第11回 日本放射光学会奨励賞 (2/3)


野末佳伸 会員

住友化学株式会社 石油化学品研究所

マイクロビームX線小角散乱を用いた高分子材料の構造研究

高分子材料の複雑な階層構造を研究する上で小角X線散乱は絶対不可欠な手法のひとつであるが、局所構造の詳細を知るには直径数ミクロンオーダーのマイクロビームが極めて有効である。しかし世界的に眺めても、マイクロビームを用いた小角X線散乱実験の報告は殆どされておらず、緊急に解決すべき課題として残されてきた。野末佳伸氏は、ミクロンサイズのX線ビームを作成、ラメラの複雑な集合組織である高分子球晶に照射、各ラメラの空間配置やラメラ間相関などを定量的に解明することに初めて成功した。また、同氏は結晶化過程における球晶構造発達の様子をマイクロビームX線小角散乱の高速時間分解測定に基づいて追跡することにも成功し、これまで謎とされてきた数多くの問題解決に一石を投じた。このように野末氏は、この技術開発を通じて、高分子構造研究分野の更なる発展に重要な契機を与えたものとして高く評価される。

日本放射光学会
会長 雨宮慶幸

2007年 1月

受賞研究報告 学会誌 vol.20 No.2(2007)
[フレーム]

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /