第13回 日本放射光学会奨励賞 (2/3)


原田健太郎 会員

高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 放射光源研究系

パルス四極電磁石を用いた新しい入射方式の提案と実証

原田健太郎氏は、電子蓄積リングでの電子ビーム入射方式として、パルス四極電磁石を用いた新しい入射方式を提案し、実機放射光リングでその有用性を実証した。従来の電子蓄積リングへのビーム入射は、複数台のパルス偏向電磁石を用いるバンプ軌道入射方式となっており、トップアップ運転は所定の場所以外に軌道のずれが生じない精密なバンプ形成を成し遂げて可能となっている。一方、原田氏が提案した方式では、四極電磁石の中心を通る既に入射され蓄積されているビームには影響を与えずに、入射ビームを同磁石の周辺に通すことによりその収束力を用いて蓄積ビームのまわりに導くことができる。原田氏は、電磁石システムの適切な設置場所およびパラメータをシミュレーションにより見出し、世界的にも例のないマイクロ秒パルス動作を行う四極電磁石・励磁電源・セラミックチャンバーの開発、磁場測定などの性能試験を行った。PF-ARへこれらのシステムを設置し、ビーム入射・蓄積に成功した。この方式により、入射システムを小型化することができ、今後放射光利用にとって標準的運転となるトップアップ運転への既設施設の対応を容易とすることが期待される。さらに、今まで難しかった小型放射光施設でのトップアップ運転の実現に道を開くものである。
以上のように、パルス四極電磁石を用いた新しい入射方式の提案と実証を行った原田健太郎氏の放射光科学における研究功績は大きく、日本放射光学会奨励賞に十分に値するものであり、今後の一層の発展を期待するものである。

日本放射光学会
会長 雨宮慶幸

2009年 1月

受賞研究報告 学会誌 vol.22 No.2(2009)
[フレーム]

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /