月刊 経団連2020年1月号
特集 世界の政治経済・安全保障環境を俯瞰する
巻頭言
デジタル技術を活かし、人間的で幸福な暮らしの実現と社会課題の解決を
昨年は多くの行事・イベントが続く年だった。令和の時代が始まる天皇陛下のご即位があり、大成功を収めたラグビーワールドカップに先立ち、日本で初めてのG20が大阪で開催され、経団連は先行して経団連会館でB20を主催した。多くの国々で政治と経済の不安定な状況が発生しているなかで日本経済は安定的な成長を続けていることから、日本は世界でもっとリーダーシップを発揮すべきとの声を聞く。
特集
世界の政治経済・安全保障環境を俯瞰する
米中覇権争いや北朝鮮によるミサイル実験、ホルムズ海峡の問題など、地政学的な緊張が高まっている。今後、企業が事業を行うにあたっては、世界の外交・安全保障環境を俯瞰し、これらを一体的に検討する視点が不可欠となる。そこで、今回の座談会では、安全保障環境の変化が各国の政策・企業活動に及ぼす影響について概括するとともに、民間外交のあり方について展望する。
座談会:世界の政治経済・安全保障環境を俯瞰する
- 片野坂真哉 (経団連副会長、外交委員長/ANAホールディングス社長)
- 中村邦晴 (経団連副会長、通商政策委員長/住友商事会長)
- 平野信行 (経団連副会長、日米経済協議会会長/三菱UFJフィナンシャル・グループ会長)
- 船橋洋一 (アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長)
- 兼原信克 (前内閣官房副長官補・国家安全保障局次長)
- ■しかく 世界の政治・経済・安全保障環境 〜現状をどうとらえるか
- 経済と政治・安全保障を一体的にとらえた外交が必要
- リーダー不在のなか今、国際秩序が音を立てて崩壊している
- 日本がアジアの自由主義圏をリードしていかなければならない
- グローバルサプライチェーンへの影響が大きい
- 経済格差が国際経済秩序を揺るがす要因の1つ
- 国際金融システムの分断が起こる可能性がある
- 航空業界でも米中貿易摩擦によるサプライチェーンの影響が大きい
- ■しかく これまでの取り組みと課題
- 日本は、世界の運営について発言するべき
- B7、B20といった民間外交が政府外交の力になっている
- 経済連携の拡充とWTOの改革推進が喫緊の課題
- 日米欧、三極での民間経済外交をやるべき
- 「世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター」を設立
- ■しかく 今後の取り組み、経済界への期待
- 金融とものづくりの今後を経済界に託したい
- 米国に現実を伝え国際経済秩序を再構築することが必要
- 産学官が連携しIT人材を育てる
- エネルギー安全保障の観点から海運業界と造船業界にてこ入れを
- 官民連携のもと、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の維持・強化に向け民間外交を積極的に展開していく
対談:不確実な時代における国際テロ対策のあり方
- 中川清明 (公安調査庁長官)
- 大林剛郎 (経団連外交委員長/大林組会長)
- ■しかく テロ対策の位置付け
- 「国際テロリズム要覧」の発行
概要と作成の背景 - ■しかく 企業の海外展開における支援体制
- 経済外交の推進と官民連携の重要性
- 建設業界の海外展開とその支援
- ■しかく テロの脅威と邦人被害の状況
- 最新の国際テロ情勢
- わが国をめぐる国際テロの脅威
日本の取るべき針路
甘利 明(衆議院議員)
- 外交や安全保障はウィン・ウィンで
- 日米は世界標準のデジタル経済ルール形成の先導役に
- ビジネスモデルの構築
冷戦2.0と日本
ニーアル・ファーガソン(ハーバード大学欧州研究所シニアフェロー)
「核の忘却」の終わりと核をめぐる世界の分裂
秋山信将(一橋大学国際・公共政策大学院長)
- 「核の忘却」
〜急速にしぼむ核軍縮の機運 - 米国の新たな核政策
- 核をめぐる世界の分断と今後の国際社会の取り組み
