュニケーションのポイントを、このような消去法で御紹介をしてまいりました。
キャリア教育のキャリア・カウンセリングも、随分理解を進めていただきました。改めて御紹介するまでもないですが、このパンフレット、平成28年3月に刊行されたものです。『語る 語らせる 語り合わせるで変える!キャリア教育-個々のキャリア発達を踏まえた“教師”の働きかけ-』、このパンフレットの中に実に見事な資料がございました。例えば教師の「語る」、ここであるとおり、子供たちが自分の思いや考えを意識するように問いかける教師の声掛け、言葉掛け。それが功を奏すると生徒たちが自らの思いや考えを話すようになる。それを引き出し、受け止めながら聞く、これが「語らせる」ということです。それが更に功を奏すると、生徒同士の語り合い、つまり話し合いをさせる前後に気付きを促すことによって、話し合いをより深めるような手掛かりを示すこと。これが実は「語る」、「語らせる」、「語り合わせる」の好循環、よい方の循環です。NGの方はきょうは申し上げないでおこうと思います。
このパンフレットの中に書かれておりますように、その子なりに学んだことや考えたことの体験の積み重なりがあります。私は、この青字の「体験」というのをあえて使わせていただいております。それがまだ言葉になっていない、あるいは文章になっていない。つまり、子供たちの体験がそのまま過去の記憶としてはあるかもしれません。でも、記憶をそのままにしておきますと、時間の経過とともに忘れ去られてしまう。そこを丁寧に気付いて、言葉にして、表現をしておく、あるいは文章に書き起こしておくと、それは子供たちの知恵や力として残る、私はそのように信じております。
正に先生方が語ること、子供たちが自らの思いや考えを引き出すことができるように意図して働き掛けること、それから、子供たちに語らせることによって、まだ文章や言葉になっていない思いや考えに気付くきっかけ。語り合わせることによって、他者の思いや考えを知る、自分の思いや考えを整理したりすることにも非常に役に立つ。「語る」、「語らせる」、「語り合わせる」というのは、実はこのキャリア教育のキャリア・カウンセリングのことそのものでございます。
改めてそのことを振り返りますけれども、「自らの体験をとにかく文章で表しましょう」、ポートフォリオにはその色彩が強いと思います。ただ、自らの体験を文章にして表現するためには、幾つかのステップがあるということをきょう改めて御紹介します。その体験を改めて振り返ることが必要です。振り返った体験に気付くこと、これが2つ目のステップ。言葉で表してみること、さらには、それを人が聞いて分かる表現で伝達すること、さらには、読んで分かる文章で表現すること、記述すること。このようなステップが幾つか必要です。これを児童生徒に任せるということはなかなか難しいかもしれません。改めて教師の声掛け、言葉掛け、働き掛けをしていただきたいと思います。つまり、今申し上げた言葉掛けの狙いですけれども、振り返りを促す、気付きを促す、自分の言葉で表してみることを促す、さらには、それを人が分かるように伝えてみることを促す、さらに適切な文章で記述してみることを促す。このような働き掛け、つまり言葉掛けや声掛けを丁寧に一人一人の児童生徒に向かってやっていただきたい、これが狙いでございます。
さらには、キャリア教育では様々な力の育成ということを目指しておりますけれども、例えばどのような心の動き、つまり、児童生徒がその働き掛けに沿ってどんな行動をとるか。例えば自己理解を深めるとか、コミュニケーションを自らとろうとするとか、情報を探索したり情報収集をしたりしようとするとか、将来のことを考えてみようとか、意思決定をしてみようとか、あるいはもっと言えば、具体的な問題解決に向けて取り組もうとか、この視点を加えますと、先ほどのコミュニケーションのワークをこんなふうに発展させることができるかと思います。
先ほどと同じです。「これまでも自分なりに頑張ってきたんだけど、試験に合格できるかな」、これがスタートです。それで担任の先生が、「自分なりには頑張ってきたのに、もう1週間後に試験を控えて心配になってきたのね」、そういうふうにきちんと生徒の発言を受け止めていただけますと、「そうなんです。多分大丈夫だとは思うんだけれども、どうしてなのかなぁ」、自らの気持ちや考えを受けてもらうと、更に進んで自分のことを話し出します。そこで、さて、B先生は、例えば自己理解を深めるような発言をここでしていただくとどうなるか。自らコミュニケーションをとろうとする、そんな声掛けはどういう言葉か。「情報を収集してみよう」とか「将来のことを考えてみよう」とか、何か意思決定につながるような、あるいは問題解決につながるような、そんな心の動きを生み出すような声掛け、言葉掛けは一体どうなるだろうか。この辺りは研修等を通してまた先生方にお伝えしたいと思いますけれども、例えば、先ほど「どうしてなのかな?」、そこで自分で何か思い当たることがあるかという声掛けをすると、「そういえば…」と、このきっかけになったことを本人が語ってくれるかもしれません。あるいは、「もう少し詳しく話してくれる?」、そうすると生徒が自ら語り出すかもしれません。他者理解の「他の人はどんな気持ちなんだろう?」とか、あるいは「何が分かれば君の安心につながるかな?」。さらには、将来のこと、試験まで1週間ですから、「この1週間、どんなことができそうかな?」、「1週間先のことは考えられない」、「じゃあ、きょうはとりあえず家へ帰ってからどんなことをしてみる?」とか、あるいはもっと、「問題解決のためにどうしたらいいか一緒に考えてみようか」、こういう問い掛け、言葉掛けを子供たちの状態に応じて自由に工夫していただくことができるようになる。つまり、目的と意図を持った言葉掛けを対話にしていただきたい。これが私のお伝えしたいキャリア教育のキャリア発達を促すキャリア・カウンセリングの意味でございます。
以上とさせていただきます。ありがとうございました。
【藤田座長】 ありがとうございます。こんな短い間にこんなに深い内容を聞かせていただいて、我々はすごく幸運だと思いました。適切なコミュニケーションとしての対話ですが、どうしても私たちは安易な保証をしたり、追い込んでしまったり、あるいは正し過ぎる意見を言って子供たちがぐうの音も出ないようにしてしまったりしますけれども、そういった中で生徒に語らせるための対話を私たちがどうしていくのか。振り返らせ、意識化させ、言語化させ、文章化させるという、その営みの中に子供たちをどのように一歩踏み出せるようにしていくのか、そういった教員の力量形成や教員の研修の重要性というものを改めて感じました。
本日は御質問いただく時間は特に設けてはいないのですが、もう一度ここを説明してほしいですとか、もう少しここに言葉を加えてほしいというところがもし委員の皆様からあれば、三川先生にもう少し深くお話しいただけるかと思いますが、ございますでしょうか。よろしいですか。
