第19回 日本放射光学会奨励賞
小林 正起 会員 (KOBAYASHI Masaki)
高エネルギー加速器研究機構超高分解能軟X線発光分光を用いた磁性半導体の電子構造解析
小林正起氏は博士号を取得したのち、SPring-8の東大アウトステーションBL07LSU発光分光ステーションの建設に携わった。同氏が中心となってそのデザインを進め、軟X線の比較的低いエネルギー領域では、現在世界最高のエネルギー分解能を達成している。この実験ステーションは、軟X線領域の高エネルギー側をカバーするスイス放射光施設(SLS)の同様の装置とは相補的なものとなっており、国内外から多くのユーザーを集める装置となっている。同氏は本装置を用いて、希薄磁性半導体(Ga,Mn)AsのMnの電子状態に着目した研究を行い、バルク敏感な測定でMn 3d電子と配位子の電子との混成を明らかにした。この研究成果は、本系における磁性起源の理解において貴重な情報を与えた。また同氏は数多くの論文を発表し、海外の研究者との共同研究も多く、その実績も評価できる。このように、世界最先端の装置開発および、それを利用した一連の研究成果は、放射光科学分野の研究業績として高く評価できる。以上の理由から、同氏は日本放射光学会奨励賞に十分値するものと判断する。
日本放射光学会
会長 村上洋一
受賞研究報告 学会誌 Vol.28 No.2(2015)