米国の対中技術競争の行方
森 聡(法政大学法学部教授)
- 交渉するトランプ大統領と競争するワシントン
- 2020年上半期ごろまでの展望
- 2020年下半期以降の展望
今後の日中関係
高原明生(東京大学公共政策大学院院長)
- 日中関係分析の要因
- 国内政治
- 経済利益
- 国際環境
- 国民感情、認識
EUの対外政策と日本
―ルールベースの国際秩序を目指す日EU協力へ
須網隆夫(早稲田大学大学院法務研究科教授)
- 変化するヨーロッパ
- 国際的立場の類似した日本とEU
- 国際的なルールメーキングのあり方
プーチン時代20年のロシアの今
石川一洋(日本放送協会解説委員)
- 中露"同盟"の行方
- 新たなフロンティア・北極海航路
- 孤高の大国の外交・シリアとウクライナ
- 変化への欲求と停滞
ユーラシアにおける中露の軍事的接近
小泉 悠(東京大学先端科学技術研究センター特任助教)
- 中露の軍事的接近
- 相互防衛抜きの軍事的協力関係の深化
- 対米関係の悪化と権威主義国家観の共有が要因
ペルシャ湾情勢とエネルギー安全保障の課題
田中浩一郎(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
- エネルギーと中東情勢
- 最近の米・イラン間の緊張状態
- それぞれの事情と計算
- 米・イラン紛争に対する懸念
中東の今と向き合うために
金子真夕(中東調査会事務局長・研究員)
- 現在の中東情勢
- イラン問題がもたらしているもの
- サウジアラビアの域内影響力の低下
- ホルムズ海峡の安全保障問題
- シリア紛争に見る中東をめぐるパワーゲーム
- 中東とどう向き合うべきか
リーダー国不在の混迷のGゼロ時代に日本が果たす役割
―ユーラシア・グループ主催「Gゼロサミット2019」を振り返って
(経団連国際経済本部)
- 現状認識:
リーダー国不在により混迷を増す世界 - 課題に対する方向性:
「Gゼロサミット2019」における共同議長発言を中心に - 日本が発信する世界への教訓:
パネル討議における意見を中心に - Gゼロサミット2019の成果:
経団連の今後の取り組み
一般記事
Challenge Zero 始動。
―イノベーションを通じた脱炭素社会へのチャレンジ―
ハノイで第10回アジア・ビジネス・サミットを開催
―デジタル・アジアとグローバル・アジアをテーマに意見交換
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/086.html(共同声明)
隅 修三(経団連副会長/東京海上日動火災保険相談役)
- アジア経済が直面する新たな課題の解決に向けて
訪欧ミッションを派遣してバルト3国との貿易投資、イノベーション分野の協力を促進
越智 仁(経団連副会長、ヨーロッパ地域委員長/三菱ケミカルホールディングス社長)
佐藤義雄(経団連ヨーロッパ地域委員長/住友生命保険会長)
- 各国の特徴
- 各国の共通点 〜EUならびにNATOとの連携強化
日・トルコ ウィン・ウィンビジネスの拡大と深化に向けて
―第25回日本トルコ合同経済委員会を開催
山西健一郎(経団連副会長、日本トルコ経済委員長/三菱電機特別顧問)
斎藤 保(経団連審議員会副議長、日本トルコ経済委員長/IHI会長)
- 日・トルコEPAからアフリカへの共同進出に至るまで多面的な議論を展開
- 大きな成果のあった今次合同経済委員会と今後の取り組み
連載
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多様性が輝くユニバーサル社会へ (6)
―共創・連携・価値創造への経済界の取り組み
「いつでも安心して利用できる」三越伊勢丹グループになるために
(三越伊勢丹グループ) -
経営者のひととき
多様な価値観を受容する開かれた日本へ
井上礼之(ダイキン工業会長) -
Essay「時の調べ」
日本ラグビーの未来
― ラグビーワールドカップ2019を終えて
大西将太郎(元ラグビー全日本代表選手/解説者)