それでは、本日は時間の関係でたくさん詰め込んでしまっておりまして申しわけありません。それでは、前半の最後になりますけれども、長田先生から、「キャリア・パスポート」の様式と指導上の留意事項について御説明いただきたいと思います。お願いいたします。
【長田委員】 はい。それでは、お手元の資料2をごらんいただきたいと思います。あくまでもこれは、私、本職が文部科学省なので、事務局として作ったものと勘違いしていただかないようにしていただきたいと思います。私は委員の一人としてこれまでの先生方との協議の中で、これから我々が例示する「キャリア・パスポート」の様式の取扱いをどのようにしていくべきか、さらに、考えられる指導上の留意点というのはどんなものなのか、委員の一人としてこれまで先生方と一緒に話してきたことをあくまでもまとめたものでございますので、この後、先生方に御協議いただいたものを事務局の方で持ち帰って本当の案にしていくということになるかと思いますので、御承知おきください。
では、まず大きな1番、「キャリア・パスポート」の必要性と背景でございますが、これはもう第1回目の会議のときに先生方と共有、議論しているところでございますので、省略させていただきます。その一番最後の部分に、「それと並行して『キャリア・パスポート』導入に向けた調査研究協力者会議を置いて、その内容などについて検討してきた」というのがこの場でございます。
2、名称でございます。これまで「(仮称)キャリア・パスポート」と呼んできたもの、又は学習指導要領の特別活動編の「学級活動・ホームルーム活動」、(3)「一人一人のキャリア形成と自己実現」の内容の取扱いにある「(前略)生徒(児童)が活動を記録し蓄積する教材等を活用する」、この部分をこの会議においては「キャリア・パスポート」とこれまでも呼んできましたので、案としては、このまま「キャリア・パスポート」と呼ぶことを提案したいと考えております。ただし、都道府県や設置者、各学校において独自の名称で呼ぶことは当然可能と考えられるかと思います。
3、目的でございます。目的につきましても、その次のページになりますが、第1回目の会議の際に、昨年度来開かれていた文部科学省内におけるインナー会議の議論のお話をさせていただき、このように目的については学習指導要領に照らして整理をさせていただきましたので、繰り返しません。
4、定義でございます。定義を置いておきませんと後で困ることになりますので、学習指導要領に照らしまして、これもインナー会議で提案されたものを第1回の会議の際に説明をさせていただいておりますので、これも復唱いたしません。
5、内容でございます。我々がこれから示す「キャリア・パスポート」の様式の内容についてでございますが、この後、別添の様式を示しますが、これはあくまでも例示としたいと思います。学習指導要領特別活動解説編には、国、都道府県が提供する各種の資料を活用しつつ、各地域・各学校における実態に応じて、学校間で連携しながら、柔軟な工夫をすることが期待されると書いてあるとおり、我々がこれから示す様式を基に、都道府県教育委員会等、各地域・各学校で柔軟にカスタマイズすることを前提とした様式としたいと思います。ただし、ここで私がまとめ切れなかった部分があります。それは、先生方の議論の中で、全てを学校や都道府県でカスタマイズしていいものにするのか、ある一定の部分は全国共通の部分として残すのか、これについては結論が出ておりませんので、ここはこの後、先生方で御協議いただければというところでございます。内容につきましては、校種間を持ち上がるものであったり、学校生活全体や家庭・地域における学びを総合するものであったりということなど、これまでも繰り返し確認してきたことを記載しております。
(3)について、繰り返しになりますが、この「キャリア・パスポート」は、学年、校種を越えて持ち上がることといたします。内容としては、小学校入学から高等学校卒業までの記録を蓄積することが前提でございます。さらに、ここは私の書き方が行き過ぎていれば訂正していただきたいのですが、各シートはA4判(両面使用可)としていますが、これは、用紙の大きさが学校や学年で異なると保存がしにくいからでございます。各学年での蓄積ページ数については数ページとしていますので、これも御検討ください。高校生を念頭に置いて学年10ページ以内と考えていますが、小学校だともっと少ないかもしれません。繰り返しになりますが、小1から高3まで持ち上がることを考えると、1学年10ページとすると合計120ページになります。120ページの資料を高校3年生が見たいとき、振り返りたいときに適切に振り返られるかというと、恐らく振り返ることができないだろうと考えています。ですから、それなりの必要最小限の枚数を蓄積することが必要になってくるかと思います。
(4)大人が対話的に関わることができるようにすること。これは今の三川先生のお話にあったとおりでございます。ただし、家族や教師、地域住民等の負担が過剰にならないようにこれは配慮しなければなりません。その方向に従って、今、例示案も作っていただいているかと思います。
6、この「キャリア・パスポート」を授業で使う際の留意点や管理などについて記しております。別添に指導案、学級活動・ホームルーム活動(3)の授業でこんなことが「キャリア・パスポート」を使ってできるのではないかという指導案を示しましたが、これについては想定される大まかな活動の流れを例示したものでございます。したがって、各学校は、この例示に頼ることなく、学習指導要領をきちっと読んで、必ず確認して学級活動やホームルーム活動の指導に当たっていただきたいということを書いております。
(3)「キャリア・パスポート」は、学習活動であることを踏まえ、日常の活動記録やワークシートと同様に指導上の配慮をすること。例えば、児童生徒個々の状況を踏まえ、本人の意思とは反する記録を強いたり、無理な対話に結び付けたりしないよう配慮すること。又は、書けないという生徒や書けないという発達段階の児童生徒がいることも十分に踏まえて指導に当たらなければなりません。さらに、学習指導要領解説特別活動編にあるように、「キャリア・パスポート」は自己評価、学習活動であり、そのまま学習評価とすることは適切ではありません。生徒が教育活動の中で蓄積したこの「キャリア・パスポート」をそのまま通信表などに転記してしまったり、又は高校入試や大学入試等に直接送って判定資料としたりすることは望ましくないと言えるかと思います。
(5)個人情報を含むことが想定されるため、「キャリア・パスポート」の管理は、原則、学校で行うものといたします。
(7)では、学年間の引継ぎは、もちろん原則、教師間で行います。
(8)校種間の引継ぎはどうするのか。これは、原則、児童生徒を通じて行うことになるかと思われます。この議論も実はたくさんありました。指導要録の写し等と一緒に学校間で郵送するべきではないかという御意見もあったかと思います。ただし、量が膨大になることが大きなネックでございます。ここについても先生方から御意見を頂ければと思います。ただし、小・中学校間においては、指導要録の写しなどと同封して送付できる場合は、学校間で引き継ぐことももちろん考えられます。
