2.3ヵ年での実施内容 以下3項目である。
- シリンダ潤滑状態のパラメータスタディの研究
- 実船における大型機関運転中のライナ変形/油膜厚さ計測
- 挙動解析に関する理論と注油システムの確立等
平成15年度までに得られた成果は以下のとおりである(1.〜3.:14年度に実施、4.〜5.:15年度に実施)。
1. 3次元油膜挙動シミュレータを改良し、その精度検証のためのシリンダ油挙動検証試験機の各種計測法を確立し、基礎的なケースで計算及び試験を実施した。本シミュレータがリング・ライナの挙動と油膜形成状態を把握するのに有効な手段となる目処を得た。
2. 大型機関のリングとライナ間の油膜厚さを計測する技術を開発し、開発された技術を用いて試験機関における油膜厚さ計測を実施した。油膜の基礎特性データの収集と解析を行い、リングの挙動について貴重な知見を得た。
3. 過去の損傷事例を調査し、油膜挙動のシミュレーションにおいては、摺動面の温度上昇、油膜の粘度低下あるいはピストンリングの傾斜で生じる局部的面圧上昇を考慮すればよいことを明らかにした。
4. 実機での潤滑状態に影響を与える代表的なパラメータとしては、中和性、清浄性、油膜厚さ及び油膜拡がり性等がある。3次元油膜挙動シミュレータの精度向上を図り、図1に示す注油範囲、リング形状等のパラメータを最適化することにより、油膜厚さの観点から0.7g/PSh以下に低減の可能性を示した(図2参照)。また油膜厚さを計測する試験機関を模擬したシミュレーションを実施し、計測値と計算値が概ね一致することを確認した(図3参照)。
5. 実機関(ボア800mm)においてライナ変形の計測を実施し、計算値と概ね一致することを確認した。また試験機関に油膜厚さ計測のトータルシステムを組込み、リング・ライナ稼動状態における油膜厚さ計測技術を構築した。
以上より、3次元油膜シミュレーションにおいて、潤滑理論的には注油率0.7g/PShに低減出来る可能性を示し、また概ね試験機関で計測された油膜厚さを計算により模擬出来ているため、3年計画の内2年目までの進捗率は計画通りの約65%である。 H16年度は引き続き、実船で油膜厚さを計測することにより、実運航条件におけるシリンダ油の挙動を把握し、所期目標である0.7g/PShを達成する最適な注油方法を提案する。