月刊 経団連2020年10月号
特集 変化への対応―スタートアップ・エコシステムのさらなる飛躍に向けて
巻頭言
今こそオープンイノベーションの加速を
新型コロナウイルスによる経済的・社会的打撃は、人口減少・少子高齢化、グローバル化、DX等においてわが国が抱えてきた課題を改めて浮き彫りにした。これらの諸課題を解決するには、民間主導のイノベーション創出が何よりも重要である。他社や異業種との連携、スタートアップ企業との協業等を進め、新たな価値創造の動きを加速させなければならない。
特集
変化への対応―スタートアップ・エコシステムのさらなる飛躍に向けて
近年、オープンイノベーション志向の高まりを背景に、大手企業によるスタートアップ投資が拡大してきた。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、好調だったスタートアップの資金調達環境にも影響を及ぼしている。コロナ危機によってデジタル化や働き方についての社会課題も浮き彫りとなり、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の圧力が高まった。その主な担い手であるスタートアップの社会的役割は、これまで以上に重要になってきた。本座談会では、スタートアップのさらなる活性化のために、現在のスタートアップ・エコシステムの課題や今後の振興策について議論する。
対談:イノベーションを起こす─自分のアタマでユニークなものをゼロから考えよう
- 濱口 秀司 (ビジネスデザイナー/Zibaエグゼクティブフェロー・monogoto代表)
- 髙橋 誠 (経団連スタートアップ委員長/KDDI社長)
- ■しかく イノベーションの創出における大企業の強み
- シリコンバレーへの幻想
- ビジネスモデルをしっかりと描く
- ■しかく ベンチャー発想による課題解決への期待
- 「お金もうけは良いことだ」という考え方
- 不確実性にどう立ち向かうか
座談会:変化への対応─スタートアップ・エコシステムのさらなる飛躍に向けて
- 出雲 充 (経団連審議員会副議長、スタートアップ委員長・スタートアップ政策タスクフォース座長/ユーグレナ社長)
- 平野 未来 (シナモン社長CEO)
- 米良 はるか (READYFOR代表取締役CEO)
- ヴィンセント・フィリップ (Plug and Play Japan社長)
- 齊藤 昇 (司会:経団連スタートアップ委員会企画部会長/日本ユニシス専務執行役員)
- ■しかく スタートアップの力で日本を変える
- 大学発ベンチャーが起業の原点
- アクセラレーションプログラムを経てユニコーン企業へ
- ■しかく 危機感の共有が課題解決につながる
- スタートアップとDXへの対応の遅れが日本の競争力低下の要因
- 「本気でコラボしたい」という思いを伝えてほしい
- ユニコーンを生み出すには「質」より「量」が大事
- ■しかく イノベーションをもたらす人材育成に向けて
- 大学発ベンチャーを輩出し続ける東京大学
- 企業は大学の研究を長期的に支援してほしい
- ■しかく さらなる飛躍のために
- 海外との連携を進めたい
- 大手企業の「思い」をスタートアップが代弁する
スタートアップ振興に向けた経団連の取り組み
http://www.keidanren.or.jp/policy/StartUp.html
永野 毅(経団連スタートアップ委員長/東京海上ホールディングス会長)
- スタートアップ振興のための環境整備
- スタートアップと大企業の連携促進
- 海外との関係強化
大手企業との共創が鍵を握る日本のスタートアップ・エコシステムの未来
松本 勝(VISITS Technologies代表取締役CEO)
- 大手企業70社の新規事業部門とともにイノベーションを研究する独自コンソーシアム
- 日本のスタートアップ・エコシステムがスケールするための鍵は大企業
- 不透明な時代こそ、イノベーションが生まれやすい
- 国内・国外の共創を通じて世界が驚くイノベーションを
スタートアップ起点でのデジタル社会変革の推進を
斎藤 祐馬(デロイトトーマツベンチャーサポート社長)
- 海外諸国の迅速な支援拡充
〜「イノベーションこそが国の繁栄を支える」 - 中小企業支援策の一部としての位置付けから卒業すべき
- スタートアップサービスの社会浸透に向けて
- 成長性の高い新産業へのポートフォリオ転換のカギ
「テレワークが始まった。ハンコを押すために出社した。」
宮田 昇始(SmartHR代表取締役)
- 緊急事態宣言下での反響
- 年間1.3億回の「紙」「ハンコ」「役所に並ぶ」
- 事業は止めない。ではバックオフィスはどうか
- 導入決定から2日で203名の入社準備を実現
- コロナ禍が継続するいま、私たちにできること
「レンタル移籍」が日本的なイノベーション・エコシステムを構築する
原田 未来(ローンディール社長)
- 変革のカギは企業文化をつなぐ人材
- 計画的な人材の流動化を実現する「レンタル移籍」
- 大手企業の人材はスタートアップで何を得るのか
- 日本企業らしさと人材の流動化を両立する
ダイキン工業のスタートアップ協業が見据える先
三谷 太郎(ダイキン工業テクノロジー・イノベーションセンター副センター長兼CVC室長)
- 空調を起点にデジタル技術で事業機会を拡大
- いかにスタートアップと出会い、そこで働く「人」を知るか
- CVCでスタートアップ協業の動きを加速
- 世の中が変化しているからこそ、多くのチャンスが生まれる
京急電鉄の目指すイノベーション・エコシステムの形成
橋本 雄太(京浜急行電鉄新規事業企画室)
- 京急アクセラレータープログラムでスピーディーな社会実装へ
- オープンイノベーションを成功に導くために
- 沿線エリアのイノベーション・エコシステム形成は当社の歴史的使命
米国スタートアップ・エコシステムの現状と今後の展望
大出 歩美(500 Startups, Japan Country Lead)
- COVID-19がもたらした予測不能な未来への懸念
- 持ち直しの兆しがみえるベンチャーキャピタル投資
- 機会を特定するフレームワーク
- より回復力が高いスタートアップ
シンガポールのイノベーション・エコシステムの現状、今後の展望
チュア・キー・ロック(Vertex Holdings, CEO)
中村 貴樹(Vertex Holdings, Executive Director, Partnership Group)
- 東南アジアのシリコンバレー
- 世界トップレベルの資金調達環境
- 国内STEM人材と高度海外人材が集まるタレントハブ
- 活性の高い、イノベーションコミュニティー
- VisionとExecutionの両輪を備える政府
- Afterコロナのシンガポール
コロナがイスラエルのスタートアップを強くする
デネス・バン(OurCrowd, Managing Partner)
- コロナ禍で業績を上げるIT企業
- スタートアップ王国のイスラエル
- コロナがDXを推進する
- 変化を先取りするスタートアップ
一般記事
採用選考活動に参加する追加的機会を学生に提供
―産学協議会が「産学共同ジョブ・フェア」を開催
(経団連SDGs本部:採用と大学教育の未来に関する産学協議会事務局)
- オンラインでの企業説明や少人数座談会を実施
- 今回のジョブ・フェアの成果
連載
-
あの時、あの言葉
この会社にしか出来ないことがある
中山 讓治(第一三共常勤顧問) -
Essay「時の調べ」
触感テクノロジーが提供する実感
仲谷 正史(慶應義塾大学環境情報学部准教授)