そして、7、実施時期でございますが、既に教科書のない特別活動は、小・中は移行期間に、高等学校もこの後、移行期間に入ることを考えれば、新学習指導要領にのっとった特別活動の指導が行われなければいけない段階に来ていることを踏まえれば、このまま様式のカスタマイズに長い時間を掛けることは有効ではないと思います。そのことを踏まえて、本資料を参考に、都道府県教育委員会、各地域・各学校で柔軟にカスタマイズし、平成32年4月より全ての学校において実施することがふさわしいのではないかと考えています。ただし、準備が整っていたり、既存の取組で代替できる場合には、31年4月より先行実施することができるとすることがいいのではないかと考えています。
先生方のこれまでの議論を基にこのように整理をさせていただきました。私の聞き間違いや理解に不足があるかもしれませんので、先生方の御意見を賜りたいと思います。
以上です。
【藤田座長】 今、長田委員から御説明いただきましたように、冒頭に繰り返し強調していただきましたように、調査官としてある一定の見解を述べているわけではなく、委員として提案しているということですので、先生方から忌憚のない御意見を頂きたいと思うのですが、ただ、3の目的や4の定義あるいは1の必要性と背景については、もう既にこの会議の冒頭で確認をされたところですので、そこは前提として、1、3、4は除いたものとして、まずは名称、この「キャリア・パスポート」というものでいいかどうかということや、それから、内容の中でカスタマイズの程度をどの程度認めていくのか、あるいは共通部分はどうするのか、あるいは10枚以内、数ページというのはどう考えていくのか、あるいは学校間の引継ぎはどのようにすればいいのか、そういった点について、先生方の様々な御意見を頂かなくてはいけないところがあると思いますが、ただ、本日は17時に終わらなければならず、後半にやることもありますので、そんなに長い時間は議論できません。ですので、どんなに頑張っても16時10分ぐらいでこの議論を終わらなければいけませんので、先生方、遠慮なさっていると私が時間を宣告してしまい言い切れなくなってしまいますので、是非遠慮なさらずに御意見をおっしゃってください。どうぞ。
【和田委員】 はい。では、ぼんと。カスタマイズについてです。高校の立場からすると、高校は本当に普通科から専門の学科、それから総合学科、それは全日制、定時制、通信制といろいろもともとが物すごく多様です、スタートが。で、カスタマイズを各学校でと言っていると、逆にもういろいろ今やっている学校の既存のもの、既存の日常の活動のワークシート、これで代替されて、「これがうちの学校のカスタマイズだ」と言われかねないなと。それで、やっぱり高校の先生方の中で日常の活動の記録やワークシートとこの「キャリア・パスポート」が混同されてしまう。日常の活動の記録やワークシートは、これは基ポートフォリオとしてあって、この「キャリア・パスポート」はそういう基ポートフォリオをたくさん積み重ねて全体を振り返って見通しを付ける、そういう俯瞰ポートフォリオだと思うんですよね。そうすると、高校の場合は、高校のそれぞれの実態が多様であるからこそ、キャリア教育の観点から基礎的・汎用的能力の点でどの生徒も振り返るという必要があるのではないかなと。そうすると、カスタマイズはむしろきりなく高校では起こってしまうがゆえに、逆に統一の共通部分というのをしっかり持った方がいいと思います。
【藤田座長】 要するに、カスタマイズという言葉を拡大解釈されてしまうと、今あるものでいいのではないか、場合によっては、今までなくてもよかったので1〜2枚でいいのではないかということにもなり得るということでしょうか。
【和田委員】 はい、はい。
【藤田座長】 むしろ共通性ということを高校の場合はある程度強調した方がいいのではないかということですね。
【和田委員】 はい。
【藤田座長】 はい、ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。今の御意見に対する御意見でも結構ですし、全く枠は設けませんので、お願いします。どうぞ。
【西田委員】 今、話の中でカスタマイズ、それから枚数とか引継ぎというところが話題になっているところですけど、まず1学年10枚という枚数についてですが、中学校1クラス40人のうち、今は、35人ぐらいおりますが、一人につき、小学校から60枚がくると、まず見ない、正直言いまして、見れないですね。だから、僕も各学年に1枚ぐらいで、小学校の場合でしたら、長期の宿泊体験があるので、7枚ぐらいが限度かなと思います。中学校の場合も、中学1年のまとめ、中学2年のまとめ、中学3年のまとめと、加えて9年間のまとめの4枚とすると、高校に行くときは10枚か11枚となり、適度な枚数かなと思います。要するに、一つは、高校入試の際には、中学校から高校へ学習指導要録の写しとか抄本を送付しますので、その時に一緒にキャリアパスポートを送ることができること、また、カスタマイズの話ですが、兵庫県は、各学校や各市町で独自にカスタマイズできるようにしていますが、その中で今言う10枚ないしは11枚のまとめの部分、つまり、引き継ぐ部分は統一されていてもいいのかなと思います。形は違っても項目とかが統一されていると引き継ぎがしやすいというのが1点ですね。そういうことも含めて引継ぎについては生徒じゃなしに、やっぱり学校から学校、教師から教師って、学校から学校へ引き継ぐというのが一番残っていき、なくなるといった心配もないのではないかと考えます。
【藤田座長】 今の西田先生の御意見ですと、後半に御説明いただく各学校のグループが御提案いただくものを更に更に絞って、そこから引き継げるもの、要するに指導要録と一緒に送れるくらいにスリムにしてもいいのではないかということでしょうか。
【西田委員】 各学校ではいろんな教科や特別活動で使う部分として資料としては残ったらいいと思いますが、次の校種に引き継ぐ部分は改めて書いていくというのがいいと思います。
【藤田座長】 なるほど。
【西田委員】 この2種類、もともと同じものを分けたらどうかなと思います。
【藤田座長】 なるほど、送り方の問題ですね。要するに、西田先生の御意見は、長田委員から御説明あった学校間、校種間の引継ぎについては学校間でやっていけるものにしておいた方がいいのではないかということですね。
どうでしょうか。今の点でも結構ですし、ほかの点でも結構です。お願いします。
【安部委員】 引継ぎという点で、やはりこれは小学校から中学校、高等学校とつないでいくためには、量が多いといろいろな課題があると思います。小学校の6年間は非常に長いですから、まず1・2年生で振り返り、次に3・4年生で振り返り、そして5・6年生で振り返るというように、今までポートフォリオとして蓄積してきたものを生かして振り返ったものを「キャリア・パスポート」という形でつないでいく。それと併せて、学級活動(3)で教材を活用すると総則に明記されているからには、どうやって「キャリア・パスポート」を授業の中で活用するのかということまで例示としてお示しして、子供たちの学びがつながっていくようにするとよいのではないかと思います。
【藤田座長】 そうですね。
ほかにいかがでしょうか。お願いします。
【小見委員】 先ほど三川委員からキャリア・カウンセリングのお話を頂戴して、これを振り返るところじゃなくて、やっぱり先生との対話が改めて大事だよなと思いまして、この5の内容の(4)のところで、「大人が対話的に関わることができるものとする」とあるんですけれども、「対話的に関わる」という表現が非常に、キャリア・カウンセリングなんですが、ちょっともやっとしていて、いろいろに受け止められるので、さっきおっしゃったように、「受け止める」とか「問い掛ける」、「語らせる」みたいな具体的な先生の行動とかがもう少し示されると、より、やって終わりじゃなくて、その対話につなぐというところまでが明確になるかなと思いました。
【藤田座長】 ありがとうございます。そうですね、今回のこの私たちのグループで提示できることと、恐らく近い将来行われるであろう小学校や中学校や高等学校のキャリア教育の手引の改定の作業でできることがきっと分かれてくると思いますので、どこまで書き込めるか分からないですけど、確かにおっしゃるとおりですよね。「対話的な」と言われても、どうするのかという話ですものね。ですから、そういうところは本当に近い将来、きちんと先生方にお分かりいただけるような、特に本日三川委員からお話しいただいたようなことが多くの先生の腹にすとんと落ちれば、大きく学校教育も変えていきますしね。ありがとうございます。
ほかにいかがでしょう。もあと5分ぐらいですが、遠慮なさっていると時間が来てしまいます。
【戎井委員】 先ほど話が出ていましたカスタマイズとシートの引継ぎをどうするのかというところなのですが、やはり西田先生からお話しいただいたように、少し分けて整理をするということも必要なのではないかと思います。例えば、学期を振り返るシートを全てためておいて、それを学校間で送るというのは、中学校から高校になるとやはり難しい問題があると思います。できれば校種を超えて引継ぎするためのシートをあらかじめ選んでおいて、それを学校間で送るというような形ができるといいなと思います。また、個人は個人で今までまとめたシートを蓄積してそれを持ち上がるというような、ルートが2つできるような形があってもいいのではないかと思います。
【藤田座長】 今の御意見ですと、ありていに言うと、バインダーとしてとじ込むものはきちんと別にあって、でも、校種間で引き継ぐものは学校間で引き継げるように2つのルートで何かできないか。要するに、全部せっかくため込んだものを、もうこれは見ないものとして置いておくのではなくて、子供の手元にはちゃんとあって、学校の在学中も保管していて、ただ、学校種間だけは2ルートで行こうという、そういうことですね。
【戎井委員】 はい。
【藤田座長】 ありがとうございます。
はい、どうぞ。
【安斎委員】 今、バインダーというものがあって…というお話でしたが、やはりそういった綴じ込むものがきちんと用意されているということがまず形としても大事だと思います。川崎市でも、現場の先生方から、「ファイルのようなものは準備されないんですか」というようなことを言われます。是非、統一したものが必要になってくると思いますのでご検討ください。どうしても、そういったものが提示できないという場合において、もし、各自治体や各学校で準備してくださいということになるのであれば、それについても早めに明記していただきたいです。予算の関係からも、方向性を早めに示していただいて、提案があると有り難いと思います。
【藤田座長】 そうですね。この我々のグループの中でも何度かその話は出てきましたしね。こういうことは、脇にいらっしゃって聞きづらいのですが、今回それについて一言も触れてないのではないでしょうか。これは我々の仕事の外だということだと思っていますが、どんな方向性で今議論が進みつつあるか、教えてもらうことはできますか。
【長田委員】 我々の議論の中では、一番最初に、第1回目の会議のときの藤田先生のオハイオ州の事例のところからもうその話が出てきていますよね。オハイオ州はそれを完全に学校に任せたので、非常に高額な立派なカバーを立てた学校と、紙ファイルを与えた学校とで、もう見た目から違ってしまって、それがオハイオ州の「キャリア・パスポート」の失敗の一因につながったんだというお話を受けました。さらに2回目以降も、西田先生からも、やっぱりこれをきちっと整えられるかどうかは相当違ってくるというお話を受けております。また、高等学校の先生方においては、その形が整っていることが、まずはそれをちゃんと全部の高等学校でやっていこうというきっかけになるはずなので、準備をしてきてほしいという話は受けております。本来であれば、そのままここに書き込むべきだったのですが、予算の掛かることでしので、私としては十分理解していましたが、この今の私のまとめのところには書き切れなかったというのが正直なところでございます。ですので、ここについては、今、頂いた意見を基にまた整理をしていきたいと考えております。
【藤田座長】 そうですね。本当に駄目押しになるようで恐縮ですが、アメリカの教訓もそうですし、それから高等学校の特別活動の実態に触れていると、やはり高校の先生方が「よし、やるぞ」と思っていただくきっかけは、やはりそういった形というのもすごく重要で、何もないところから「さあ、やりましょう。バインダーも学校予算で買ってね」って言われると、「は?」という感じになってしまうと思うんですよね。ですから、やはり子供たちのせっかくの学びの機会としては、国として何かそういった措置ができるといいなと心から希望したいと思いますね。もちろん、我々の仕事では、ここの議論ではないのですが。
【和田委員】 それを私も重ねて、この「キャリア・パスポート」の一番のよさというのは、ずっと形として残っていくということだと思うんですね。だから、校種間の引継ぎはもちろんなんですけど、1学年、1学年の生徒の中での散逸しないということがやっぱり物すごく大事だと思うんですよね。これが散逸してしまったら元も子もないというか、もともとの趣旨が損なわれてしまうので、そういう意味では散逸を防ぐ形というのがやっぱり非常に重要だと思います。
【藤田座長】 そうですね。
あともう時間がありませんが、先ほどのカスタマイズのところについて、高校の先生方や中学校の先生方から少し御意見もありましたので、小学校の先生方はではどうでしょうか。もちろん、これから御議論いただくところですけど、とりあえず今の段階で何か御意見あれば。
【小田委員】 小学校の段階では、まず、6年間を振り返るページ、それから学年ごとに振り返るページ、そういったことについてもこの作成について検討しておるところでして、中学校へつなぐページ、そういったところについては、私、個人的な考え方ですけれども、やはりある程度どこの学校でも同じような項目が含まれていること、これはやっぱり必要な条件になるんじゃないなと感じているところです。
【藤田座長】 はい、分かりました。
先生方、とりあえず前半の意見のところはこれでよろしいでしょうか。長田先生、よろしいですか。
【長田委員】 はい、結構です。
【藤田座長】 それでは、後半に移ってまいります。これこそ本当の本日の議題、議事の2番目ですけれども、先生方にはもう既に宿題という形で小学校・中学校・高等学校部会である程度まとめてきていただいていると思うのですが、フェース・トゥ・フェースで、要するに人と人と、きちんと声を交わして議論ができるのは実は本日が最後になります。ですので、大変恐縮ですが、約20分、最後の打合わせをしていただいて、小学校・中学校・高等学校の宿題の最後の打合わせ、それから、今、資料2で御説明いただいたところも含めて打合わせをしていただいて、その結果をできれば16時30分、遅くても16時35分から小学校・中学校・高等学校と発表していただき、その後、全体討議をしていただきたいと思います。
(グループ討議)
【藤田座長】 それでは、先生方、お話がまだ終わってないところもありそうですが、大丈夫ですか。
それでは、資料3-1、3-2、3-3とございます。もちろん、今、お話し合いもしていただいたところなので、変更点も多々あるかと思いますが、基本的にはこの資料3を使いながら、小学校グループ、中学校グループ、高等学校グループでどういった最終案を御提示いただけるのか、それを御説明いただきたいと思います。とはいえ、終了時刻が17時で決まっておりますので、10分ずつ話されてしまうともうそれで終わってしまいますので、できれば5、6分でお話しいただけるととても助かります。 では、小学校から。
【小田委員】 小学校です。小学校は、この資料3-1で示したものを一応最大の量と考えて、ここから「キャリア・パスポート」としてお示しすること、是非これは活用してくださいというふうにお願いするところを精選した形で提案できればいいかなというふうな、今、話になっております。
具体的には、是非取り組んでほしい内容としては、年度の始めと終わり、この2枚については各学年で是非取り組んでいただく。そして、その内容項目として、先ほど、カスタマイズして構わない部分と、これは是非必須でというふうなところの話題があったかと思うんですけれども、小学校の方としては、例えば資料3-1の「1ねんせいしんきゅうおめでとうございます」。これ、文言は、1年間振り返ってのところに書いてあると思うんですけれども、これで見ていただきますと、この頭のところにある目標に対する振り返り、そういったところについては是非どこの学校でも行っていただきたい。一方で、この評価項目、こちら、例示として4つございますけれども、こういったところは学校の教育目標等に照らし合わせて是非カスタマイズしていただく。そういった形でお示しできるとよろしいんじゃないかなと考えておるところです。
もう1点、つなぐページの特に重要な部分としては、6年間を振り返るページというふうなことが大事になるかと思います。現状、この資料3-1ではそれに当たる部分はまだ十分に用意できておりませんので、小学校部会としては、6年間を振り返るページについては5年生を振り返りましょうと。「5年生進級おめでとうございます」と、後ろから数えて5枚目、6枚目の部分にあるんですけれども、ここのところをベースに6年生の年度末で使用する振り返るページを作りたいと考えております。その中には、中学校に向けての目標設定あるいは努力目標、そういったことを書かせたり、あるいは18歳へのメッセージ、そういったところを書き込むような場所も設定したいと考えております。
なお、略案については、各年度始めのスタート、なぜこの「キャリア・パスポート」を書くのか、どうして勉強するのか、そういったことに考えさせたり気付かせたりするような略案、それから年度末、この「キャリア・パスポート」を使って振り返りをする、そういった場面の2つを略案として最終的にお示しできるといいかなと思っております。
最後、小学校としては、学校行事とか学期ごとのページも今回作成して御提案しているんですけれども、こちらについては参考資料として、先生方、各学校で使っていただくような提示の仕方、そういったことも意見として出ておる状況でございます。
補足があれば。
以上になります。
【藤田座長】 ありがとうございます。補足、よろしいですか。基本的に、今、私が理解したところでいきますと、これが最大で、この中には学校の裁量でやってもいいし、場合によってはしなくてもいい資料というのがあって、それが学期ごとの振り返りの資料だったりすると。そして、大きくは6年間を振り返るシートというものを新たにこれから御作成いただくことで、特に重要なのは、学年ごとの振り返りというところである程度共通性を持った項目を設定しておいた方がいいのではないか、ということですね。
【小田委員】 はい。
【藤田座長】 はい、ありがとうございます。この指導案ですが、現在の指導案から大きく変わる感じですか。
【葉山委員】 なので、今お示ししているのを1つに融合した形にするのと、また別案を1つ挙げるという形で。
【藤田座長】 基本的には2案出てくるということですね。
【安部委員】 はい。持ち上がっていくということを考えると、「キャリア・パスポート」の量が多いと、これまでのものを見直し精選することが先生方に負担になる恐れがありますから、この内容については必ずやりましょうというのを略案でもお示ししていくことを考えています。
【藤田座長】 なるほど。
【安部委員】 何をどう活用するのかというのが分かるようにし、あとは参考資料としてお示ししたらどうかと。
【藤田座長】 なるほど。要は、先生方で持ち上がるシートはこれだということが分かるような形で示していただくということですね。
【安部委員】 はい。
【藤田座長】 はい、分かりました。また全体の後に振り返って、小・中・高の意見交換を最後にしたいと思いますので、中学校の先生方、お願いいたします。
【安斎委員】 小学校の先生方と同じような話し合いが行われました。資料3-2が中学校の例示資料となります。持ち上がるとしたら、学年末のページになります。1年生のものでいくと、資料では4枚目、そして5枚目の見開きページになっていますが、これが表裏1枚の形になります。ですから、各学年の「学年末」という3枚については、必ず持ち上がりたいページとなります。そこで、このページ資料は共通のものとして提示が必要になってくるだろうと思われます。ただ、この「1年間を振り返って」の表の振り返り項目については、各学校の実態に応じて、カスタマイズしてもらう必要があるだろうという意見でまとまり、この辺は小学校の先生方と同じような話になったところです。
そして、中学校で、「学年末」の3枚にプラスして、必ず持ち上がってもらいたいと思っているのが、職場体験のシートになります。このシートと、「18歳の私へ」という中学校3年生の最後に書いたもの、これは3年生での「学年末」の裏になるので、結局、持ち上がることにはなりますが、これについても必ず持ち上がり、次の進路で活用できたらよいのではないかという話になりました。
また、「18歳」というのが一つのキーワードになるのではないかという話が出ました。統一した内容のものがあると、それを使って授業をどう展開していくかという話が、全国・地域で共通して話題にすることができます。さらに、取組としてもつながりがもてるという意味では、やはり「18歳」というキーワードを基に、全ての「キャリア・パスポート」がつながっていくというような形が、先生方にも見えるといいなという話になりました。
最後になりますが、今後は、研修が必要になってくるということも話題になりました。、先ほどのキャリア・カウンセリングもそうですが、対話的に関わるということがどういうことなのかという研修が必要になってくるだろうという意見が出ました。
【藤田座長】 そうですね。
【安斎委員】 はい。
【藤田座長】 先ほど三川先生のお話を聞いて本当につくづく思いましたが、これは先生の力量が問われますよね。
【安斎委員】 そうですね。そういった意味でも、指導案として、略案は3つお示ししたいと考えております。今、中学校2年生と3年生のものは資料に入っています。こちらは、2年生のときには「職場体験」の後どう活用するか、また、3年生のときには「18歳の私へ」を、どうつないでいくのかというところをお示しできればと考えております。そして、追加して、できれば中学校1年生のものといたしまして、小学校のときの「キャリア・パスポート」をどう活用して授業するかという略案も示していきたいという話になっております。
以上です。
【藤田座長】 ありがとうございます。
【安斎委員】 何か付け足しがあれば。
【西田委員】 ある程度持ち上がるものが統一されていたら、どこの市町でもそれを基に研修することができ、また、どこの地域でも使えるのもいいことだと思います。持ち上がるものが、各学校ばらばらだと使い方等研修ができにくい所もあるので、そういう意味でもある程度固まっているところがあった方がいいかなという話が出ました。
【藤田座長】 ありがとうございます。これは復習で、間違っていたら確認していただきたいのですが、基本的には学年末と、それから職場体験振り返りシート、それから18歳の私へのメッセージ、そういったものが持ち上がるものとして想定されていて、あとは参考、任意資料としてあるというような理解ですよね。その学年末振り返りのシートのところも、例えば具体的な資質・能力のところは学校がカスタマイズできるようにしていきながらも、こういった資質・能力ベースで振り返るということはみんなで振り返りましょうと、そういう理解で大丈夫ですか。
【西田委員】 はい。
【藤田座長】 はい、ありがとうございます。そして、指導案についても、小学校から引き継ぐときにどう引き継ぐのかということはこれから加わってくるという理解でよろしいですか。
【安斎委員】 はい。
【藤田座長】 はい、ありがとうございます。そうなると、小学校と中学校ではそれぞれの学年末のシートと18歳の私へのメッセージというのは、どちらかというと共通するものとして今浮かび上がってきている感じですよね。もちろんそれを前提にしてくださる必要はありませんが、高等学校の先生方のお話を聞いて全体で方向性のすり合わせをしていきたいと思います。
では、高等学校の先生方、資料3-3、お願いいたします。
【戎井委員】 高等学校の方で話になったのは、まず先ほどのシートの統一性の話です。やはり校種を越えて引き継がれるシートについては、学校の独自性というよりも、できるだけ共通のものの方が確認もしやすいし、使いやすいのではないかという話が出ました。したがって活用されるシートは、各学年で作成するシートと学年間で引き継いでいくシート、さらに校種を越えて引き継いでいくシートというふうに、いくつかの種類に分けられるのではないかと思います。
それから、高等学校の各様式についてですけれども、前回の会以降で新たに加わったのが、まずは、資料を1枚開いてもらって2枚目の「しろまるしろまる高等学校のみなさんへ」というものです。各学校が生徒にどういう力を付けたいと思っているのか、それから、「キャリア・パスポート」を作成するねらいや期待することなどを整理していただくというシートとして新たに追加しました。
それから、学期を見通すシート、一年を見通すシートについては大きな変更はありませんが、「小学校から高校までを振り返る」というシートについては、自分のよさや強みだけではなくて、もっと成長させたいところについても整理ができるように少し様式の変更をしたいと思っています。具体的には、基礎的・汎用的能力の4つの枠のところを更に横に2つに割って、上下でいいところと成長させたいところという形で整理をしていくようにしたいと思っています。
それから、「卒業年度を見通し、振り返る」というシートも今回新たに追加しました。高校3年生や4年生が、1年間、次のステップに向けて何をどのように取り組んでいくのかといったことを整理し、途中、進捗状況の確認もしながら行動や計画をまた練り直していくということができるようなシートとして考えております。
それから、インターンシップや学校行事のシートはそのままで、最後に、前回、荒瀬先生から御意見を頂いて、「総合的な探究の時間」についても整理するシートを設けました。事前でどのようなテーマを設定したのかというところをまとめたり、事後では、活動の概要だけではなく、その過程で感じたことや考えたこと、さらに、新たに浮かび上がってきた疑問や新たな探究のテーマについても整理できるようなシートとしております。
様式の説明については以上です。
次に、授業事例につきましては、1年生、2年生、3年生と各学年1事例ずつお示しをしており、できればこの形でいけたらと思っています。修正点としましては、小・中学校の方でも話がありましたが、グループやペアで行う活動が入っているので、やはり導入のところで、相手を受け入れる、相手の言うことを否定しないといったルールの確認を徹底することを、指導の留意事項として盛り込んでいきたいと考えています。それから、先ほど中学校のところでお話しいただきました「18歳の私へ」という様式をうまく活用して、小・中・高でつないでいけるような仕掛けができればと考えています。具体的には、授業例の3の小・中・高を振り返るというところでこの様式をうまく活用できないかなと考えています。
以上です。
【藤田座長】 ありがとうございます。かなり小・中・高の連関性というのは見えてきた気がするのですが、中学校の先生方に1点だけ確認させてください。今、戎井先生から「しろまるしろまる高等学校のみなさんへ」というページを新しく付け加えましたという御説明がありましたが、中学校の資料3-2を拝見しても同じようなページがあるのですが、それは継続してあるというように理解して大丈夫ですか。
【安斎委員】 はい。
【藤田座長】 ということは、中・高そろって、国全体として「高校生のみなさんへ」、「中学生のみなさんへ」というページがあって、その脇にはそれぞれの中学校や高等学校の「みなさんへ」という各学校より身に付けさせたい力などがあり、校長先生のお名前が記されるといった、そういうイメージでよろしいですか。
【安斎委員】 はい。
【藤田座長】 ありがとうございます。
では、今の高等学校の先生方のお話ですと、基本的には、1年を通して振り返るというところは同じだけれども、卒業年度を見通して振り返るとか、小学校から高等学校までを見通して振り返るというシートが新しく加わったということですよね。
そこで教えていただきたいのですが、この「卒業年度を見通し、振り返る」というページは、記入日が4つあるので、これは1日で書くのではなくて、まずは見通す部分が上の方にあり、だんだん具体的に取り組んできて、下の方では1年間の振り返りということなので、この1シートで、春に書き、そして冬に書きという、そんなイメージですよね。
【戎井委員】 そうですね。イメージとしては、前半の2つの項目を最初に書いて、9月ぐらいに途中で進捗状況を確認して、場合によっては赤ペンや取り消し線なんかで修正をかけていくというようなイメージをしています。そして、最後に1年間の振り返りをまとめるというような形を考えています。
【藤田座長】 ありがとうございます。そして、先ほど小学校・中学校から来る「18歳の私へ」のメッセージを受け取るような指導案というのもこれからもう少し練り直していただくということですね。
【戎井委員】 はい。
【藤田座長】 はい、ありがとうございます。 では、今、小・中・高の先生方から資料3-1、3-2、3-3で御説明いただき、時間のない中で要点だけだったのですが、恐らく説明し切れてないところもたくさんあると思いますし、御不明なところもあるかと思いますので、もう残された時間、限られますが、それぞれの学校段階への御質問や御要望、あるいは言い残したところなど、先生方、いかがでしょうか。こういうところをもうちょっとこうした方がいいなど、お願いします。
【安部委員】 いいですか。
【藤田座長】 はい。
【安部委員】 学習指導要領第6章の学級活動の内容の取扱いで、学級活動(3)の指導の際にこうしたポートフォリオ的な教材を活用するということが明記されていますから、いつ書くのか、どのように活用するのか、などのことが分かるようにする必要があると思います。また異校種間で引き継ぐシートは、このように記入して子供たちの学びをつなげていくようにすることも大切ではないでしょうか。そして学級活動(3)はアとイとウという3つの内容がありますので、どの内容なのかということを指導案や展開例に明記していくこと、それから、学習過程に沿って子供たちが話し合い、それを生かして意思決定していくといった展開を明確にする必要があると思います。
【藤田座長】 そうですね。新学習指導要領の特別活動の学級活動・ホームルーム活動の(3)のア、イ、ウ、まずどこかを明記して、その学習のサイクルがきちんと見えるような、新しい学習指導要領の特別活動に則った書きぶりにしていく必要があるということですね。
【安部委員】 そうですね。先ほどの長田調査官からの説明や、この留意事項にあるように、学級活動(3)は、キャリアパスポートを書くための時間ではないので、そこがきちんと伝わるようにすることが大切だと思います。
【藤田座長】 そうですよね。
【安部委員】 はい。
【藤田座長】 これは西田先生もおっしゃっていましたが、書くことは特別活動ではないので、そこをきちんと理解できるようなものにしていかなければならないですし、本日、長田先生からも御説明がありましたが、資料2で、私もこれは非常に明確で学校現場にいいメッセージだと思ったのですが、書くことが特別活動ではないというところが本日の資料2の3枚目の算用数字6番のところにあって、書くことはいろんなところでできますので、書くことだけに特別活動、学級活動・ホームルーム活動が使われることがないような、そういったものがいろんなルートで、指導案を見てもそうですし、きょうの留意事項を見てもそうですし、学校現場が混乱しないようなやり方が重要ですよね。ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。御意見、御要望、御質問。はい、お願いします。
【安斎委員】 すみません。私の説明の仕方が悪くて、うまく伝わってないといけないと思いましたので、再度お伝えしたいと思います。必ず引き継ぐものとして「学年末」のシートにはもちろん取り組んでいただくかと思うのですが、提示します「学年初め」や「学期を振り返ろう」について、こちらはやらなくてもいいですよということではなく、学年末に書くためには学年の初めや途中にも振り返りがなければまとめられませんので、これらについても、できれば取り組んでいただき、校種をまたいで引き継ぐ最低限のものは、「学年末」のみという意味です。
【藤田座長】 そうですね。
【安斎委員】 はい。その辺が、提示する際にうまく伝わるといいなという思いです。
【藤田座長】 ありがとうございます。重要なところでした。
どうぞ。
【和田委員】 中学校の「18歳の私へ」が、小学校1年から中学校3年までの9年間を振り返りってこれにまとまっていると、高校としては本当にこれが来るのを待っていますという。これを固定で統一で合っていると、そうすると高校での指導にも本当に活用しやすいかなと思っています。
【藤田座長】 要するに、カスタマイズをむしろしていただきたいところと、どちらかというと全国で共通のシートになっている部分がきちんと学校現場に伝わるような資料にしていかないと、逆に高校で受け取ったときにばらばらでどうしよう、となってしまうと困ってしまいますからね。はい、ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。あと5分くらいで終わらないと17時に終了できないので、皆様方、最後の御意見になってしまうと思いますので、是非お願いします。はい、どうぞ。
【葉山委員】 済みません、的外れなことを言うかもしれないんですけど、実施時期のことなんですが、平成32年4月に全ての小・中・高等学校において実施することになっているんですが、正直、タイトなスケジュールかなと思っていまして、もし32年の4月からする各校で取り組むキャリア・パスポートは完璧なものでなくてももちろんいいんですか。委員会でたたいて、それから多分各校におろして、各校が更に考えるところは考えるということになると思うので、それが1年間で果たしてというのがちょっと心配です。
【藤田座長】 これまでの様々なキャリア教育の施策を振り返ると、完璧に始まったものは一つもなくて、とりあえず頑張って始めてみるというところなので、恐らく今回もそうなるだろうと思いますが、長田先生、どうですか。
【長田委員】 はい、藤田先生と全く同じことを考えておりました。作りながら、走りながら改善していくんだろうなと。これは「キャリア・パスポート」に限らず、あらゆる教育活動がそういうものなのではないかなと。完璧だと思ってスタートして大失敗、完璧になるまで待っていて結局スタートできなかったとなるよりは、始めることにまず意義があるのかと私は思います。
【西田委員】 全部の学校で、全ての学校が始めるということですか?
【藤田座長】 32年度から始めます。
【西田委員】 全ての学校で全部同時に始めようとするのであれば、やはり、ファイルみたいなものが絶対必要になると思います。
【藤田座長】 そうですよね。始めようと思わないですよね。
【西田委員】 はい。それがあれば、全ての学校が、しなくてはいけないという必要性にある程度迫られるのではないかと思います。
【藤田座長】 確かにそうですね。何も入ってない空のものがあるわけですからね、何かしないと、と思われるでしょうね。
【西田委員】 全ての児童生徒に配るということですか?
【藤田座長】 はい。
【和田委員】 現場におりてきたら、本当に特に高校の先生方はまた大騒ぎだろうなって思って、平成32年でスタートするとなると、では、平成31年度の指導主事会で説明があるのかなとか、やっぱり先生たち、丁寧な説明というか、研修が本当に大事だなと思います。
【藤田座長】 これは我々の範囲を超えますが、確かにそのとおりですよね。やはり先生方に趣旨を理解していただいて、その大切さを理解していただかないことには始まらないですし、先生方が御負担に思うだけだと子供たちのためにもならないですからね。ですので、これに対しては是非、文部科学省をはじめ研修機構の方々にも考慮いただきたいと思いますし、都道府県での研修でも是非参考にしていただきたいと思います。
いかがでしょうか。あと1、2分ですが。どうぞ。
【小見委員】 最後、確認なんですけれども、先ほどの「e-Portfolio」との関連なんですが、今回、学習評価としないということだったんですけれども、高校のこれを見ていると、もし自分が高校生だったら、せっかくこんな頑張って書いたんだから「e-Portfolio」に入力したいなとかって思うかなと思ったんですけれども、それはでも、先ほどのお話だと、基本的には生徒が主体的に作るものだということだったので、自分が載せたいと高校生が判断した場合は、それは入力してもオーケーということなんでしょうか。
【藤田座長】 これはあくまでも私一人の考えですが、ここに記されたものを一切、例えば「JAPAN e-Portfolio」を導入している学校がそこにあったら、載せてはいけないという方がむしろ不自然だと思います。ですから、今はきちんと整合性がとれた説明ができてないのですが、高校生からすると、自分の高校生活を含め、小学校生活からずっとやってきたものを可視化して自己理解を深めるという点ですから、決して高校生から見ると相反するものではないはずですよね。
【小見委員】 そうですよね。
【藤田座長】 ですから、そういう形で高校生が捉えられるように私たちが示していかなくてはいけないと思いますし、各県の教育委員会の先生方にもそういうふうにお示しいただくように十分御理解いただかなければいけないと思います。今、目的が違っていますが、高校生から見て2つの違うものが何かどーんと来て、壁がぼこっとあると、それは単に負担が増えるだけで意味がないですよね。ですから、そういった形で高校の先生方に御理解いただけるようなものにしていきたいと個人的には思います。
先生、どうですか。
【和田委員】 あ、いいですか。済みません。実は、高校の「小学校から高等学校までを振り返る」というのは、使う時期は7月に想定しています。これは、就職する生徒、進学する生徒、それぞれ志望理由書とか志望動機を書く時期が、例えば9月16日から就職の試験が始まるので、そうすると、7月ぐらいにはやっぱり固めていなくちゃいけないだろうと。そうすると、そのときにこれを書くことによって固まるじゃないかという、そういう設定でこれを作っています。だから、そういう意味では、生徒たちが自分の進路を開拓していくためにこれがあると。だから、それが合格せんがために、そのためにこれを内容を何か粉飾して書くというようなことではなくて、これを書いた結果として生徒たちの志望が固まっていく、可視化されていくというようなところで使うということは十分あるんじゃないですかね。
【小見委員】 理解が深まりました。ありがとうございます。
【藤田座長】 それでは、時間が来てしまいました。これから皆様方の御意見を十分吸い取っていただいて、重要な資料になっていくかと思いますが、私の役割としてはここで終わらせていただきまして、事務局にお返ししたいと思います。よろしくお願いいたします。
【大濱児童生徒課長】 本日は、皆様、誠にありがとうございました。大変貴重な御意見、忌憚のない意見交換をしていただいて、正に形を作って、「仏作って魂入れず」であってはならないという力強い信念の下、しっかり御議論いただいて、生徒と先生とのコミュニケーションの大切さというのも本当に改めて認識した次第でございます。1回目からの御議論いただいた内容は、しっかりと我々、成果物に織り込んでいきたいと思いますし、スケジュールの関係もできるだけ早くお示しして、現場が混乱しないようにしっかりスケジュール管理をしていきたいと思います。
私個人的には、キャリア教育、余り造詣なかったものですから、大変個人的にも勉強になりましたし、教育の基盤、基軸といいますか、教育活動そのものなのかなと思っています。そんな当たり前のことが、私、気付いていなかったのかなということで思いましたけれども、本来であれば、教育活動そのものでありますから、こういった議論、こういったものは本当は昔々からなくてはいけなかったはずのものが、ようやく21世紀になって出来始めるということもある意味画期的といいますか、非常に進歩、前に進んでいくという意味では画期的なことだと考えています。
繰り返しになりますけれども、形だけ作って生徒がずっと書いているだけというようなことは決してないように、しっかり学校の先生方にも趣旨を十分御理解いただいて、いいものにしていくとともに、それがひいては児童生徒の将来のためになると。あるいは、児童生徒全員が、一人一人が、あ、これ、作ってよかったと。今、仕事していて、もう一回見てみようというようなすばらしいものになってもらえるように、我々も事務局としてしっかり頑張っていきたいと思いますので、またいろんな御意見を頂戴してしっかりいいものを作っていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【藤田座長】 本日はどうもありがとうございました。
【迫児童生徒課専門職】 それでは、これで第3回「キャリア・パスポート」導入に向けた調査研究協力者会議、終了いたします。
本日の資料及び議事概要につきましては、また後日、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。
例示資料の修正等につきましては、また別途、御連絡させていただきますので、また引き続きよろしくお願いします。
きょうはどうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

初等中等教育局児童生徒課

キャリア教育・進路指導担当

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